体温



「ククールってさ・・・・人肌が恋しいの?」
「は・・・?」


(何言ってるんだ?こいつ・・・?)


今日は野宿ではなく、町の宿屋で夜を過ごすことになった。
部屋割りはたいてい、エイト・ククール、ヤンガス、ゼシカと3部屋に分かれる。
一部屋が二人部屋なため、自然にこうなってしまう。



「ククールってさ、毛布とか枕を抱いて寝てるから・・・。そうなのかなって・・・」
「勘弁してくれ・・・。それだけでそんな風におもわれたらたまらん。」


ククールはさっさとベッドの中に入り、顔を合わさないようにして寝てしまった。

「ちぇ・・・。」
エイトはしぶしぶ自分もベットの中に入り眠りに付いた。





























暫くしてエイトは目が覚めた。
窓から月が顔を出している。

「はぁ〜・・・まだ夜中ジャン・・・・ん?」

隣のベッドを見るとククールはすやすやと寝ている。
しかし・・・・・・・

「やっぱり、そうなんじゃないのかなぁ・・・?」

案の定ククールは枕を抱きかかえて寝ている状態だった。
綺麗な寝顔をして、むにゃむにゃと寝息が聞こえる。



実際それを見たのは、ベルガラックのときだった。
竜骨の洞窟へ行く前夜、眠り薬を盛られ全員昼間で寝ていたのだ。
最初にエイトがたたき起こされ、皆の寝相を見てしまったのだ。

あの時のククールの寝相といったら傑作だ。
可愛い顔して、毛布を抱いて寝てるんだもん。
このまま見つめていたい衝動に駆られたよ。



エイトはククールの方へ近寄った。

規則正しい寝息の音だけが響き渡る。
シーツをめくって自分もククールのベットの中に入った。
ククールの頬を触るとちょっと冷たかった。
体全体が少し冷たい。
もしかしたら、平熱が低いかもしれない。


「・・・ん・・・・」

抱いていた毛布を取り上げて二人の体の上にかける。
少しククールは機嫌が悪そうだった。

だが、抱き締める対象のものが見つかると、また大人しくなった。



ククールはエイトを抱き締める形になった。

エイトは心のなかで(ヤッタ)と叫んだ。



「・・・・マルチェロ・・・・・。」



「・・・・・・・。」


夢にマルチェロが出てきてるのか、寝言がポソっと聞こえた。
これはあまり、快くない。
抱き締められて居るのは自分なのに・・・
まあ、無意識なのだが・・・・・





「いつでも・・・・夢の中でも・・・ククールはマルチェロの事か・・・・・。」


エイトはもうこのまま大人しく寝ることにした。



























「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!」


「なんだよ・・・うるさいなぁ・・。」

朝、エイトはククールの変な叫びで目が覚めた。
ククールは挙動不審に顔をこわばらせている。
無理もない

「ん・・・な・・・なんでエイトがここにいるんだよ!」

「夜中・・目が覚めてさ、ククールったら枕を抱いて寝ててさ〜。
 可愛くって僕が枕になってあげようと思ったんだよ。
 案の定、ククールのところに行くとさ、ククールってば僕のこと抱き枕にしてスースー寝てたんだから。」


「・・・・〜〜・・・」

ククールの顔が赤い・・・
可愛いとエイトは素直に思った。

「だからって・・・!!!」
「またククールが何かを抱いて寝てたら、僕がまた抱き枕になってあげるからね!!」
エイトはククールの唇に自分の唇を重ねた。



「!!!!」
「言っておくけど本気だよ。」


「ちょ・・・・勝手に決めるなよ。」
「ククールの寝顔可愛かったよ。寝言も言ってた!」
「てめ・・!!」

「大丈夫。皆には内緒にしておくよ。」






「これから面白くなるね・・。言っておくけど僕は本気だよ。」
「俺はゴメンだ。」
「そんなにかたくなにならないでよ。」
「・・・・・」



あの人を少しずつ忘れさせてあげればいいんだ。
あのキスは本気だ。
ククールが好きだから・・・・・






「じゃ、今度は本気でククールのことが好きってことわからせてあげるね。」

「ちょっと待て!どういう意味だそれ?!」

「内緒!」


ブラックな笑みを浮かべてククールに微笑んだ。
ククールは顔を赤くして、言葉が出ないらしい・・・。
可愛いな・・・・・



早くククールが俺の気持ちに気づいてくれますように・・・・


エイトは空に祈った。



それと、早くあの人をことを忘れてもらわないとね。
いつまで縛られてるんだ?


「じゃ、ククール僕は先に行ってるね。」


エイトは先に身支度を済ませ、部屋を後にした。




「・・・・・ふふ・・」



「おはよう。エイト!なんか嬉しそうね。」
「ああ、ゼシカおはよう。うん、いいことがあったんだ。」
「そうなの、それにしてもククールヤツ遅いわね・・・。何してんのよ?あいつ」
「もう少しかかると思うよ。」


きっと出るに出られないから。
部屋から出てきて、目があったらなんて言ってやろうか?


エイトはこれからの事を考えて嬉しくなった。










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主ククです。
この組み合わせはなんとも可愛いです。
主人公の片思いでもいいですけど。

このSSの十分主人公の片思いですけどね。






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