やっと伝えられた言葉






「それで、決心はついたの?」

木の葉茶通りの店でナルトとサクラがお茶をしていた。
この二人の光景は、決して珍しいわけではないむしろ、いつもの光景といったほうが正しいかもしれない。
原因はナルトにある。彼の想い人、ヒナタの事だった。
ヒナタを好きになって随分経つが、未だに其の想いを伝えられないでいる。

それでよくサクラに相談事をしては、サクラから、

「早く言いなさいよ!」

と、急かされるのだ。
そして今日も然り・・・。

「だって・・・サクラちゃん・・・」
「だってじゃないわよ!私の時みたいにストレートに行けばいいじゃない!」
「それが出来れば、苦労しないってばよ・・・。」

お互い黙り込む。いつもこの調子。そしていつも“また今度にする”と話は終わってしまう。
しかし、サクラは今日こそは!と引き下がらなかった。

「ナルト!ヒナタがあんたの事好きだって知ってんだから、何も怖がることないじゃない!」

サクラもバツの悪そうなお顔をする。下を向いているナルトには困ったものだ。
だいたい、好きと解かってるなら早く言って安心させたほうがいい。誰だってわかるはず。
無論ナルトだってそれは解かってる筈だ。

「じゃあ、ナルト話を変えるわ。ヒナタって結構モテるのよ。キバだってネジさんだってヒナタの事好きなのよ!
 あんたがモタモタしてたら、ヒナタ取られるわよ!」

「そんな事させないってばよ!」

急にナルトがバタンと音を立てて立ち上がった。
これにはさすがのサクラも少々驚いた。
そんなことを言うのなら答えはただ一つ。

「そうとわかれば、いってらっしゃい。」

サクラは笑顔で、”はやくいってこい”といわんばかりに手を振った。
ナルトはやっと腹をくくったのか、いつもの強気の表情に戻り店から姿を消した。









「終わったのか?」
「あ、サスケ君。」

二人の話を聞いていたサスケは、ナルトが座っていたところに座った。
「ナルトのヤツようやく行動したか・・」
サスケはあきれたように言った。

「まったくよ!世話のかかるヤツ!」
「まっ、何はともあれこれでお前がナルトと会うこともなくなるわけだ。」
「妬いてくれてるの?嬉しいな。」
「・・・当たり前だ。」

ニヤリと笑うサクラに、サスケはそっぽ向きながら顔を赤くしてポツリとつぶやいた。


「それにしてもナルトのヤツ、本当に好きになると、なかなか手が出せないタイプなのね?」
サクラはサスケをじっと見る。
「なんだよ。」
「別に・・・」


意味ありげなサクラの視線に、サスケは少々バツの悪そうな顔をした。






ナルトは無我夢中で走っていた。わかりきっていたことだ。ヒナタが自分を思っていることは下忍の頃から・・・
それを口に出来ないのは、今更どの面を下げて言えるのかという事。
ナルトがサクラを好きでサクラはサスケのことが好きだったそれ有名なことだった。

其のせいで随分ヒナタを傷つけてきたんだ。
しかし、それも今日で終止符を打たなければならない。
ヒナタのことが好きだから、彼女を早く安心させたい。今頃気づくのが遅すぎたかもしれないけど・・・



家にはヒナタはいなかった。家で会ったのは妹のハナビだった、任務でいないとの事だった。
仕方なく、どっかそこら辺を探してみた。いのの花屋でヒナタを見つけることが出来た。
ヒナタはいのと立ち話をしていた。
「ヒナタ!」
突然の声にヒナタはびっくりして振り向いた。
「ナルト君・・」
「ちょっといい?」
「うん・・・」



ナルトとヒナタは公園のベンチに座った。ヒナタは何か落ち着かなくそわそわしていた。
ナルトもナルトでどこから話したらいいのか混乱していた。ありのままの気持ちを伝えなきゃ意味がない!

「ヒナタ・・・」
「何?」
「聞いて欲しいことがあるんだってばよ。」

あたりは沈黙する。なかなかしゃべらないナルトに、ヒナタのほうから話し始めた。

「私ね、キバ君に付き合わないか?っていわれたの・・ 私・・・つき・・・」
「そんな事させないってばよ!」

ナルトは夢中でヒナタを抱き締めた。力いっぱいこめた。離すまいと・・・
「俺やっと自分の気持ちを伝えようと思ってたのに、そんな事言わないでくれってばよ・・。」
「ナルト君・・」
ヒナタはおそるおそる顔を見上げた。そこには今まで見たことない表情のナルトがいた。



「今更だけど、俺ってばヒナタの事好きだってばよ。」



「・・・・」
ヒナタは驚きのあまり言葉が出なかった。片思いをやめようとキバの手を取ろうと思った矢先だったのでなお更だ。
「そんな事言わないで、俺じゃ駄目?ヒナタ・・」
ナルトは少し震えていた。不安だった。これならもっと早く伝えておくべきだった。ナルトは少し後悔した。
「もっと・・早く聞きたかったな・・。」

ヒナタはナルトに答えるように背中に手を回した。
「私、ずっとずっとナルト君の事好きだったんだよ?」

ヒナタの顔は少し赤くなり、涙ぐんでいた。
「ヒナタ・・・ごめんてばよ。ヒナタの事ずっと傷つけてきて今更こんなこといえないと思ってた。」
抱き締める力がいっそう強くなった。其の力強さにヒナタは居心地のよさを覚えた。
「ナルト君・・私も好きだから、ナルト君のこと大好きだから・・。」
「ヒナタ・・。」




いざ伝えてみたら、ほっとした。今まで足りなかったものがすっぽり収まったみたいだった。
何でもっと早く伝えなかったのだろう?自分の臆病さにナルトは少し笑った。
その小心さがずっとヒナタに不安な想いをさせてきたのだから・・

「俺、ヒナタの事好きだから。キバやネジなんかに渡さない。」

そっと唇に触れた。好きな女の子の唇というものは柔らかくて甘い味がした。愛しいかった。嬉しかった。
素直に伝えられて良かった。間に合ってよかった。
簡単なことだったんだね。
何も臆病にならなくていいんだ。今まで自分を責めていた自分が恥ずかしかった。

でも、やっと手に入れた大切なもの。
今度はこれを、壊さぬように、離さぬように
向日葵の如く見守って包んであげたい。今まで辛い思いをさせてきた彼女へのせめてもの償いとして・・・


ヒナタがナルトにとって
誰よりもかけがえのない存在だから・・・













   おまけ



「全く、心配かけてんじゃないわよ!」


ナルトはすぐサクラに報告をしにいったが、また遅いと起こられた。
「そんな・・・サクラちゃん俺ちゃんと・・」
「言うのが遅いんだよ。ウスラトンカチ。」
「サスケ!てめーだって人のこと言えねーだろ!」
ぎゃあぎゃあ喧嘩をするサスケとナルトをサクラは止めた。


「まっ、とにかくヒナタを泣かせるようなことするんじゃないわよ!」
「わかってるってばよ!」
「あ、ヒナタちゃん!」
「!」
サクラの指差したところにヒナタが歩いていた。

「じゃあ、俺はここで帰るってばよ!」
「ヒナタちゃんに会ってくるの間違いでしょ。」
「へへへー」
そういってナルトは一目散に、ヒナタのところへと駆け出していった。




「ナルト君、さっきサクラちゃんとサスケ君と何はなしてたの?」
「見てたんだ?」
「うん。」
ナルトの顔が赤くなっているのをヒナタは見逃さなかった。
「ナルト君・・顔が赤い。」
「え?」
「なんかあったの?」
「ちょっとね・・・誓ってたんだってばよ。」
「?」




―ヒナタを幸せにするって約束してたんだってばよ―



「・・・〜〜・・」
「どうしたの?ナルト君。」
「なんでもないってばよ。」









--------------------------------END--------------------------------



はい、懐かしいもの引っ張り出してきました。
だって更新するものないんだもん!←おい!
もうそろそろ載せても大丈夫だよね?時効だよね?

ナルヒナアンソロジーのディア・マイ・プリンセスで書かせていただいた小説です。
ナルヒナですよ〜ナルヒナ!!
ナルヒナ大好きです!!

一回読み返してみると、なかなか恥ずかしいです。
ちょっと、ほんのちょビット修正したり、誤字があるのを消したり・・・
アンソロの方はもう怖くて、自分の所は見れません。
他のアンソロも、自分の所だけはみません。

だって恥ずかしいんだもん!



BACK