日食の世界





スザクの家に居候が来ることになった。
日本人ではなく、ブリタニア人。

しかも皇族の血を引く兄妹。


お気に入りの土蔵の部屋を、兄妹にあてるつもりらしい。
スザクはそれが気に入らなく、初対面の時、妹に大嘘をついている兄ルルーシュに殴り飛ばした。
さすが皇族、お綺麗に育っているのか、ひ弱かった。

しかし、ルルーシュが妹ナナリーについた嘘は、目の見えない妹を気遣った言葉と分かると、スザクはバツが悪そうに逃げた。
初めての出会いは最悪。












少し日が経ち、ルルーシュとナナリーの部屋が移動になった。
ちゃんとした屋敷の中に部屋を置くことになったのだ。

どういう風の吹き回しなのか?スザクにはわからったが、二人の待遇がよくなる事にスザクは少し安心した。
その頃には、スザクとルルーシュはお互い笑い合う事が出来ていたのだ。



「スザク・・・どこに行くんだ?」

「ルルーシュ!今日は稽古のある日なんだ。」
「・・・そうか・・だからお前なんなに強いのか・・。」

「ルルーシュやる?」

「いい・・・僕はナナリーのところに居なきゃいけないし・・。」


ルルーシュはスザクの強さの理由を知り、納得したようだった。
スザクはまた帰ってきたら遊ぼうと、約束して、枢木神社の下にある藤堂道場へ走っていった。


「ん・・?」


ルルーシュはスザクを見送ったと、後ろに日本国首相のゲンブの秘書の男が立っていた。
いつもはこんなところに居ないのに?
秘書はルルーシュに用があるようだった。

「ルルーシュさん。先生が呼んでいます。ついてきて頂けますか?」

「はい・・・。」


きっとブリタニアと日本の外交の話しになるのだろう。
ルルーシュは幼いながらも、その頭の切れは大人顔負けだった。
専門用語を使い分ける話は、スザクにはチンプンカンプンで、ゲンブは目を見開いた。

日本はみんな頭が固い。


ルルーシュはゲンブの部屋に入っていった。
いつもなら秘書も同席するのに今日は居ない。
他にも議事録をつける人や、立会人みたいな人が一人居るはず。

なんだろう・・ルルーシュの第六感は警戒を呼びかけている。
”今すぐ逃げろ”と・・・・


「あの・・・用というのは・・・なんでしょうか?」

「あぁ・・ルルーシュ君・・・ちょっと付き合ってはくれぬか?」
「はぁ・・・。」


「大人の遊びと言うものに・・。」



「え・・・・!」




















「只今〜。」

稽古が終わったスザクは、すぐにルルーシュの部屋へ行った。

「あれ?ルルーシュ・・。」

ルルーシュは布団の中で、苦しそうにうなっていた。

「ルルーシュどうしたの?」
「おや、スザク坊ちゃん。ルルーシュ君たら急に熱出しちゃって・・。」

使用人の女性はスザクに理由を説明した。
せっかく遊ぼうと思っていたスザクは、しゅんと肩をおろした。

「大丈夫ですよ。坊ちゃん、ただの風邪ですから・・・明日には治ります。」
「そうか・・お大事にね。ルルーシュ。」

「あ・・・りがと・・・スザ・・ク。」


ルルーシュの笑顔がどこかしらぎこちなかった。
きっと風邪のせいだろうと、スザクは思い、ナナリーのことをルルーシュに頼まれたので、ナナリーの様子を見に行った。

















「あれ?ルルーシュ。その赤い痣どうしたの?」

「え?」


三人で敷地内の林で遊んでいるときだった。
川ですこし涼もうと、薄着になった。
スザクはルルーシュの肩や鎖骨についてる痣に気付いた。

「あぁ・・これは虫に刺されたんだ。蚊というのはイヤだな。痒くてしかたない。」
「ははは・・・ルルーシュは肌が白いから、余計目立って見えるよ。」
「そう・・だね・・。」

「ルルーシュ?」

「いや、なんでもない。わぁ・・川の水冷たくて気持ちいい。」
「わ!本当だ。ナナリーこっちにおいで・・・。」
「はい、お兄様、スザクさん。」











その日の夜だった。

スザクはルルーシュとナナリーと一緒に寝ようと二人の部屋に行ったが、布団にはナナリーしか居なかった。

「あれ?ルルーシュトイレにでもいったのかな?」


スザクはルルーシュを探しに、ここの部屋から一番近いトイレでルルーシュの姿を探したがいなかった。
どこにいってしまったのだろう。
それにルルーシュの様子が最近おかしい。

なんか周りの大人を怖がっているような・・。
それは立場としては仕方ないのだが、いくらなんでもおかしい。
大体、本当に怖いのなら、初めからそうなるに決まっている。




「・・・!!〜〜!!」


ルルーシュを探すのを諦めて、自分の部屋に戻ろうとした時だった。
子供の声が聞こえた。
紛れも無いルルーシュの声だ。

でもなにか様子がおかしい。

スザクは恐る恐る、障子の襖を音を立てないようにそっと、ほんの少しずらした。


「!!!!」


見なければよかった。


ルルーシュが父親に馬乗りにされていた。
幼いスザクにもこれが性的暴行というのが良く分かる。

惨い。


足が震えて、逃げ出すことも、助けることもスザクには出来なかった。
スザクはその日、なんでルルーシュたちの部屋が移動になった理由を知った。


















その日はとても暑かった。
スザクとルルーシュは二人で、丘の上まで遊びに来ていた。
スザクは簡単に、低い崖を上るが、ルルーシュはもたついていた。

スザクはルルーシュに手を差し伸べて、やっと上りきったが、今日は何かが違っていた。

虫たちがいない。
鳥が逃げるように集団で羽ばたいている。



富士山の見える方向から無数の、軍機が飛んでいた。



ブリタニアの宣戦布告だった。




二人はすぐさま屋敷に戻り、ナナリーをつれて逃げた。
外は轟音が鳴り響く。
途中ルルーシュとナナリー、スザクは離れ離れになってしまった。
スザクは首相の嫡子だ。安全なところへと大人が連れて行った。

ルルーシュとナナリーはゲンブのいるところへと連れて行かれた。


ゲンブはブリタニアと戦争をするつもりらしい。
新型の兵器を持ってきた超大国に勝てるわけがないのに!!
それに、ルルーシュが父ゲンブのところに連れて行かれた事を聞いて、スザクは血の気が引いた。

思い出す二人の場面がフラッシュガックした。

助けないと・・・ルルーシュを助けないと・・。




そう思うとスザクは周りの大人の反対を押し切って、外へと出た。





「父さん!!ルルーシュ!!」


「スザクさん!」
「あ、ナナリー・・良かった無事だったんだね。」

ナナリーは枢木神社に戻されていた。
きっとルルーシュもまだここに居るのだろう。

スザクはナナリーの姿を見つけて、安心したが、ナナリーはルルーシュが居なくなっていることに酷く混乱している。

「スザクさん・・お兄様が・・・」
「あ・・そういえば・・ルルーシュは?」


「その・・・枢木首相が話があるって・・さっき男の人に呼ばれていってしまいました」

きっと父の秘書だ。
行き先はひとつしかない。
ゲンブの部屋だ。







「ルルーシュ!!」


スザクは勇気を振り絞って、戸をあけた。


「な・・スザク!!なぜお前が・・・!!」
「え・・スザ・・・」


スザクの予想通りだった。
ゲンブはルルーシュを組み敷いていた。

そして横には・・・枢木の家宝の一つである、由緒正しい日本刀があった。

ルルーシュを殺す気だ。



「父さん・・・なんで・・・?」


「・・・お前には関係ない。元居た場所へ戻れ。それに・・・ルルーシュとナナリーは見せしめに・・・」
「やめろ!!」

スザクはゲンブからルルーシュを引き離そうと、たてついたが、大人と子供すぐに引き離されてしまった。

「コレは大人の事情だ。子供が口を挟むものではない。」
「子供が関係ないから、ルルーシュを放せ!」


無我夢中だった。



ルルーシュを助けたい一身だったのだ。
気がついたら手にナイフを・・・・・

そして、それを父親に振りかざした。


ナイフは抜かなかったため返り血は、浴びずに済んだ。


ゲンブが倒れるのを見たスザクは、呆然として自分のとった行動に涙が出た。

「あ・・・僕は・・・。」

混乱しているスザクに、ルルーシュはスザクの前にたった。


「泣くな・・・スザク・・。」
「ルルーシュ・・だって・・・俺・・父さんを・・。」

「いや。殺したのは僕だよ。」
「ルルーシュ・・・。」

「僕は何度も頭の中で、枢木首相を殺していた。だから死んだ。だからやったのは俺だよ。」
「ルルーシュ・・・。」

「スザク・・・・君はもう行った方がいい。」
「でも!!」

「スザク・・・お願いだ。スザクは・・・僕の願いを叶えてくれた。今度は僕が君を助ける番・・・だから行って。」


「ルルーシュゥ・・・・。」


このままでは二人とも見つかる。
断固としてルルーシュはここを動かなかったため、スザクは仕方なく今居る場所から離れた。


「ルルーシュ・・・俺・・君にいつかきっと・・・。」

「・・・ありがとう・・・スザク・・・さよなら・・。」



涙を流しながら笑うルルーシュはとても綺麗だった。
スザクは何もしてあげることも出来ずに、もと居た場所に走っていった。
涙が止まらなかったけど、周りに見つからないようにスザクは頑張って走った。







それから枢木ゲンブは自決という形で報道され、日本は敗戦した。


それからルルーシュとナナリーに会うこともなかった。



七年という歳月はとても長い。
この七年、スザクの心は今もあの日に囚われたまま、動けずにいた。

もうずっと薄暗い世界を歩いているような感覚。
白夜の世界を彷徨っている。

スザクは一生この暗い世界を歩き続けなきゃいけない。




一度嘘をつくと、それを隠すために多くの嘘をつてしまう。
あぁそうだなとスザクは納得した。

父親殺しを隠すために、親友と嘘をついた。
それは今でも現在進行形で続いている。


ルルーシュ・・・一体君は無事なのだろうか?
なんであの時、ルルーシュをつれて逃げなかったのだろうとスザクは後悔した。
そうしたら、ルルーシュを助ける事が出来たのに。

助けるどころか、逆に助けられるなんて・・・・


ねぇ・・ルルーシュ会いたいよ。


君を闇の世界に引きずり込んでしまったけど、今度は僕がルルーシュを助けるから・・・。
だから・・・お願い・・
今度は僕がルルーシュを助けるために・・・彼に・・・



彼に会わせてください。


















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書いてしまった!
16話をみて何この白夜行設定は!!と叫び突発アップ

ゲンブ×ルルーシュがかけて楽しかったです←おい!
スザクがリョウさんで、ルルが雪穂さんです。
あの物語大好きなんですよ〜。
この二人まさにぴったり!って感じですね。

オリキャラで雪穂を出してもいいな・・・と思っていたり
その場合スザクの片思いの相手になったり!
それだと長くなるのでやめました。

でもかいてみたい・・・!!
オリキャラ雪穂の入った白夜行パラレル・・・・








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