時空を超えた少年  10






「それまだ残っているんだな。」
「なんせ俺の宝物だからな。」

古び変色した紙が鳥の形に折られてる。
無数に集めて糸で留められていた。

「千羽鶴っていうんだって。よく願いを込める時につかうらしい。」
「ほう・・・しかし、よくまだ残ってたな。」

「これだけは必死に守ってきたからな。初めて貰った友情の証だからな。」


「どうした?」


「いや、ちょっと思い出しちまった。・・・みんあ元気かな?」


「ククール・・・。」

「俺さ、できるならまた会いたい。」
「会えるといいな・・・。」
「うん。」










車に揺られて何時間
たどり着いた場所は都内から離れた自然の多いところだった。
彼岸休暇を出しているところは菊丸達意外にも多くいた。
家族連れが多い。


野山の中で子供が遊ぶ木で出来た遊具場が広く陣取っていた。
ククールも見たとたんハシャイデ駆け寄った。
菊丸はデジカメでククールの写真を撮り、クルミはそんな二人の姿を見て笑った。

他にも花畑や、遊具場とはちがった上級者向けアスレチックなどがある。

泥だらけになったククールを待っていたのは、クルミの手作り弁当だった。

保育園で食べるお弁当とはまた食べる味が違った。
今日のは大きくて、大好きなおかずがたくさんある。

「おいしい?」
「おいしい!」

大好きな鳥のから揚げをほおばった。

季節がまだ早いから小川で遊ぶことは出来なかったが、ちょっと釣りを体験することも出来た。
初めてつった魚にククールは感動を覚えた。




午後の夕方前、また来るまで移動を始めた。
ククールは疲れて眠っている。

「寝てるわね。ククール。」

「ははは、今日は思いっきり遊んだもんな。」
「あ〜あ、洋服あんなに泥だらけ。・・・洗濯大変だわ。」

「そうだね。あ、着いたよ。泊まる宿。」
「よく取れたわね。ギリギリだったんじゃない?」
「穴場なんだよここ。」


車を止めると、ククールを抱き上げて部屋に案内される。
昔ながらの和風宿。

「まずはお風呂ね。」
「だな。」

ククールを起こして、3人で混浴露天風呂に入ることにした。



部屋から戻ると料理の準備が出来ていて、また違う料理をククールは楽しめた。
同じ魚なのに生で食べるのは初めてだった。
でも素直においしいと思った。
浴衣も初めてだ。



その日は親子3人川の字で手をつなぎながら眠った。












23日になる少し前、ルイネロはまたマイエラへ足を運んだ。

明日の夜だ。
場所はきっと旧修道院であろう。
そんな予感をさせながら、修道院にいるオディロへと会いに行く。
オディロは落ちつきがなく、顔色もよくない。
ここ最近よく眠れていないらしい。

本当に帰ってくるのか不安らしい。

ルイネロも水晶で占ってはみたが、光が邪魔してなかなか見れない。
分かった事は、明日の夜と旧修道院。
それだけ分かればいい。


「院長どの、少し落ち着いてください。団員がお茶をもってきてくださった。」
「そうか・・・申し訳ない。こんな姿を・・・。」
「いいえ、お気持ち察しいたします。」

「もうすぐじゃ・・・わしは、不安で仕方ない。」

「と、いいますと?」

「ククールじゃ。お主の話だと”選ぶ”ことも出来ると言った。ということは、
 向こうの世界にとどまることも出来ると言うわけじゃ。そんな事になったらマルチェロとは修復不能になる」

あの兄弟の詳しいことはルイネロもよく分かっていない。
知っているのは、当の兄弟とオディロだけだ。
オディロはずっと、マルチェロとククールを心配していたのだ。
もしククールがあちの世界にいることを望んだら?

それはそれであの子の幸せになるが・・・・
マルチェロとの絆は完全に切れてしまう。

「わしはソレが怖い。」
「院長・・・。とにかく待ちましょう。私達は今ソレしか出来ないのです。」
















目が覚めた。朝日がまぶしい。

こっちの土地はまだ朝は少し冷えるらしい。
布団から出たくなかった。

両側を見ると、菊丸とクルミはまだ寝ていた。
でもちゃんと、手は繋いでいたままだった。


この幸せをもう少し浸っていたい。
ククールは二度寝をはじめた。








今日一日あまり会話がない気がする。
昨日はガラリと変わった。

朝ごはんを旅館で食べ終わった後、チェックアウトをした。
お昼はどこかの知らないレストランで済ませた。


最後の場所は遊園地だった。
そういえば遊園地もいたことがなかったね。なんてクルミは言った。
まだまだ行きたいところあったのにな。

菊丸も残念そうにククールの頭をなでた。
午後からだったので、乗り物は限られたが、夕方最後に観覧車にのった。
一番上に来て、世界を目の当たりにする。

はっきりと自分のいた世界とは違うことを思い知らされた。
道はこんなに固くない。
木で出来た家なんて見えない。
こんなに高い建物なんえない
こんなに早く走る乗り物なんてない。


「ククール?どうしたの?」

クルミの膝の上にのって抱きついた。

「無理もない。まだ子供だ。実感してるんだよ。」
「そうだよね。」


空の向こうで白い満月が見えた。








帰りの車は道も静かだった。
まるでみんなククールの帰りを知っているかのように・・・・。
空はもう暗くなって、星と月が近い。
今日は嫌というほど、月が輝いていた。


家に着いた。

玄関が心なしか光っていた。

「!」

「ククールがここへ来たときも丁度こんな感じだったよ。」

菊丸がククールをさとした。
ククールが少し震えていた。

「ここで立ち止まっても仕方ない。行こうか、大丈夫。怖くないよ。」



幸い外には今誰もいない。
他人には見られてはいけないのだ。
いや、必然的に誰もいないようにされているだけなのか?


3人で手を繋いでその光へと足を踏み入れた。



「「「!!!」」」











目を開けるとそこはククールには見慣れた場所だった。
旧修道院への入り口。

「ここ・・・」

「ククール・・・知ってるの?」


「「ククール!!」」


誰かの声が聞こえた。
振り返ると、オディロとマルチェロがいたのだ。
後ろにはククールの知らない、髪の多い男がいた。


「おぉ!!ククール!心配したぞ。」

オディロはククールを見つけたとたん抱きしめた。

院長だ。院長が抱きしめてくれたいる。
ククールは帰ってきたんだと実感した。

「さて、・・・貴方達は?」

マルチェロは菊丸とクルミにむかって剣を向けた。

「まって!その人たちは・・・・!!!!」




ヤクシャガソロッタネ


「「「「「「!!!!!!」」」」」」



サァ、ショウネンキミハドッチヲエラブ?
ホゴシャトギケイノイルゲンザイ
チヒトハハノイルミライ


「・・・・え?」


キミハエラバナクテイケナイ
キミハドッチデモイキテイケルタダエラバレナカッタセカイデキミノソンザイハキエテシマウケド・・・


菊丸とクルミを見る。
菊丸は”好きなほうを選んでいい”といってくれた。
クルミは怖くて菊丸にすがっていた。

院長は心配そうにククールを見て、マルチェロは無関心だった。


ククールは考えた。
どっちも大好きなのだ。
今までいた世界も、育った世界も・・・
でも、自分が本当に望むのは・・・・・・


マルチェロを見た。


あの世界のように・・・一度は衝突したけれど分かり合えたヤスカズ
友達になってくれたエイト

マルチェロとも今度はああなりたい。
あっちではできたんだ。こっちでも出来るはず!!!


「僕、ここに残る。」




ソウカ・・・・
ソレデハマエノフサイ。アナタタチヲモトノバショヘモドシマスシッカリツカマッテイテ

「待ってくれ、ソノ前に・・・。」

菊丸はククールにあるものを渡した。
それは保育園で貰った千羽鶴だ。

「忘れ物。それと僕の鶴とクルミの鶴も入っている。大事に持ってくれるかい?」
「うん。」
「私からも・・・・もっと一緒にいたかったわ。今度会うときは・・・・私達家族で会いたいわね。」
「・・・うん・・。」


クルミに抱き寄せられてククールは泣いた。
お別れなんだね。


「わしからも・・・前野夫妻でしたな。わしはこっちのでククールの保護者のオディロじゃ。」
「はい。ククールから聞いてます。」
「ありがとう。本当にありがとう。」
「いえ・・・僕達こそありがとうございました。本当に子供が出来たみたいで嬉しかったです。」


ソロソロイクヨ
カエレナクナル


「そっか、じゃぁ還してくれ僕たちの世界へ・・・。」


菊丸とクルミの周りが光りだした。

「じゃ、またね。ククール。生まれ変わったら、僕たちの子供として生まれておいで・・。」
「パパ・・」
「ククール、また会えたらいいわね。」
「ママ・・」


光は一瞬にして消えて、二人の存在も消えてしまった。


「行ってしまったか・・・。ククールよく帰って来てくれたわしは嬉しいぞ。」
「うん・・・院長・・・。」






ククールはオディロに手を引かれ、マイエラへと戻っていった。
他のものもククールの生還に大いに喜んだ。

今まで出来なかったことが向こうでも出来た。
こっちだって出来るはず。

菊丸に言われた言葉を思い出した。

”人はちゃんと望まれて生まれてきている。ごく一部、中にはそうでないこともあるかもしれない。
 少なくとも、ククールはちゃんと本当のお父さんとお母さんから望まれて生まれてきている。”

ククールなりにこれからのことを頑張ってみみようと思った。












「準備はいいか?」
「ええ、大丈夫よ。」


クルミと菊丸は車に乗り、人里はなれた教会へ向かった。

車の中でクルミは何かしらのリストを見ている。



教会へ着くと、年老いたシスターが出迎えてくれた。
どうやら施設のようだった。


「貴方達がお声をかけてくれた本当に感謝しています。本当は外国へ出してやりたかったのですが・・
 うちにはそんな蓄えもなく・・・あの子達も少ししか外の言葉を話せない。
 ただでさえ、日本人との血が混じっていても見た目は外国人。
 兄のほうだけ引き取りたいといっても、それでは・・・・
 実際、兄も兄弟一緒に引き取ってくれる人じゃないと嫌だと言い張って・・・・
 貴方達が来てくれてありがとうございます。」


古びた教会だった。
外で子供達が遊んでいる。


ククールが行った後、二人で話し合って養子をとることにした。
資料を貰い、自分達の理想の子を今見つけたのだ。


「さぁ、こちらです。」


ドアを向けた先には


「兄の方はマルチェロ12歳、弟の方はククール4歳です。・・・二人は異母兄弟です。」


二人はこの兄弟を見つけたときやっと見つけたと思った。
帰り際に見た、ククールの義兄と全く同じだった。
嬉しくて涙が出た。
生まれ変わってきてくれたのだ。
しかもそのまま姿変わらなく、お兄さんと一緒に・・・




「あぁ・・・やっと見つけたわ。おいで、ククール、マルチェロ。」

マルチェロとククールは戸惑いながら、クルミへと歩み寄った。


「初めまして・・・今日から私が貴方達のお母さんよ・・。」














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はい、超自己満足パラレル完結しました。
長かった!!長かったよ!!
これ完結させるのに1年かけてどうすんのよ!!自分!!

よくわかんないけど、仔ククを可愛がりたくて作った話
ククールと、前野夫妻のダブル主人公でした。
当初はククとマルの生まれ変わりを、クルミと菊丸にしようかと思ってのですがやめました。

途中アスカンタ夫妻が友情出演したのはきっとバレバレですよね。
なんか心あったまる話が書きたかったのですが見事に挫折しました・・はい

これ読んでる方いらっしゃるのかしら?
あまりにもパラレルすぎてきっと読んでなさそう・・・。






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