母親の自覚 2




「ボンゴレ?」

「骸・・だよね?」


顔を合わせた二人。骸は十年バズーカーによって大人の姿だった。

「骸・・・・お前!!」


(しまった!この頃の僕は!)


今、骸が身に纏っている姿は、Vネックの長袖トップスにロングスカート。
カシミヤのショールを羽織っている。

15才の頃は女だとなめられるのが嫌で男装をしていたのだ。
年を重ねるにつれて、力や強さの違いを見せつけられて男装をやめたのは何時だったろうか?


「骸、お前女だったんだな。」

「お久しぶりですね。アルコバレーノ。」


骸が女だという事実を知って固まっている綱吉に対してリボーンは冷静だ。
5分経てば元の次代に戻れる事を聞いて、骸は安心した。

その間少し話でもと、二人は他愛ない会話をしていると、復活した綱吉が突っ込む。


「ね、二人とも。もう、十分は経ってるんですけど。」

「え?」

「こりゃバズーカーの故障だな。」

これでは骸はもとに戻れない。
逃げたランボを探してボウ゛ィーノファミリーに見てもらわなくてはいけない。


「それじゃ僕はどうしましょうか?黒曜に戻りますか。」

「あいつらにも説明しねぇとな。ツナはランボ探してこい。」

「わかった。」

骸はそのまま黒曜へ戻ると、千種達に事情を説明した。
でも骸には変りなかったので、皆素直に受け入れた。

「10年後、の・・・・骸様。」

「綺麗れす、骸さん。」

「骸様、素敵です。」


どちらかといえば10年後の骸に会えたこと感激しているようだ。


「じゃ、修理終わったら連絡するぞ。」

「なるべく早くお願いしますね。」


ヘルシーランドは冷えて辛い。
何より生活環境の突然の変化がこの今の体にどう影響するかわからない。
10年振りに見るヘルシーランドに感涙しつつ、少々不安だ。


「骸様、今日は千種がご馳走作ってくれるって。」

「柿ピー、ナイス!」

「おやおや、すみませんね。」

「いいえ」



犬と千種は早速買い出しに行ってしまった。残るはクロームと骸。
クロームは男装をやめていたことに嬉しいと言った。


「だってそうすれば骸様と沢山お買い物できるもん。」

「クフフ、クロームったら。」

確かにクロームと出掛けることは多くなった気がする。
クロームは女の楽しみを骸と共有出来る事が嬉しい事がわかった。

「そうですか、もっと早くやめるべきでした。」

「ううん、いいの。」


ヘルシーランドに来て体調が不安だったが、
もともとは住んでいた所懐かしさの方が大きくて悪い影響はないようだ。

(とりあえずひと安心ですね。)

しかし、夕食の時間になって骸の体調は悪化した。
数並ぶ料理に嗅覚が限界を訴える。妊娠している事を知らない三人は当たり前の様に焦る。


千種が素早く洗面器をもってきたお陰で、床をそこまで汚さずにすんだ。


「すみません。何かリゾットやおかゆみたいなものを頂けますか?」

骸の異変に三人は一大事だ。

どうしよう。
未来の俺達は何をしているんだ?
病院に!

ばたばたした三人が向かった先は










「なんで俺の家〜!」

「うっせぇびょん。骸さんをなんとかしろ!」

「他に思い付かなかった。」

「お願い、ボス。」


千種に抱き抱えられている骸は真っ青だった。今は大分落ち着いているようだが油断ならない。

「すみません。僕は大丈夫と言ったのですが」

「そんな青い顔じゃ説得力ないよ。あ〜もう母さんに頼んでみる。」

綱吉は台所にいる奈々に事を説明した。
少しの間なら構わないそうだが、ビアンキと同室になるからビアンキと了解をとらなくてはならない。


「ええ、ええ。いいわよ。うちでよければね。ビアンキちゃんと一緒になるけどいいかしら?」

奈々は快く了解してくれたが、問題はビアンキだ。
相手は女とはいえ六道骸。

いきなり実は骸は女でした。
体の調子が悪いので、ヘルシーランドじゃ住めないから居候します、
なんて都合のイイことビアンキに通用するだろうか?


「ママン。ご飯の支度手伝いましょうか?」

「あら、ビアンキちゃん丁度良かったわ。」

「どうしたの?ツナがここに長く居るなんて珍しいわね。」

綱吉の話で、晩御飯が遅れをといっていたのだ。
ビアンキは手伝いを買って出たが、どうやら他に何かありそうだ。

「ビアンキ、あのさ・・・」

「何?もったいぶらずに教えて。」

「今使ってる部屋、二人部屋になってもいい?」

「どういう事?」


ビアンキにも骸を事を説明したが、ビアンキはあまり言い顔はしなかった。


「骸の体調不良って演技じゃないの?」


体が悪く見せかけて綱吉の体を狙っているとビアンキは考えているようだ。
しかし、綱吉はあの顔色の悪さは本気のように見える。

これは綱吉の直感だ。


「そんな事ないよ・・。本当に顔色悪いんだよ!」

「って事は骸はもう玄関に来てるのね?」

「はい・・・。」

「わかった、私が行くわ・・・。」

「えええ!?ちょっと・・・!!」

余計話がややこしくなる!
ビアンキを止めようとしたが一歩間に合わず、ビアンキと骸は対面した。

骸の顔色はさっきよりいっそう酷くなっていた。


「・・・骸・・、平気?」

「ええ・・・なんとか・・・。」

声も心なしかつらそうだ。
そんな骸をビアンキはじっと見ている。


「・・・ふ、本当に体調が悪いみたいね・・。仕方ないわね、いいわよ。」

「本当?!ありがとうビアンキ!」

ビアンキが折れてくれた。


「・・・迷惑をかけますね。毒サソリ。」

「あんたに礼を言われるなんて思わなかったわ。骸。」


「じゃ・・・。」


骸を抱えている千種は、どうすればいいかと綱吉に聞いた。

「えっと、とりあえず・・・・


「ツー君、用事はまだ終わらないの?って・・・あら?」

玄関に居る、綱吉達の様子を奈々が見に来たようだ。


「その子が骸ちゃんね。初めまして、これから宜しくね。
 あらら、本当に顔色が悪そうね、直ぐに横になったほうがいいわ。」


「すみません・・・ボンゴレのママン。」


奈々に案内されて、骸をビアンキの部屋に入れた。

どうせならと、奈々は千種たちに今日の夕飯一緒にしたら?と三人に声をかけた。
骸の事もあるので、三人は奈々の言葉に甘える事にした。



「皆、先食べてて。母さん骸ちゃんにおかゆ持っていくから。」

「あ・・あの。」

「ん?なあに?」

「私も・・・一緒に・・いいですか?」


クロームが一緒についていく事にした。
両手が塞がっている奈々の為に、クロームが部屋のドアを開ける。

骸は少し眠っていたようだ。

「調子はどう?」

「さっきより大分よくなりました。」

「それは良かったわ。じゃ、コレ食べれるかしら?」

「頂きます。」

膝の上にトレイごとおかゆをおいた。
まだ自分で食べれるようだ。


「骸様・・・大丈夫?」

「心配かけてすみませんね・・・クローム。」


(・・・・でもおかしい・・・。)


クロームには不思議な点がいくつか残る。
一心同体の骸とクローム。

いつもと骸の雰囲気が違う。

穏やかさがいつもより優しさに満ち溢れていた。
この不調を心なしか喜んでいるような気がする。

なにより骸の纏うオーラが違う。
他にも何かがいるような・・・・・。


「骸・・さ・・・・・


「さ、私達も食べましょうか?骸ちゃん、後で食器下げにくるわね。」

「ええ・・・。」


奈々とクロームは下の部屋に戻っていった。


夕食を食べ終わると、三人は骸を頼むと言って黒曜に帰って行った。

「はー・・・一時はどうかるかと思った。」

「アイツらは骸のこととなると、周りが見えなくなるからな。」

「ビアンキと骸、仲良くやってくれればいいけど・・。」

「そいつは心配いらねぇ。」

「どうしてだよ!」




「へー十年後はそうなってるの。」

「ええ、毒サソリは変らず綺麗で羨ましいです。」

「あの人は?」

「アルコバレーノのことですか?モチロン顕在ですよ。
 十年後の貴方も、アルコバレーノの傍にいます。」

「フフ・・・それを聞けて満足だわ。」


「ほらな。」

家の二階に上がってビアンキの部屋に行ってみれば、
楽しそうにおしゃべりをしていた。

所詮は女同士。
女には女にしか分からない何かがあるのだ。

(心配してすっごい損した!)

「ああ・・・もういいや。部屋に戻って寝よう。」


そうして、十年後の骸を加えての奇妙な生活が始まった。



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