星の金貨  9





一度、ユーフェミアの案はルルーシュも考えた事があった。
しかし、あまりの食い違いさに、断念した計画だったのだ。

一部の土地に特区として独立させる計画。
それは与えられた自由。
果たして与えられた自由は、本当に自由なのだろうか?


ブリタニアの支配下に置かれた特区なんて、すぐに失敗するに決まっている。
理想と夢しか見ていないユーフェミアに、ルルーシュのような現実を見つめる事を求めても仕方ない。



そんな葛藤も束の間、経済特区日本の計画は順調に進んでいるのだ。
ユーフェミアは正当なお姫様。
ルルーシュは顔を隠したテロリスト。

リスクを考えてどちらかを支援するか?と聞かれたら、間違いなく前者を選ぶだろう。
そうやっていつもいうtも欲しかったものは、無垢なる無知者に奪われていった。















黒の騎士団内でも特区のことについて口論が飛んでいた。
参加するべきだの。
それじゃ騎士団の存在意義がなくなってしまう。

特区に参加すれば、武装を解かなきゃいけないのは必須。
参加しなければ、平和を否定する存在としてと信用がなくなる。
どっちの転んでも黒の騎士団は敗北なのだ。




「いかがしますか?ゼロ。」

「そうだな・・・。」


幹部達がそれぞれ意見を言い合っている中、ディートハルトがセゼロに意見を求めた。
さっきからゼロが何も言わないので、ディートハルトも意見をまとめるのに困ったのだろう。




「まだ完全には信用できない。しかし、真意を確かめる必要がある。
 一度式典には、私が単独で顔をだそう。他のものは遠くで待機だ。」


罠の可能性も有るとゼロは偉く慎重だった。



「あと、ディートハルト。」

「なんでしょうか?ゼロ。」

「あとで話がある。」

「分かりました。」























テレビのニュースで、特区の参加者の日本人は、20万人を突破したと流れていた。
それだけ、日本人もこの特区に希望を持っているのだろう。

慈愛の象徴ともいえる皇女の立案だ。
安心して参加できるのであろう。
その横に、彼女の日本人の騎士枢木スザクがいれば、尚の事だ。


そして、ユーフェミアはゼロの素性を問わないときている。
これが日本人の心を動かしたといっても過言ではない。


ブリタニアの皇女がが、ゼロを受け入れただけでもニュースなのだ。
そろそろ、経済特区の設立が始まる日取りも近くなった。














富士山周辺の土地は随分変わった。
行政特区宣言から、嵐のように土地整備が進んでいく。
今回式典の為に作られたホールが、真新しく白く輝いていた。


ユーフェミアはルルーシュが来てくれるかどうか不安だったが、大勢の日本人に恥じぬように今日は頑張ろうと思った。
初めが肝心だ。
今日来てくれなくても、これから始める努力でルルーシュもきっと来てくれるだろう。
希望を胸に、壇上に置かれている椅子に座った。

ゼロの為に用意した椅子は、空席のままだった。


ダールトンが時間ですと、声をかけたその時。
空から一つのナイトメアが見えた。

ゼロだった。




「来てくれたのですね。」






「ようこそゼロ!経済特区日本へ!」


両手を大きく広げて関係のポーズをとった。

ルルーシュはガウェインで近くまで浮遊する。
まだルルーシュは完全に特区へ参加する訳ではないらしい。


「ユーフェミア、折り入って話があります。」

「私に?」

「はい。二人だけで。」











ゼロは金属探知機の検査を受けて、二人で別室に入った。
フーフェミアの側近は危険すぎると反対したが、側近達の言葉を無視してゼロと二人だけになった。
ユーフェミアにとって、ゼロと二人だけになるのが、なによりも幸せだったからだ。


部屋に入るなり、ルルーシュは部屋の電気を全てオフにした。


「信用ないわね。カメラならオフにしてあるのに・・。」

「どこかの帝国のせいでずっと逃げ回っていたからな。」


嫌味を言ったつもりだったが、ユーフェミアには分からなかったようだ。

ルルーシュは服のかなに忍ばせておいた、拳銃をユーフェミアに向けた。
これは検知器では分からないと。


「私を撃つの?ルルーシュ。」

「いいや、撃つのは君さ。ユフィ・・・。」

「え?何をいってるの?」


突然のルルーシュの意味の分からない言葉。
ユーフェミアは理解に苦しんだ。
撃つのはユーフェミア? 何を言っているのだろう?
どうして、好きな人を撃たないといけないの?


「救世主は二人もいらない。・・う・・・!!」

ルルーシュの瞳はいつもの優しいものではなかった。
見たことのない嫌な瞳。
何がルルーシュをこうさせてしまったの?


「ルルーシュ?!」


左目を押さえつけて倒れそうになったのを心配して手をとったのに逆に拒否されてしまった。
なんで?
どうして?
私なにかしてしまったの?


ルルーシュ・・・?



「同情はいらない。そんな施しはいらない。俺は自分で・・・!!その為には穢れてもらうぞ!ユーフェミア・リ・ブリタニア!!」

「その名は返上しました。」


ポソと言った言葉は、あまりにも無視できるような内容では」なかった。
名を返上した?それは・・・


「いずれ、本国から発表があると思いますが皇位継承権は返上しました。」



「まさか・・・ゼロを受け入れたから?」

「私のワガママを聞いてもらったのだから、それないの対価必要でしょ?」

「俺の為か・・・?」

「・・相変わらずの自信家ね。でもルルーシュの為でもあるし、・・ナナリーのためでもあるの。」

あの日、学園祭の日。
ユーフェミアはナナリーと再会して、二人で話したといっていた。
その時決心がついてしまったと・・。
そして、ユーフェミアは本当に大切なものは何一つ失っていないと・・。



ユーフェミアは皇女ではなくなったのに笑っていた。
とても幸せそうに今笑っている。
全く馬鹿には叶わない。


「全く・・・君はバカだよ。大馬鹿だ。」

「そりゃ、ゲームもお勉強もルルーシュに勝った事は一度もないですけど・・・。」


「・・・・コーネリアは?」

彼女には唯一の姉妹の姉がいる。
よくコーネリアが許したものだ。

「だって、もう会えなくなってしまったわけじゃないし・・・それに、タダのユフィなら、一緒にやってくれる?」


ユーフェミアの眼つきは真剣だった。
そして、手をさしのべる。
ユーフェミアは笑った。

「そういえば、君は皇女である前にただのユフィだったな。」

今思い出して。
ユーフェミアは皇女である前に、普通の女の子だ。
もうすっかり忘れていた。





「全く君は、俺達兄妹にとって最悪の敵だったよ。いいだろう。この特区を生かす形で対策を練ろう。」



ああ。部下にはならないからな。と言葉をつけたし、ルルーシュとユーフェミアは硬い握手をする。
ユーフェミアは嬉しくて、握手が終わってしまったらサイドルルーシュに抱きついた。

「嬉しい!!」

「ユフィ、あまり長い時間こうしてると、特区に参加している人たちを待たせてしまうよ。」

「もう少しだけです。またこうしてルルーシュとこうできて私は・・・。」

「ユフィ・・。」


「でも私って、信用なかったのね。私がルルーシュに脅されたからって撃つ事はないわよ。」

「あぁ・・それか・・。」


フッと笑った、ルルーシュは一歩下がった。
これからのことを見据えて、ユーフェミアには話していたほうがいいだろう。
きっと、この力は今は邪魔になる。

ユーフェミアが受け入れてくれるかどうか、分からないが理解者は多くいたほうがいい。


「俺が本気で命令すれば、誰も逆らえないんだよ。」

「またまた・・。」

冗談をいっているのか、ユーフェミアはヘラヘラ笑っている。
そんな事あるはずがないと。

「いや、ソレができてしまうのさ。俺を撃て、スザクを解任しろ・・・ああ、例えば日本人を撃て・・・とかね。」




「!!!」




ユーフェミアの様子が一瞬で変わった。


「いや・・いや・・・殺したくない!!!」



震えて、まるで何かに逆らっているような態度・・・
どうした?


「まさか・・・?!」


ルルーシュのギアス能力も、マオのように制御が出来なくなってしまっているのか?



さっきの左目の痛みは・・・まさか・・!!!



「そうね、日本人は殺さないとね。」

「ユフィ!今のは違うんだ。取り消せ。・・・・待ってくれユフィ!!」


ユーフェミアはルルーシュの持っていた拳銃を奪い、一人で式典の祭壇に戻ってきた。


そうして、無邪気な声で静かにいった。



「日本人と名乗る皆さん、お願いがあります。死んで頂けないでしょうか?」




















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