DOLL  6






ククールは目が覚めた。
白い天井だった。


自分は気絶していた事に気がついた。


ふっくらなベッドから出ると、枕元にあった水を飲み干した。
体中が痛い。
暫くするとメイドが入ってきた。

「ククール様、旦那様がお呼びです。」

ククールはその後すぐに修道院へ帰っていた。
馬車の中ククールは体の痛みを我慢しながら、早くつかないかと祈っていた。


自分の部屋へ戻るとすぐにベッドになだれ込み泥のように眠った。


















「・・・ククール。おい!朝だぞ!!」

「・・・・・」




朝、ミサの時間となり同じ部屋の同僚がククールを起こしたがククールからの返事が無かった。

「ククール・・・?」

ククールは目覚めることは無かった。




















医者が言うには、精神的なものだという。
目覚めるのか、もう一生目覚めないのかもわからない。
















---------------------3ヵ月後---------------------


ククールは目覚めることは無かった。

オディロは自分の部屋の奥に、小屋を作りそこにククールをおいておくことにした。
植物に囲まれた建物。
寝息をたてるククール。

もうククールは目覚めることは無いだろう。



いつの間にそこの館は銀色の館と呼ばれるようになった。
そこはオディロとマルチェロしか入れない領域となり、人々は呪われた美しい天使がいると噂がたった。















「何が美しい天使だ・・・。全く・・・。」

マルチェロは不機嫌な足取りで、奥の館へと向かった。
眠っているククールの体を定期的に拭いているのは無論、入れることを許されているオディロとマルチェロだけだ。
オディロにそんなことはさせられないマルチェロは、ククールの世話をいやいやしていた。

その世話の仕方は粗暴なものだった。
寝ている人間は重い。
移動は適当にあしらっていた。



「・・・全く貴様はいつまで眠っているんだ?」

顔を触れるが返答は無い。

「・・・お前のせいで寄付金が減る一方だ。院長には悪いが、お前を一目みたいと思っている貴族が多数いてな・・。」

ククールは寝息を立てている。


「無反応のお前に何を言っても仕方ない。これから丁寧に扱ってやる。だが、それなりの代償はもらうぞ。」





その後、暫くしてから寄付金をくれる貴族にだけククールを合わせる事にした。
無論、オディロにはうまく説明をしてだが・・・。

ククールが目を覚まさぬままでも貴族達には関係なかった。
彼らはククールの綺麗な姿が見れればそれでいいのだから・・。
中には、花を持ってきたり、服を持ってきたりで着せ替え人形のような状態になっていた。
もう、ククールは貴族のいい人形になっていた。


























---------------あれからまた数ヶ月たっていた。


ククールが眠っている館は植物が成長して伸びきった状態となり、館の壁に植物がまきついてた。
そして今日もククールは眠っている。



「・・・ククール、今日もお前を見たいと来ている。入るぞ。」


「!!!」



マルチェロはドアを開けると言葉を失った。
ククールが起き上がっていたのだ。


「ククール・・!」
「・・・・」

起きてはいるがククールからの返事が無い。

「おや、お目覚めになったのですな。」
「いえ・・・私も、今目覚めたばっかりだと思いますので、きっとまともな会話が出来ないでしょう。」

「そうですか・・・。」










貴族が帰ったと、マルチェロは再びククールのところにいった。


「ククール、貴様いつ目が覚めた。」


「・・・・」

ククールからの返答は無い。
だた、ゆっくり微笑むだけだった。

「ククール!貴様私は質問をしているのだぞ!!」

しかしククールはただ微笑みを見せるだけだった。

「ククール・・・・?」




目を覚ましたククールは、ただ微笑をするだけの人形だ。
その微笑みは女神の像のような綺麗な顔だった。





ククールは目を覚ました。

しかし以前のようないはいかない。





今日も植物が覆われている館では、綺麗な銀色の微笑が訪れる人を待っている・・・。


















----------------------------END----------------------------

お・・・終わりました!!
1年ぐらいかかったと思います。

本当はククールは精神崩壊して終わらせようとしたのですが、ソレはあまりにも・・・
と思いまして、ちょっと変更しました。
最初と考えていたのとは時間がたつにつれて大きく変わりましたが、
これでよかったと思います。






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