隣人は密かに笑う。     10





「よかった。ルルーシュ!探したんだよ!」


しまった。C.C.はまだ部屋の中にいる。
ルルーシュは急いでC.C.を隠れさせようとしたが、もうこの部屋にはルルーシュとスザクしかいなかった。


「スザク・・。」

「ルルーシュ・・・。」


スザクはルルーシュの代わり映えに目を見開いた。
全裸で傷だらけ、痣もあれば、男特有の嫌な匂いまでする。
全身にこびりついて、その姿にスザクは怒りを覚えた。



「スザク・・・悪いんだが俺はここから出られない。」

「どうして?」


チャリンとルルーシュは音を立てて、己を縛り付けている鎖を見せた。
頑丈にできたそれは、簡単には引きちぎれないだろう。
囚人用に造られたものと少し似ていた。


「・・・いくらお前でもこれを取るのは無理だろう。」

「ルルーシュ、その鎖ここに置いて。」

「どうするんだ?」

「で、出来る限り離れて。」

「この状況で、どう離れろと言うんだ?」

「こうするんだよ。」



スザクは、足を思いっきり上げて、踵を鎖めがけておろした。
そうすれば、鎖はパリンと音を立てて粉々になる。
踵おとしというやつだ。


「ホラ、とれた。」

「・・・フン。あいつはさっき出たばっかりだから暫くはこない。」


ルルーシュはヨロヨロとバスルームに向かった。


「ルルーシュ。そんなの後でいいから先にここへ出よう!」

「うるさい。俺は気持ち悪くて堪らないんだ。今ならお前がいるからいいだろう。見張ってろ!」

「・・分かったよ。」




その後、ルルーシュの予想を裏切り、ルルーシュを監禁していた男が入ってきた。
部屋の様子の可笑しさに気付き、スザクを見つけると逆上して切りかかってきたが、
スザクに叶うハズもなく、男は警察に連行された。

スザクはミレイに連絡を入れて、ルルーシュの事をお願いすると
スザクは一緒にパトカーに乗っていった。
事情聴取はスザクが引き受けたようだ。










それからルルーシュは念のために一週間の入院生活を送った。

この一週間、ナナリーには泣かれ、
ミレイには皮肉を言われ、
スザクは暇があれば尽かさず病院に来た。


「そういえばスザク。」

「何?ルルーシュ。」

「お前、何故俺があんな所にいるろ思ったんだ?」

「えっと・・・勘かな?」

「勘?」

「そ、ルルーシュを探してるときにね、なんかねここの道だっておもったんだ。」

「・・・そうか・・。」

C.C.と一度接触もしている。
きっとC.C.辺りが、スザクの脳に直接刺激でもしたのだろう。


「・・でもあいつは、本当に許せないよ。」

「もういい。過ぎたことだ。自業自得だしな。」


ルルーシュを監禁していた男は、貴族の従者だった。
賭けチェスをしている所を、惚れられてアッシュフォードの制服を着ていたために足が付いてしまったのだ。
まさか、クラブハウスに住んでいるまでバレて、セキュリティまで通り抜けるとは思っても見なかったのだ。
このストーカーは、貴族にその頭のよさを買われ遣ったらしかった。


「でも・・。」

「もうその話はやめてくれ。思い出してしまう。」

「分かった。明日はルルーシュの退院パーティーがあるからね。ちゃんと出席してよ?」

「分かってるって。」






退院当日、スザク、ミレイとナナリーと咲世子が迎えに来てくれた。
学校には事件に巻き込まれて怪我を負った以外は、内密にしておいた。

クラブハウスへ戻ると生徒会の皆が待ってくれていた。
リヴァル、シャーリーは本当に心配してたみたいで、戻るとすぐに二人に抱きつかれた。
やっと帰ってこれた。こんな言葉が一番しっくりしたと思う。

隅っこの方にカレンの姿も見えた。
黒の騎士団はC.C.がうまやっているだろう。
とりあえず、後で扇あたりにでも連絡を入れてみようとルルーシュは思った。

ルルーシュが病み上がりという事で、退院祝いもそこまでハメをはずることなく
軽い立食パーティー形式ですぐに終わった。









スザクは夜、ナナリーからの申し入れで泊まることになった。
ボディーガードお願いしますねと、言われてしまえば断るなんて行かない。
今日は軍の仕事も休みだった。



「まったくナナリーも、あいつはもう捕まったんだから・・。」

「仕方ないよ、ルルーシュ。君が入院してる間、僕も咲世子さんも会長もナナリーを落ち着かせるの大変だったんだよ。」

「そうだったな・・。ナナリーにはすまないことをした。」

「だから、暫くはナナリーのいう事ちゃんと聞かないと駄目だよ。」

「肝に銘じておくよ。」

二人ともお風呂から上がって、リラックスしていた。
ルルーシュの部屋のベッドに、布団が敷いてあった。
客間ではなくてルルーシュの部屋に泊まれと、いうことなのだろう。


「で、僕が布団に入ればいいのかな?」

「・・・客を床に寝させるわけにはいかない。」

「君はまだ体調は万全じゃない。」

「もう治っている。だから退院したんだろう。」


「どうして・・君は!!」



スザクはルルーシュをベッドに押し倒してしまった。

「君はどれだけ僕が心配していたのか分かっていない!!」


如実に怒りを表すと、ルルーシュの様子が可笑しくなった。
全身が震えている。
顔もさっきまで、お風呂から上がって血色のいい肌色をしていたのに
一瞬で青白くなってしまった。

何か小声でしゃべっている。



「・・いや・・いやだ・・はなせ・・ふれるな。」


触れる事を拒絶する言葉を、震えながら必死で口を動かしていた。
スザクはしまったと思ったが、もう遅かった。
ルルーシュは今のスザクの行動が、監禁されていた時の事と重なってしまっている。
完全に、トラウマとなってしまったのだ。

「ゴメン、ルルーシュ・・。」


「・・」


「ルルーシュ!!」


「は!・・す、すまない。」

「いいんだ。今のは僕が悪かった。」


「はは・・みっともないよな。男に・・・。」



今までだって男からの告白はされた事があった。
迫られたりという経験も、少なくはない。
いつも冷たくあしらって、撃退する事が出来たのだ。

今回は一方的な暴力によってそんなささやかない抵抗は無残にも粉々にされた。


「お前が来てくれなかったら・・・。」

「ルルーシュ・・・。」


スザクはルルーシュにまた触れそうになったのを、慌てて一歩身を引いた。
ルルーシュがノーマルだという事は知っている。
潔癖で、人とあまり触れ合うのは好きじゃない。
十分理解していたつもりだが、ちっともわかっていなかった。


「スザク・・お前は遠慮する事はない。少なくとも生徒会のメンバーはそこまででもない。」

「ルルーシュ・・。」

「ただ・・・さっきみたいのはやめてくれ。」

「分かった。でも・・本当に無事でよかった。」



スザクはルルーシュの体をそっと抱きしめる。
どうやら拒絶の色は見えない。
よかった。



「大丈夫だよ。ルルーシュ・・・今度は僕が絶対守ってあげるから。」

「ぁぁ・・・。もう守ってもらう価値なんてないけどな。」

「僕はどんなルルーシュでも好きだよ。」

「汚れててもか?」

「ルルーシュは綺麗だよ。」






口では好きだとか、愛だの言って結局たどり着く場所はあの男と同じだ・・・。
なんて皮肉だろう。


ルルーシュはゆっくりとスザクの背中に腕を回した。
信頼されているのに、スザクはそれを壊す事ばかり考えていた。




あぁやっとルルーシュを手に入れた気がする。
潔癖なルルーシュ。
こんな僕を汚いと思うだろうか?


誰かに汚されてしまったルルーシュ。
でも一回そうなってしまえば、僕が同じ事をしても平気でしょ?
また誰かにされるんら、友達のスザクにって・・・思ってくれればいいんだけどな。


「スザク・・・?」


スザクの様子がおかしいと気付いたルルーシュは、一回離れてスザクの様子を伺った。
スザクはなんでもないよと、いつもの笑顔を振りまいて、もう寝ようとルルーシュを寝かしつけた。




暗くなった部屋で、ルルーシュからは規則正しい寝息が聞こえる。


「・・・ゆっくり君を落としてあげる。逃がさないよ。」







本当印疑うべき隣人は、すぐ近くにいた。














-------------------------END-------------------------

黒スザクで終わる。
当初、ストカーはスザクにしようか迷いましたが、違う人にしました。
なんかその方がしっくりくるかなって思ったので・・・

ストーカースザクエンドはもう書く気力がありません。
そうなったら本気で黒スザになりそうな・・・
バレをすれば、黒スザクに完全にルルーシュが堕ちてエンドみたいな感じに持っていく話しですね。


しかし、ルルーシュはきっと綺麗だから、
男からの告白や、男から迫られてリ、賭けチェスで体を狙われたことあるんじゃない?
っという妄想からキタこの話。
ストーカーの一人や二人いても、おかしくないよね!の勢いだけでかきました。

やっぱりこの連載も終わらせるのに、1年かかった(汗)



BACK