陰に咲く花   6


潜伏地が特区日本だけあって、ミッション遂行土地はユニオンの管轄だった。
たしかユニオンにはガンダムに異常な執着を見せるパイロットがいた。


「・・・以上よ。わかった?」

「了解。」

「了解しました。」

スメラギからミッション内容を聞くと、ハレルヤがすぐに代われと頭痛を持ってきたので、
操縦をすぐにハレルヤに代わらせてしまった。

ロックオンのように、会話が多くは無い刹那だからすぐに代わっても差し支えないだろう。
基本的に声は似ている。
ハレルヤが上手く誤魔化すだろう。


ティエリアは今回の任務には入っていないようだ。
後からロックオンと合流するプランになっていた。


『ヘ、ミッションなんて関係ねぇ。俺は叩くだけ叩かせてもらうぜ?』

「ダメだよ、ハレルヤ。」


破壊ミッションなだけに、ハレルヤの機嫌が少しいい。
大好きな殺し合いの幕開けだ。
開始時刻になれば、キュリオスの特性を生かした不意打ち攻撃。
敵混乱している間に、どれだけ数を落とせるかが勝敗の鍵を握る。

接近戦を得意としたエクシアの介入に入り、二人の勝機は見えているようだったが、
すぐにユニオンのフラッグ隊が向かってきた。
あの隊の中に一際目立つフラッグがいる。

あれこそ、ガンダムに執着を見せているパイロットのフラッグ。

そのフラッグは刹那に真っ直ぐ向かってきた。

「アレルヤ、こいつは俺に任せてくれ。」

「わかった。」

簡単にハレルヤは返事をすると、他のフラッグの戦闘にはいる。
さっきの敵よりなかなか骨のある者たちだ。
なかなか落とされない。

『そうこなくちゃ!!』

ハレルヤの目の色は輝いている。
敵だの味方だの関係なく、好き勝手に迎撃をしていった。


「ちょと、アレルヤ?どうしたの暴走?!」

キュリオスの行動に不審を感じたスメラギは、アレルヤに通信を送るがハレルヤは無視した。
見境ない攻撃に、刹那のエクシアに当たりそうになった。

「アレルヤ?」


「ハレルヤ!!やめて刹那に当たったら!!」

『うるせぇ!俺は今気分がいいんだよ。ここいるヤツらまとめておろしてやる!!』

「やめてぇぇえ!!!」

『う・・・!!!』


「アレルヤ?アレルヤ!!どうしたの」

通信から聞こえるアレルヤの尋常じゃない声に、トレミーは不安の色がぬぐえない。

「ロックオン。そっちにつくにはどのくらいになりそう?プラン変更よ。至急向かって。」

「あともう少しだぜ。了解した。」



外から見れば、オレンジ色のガンダムは暴走しているように見える。
システムのエラーか?

それなら・・・


「羽根付きのガンダムは今混乱しえる?いや暴走か?」

「上手く操縦出来ないなら、捕獲は今のうちか?」


ユニオンの部隊が、高速型のガンダムより、接近型の方が捕獲しやすいと思っていたが、
キュリオスが錯乱状態に入っているなら、そっちの方が都合いいかも知れない。
多少の破損は上層部から許可が降りている。

それなら・・・

「変更だ。羽根付きのガンダムの捕獲にはいるぞ。」


フラッグファイター達は、四方をかためる。
キュリオスは回り込まれてしまった。

「アレルヤ!!」

刹那はアレルヤを囲ったフラッグを落とそうとするが、別の援護部隊に阻止される。

「くそ・・ロックオンはまだなのか?」


「ハレルヤ、代わって!ダメだよ!」

『うるせぇ、テメェは黙ってろ!こんな事してる間に・・!!』


周りを見れば、たくさんのフラッグに囲まれていた。
アレルヤの操縦技術は他のマイスターよりも優れているといっても、
こんなたくさんの数相手では、難しいだろう。


「ハレルヤ・・!!」

『アレルヤ、スッコンデロ!!』


ハレルヤは持っている武器を持ち直して攻撃をし始める。
いくら性能がよくても、数が多すぎる。
刹那も苦戦を強いられているようだ。


「ク!!」


衝撃でコクピットが揺れた。

『・・・っ・・・ザケンナァ!!』


ついにハレルヤはキレてしまった。
目の前のフラッグに向かっていって、パンチをいれる。
力比べに入り、他のフラッグはキュリオスの体を動けないように押さえつけた。

そして目の前には、ユニオンの新兵器らしきものが視界に入る。

「あぁ”?上等だ!こらぁ!!」

臆することなく、ハレルヤはキュリアオスのマシンガンを放つ。
しかし、キュリオスは押さえつけられて思い通りに的に当たらない。

破損していくキュリオスの機体。
とうそう機体が動かなくなってしまった。

「くそ!!動けよ!!」


「アレルヤ!よけろ!」

「え・・・?」


モニターに映る敵のビーム。
よけきれない。



「あぁぁぁ!!」


大きな衝撃で、ハレルヤは気を失ってしまう。
脳にも刺激がいったらしくて、アレルヤも目が覚めることは無かった。


「アレルヤ?」

「アレルヤ!返事をして!」




「・・・ビーム直撃。羽根付きガンダム、身動きなし。」

「よし、それでは手足を固めて捕獲し帰艦。援護部隊はそのまま青のガンダムの引き付けておけ。」


連れて行かれるキュリオス。
身動きの出来ないエクシア。

デュナメスはそろそろ合流してもいいはずなのに!


「クソ!!」

まず目の前の敵を駆逐するのが先だ。

「刹那!」

「ロックオンか!」

「そっちはどうなってる?」

ロックオンが合流するのに少し時間がかかりそうだ。
今のうちに状況を掴んでおこうと、ロックオンから通信が入った。

「予想外に敵が多い。キュリオスが暴走して・・連れて行かれた。」

「なんだって?!」

「データを送る。ロックオンはキュリオスを追ってくれないか?」

「わかった。」


敵の戦闘データをロックオンに転送した。
デュナメスの進行方向角度が少しかわる。

「これか・・・。って何だよこのスピード!!」


モニターごしに敵の基地へ向かっているのは分かる。
しかし、画面がたたき出している速さの数値にロックオンは眉を寄せる。

「こんな速さありえないっての!・・・チ・・いくぜハロ」

「リョウカイ・リョウカイ。」

ハッキリ言って、追いつけない。
それなら、目的地までの把握ぐらいはしておこう。
出来るだけ距離を詰めようとするが、フラッグの異様なスピードに放されるばかりだ。


「この前のフラッグか・・。」

身に覚えのフラッグを思い出して、そんな事してる暇は無いと、
ただロックオンもスピードを上げる。


途中信号が消えた。

「マジかよ!!」


信号の消えたあたりをロックオンは満遍なく見渡す。
きっとこの近くに隠し基地があるのだろう。
とりあえず、それだけわかれば最悪でも、エージェントを通じて情報は割れる。


「ロックオン・キカンメイレイ。キカンメイレイ。」

「こんな時にか?」

「ロックオン。」

「ミス・スメラギ・・・!アレルヤが・・!!」

「刹那から聞いたわ。ロックオン、どこまで追跡できた?」

「悪い・・ここで信号が消えた。」

「そう・・・いいわ。あとで王留美に連絡して、動いてくれるようにしておくとして・・・
 アレルヤの事は皆で話し合いましょう。」

「わかった。」



このまま帰るのは忍びないが、単独で突っ込むのも分が悪い。
ここはスメラギの言葉を従う。


「アレルヤ・・・必ず助けに来るからな。」

ロックオンは、プトレマイオスへと戻っていった。












「大尉。やりましたね。」

「あぁ、念願のガンダムの捕獲。これ以上胸躍ることはないよ。」


無事基地にたどり着いたグラハムは、身動きできないように拘束されたキュリオスを見る。

「さて・・・青のパイロットは少年のように感じるが、はたして羽付きのパイロットは・・。」


コクピットが頑丈すぎて開かない。
仕方ない、と壊すのはもったいないがそうしてしまおうと扉を壊そうとした時だ。
ハッチが自動で空いたのだ。


「コクピット開きました。」

「・・・?!」

「これは・・・」


アレルヤは気を失ったままだった。
アレルヤの容姿は、中世的で女とも見れるし男とも見れる。

「とりあえず、捕虜を医務室へ運べ。」

「分かりました。」

機体はそのまま、エイフマン教授とカタギリにまわって解析にはいるだろう。
グラハムは機体もそうだが、パイロットも気になった。
先に医務室へと行く事にした。


「エーカー大尉。」

「どうした?」

「それが・・・パイロットは女性みたいで・・。」

「なんと、あのガンダムのパロットは女性だと言うのか!?」

「はい・・。」

部下の言葉に驚き、グラハムはすぐに医務室に入る。
ベッドに横たわっているのは、オリエンタルな肌をした綺麗な緑を帯びた黒髪。
静かに眠るその姿に、グラハムは胸が高鳴った。

「ほう・・。さすがだな。機体もさることながら、パイロットも美しい。」


アジア人特有のキメの細かい肌にそっと触れた。
眠りが深いのか、アレルヤは反応を見せない。


「彼女は捕虜だ。それにCBの情報も聞き出さなければならない。」

目が覚めたら呼んでくれと、グラハムは医師に伝えると出て行った。
今度はガンダムの性能を見に行った。






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