失われし王子様 ことの始まりは、任務からだった。 山中にいるとある動物の捕獲だった。 結構凶暴で、捕まえるのが大変だった。 カカシは「自分達でやれと」木の上で毎度のごとく本を読んでいた。 指示を出すのはサスケ ナルトはイチャモンをつけたが、サクラがとめて喧嘩は免れた。 そして今、作戦は順調に進み最後の仕上げまで来ていた。 しかし、思いがけないアクシデントが起こった。 その動物は思いのほか体力が残っていた。 動物は、近くにいたサクラをターゲットにして襲い掛かってきた。 サクラはそれに気づくのに時間がかかり 「・・・・・!!!」 「サクラ!!」 「サクラちゃん!!」 -----------------------!!!----------------------- 目を開けたサクラには何の外傷もなかった。 不思議と思った矢先 「サスケ!!!」 ナルトの大きな声にハッとした。 ナルトの目線の先を見ると・・・・・ 「サスケ君・・・!!」 サスケはサクラをかばい頭から血をだして倒れていた。 カカシに急いで知らせて木の葉病院まで搬送されたが、2〜3日過ぎてもサスケは目がさめることはなかった。 入院して5日目、サスケの目は覚める。 サスケの第一声はこれだった・・・。 「お前達・・・誰だ?」 「脳波に少し異常が出ている」 それが医師の診断だった。 サクラをかばった時に頭を強くぶつけて記憶が混乱しているとの事 すぐに戻ればいいのだが・・・ 「私は春野サクラ、こっちは・・・」 「うずまきナルト!こっちが俺達の先生のカカシ先生だってばよ!」 「そうか・・」 サスケはサクラとナルトに周りのことを教えてもらっていた。 「えっと・・・サクラとナルト・・・カカシ先生だな・・」 「なんか、サスケに先生って言われるのは初めてだな・・」 「そうなのか?」 サスケはきょとんとしている。 「そうそう、お前ってばいっつも先生のこと呼び捨てにしてたってばよ。」 「へえ・・・・」 サスケはカカシの事を見る カカシはなんか間の抜けた目をしてサスケを見つめ返す。 「まあそれはこれでいいとして俺は用があるから、ナルト、サクラ。サスケの事頼むぞ。」 カカシは煙を巻いて消えていった。 「俺ってば、イルカ先生と約束があるってばよ!俺も帰るじゃあなサクラちゃん!サスケ!」 カカシとナルトが帰ってサスケとサクラの二人きり。 「なあ、サクラ・・・」 「なに?」 「俺の・・・家族っていないのか?」 「・・・・・」 サクラは返答に困った。 正直に話すべきなのか?どうごまかず? 「みんな・・教えてくれないんだ。」 「サスケ君はね・・・両親は他界してるんだ。」 これは紛れもない事実だ。 「そうだったのか、だから皆だまったままだったのか・・」 今のサスケは何も知らない 自分が何者なのか 過去に何があったか 復讐とか野望とか たった一人の肉親のこと 全てを知らない 「なあ、じゃあ俺はひとりなのか?親戚とか・・・・」 「サスケ君にはお兄さんがいるんだよ。ただお兄さんは、木の葉にいなくて外に出てるんだ。」 「そうなのか・・・」 サスケの口調は安心しきっているような質だった。 肉親がいることに安心している。 「サクラは俺の兄というのに会ったことあるのか?」 「え・・ないよ。」 「へえ・・・そうか・・・・早く会いたいな・・・その兄さんに・・・・」 「!」 サクラはサスケの顔を見て泣きたくなった。 普段何にも表情がないサスケがくるくると感情を出している。 「今・・・海外任務だから・・・・長いからまだ時間かかると思うよ・・・」 「なんだ・・・残念だ。」 其のハニカンダ微笑に嘘をついていることにサクラは心がちくりと痛んだ。 だって、真実を話したら今のサスケはどんな顔をするのだろう・・・・ 記憶が戻るまでは何も知らない ただの・・・ 木の葉の下忍としての“うちはサスケ”でいて欲しい 笑っていて欲しかった。 ずっとこのままになってしまえばいいなんて思うのは・・・我侭ですか? それから数日はサスケの病室にサクラが遊びに来て楽しい日々が続く。 少しして、記憶は戻らないが7班は任務に入る。 身体能力は変わらない。体が覚えている。 変わったのは、内面。 いつもクールなサスケが笑ったり、はしゃいだり はじめは、ナルトもカカシも目を疑ったが次第に慣れていった。 「ねえ、カカシ先生?」 「なんだい?サクラ?」 任務の休憩中向こうでサスケとナルトが組み手をしている中 サクラはカカシに珍しく話をかけてきた。 「サスケ君の記憶ってもどるの?」 「さあね。医者もわからないと言っていってたし・・・」 「不謹慎なこと言っていい?私ね・・・このままサスケ君の記憶戻らなければいいなって思っているの。」 「サクラ?」 サクラの目線はサスケを向いたままだった。 「サスケ君が笑ってるの。心から・・・・はじめてみた。 お兄さんがいること話したの・・・そしたら“会ってみたいな”って言って微笑んだの・・・」 「サクラもういいから・・」 カカシはサクラが言いたいことがわかった。 サスケにはこのまま何も知らないで笑って欲しいこと 「私って悪い娘かな?」 「サクラちゃん!!」 「サクラ!」 向こうでサスケとナルトがサクラを呼んだ。 「ほらね・・・先生。サスケ君・・・あんなふうに笑うこと出来るんだよ。」 「ああ、俺も初めて見たよ。」 「なにやってんでってばよ?!サクラちゃん!カカシ先生!」 「こっちに来いよ!」 ナルトとサスケが仲良くしているのだって普段では到底考えられないことだ。 今それが、現実に起こっている。 サスケの笑顔を望んだのは確かだ。 幸せであって欲しかった。 「私・・・サスケ君には幸せになって欲しい。復讐とか力とか一族のこととか・・・ 全て忘れてこのままずっと笑顔でいて欲しいの。・・・・ごめんね先生こんなこといちゃって・・・無理なのにね。こんな事」 サクラは言い終わってすぐナルトとサスケの元へ走っていった。 「まっ、それは俺も同じなんだけどね。」 三人のほほえましい姿を見てつぶやいた。 其の日の帰り サスケとサクラは一緒に帰った。 「サクラ、俺の顔に何か付いてるか?」 「えっ?」 サスケの顔ばっかり見ていたサクラはなんと返答しようか迷った。 楽しそうな表情を見てると 優しい笑顔を見てると 泣きたくなる・・・・・ 「サクラ?!・・・・なんで泣いてんだよ?」 「え・・・・」 気が付いた。 今時分は泣いてるんだ。そのまま感情が表へ出てしまった。 「ゴメンね。サスケ君・・・私・・・」 「サクラ・・・?」 「ゴメン・・私凄い不謹慎なこといっつも思ってるの。このまま記憶が戻らなければいいって・・・」 「サクラ・・・」 「サスケ君には何もかも忘れて幸せになって欲しいの・・・・ごめんなさいごめん・・・」 サクラは泣いて謝り続けた。 「・・・・・・・・・・・・」 「サクラ・・・大丈夫だから・・・俺は・・・」 「サスケ君・・・?」 「自分を忘れたりしない・・・絶対だ・・・。」 「サスケ君・・・記憶が・・」 「つい・・・今な・・・」 いつものサスケの低くてハッキリした声になっている。 目つきが変わった。 「大丈夫。サクラ俺は・・・大丈夫だから・・・。」 「サスケ君・・」 「サクラの気持ちよくわかった。ありがとな・・・」 「ゴメン・・・我侭な事・・ 「気にすんな・・・ありがとうな・・・サクラ・・。記憶がなくなってたときのこと覚えてるんだ。 いろいろ、気を使わせて・・・・すまなかったな」 サクラには逆光でサスケの表情は見えなかったけど、きっとサスケは微笑んでいたと思う。 口角があがっていたように見えた。 次の日から、またいつもの7班らしい雰囲気に戻る サスケの一言にナルトが突っかかりサクラがとめ、カカシがそんな三人をみてため息をつく。 そんな毎日 でも、サクラはそれでいいと思った。 ---------------------自分を忘れたりしない・・・絶対だ・・・。---------------------- 記憶が戻ったサスケが言ってくれたのだ。 きっと大丈夫だろう。 記憶があってもなくても同じだ。 とりあえずそれがわかりサクラは安堵の息を吐く。 きっと大丈夫 だって 「サクラちゃん!!」 「サクラ!」 ナルトとサスケ 二人はいつも自分を呼ぶときいつも とびっきりの笑顔がくけてくれるから 笑ってくれてる 大事な人が笑顔でいる。 これでいいんだ。 「今行く!!」 そのままでいいんだ。 サクラは先にいる二人の後を追い始めた。 -------------------------END------------------------- サスケ記憶喪失話(完) なにが(完)だよって話 みんなサクラが記憶がなくなってサスケが失ってはじめて気づいた〜見たいな話が多いので そんな中、私はサスケが記憶を失って、サクラは心から笑うサスケの顔を見て このままでいて欲しいというジレンマに陥る話を書いてしまった。 サスケに記憶喪失になってくれたほうが好都合だ 一族・復讐・憎しみ全て忘れて欲しいです。 それで幸せになって欲しいです。 原作で、サスケが心から笑顔になれる日が来るのを信じています。 |
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