Love since xxx.....   4



Nobady knows. What color is true love ?





「お、三橋もう体はいいのか?」


久しぶりの登校。
教室のドアを明けると、泉が声をかけてくれた。

「三橋〜!!!心配したぜ!!!!!」


三橋は泉に大丈夫だよと、返事をしようとしたのも束の間、後ろから田島のタックルがきた。

「田島君・・・もう、大丈夫だ、よ。」

「そっか〜。よかったよかった。」

「心配したんだぞ。風邪けっこうしつこかったんだな。一週間だもんな。」

「う・・うん・・。」


学校には風邪と言っているが、本当の理由は他にある。
皆が何も言ってこないという事は、阿部は誰にも言っていないのだろう。
でも阿部のことだ、学校や監督辺りにはいっているのかも・・・

真実を確かめたいが、阿部と話す勇気がない。

「ん?どうした顔色悪いぞ?」

「そ・・そんな事ない、よ。」

「ま、病み上がりなんだし、気をつけろよ。」

「うん!」


三橋の顔色の悪さは、まだ感知してないのだろうと泉は思い、席についた。
阿部と話して、次の日どうなったのか、誰にも話していないのか確かめたい。
でも怖い。

あんな姿を見られて恥かしい。
会いたくない。
でも、放課後になればイヤでも会う。

この際、部活の時に聞くしかない。
二人はバッテリーだ。
こんな事で、二人の関係を潰したくない。

それにアレは事故だ。
だからってはい、そうですかと、簡単に受け入れられるものではないけど話さなきゃ始まらない。
とりあえず、三橋は放課後まで待つことにした。
























「お、三橋来たな。もう風邪は平気なの?」

部室へ入ると既に1組の栄口と巣山がいた。
どうやらまだこの二人しかいないようだ。

「うん!栄口君も巣山君も久しぶりだね。」

「心配したぞ三橋・・。」

「うひ・・」


「あ、そうだ。三橋。」

「何・・?」


「前にさ、花井が言ってた不審者っていたじゃん。」

「!!!!」


「え・・・?俺なんかマズい事いった?」


巣山の”不審者”発言で、三橋の顔色が一気に真っ青になった。
そうあの日、花井がその不審者がよく出回るから注意を呼びかけた日。
三橋は、その者の餌食となった。

思い出すだけでも震えがとまらない。

「三橋、大丈夫か?」

「う・・ん。ごめん。」

「本当かよ?顔真っ青だぜ?」

「だいじょう・・・ぶ。で、その人どうなったの。」


そう、三橋は聞かなくてはならない。
あの後、のあの男の情報を・・・。
まだここら辺に出回っているのから、注意が必要だ。


「捕まったんだよ。しかも現行犯で!」

「え・・・?」

「他校の女の子を路地裏に連れ込もうとしたのを、見回りしていた警察の人が取り押さえたんだ。」

「そうなん・・・だ。」


そうか逮捕されたのか・・。
これで帰りは怯えなくていいのだ。
それに被害も、もう出なくて済む。
どうせなら、もっと早く捕まって欲しかった。

そうしたら・・・・・


「でさ、なんかソイツ、前科もあるっぽくて、今回も余罪があるらしいんだ。」

「現行犯で捕まえた以前にも、被害者がいるって話。」

「許せねぇよな。」


無抵抗な女の子を力ずくでとりおさえるなんてと、巣山と栄口は犯人を批判していた。


「三橋・・・さっきから本当に顔色悪いぞ?」

「大丈・・・夫・・。」



「あ、三橋〜久しぶり〜。風邪大丈夫か?」


部室のドアを開けたのは水谷だった。
7組の3人が入ってきた。


「あ、三橋、風邪は大丈夫か?・・・なんか顔色悪いぞ。」

「花井君・・水谷君。もう、大丈夫・・だよ。」

「お前、そんな顔で言われても、説得力がねぇよ。」



わ!阿部のおせっかいが出た!と水谷が茶化すが、実際三橋の青白さは尋常ではない。


「三橋、そんなんで部活でても意味ないだろ?」

「あ・・で・・でも!!」


投げたい。
だって、やっとあの窮屈な空間から出られたのに、
学校に来ているのに、部活があるのに、野球が出来るのに
何もしないまま帰るなんて、三橋には考えられないのだ。


皆三橋の、投球への執念は知っている。
無理にここでやめさせても、後の投球に響く。
でも、なんとかして三橋に無理をさせないようにしたいのだが・・・


「なぁ、監督に三橋だけ別メニューとかにするのは?」

「あぁ、なるほど。」

「そういえば三橋、一週間も休んでたんだよね?無理しないほうがいいよね。」


確かに病み上がりでハードは練習はきつい。
花井は百枝と相談して、今日から三日間は三橋は別メキューという事で話は終わった。
投球もいつもより制限が厳しいが、久しぶりにキャッチボールが出来て、三橋も心なしか気分が楽だった。


阿部と顔をあわせるのは気まずかったが、なんとか周りから怪しまれずにすんだと思う。


三日間の三橋のメニューは、殆ど軽い運動と、ストレッチで組み込まれている。
しかし、初日はならだがなまっていたせいなのか、あの時の傷が残っているのか、フラフラになった。
そんな三橋の様子を見て、周りは少し心配していていた。


帰る時間が若干三橋の方が早かった。
兎に角、完全に元気になるまでは百枝が、皆と一緒の練習をさせないと力強く言葉を残し三橋を圧倒させた。
本当は残っていなかったが、そのままでいたら頭を握られそうだったので、大人しく百枝の言葉に従った。


学校を出て阿部の携帯にメールを入れた。

『話したい事があるから、練習終わったら連絡をして』・・・と













日が暮れて大分経った頃、三橋の携帯から着信音が鳴った。
このメロディはメールの着信音だ。

待受けを見ると、表示は阿部隆也の文字が表示されている。
メールの内容は今部活が終わったと書かれていた。

三橋は尚江に適当に用があると言って、家を出た。
母親のとめる声も聞かずに、自転車を走らせる。


いつもより早めに着いた学校は、暗かった。
まるで丁度一週間前のことをを思い出させるような雰囲気そのものである。
三橋は部室の明かりが点いているの見て、部室のドアを開けた。
そこにももう阿部一人しかいなかった。


「よぉ・・。」

「あ・・阿部君・・・。」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・。」


用があるのは三橋の方なのに、なかなか口に出さない三橋に阿部は苛立つ。


「お前、自分から用があるって言ってきておいて、何黙ってんだよ。」

「ひ・・!・・あ・・あの・・。」

「何?」


「その・・・この前の事なんだ・・け、ど・・・」

あぁ、そうかと阿部は聡い頭を回転させる。
三橋の言いたい事が分かると、安心させるように言った。

「大丈夫。誰にも言ってねぇよ。」

「ほ・・本当?!」

「嘘言ってどうすんだよ。」

「え・・あ・・・。」


キョドるいつもの三橋の態度に少なからず、阿部も安堵の息がこぼれた。
数時間前の青い顔をしてときより、いくらかマシになっていた。
きっとこの事が不安だったのだろう。
言うにも顔をあわせにくく、こんな時間になってしまったから。


「兎に角、誰にも言わねぇから、さっさと本調子に戻れ!」

「は・・・はい!」

「ったく、お前、ずっと家で休んでたのか?」

「・・・・入院した、よ。」

「え・・?」


三橋の無しによれば、あまりの様子の可笑しさに、あの後すぐに病院へ運ばれたのだった。
医者には何をされたか分かったのだけれど、あまり言いにくい事だから本人に家族にどう説明するか話したらしい。
無論、三橋も本当の事をいえることなく、医者と話をあわせて違う事にしてもらったらしい。


「お前、あの変態捕まった事聞いたか?」

「うん・・今日、巣山君から聞いた、よ。」

「そうか・・・。」



「もしかしたら、お前・・・・。」

「え・・・」

「いや、なんでもない・・。」


互いに視線をはずした。
お互い居た堪れないのだ。

どう言葉をかけたらいいのか分からなく、三橋も阿部も黙っていた。
その沈黙を破ったのは三橋のほうだった。



「よかった・・。」

「は・・?」

「お、俺、あんな所・・み・・見られ、て、阿部君、に・・軽蔑されて、るんじゃないかって・・。」


ずっと不安で居た緊張の糸が切れたのか、三橋は座り込み泣き出した。
いつもも泣き声で、部室の中を泣き声で満たす。
軽蔑はしていないが、驚きはしている。
ハッキリ言って、普通に接しられる自信は阿部にもなかった。
今こやって、二人で話せてよかったと思った。
このままだったら、ずっとチグハグのまま、バッテリーとしても機能を果たしていなかっただろう。


「お前、またそうやって女みたいに泣くのヤメロよ。」

「うぅ〜だって・・。」

「ホラ、立てって!」

「うわ!!」

阿部は三橋の腕を掴み経たせようとする。
三橋を見下ろす形になるそのアングルは、阿部を混乱に導く。


まだ泣き止んでいなく、瞳に溜まったままの涙。
上目遣いで見上げる体勢に、阿部は思わず息を呑んだ。
しかし、すぐに我にかえる。

三橋は男だと。
何を血迷っているのかと・・。

「ごめ・・阿部君・・。」


細いからだ。
色素の薄い肌と、髪の毛。
あの理不尽な暴力がこんなか細い体を襲ったのだ。

阿部は今でも鮮明に思い出せる。
男に組み敷かれた三橋の体。
屈辱に歪ませていた顔。
無数の血痕が目立った肌。


「・・・・」


三橋は黙ったままの阿部に首を傾げた。


「阿部君・・・?」


「・・・・な・・・」

「・・・阿部、君・・?」


「なぁ・・三橋・・。」

「何?阿部君。」



完全に立ち上がった三橋に、下を向いた阿部の顔は良く見えなかった。
だが、その表情はすぐに上を向きなおし良く見える位置にある。
阿部は笑っていた。


「お前、この前俺の事好きって言ってたよな。」



阿部は確かに笑っている。
笑って見せているのだが、目が・・・


阿部の目は笑っていなく、口元だけが不気味に笑っていた。














誰もわからないよ。
そもそも本当の愛って一体何色に見えるのか知ってるの?







ねぇ、本当の愛はどこにあるの?















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