ACT3.モデルさんは日焼けをしない!







野球部にはいって幾日かたった放課後。
いつものように野球部の部室へと足を運ぶ。


まだ4月だというのに日差しが強い。
そういえば天気予報も、今日は紫外線が多いと言っていたことを思い出した。
モデル業に復帰してから天気予報の紫外線チェックは欠かせなくなった。


もともと廉は肌が弱い。
体の色素が薄いのだった。
一目で分かる薄茶の髪の毛に、黒の色が弱い瞳。
ハーフと間違われそうな中世的な顔立ちに、それを拍車かける白い肌。



禁止事項 その1
日焼けをするべからず!



不意に思い出した約束事。
これはモデルをやるやらないに限らず、守らなくてはいけなかった。
色素の薄い人は、紫外線には弱いからだ。
廉は部室に行く前に、カバンの中にちゃんと日焼け止めクリームがあるか確かめた。
ちゃんと敏感肌用のしっかりしたものが入っている。

よし!と意気込んで部室のドアを開けた。



「お!ミハシ、チース!」

「ち・・す。」


先に栄口と巣山がいた。
どうやら1組の方がHRが終わるのが早かったらしい。
ロッカーの前でもう着替え始めていた。
9組はさっき終わったばかりだ。
三橋に続いて、田島と泉がドアを開ける。

それからゾロゾロと野球部の面子が来て、部室は一気ににぎやかになった。
廉のしたくは他の人と比べて大分遅い。
一つ一つの動作がゆっくりなのと、手先が器用ではなく指先がいつもタドタドしく動いている。

今日はアンダーを長袖にしてきた。


「あれ?三橋、今日暑くなるのに長袖なのか?」

今日最高気温23度っていってたぜ〜と田島は、半そでのアンダーを元気良く被る。

「・・・うん。今日は長袖じゃないと・・。」

「お!じゃぁ、俺と一緒だな。」

水谷も長袖のアンダーを被る。


「お前ら、長袖なんかきて脱水症状起こすなよ?」


阿部が呆れたようにモノをいった。
無論阿部は半袖だった。
確かに今日は春のポカポカするような気温ではなく、夏を感じさせるような熱があった。
ここの部屋も蒸し暑い。


「俺ら先いってるぞ。」


キャプテンの花井が先頭だって、グラウンドへ向かった。
それに続いて、沖、巣山に西広と花井を追いかけるように田島も慌てて駆け出していった。

「俺もお先。焦るなよまだ時間はあるから。」

栄口も帽子を被って、出口から出て行った。




「・・・で、三橋お前はさっきから何をやってるんだ?」

「え?」


廉はユニフォームを着替えることなく、カバンを中を探る。
さっきあった日焼け止めを探していたのだ。

「え・・たし、か・・。」


やっと見つけたそれを、カチャカチャと音を立てて振る。


「もしかして日焼け止め?三橋〜俺にも貸して?」

「いい・・よ!」

「マジ?サンキュー三橋!」

「日焼け止めだぁ〜?」


球児がそんなものん使うんじゃネーとでも言うような阿部の視線は痛い。
意外と几帳面だなと反対に泉は関心していた。


「俺・・肌弱・・くて、・・」

「ああ、分かるよ。三橋色素薄いもんな?」

顔と首、手の甲に満遍なく塗り、水谷にクリームを渡した。

「ってコレ、すっげぇ高いヤツじゃね?皮膚科じゃないと売ってないヤツだろ?」


水谷はなんだか気が引けて、いつも自分が使っている量より、少し少なめに使った。


「水谷もかも・・・。」

「俺だって日焼けヤダよ。顔だけ黒くて手足が白いのなんてイヤだぜ?」


なぁ?と三橋に同意を求める。
そんなことになったら事務所にも起こられるので、三橋は水谷に同意した。


「お前もかも・・・ま、別にいいけど。」

「それはいいとして、ソロソロ部活始まるぞ?」



雑談が思ったより長引いてしまったのか、時計を見れば時間が迫っている事に気付く。
泉がいなかったら、完全に遅刻をしていただろう。

「マジだ。おい!三橋、水谷早くしろ!」

「おう!」

「うん!」


















今日は日焼け止めをしていて正解だったと思う。
いくら帽子で少しはさえぎられるとはいえ、敏感肌で浴びる紫外線の痛さは半端ではなかった。
こうジリジリ焼けるように痛いのだ。


そういえば、小学生の頃一回火傷をしたことあったなと思い出した。














「今日はあんがとな〜三橋。あれどこで売ってんの?すっげえ使ってて良かったんだけど・・。」

「えっと、もらい・・もの。今度、聞いてくる・・よ。」

「ありがとう。」


「ね〜なんの話し?」


田島が興味津々に水谷と廉の間を割って来た。



「日焼け止めの売り場所の話し?」

「へ?何でワザワザそんな事すんの?」


何故日焼けをしないようにするのか、田島には意味が分からないようだ。
普通に考えて男の子はそんな事考えないのは正論である。


「だよな〜水谷って以外に女々しいのな。」

「ひっで〜!」

「俺もそう思うぞ?」


「っていうかお前は真っ黒になるくらい練習しろよ。」


みんなの容赦ない突っ込みに水谷はうなだれる。
ヒドイ!とリアクションをとるが、それすらも突っ込みを誘う恰好のネタとなってしまうのだ。


「三橋〜皆がイジめるよ〜。」


わーん!とオーバーリアクションをとって廉に抱きついた。


「・・・・。」

「ど・・したの、の?水谷・・君?」


「三橋って本当に肌綺麗だな。」

「え?」

「だって、キメ細かいしこう・・なんか天然でも有るんだけど、手入れもスゴそう。」



水谷は以外に鋭いかもしれない。

「俺もソー思う!三橋に抱きつくとき、三橋首とかスッゲーキレイなの!」

「田島もかよ・・。」


コレでは、廉を女の子として褒めているような感じで違和感がある。


「ま・・でも三橋だしね・・。」


廉だから許されるのであろうその褒言葉
他の人だったら、ゲンナリするような内容なのだから・・。

「そういえば、さっき聞き忘れたけど、なんでそんなモン塗ってんだよ?」

「俺・・紫外線弱くて、ちょっとの時、間でも火傷・・・しちゃ・・。」

「大変なんだな〜。」

「白人みたいだね〜。」


何だそんなわけがあるなら仕方によな。とメンバーは納得した。


「水谷は?」

「俺は普通に日焼けがいやだから、今から何も無しじゃちょとね。」

「???」


「だってこれから練習量はキツなるし、長くなるだろ?」

「だから?」


「皮むけたくないし、手足が皮剥けて服にすれて痛くなりたくないし?」

水谷のいう事も一理ある。
そんな痛さで、練習や試合に支障が出るのははっきり言って嫌だ。

「それにさ、6月からプールだってあるだろ?俺シマウマにはなりたくないよ。」



シマウマ・・・・




野球部は一斉に手、腕と顔、首だけ焼けて、プールの授業を受ける自分を想像した。
あぁ・・コレはきっとクラスの笑いものだろう・・。


「なぁ・・三橋。それ俺にも今度教えて。」

「俺も・・。」

「何で?オモシロイジャン!シマウマ!!」

「いいから田島、お前は!」


栄口を筆頭に、他のナインも三橋の持っていた日焼け止めが欲しいといってきた。


「じゃぁ、今度・・みんなの分用意・・して、おく。」

「サンキュ・・。」

阿部もクッキリと白黒かかれた自分の体を想像したのか、少々浮かない顔をしていた。


こまめに塗って、ちょっとづつちょっとづつ、
負担にならないように焼けていこうとこの日、野球部全員が誰もが思った。
せめて、プールの授業で笑いものにされない程度に・・・!




「俺はやるもんね!シマウマ!」

「わかった、分かった。」


















「お・・お母さん!」

「ん?何、廉。」


「あの日焼け止め・・みん、なほ・・欲しいって!!」


「あらそう?皆ずっと外で運動してるもんね。いいわよ次の撮影のときにヘアメイクさんに頼んでおくから。」

「ありが・・とう!」

「で?何個?」

「9個!」


「ええ?そんなに?」


「うん・・!」








それから、西浦の野球部は部活前にこまめに日焼け止めを塗る姿が目撃されている。















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私の中の三橋は、絶対肌が白くて、紫外線なんかに弱い!
きっと赤くなって、痛みを伴っちゃうんだよと想像してみる。

今回は日焼け論争。
これ一度やってみたかったんですよね。


・・しまった、今回ルリちゃんの出番が無かった!










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