真夜中の出来事。 
前編



十年後の世界に来て数日、未来の戦い方の基礎も大体覚えてきた。
綱吉達を始めマフィアに関係ない京子やハル、子供までもがタイムトラベルに巻き込まれている中、
雲雀恭弥だけはタイムトラベルをしていなかった。


並盛神社から専用の地下アジトとへを身を運ぶ。


確かに雲雀なら、警戒心が強く簡単にバズーカーに当たることもないだろう。
綱吉は納得したようだ。
ラルに特訓を受けて、京子とハルが温かいご飯を作ってくれる。
このまま強くなって、ミルフィオーレの入江の所までたどり着ければ問題はない。

今日も朝から特訓というところで、寝室代わりにしていた部屋から
トレーニングルームへ向かう途中だった、曲がり角の途中で誰かにぶつかった。

急いでいたので周りを良く見ていなかったのだ。
走っていたせいもあって、衝撃の反動は強く綱吉は尻餅を突いてしまった。

「わ!!!」

「大丈夫ですか?十代目!!」

「ツナ、平気か?」


一緒にいた獄寺と山本はどうやらぶつからずにすんだ。


「イテテ・・・。すみません。」

「オイ、テメー十代目にぶつかっておいて、謝罪はねーのか?!」

「ちょ・・・獄寺君、俺だって悪いんだから・・。」

「しかし・・・。」

「・・・・・。」


キレている獄寺をよそに、それを止める綱吉。
いつもなら一緒に山本も獄寺を止めに入るのに、山本はただポカンとぶつかった相手を見ていた。

「どうしたの?山本・・。」

「チ・・おい!野球バカどうした。」

「・・・骸・・・?」


「「えええ??!!」」


山本が指を刺した先には、十年後の骸らしき人が立っていた。


「クフフ・・。随分と懐かしい顔ぶれですね。」


他に見ない特有の笑い方。
個性的な髪型に、左右色違いの瞳。
まさしく骸なのだが・・・・・


十年経って、随分と髪の毛が伸び身長も高くなっているが・・・?


「おや、どうしました?僕の顔に何か付いていますか?」


シャツの隙間から見える膨らんでいるものは、まさしく女性特有のもの・・・


「骸なの?」

「えぇ・・そうですけど、僕以外の誰に見えるんです?」

「体はクロームって事ないよね?」

「おやおや、彼女だって今タイムトラベルで”ここ”へ来ています。それは違います。」


それもそうだ。昨日了平がクロームをつれてきている。
彼女は今、大事をとって安静にしているはずだ。

クロームを可愛がっている骸のことだ、安静を要するクロームの体をワザと使うはずもない。


「これは僕のオリジナルの体ですよ?」

「そうなの?!」

「おやおや、どうやら僕の事は知らされていないようですね。」

別にいいですけど、と骸は持っていた書類を持ち直す。

「で、骸どうしてココに?」

「おや、君が僕を霧の守護者にしたんではなかったですか・・?」

「それは・・・俺の父さんが勝手に・・・!!」


この言い分だと、骸もしっかりとボンゴレの霧の守護者として働いているようだ。
その資料は報告書なのだろう。
ボスのいなくなった今、ボスの代理は誰かがしているのだろうか?
その書類を誰に・・・・?

「ね、骸・・・その資料・・・・」


「遅い!!!」


「「「わぁぁ!!」」」


骸と話す時間が長すぎた。
綱吉達がトレーニングルームに来なかったので、ラルが迎えに来た。

「すみませんぇね・・。ラル・ミルチ、僕が引きとめてしまいました。」

「なんだお前か、帰って来てたんだな。」

「ええ、さっきですけどね。ところで・・・」

「雲雀恭弥なら、さっきあっちへ行ったぞ。」

「そうですか、有難うございます。」


資料はどうやら雲雀に渡すものだったらしい。
もともと他の守護者に渡すものだとして、了平じゃ任せられないし、
他は全員中学生になっているから適任は雲雀だけだろう。


骸は歩き出す前に、もう一度綱吉の前に立った。


「何?どうしたの・・・?骸・・・?」


骸に見下ろされて、怪しく笑う。
いつもだったら冷や汗をかくのに、今は不気味な雰囲気を感じない。
骸の笑みはなんだか悲しそうだった。


「もう一度君に会えるとは、思っても見ませんでした。
 貴方が僕を復讐者の牢獄から出してくれたんですよ?」

「お・・俺が?」

「そうです。・・・全くお陰で僕は一生ボンゴレに忠誠を誓わなきゃいけない身となりました。
 ありがた迷惑ですよ?”ボス”。」

「・・!!!」


「な・・!!」

骸は、昔リング争奪戦の時クロームが綱吉にした挨拶をした。
そっと綱吉の頬に骸の唇が触れた。


「な・・ななな!!骸?!!」


「君はこの中学生の時の姿が一番いいですよ。可愛いし。」


悪ノリしたきたのか、今度は力いっぱい抱きしめる。

「ちょ・・!!骸!!痛い!痛い!っていうか胸が当たってる!!!」


骸のからかいに、綱吉は反応を大げさに示した。
クフフを笑う骸だったが、ラルがそろそろ我慢の限界かのように咳払いをする。

「おやおや、悪ふざけが過ぎたようですね。それでは・・・。」


「全くどんだ時間のロスだ。行くぞ!沢田!」

「わ〜!!ちょっと引きずらないで下さい!!」


時間を大幅に削ってしまった今日の修行は、いつもより地獄と化していた。
ご飯を食べ終わってから、ビアンキとフゥ太に骸の事を教えてもらった。

綱吉が骸の釈放へと本格的に動き出したのは、高校を卒業してからだという。
反対する者も多かったが、綱吉はいう事を聞かずボンゴレを継ぐ交換条件として
リボーンに意見したといっていた。

まさか自分がリボーンに反発して、そのマガママが通るなんて驚いた。
今の綱吉じゃ考えれないからだ。


その二年後、無事に骸は復讐者の牢獄から出られたいう。
一生”ボンゴレ”に忠誠を誓うという条件付で・・・。


「で、ツナは骸に会ったんでしょ?」

「え。・・・うん。」

「驚かなかった?」

「そりゃビックリしたよ。だって骸が女の人だったなんて!」

「僕も驚いた。当時のツナ兄ツッコミが出来ないほど絶句してたもん。」

「そういえばそうね。」

当時骸の力は完全に取り上げられていて、幻術で姿をカモフラージュする事が不可能だったのだ。
釈放された直後も、完全に力は戻っていなく、本当に性別がボンゴレに知られてしまったのだ。
それから骸はもうバレているならいいやと、余計な力を使って姿を隠す事をやめたのだという。


二人はその時の綱吉の顔を覚えているようだ。
クスクスと二人が笑うと、綱吉は直接的には自分の事じゃなにのに恥かしくなった。

「そうそう、ツナ。夜は雲雀の部屋へいっちゃ駄目よ?」

「そうだね、あと骸さんの部屋も駄目だよ?」

「イヤイヤイヤ!!!行けって言われたって行かないから!!!」


ボンゴレ十代目の中での最強のタッグの二人の部屋なんて、迂闊にも入れない。
ましてや本人に呼び出されても遠慮したい。

「今のツナならそうね。」

「あと・・・二人が一緒にいる時は近くに居ないほうがいいよ。」

「それもそうだよね。」

雲雀と骸の仲は悪いと思う。
雲雀は骸にやられた恨みを忘れていない。

十年経っても、仲が悪いんだろうなと綱吉は想像する。
確かに二人の近くにいたら巻き添えをくらうのは目に見えている。

「ありがとう。ビアンキ、フゥ太これでスッキリしたよ。ありがとう。」

「いえいえ。」

「じゃ、お休みツナ兄。」


「あの子、絶対勘違いしてるわね。」

「うん、まさか雲雀さんと骸さんがああなるとは誰も予想してなかったもん。」






綱吉はそのまま部屋に戻ると、獄寺と山本にビアンキとフゥ太から聞いた事を話した。
やはり二人も驚いている様子だ。

「流石十代目のお心は誰よりも広いッス!」

「未来のツナも優しいのな。」

驚きはしたが、綱吉の優しい性格ならありえるなと直ぐに二人は納得した。

「確かにあの二人なら一触即発しそうですね。」

「並盛を襲った首謀者だからな。ま、でもこのアジトも無事だからなんとかなるんじゃね?」

「うん・・そうだよね。」


そういわれてみれば、山本の言うとおりだった。
雲雀と骸が険悪なら一つ二つくらい、部屋が崩壊しているのもおかしくはない。
いくら骸と雲雀が任務で飛び回っているからって、戦闘好きの雲雀なら
骸が戻ってきたとたん、挑戦をするのは目に見えている。

しかしアジトにはキズ一つない。
トレーニングルームでは綱吉達が訓練で作った跡しかない。

「・・それに、なんかビアンキとフゥ太の言った事も引っかかるんだよな。」

二人の言った事はその通りなのだが、なんかある。
”夜部屋に近づかないほうがいいわよ”
夜って一体なんなのだ?昼だって危険だと思うんだが・・・?






夜中、綱吉は喉の渇きに目が覚めた。
そういえば、今日の夕食はおかわりは何度かしたが、あまり水分は取っていなかった。
コップ一杯の水だけでだった気がする。

いつもの部屋なら枕元に、ペットボトルのミネラルウォーターを置いているのだが、
ここに来てからはをんな事していなかった。


「しょうがない・・・。台所まで行ってくるか。」


獄寺と山本を起さないようにベッドから降りようとしたた、滑って床に落ちてしまった。

「いってえぇぇえ!!・・・あ!!」

気付いたときには大きな声を上げていた。
二人を見れば、起してしまっていた。


「十代目、大丈夫ですか?」

「ツナ頭打ってねぇか?」

「ごめんね、起こしちゃった。喉が渇いたから水飲みに行こうかと思ったら落ちちゃったよ。」

アハハと綱吉は笑って誤魔化した。
それなら俺もお供しますと、付いていく気満々な獄寺が手を上げる。
なら俺もと、結局三人一緒に水分補給をしにいくことになった。






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