星の金貨   5





嬉しいとユーフェミアは言った。
ルルーシュの腕の中にいられて、一人の女としてこうして抱きしめられている事が・・。


「ルルーシュ、私とても嬉しいです。」

「僕もだ・・。ユフィ。」


初恋の人の体はとても温かかった。
髪の毛から微かにいい匂いがした。


手でとかすとサラサラと指の間を通り抜けていく。
ルルーシュの腕の中に居るのは、確かに幼い頃淡い恋心をいた居ていた女の子が居る。
愛らしかった少女は、蕾を大輪の花が咲いたように綺麗に成長した。
もし、自分達が兄妹じゃなかったら、一体どうなっていただろう。

そもそもこんな感情を抱かなかったかもしれない。



「ユフィはとても温かいな。」

「ルルーシュもです。鼓動がとてもハッキリと聞こえる。」

「それはユフィも同じ事だよ。」


互いが互いの心音を感じあう。
脈を打つ強さと速さが、普段と違う事なんてさっきから自覚している。
ルルーシュが居るから、ユフィがいるから。

きっとこんな風になってしまうのだろう。



「ルルーシュ・・・お願いがあります。」

「なんだい?ユフィ・・。」






「キスをしていただけますか?」



挨拶のキスでもなく、触れるだけのキスでもなくて、

男と女のキスがしたい。




ルルーシュはいいよと言うように、微笑んだ。
顔が近づく。


ユーフェミアは瞼を閉じる。
唇にルルーシュの唇の感触が触れる。


触れるだけのキスじゃイヤといったのに、ルルーシュは触れるだけのキスしかしてこなかった。
一度放して文句を言おうかと思ったが、そんな事は出来なくなった。


ユーフェミアが望んだキスが振ってきたからだ。


初めてのキスはルルーシュがよかった。
その願望が叶って、ユーフェミアの腕はルルーシュの首へと回る。

段々深くなるキスに、ユーフェミアは酔っていた。
ずっとこうしていたい。
ルルーシュも同じだったのか、ユーフェミアを抱きしめる力が次第に強くなった。


そのまま動いて二人でベッドに寝転んだ。
その拍子で、口と口が離れてしまった。


「・・・これでいいのか?ユフィ。」

「えぇ・・・ルルーシュ。」


顔を見合わせて二人は笑った。
昔、アリエスの離宮で、ユーフェミアとルルーシュ、ナナリーにマリアンヌと星を見たときと同じ格好で寝転ぶ。
手は繋いで天井を見つめた。

目に映るのは満点の星ではなく、規則正しく並ぶ部屋の天井の壁だ。


「ルルーシュ。」

「ん?」

「もっとして下さい。」

「いいよ。ユフィ。」


ルルーシュはユーフェミアの上にまたがる。


「どうしました?ルルーシュ。」

「・・・なんかとても罪悪感というか・・・」

「もう!ルルーシュッたら!」

「ごめんごめん。機嫌直してくれ。」


ルルーシュはユーフェミアの機嫌を直すように、もう一度甘いキスを施した。
もう一度すれば、ユーフェミアの機嫌は嘘のように直る。
現金なお姫様だなとルルーシュは笑った。

でも、この状況は後ろめたいのは確かだ。
今夜はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに戻ると確かに言った。

子供の頃、ユフィに恋心を抱いていた自分に戻ると。


でも・・・


「ルルーシュ・・・」


ユーフェミアが呟いた。



「キス以上のことは出来ませんか?」



同じ事をユーフェミアも思っていた。
血は確かに繋がっている。でも、半分しか繋がっていない。



「ユフィ・・・さすがにそれは・・。」


ルルーシュは顔を背ける。

「そうですよね。なら、一晩私を抱きしめてください。この前のように・・。」


「分かった。ユフィ。」


ルルーシュは下になり、ユーフェミアを上に乗るような形をとった。


「フフ・・・これからルルーシュの顔がイッパイ見れるわ。」

「言ってろ・・。ユフィは軽いな。」

頭を撫でて、慈しむ。
ユーフェミアも頭を撫でられて、笑顔になる。
そして、ルルーシュの胸に顔をうずめた。


「ずっと夢見てました。ルルーシュの中に居られて今幸せです。」



「あぁ。俺も・・・さぁ眠れユフィ。」


「お休み、ルルーシュ・・・。」


「お休み・・・・ユフィ。」





目が覚めたら、もう二人の時間は終わる。

明日になって、日が昇ればサヨウナラだ。






ユーフェミアはブリタニアの皇女
ルルーシュは反ブリタニア勢力のテロリスト



根本的に血が繋がっている時点で、二人は互いに結ばれる事はないと思っている。
この一夜だけでも、思いあえて良かったと思った。



ルルーシュは眠れなかった。


コレで本当に良かったのだろうか?
一度心を開くと情が沸く。

今度敵として現われたら、果たして自分は感情を捨て切れられるのだろうか?

それを考えるといっそこの場で・・・・


「駄目だ・・・クソ!!」



無垢な寝顔のユーフェミアを見て、毒気を抜かれる。
大切な義妹
初恋の女の子


「ユフィ・・・どうしたらいい。僕は・・・俺は、もう戻るわけにはいかない。」



夢の時間はもう終わり。


戻れたらいいね。とは確かに言った。
でも、戻りたいとは言ってはいない。


できればもう戻りたくは無い。


「君の事は好きだ。妹としても、女の子としても・・・でも、俺は・・・。」



キチンと受け入れられる勇気も無いのだ。


「だから、ユフィ。君は俺の事など忘れて幸せになれ・・。」



ルルーシュはユーフェミアのおでこに、そっとキスをした。

名残惜しむように、髪の毛を撫でて抱きしめながら眠った。


ユーフェミアがまだ起きていて、ルルーシュの言葉を聴いていたとも知らずに・・。

ユーフェミアの目尻から、涙がうっすらとこぼれていた。















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