悪の双子    1



ハレルヤとアレルヤの生活スタイルは、ハレルヤの帰還とともにかわった。
まず、ハレルヤはアレルヤの召し使いとなりそれ相応の態度を持たなくてはならない。

二人だけの時はべつだったか・・・


それと大臣の一言でハレルヤの首はすぐにでも飛ばすことが出来るということだ。
二人の母親は現在不治の病でずっと寝室に籠っているばかりだ。
ハレルヤが一度帰ってきたことは、女王は知らない。

皆女王を刺激したくないのだろう。
アレルヤも、母親の部屋に行くときは必要以上に話さなかった。

「おい、アレルや。母さんの具合どうだ?」

「いつもとかわらない。」

「そうか。」


女王は三年前から病を患っている。

「アレルヤ」
「何?」

「俺も、一目だけ見てぇな。」
「・・・!そうか、じゃ皆が寝静まった夜こっそり見にいこう。」
「悪いな。」


その夜、深夜見回りの兵士の目を盗んでアレルヤとハレルヤは母親の部屋に入った。
久しぶりに見る母親の顔はハレルヤには青白く、痩せ細っているように見える。


「随分弱ってるな。」
「うん。特にハレルヤが居なくなってから、お母様大分弱って・・・」

二人の記憶には優しい母の記憶。
もう二人に笑いかけてはくれないだろうか?


「行こう。アレルヤ見つかったら不味い。」
「そうだね。お母様また来ますね。」







それから、何度か季節が変わり医師達の懸命な研究を続けても、女王の容態はよくならかった。

『どうしたものか』

『アレルヤ様も最近沈みがちで、食事も喉に通らない。』

『召し使いのハレルヤですら、アレルヤ様の沈んだ心を和らげさせる事も難しくなった。』

王宮の人間達もそろそろ女王が危ないとまで騒ぎ、城下町でも噂は広まりつつある。


そんな中、一人の侍女が血相を変えて走り込んできた。
彼女は女王の側近侍女だ。

「大変です!女王様が!!」


女王の容態が変わった。
王宮の人間達は慌てて女王の寝室へ集まった。

アレルヤとハレルヤは身内だったが、移る可能性があるため別室へ移された。
別室でうつ向くアレルヤとハレルヤ。アレルヤ達の部屋が静かなだけに、女王の寝室が騒がしく聞こえる。


『女王様!』

『お気を確かに!』


城の人間が懸命に呼び掛けても、反応は見せない。

暫くして、城内が一気に静まり返った。


「どうしたんだろう?」
「やな、予感がするぜ。」
「?」

静かになったと思ったら今度は足音がドタバタと煩い。
しかも段々大きくなってきている。女王の経過をしらせるだけなら、こんな大人数いらない。

バタンとのっくも無しにドアが開いた。
大臣に女官長、側近の侍女に兵隊長、貴族までいる。

誰も喋らないのでアレルヤも会話に困る。
ハレルヤはアレルヤをしっかりと支えていた。

「アレルヤ様万歳!」

「アレルヤ女王様万歳」


「!」

「そんな」


新しい女王の誕生。
すなわち、アレルヤ達の母親は・・・・・


「ハレルヤ、僕怖い。」
「大丈夫だ、アレルヤ。俺がずっとそばにいてやるから。」

「ハレルヤ。」

アレルヤコールが続く中、国の運命を背負う事になりアレルヤは不安を隠せない。
王女であるから帝王学は毎日地勉強中ではあるが、自分は上に立つ器量はないと思っているからだ。

十二歳の冬、アレルヤは国の頂点となった。





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