紫の人   2




『骸!やめて!相手はまだ子供じゃないですか?』

「クフフ・・・そんな子供にあのマフィアは何をしたんでしょうねぇ」

『だからこそ!僕達はそんな事しちゃいけないんです。』

「屍・・・。昨日から言ったように眠っていなさい。命令です。」

『いやだ!骸・・・僕は・・・!!!』

「どうやら、力づくで眠ってもうらうしかないようですね。」

『骸・・・・・!』



「ふう・・やっと、落ち着きましたね。さぁフゥ太君、一緒に来てもらいましょうか?」


骸は笑みを絶やすことなく、フゥ太に手を差し伸べる。
フゥ太は震えていて何も言葉を出す事は出来なかった。


「クフフ・・イイコですね。さぁ、この僕の眼を見てください。」

フゥ太は恐怖で眼を逸らす事が出来なかった。
本能が骸のいう事を聞くなといっているのに、体が動かない。

「まず、そのランキングブックに書かれていることを教えて頂きましょうか・・・。」

そうですねと、欲しい情報を骸は整理する。

「並盛中学の喧嘩強さランキングでも頂きましょうか?」


フゥ太は拒否する事もなく、ランキングのコピーを骸に渡した。

「クフフ・・・千種、犬いますか?」

「はい・・ここに?」

「何れす?骸さん。」


「このランキングに書かれている人物順番に潰しますよ。
 ・・・ただ単に潰すのはつまらないですね。・・・そうだ!」



   順番に歯を抜いていきましょう    








『ここは・・・ドコでしょうか・』


屍は眼を覚ますと暗闇の中にいた。
また骸に、闇の意識へと飛ばされたのだ。


『またココ・・・ですか。』


骸は屍と本当に入れ替わりたくない時だけ、屍の意識をシャットアウトする。
いつもは頭の中で会話が出来る状態の時も有るが、シャットアウトされている時が多い。

骸の行動は屍にも見えている。
その行為には眼を瞑りたくなるが、屍は懸命に拒否の声を出すが骸は聞く耳を持たないのだ。


『またどうやら暫くは出してはもらえないでしょうね。』


骸たちがマフィアと戦っている時や、非道な行為をしている最中は必ずと言っていいほど
暗闇の世界に放り込まれて自分だけ蚊帳の外状態だ。

そして、骸が力を使い果たして少し弱まっている状態を狙って
自分の体を返してもらうのだ。
意識が戻った時は、大抵は死体の山を見る。

『とりあえず、今度もどったらあの子を逃がさなくては・・・!』

自分達のエゴで、あんな小さな子供を犠牲にはしたくないのだ。
人格の主導権が変わるまでどうか無事でいて欲しいと、屍は切に願った。

















「・・・・ハ・・・!!」


屍の視界が急に明るい所に変わった。
どうやら体の主導権が骸から屍に変わったようだ。

「・・・えっとここは、場所は変わっていないようですね。」


だが、時間は結構過ぎてしまっているようだ。

骸のお気に入りのソファがある部屋には、カレンダーが置いてある。
日付の罰点印が増えている。

一週間過ぎてしまっているようだ。


取り合えず、フゥ太君を探さなくては・・・!
きっとどこかに幽閉されているハズだ。


この建物は使えそうな部屋は限られている。
一回見て回ったときの記憶を頼りに、屍は部屋の扉を開けた。

「・・・ひ・・!!」


一回で、屍はフゥ太のいる部屋を見つけた。

「早く見つかってよかったです。」

「・・????」


一瞬、骸の登場で怯えたフゥ太だったが、骸の恐怖を感じさせる雰囲気が無い。
そして、変な言葉を言った。

”見つかってよかったです”

フゥ太をここへ入れたのは紛れもなく、骸自身彼は一体何を言っているのか?


「・・・君はきっと戸惑っているかも知れませんが、戸惑ったままでいいです。
 僕を信用してはいけませんよ。」

この口調はとても哀しみを帯びていた。
さっきまでの骸とは違う。

屍は、フゥ太の手足を戒めを解いた。

「さ、行きましょうか・・・。”僕”の気が変わらないうちに・・・。」


「・・・貴方は、誰ですか?」

「僕ですか?・・・イヤですね。骸ですよ。」

「違う・・・貴方はあの人じゃない。だって、貴方からは・・・。」

「話は後です。行きましょう。付いてきてください。」


今、千種と犬は外にいる。二人のいるところは骸の記憶で大体わかる。
だから時間はかかってしまうが、回り込めばフゥ太を逃がしてあげる事は可能なはずだ。
屍の精神がフゥ太を逃がすまで持てばの話だが・・・・。


「あの・・・貴方は・・・。」

そそくさに付いてくるフゥ太は、屍の事を聞きたがる。
しかし、屍は一切答えようとはしなかった。
だって、自分も骸なのだから。


「骸だとさっきから言っています。そして僕には時間があまり残されていない。」

頭痛がしてきた。そろそろ骸の目が覚める。
痛い頭を必死に堪えて、足場の悪い砂利道を行く。

「く・・・!!」

骸が出せと信号を送る。まだだ、まだ変わるわけにはいかない。
この子を安全なところへ・・・・。

「あの・・・」

苦しそうな屍を見て、フゥ太は足を止めたが、屍は先を指さした。

「すみませ・・ん。ここで、お別れ・・・の・・です。言いですか?
 ・・・僕の言う・・・と・・りにして・・・
 この先まっすぐ・・分かれ道・・・・左へ・・・・・う・・・!!」

「お兄さん!」

バシっとフゥ太を振り払う。まずい、骸に変わるのは時間の問題だ。



「行きなさい!!・・早く、走って・・・僕の気が・・・かわらない」

「・・!!」


尋常ではない骸の態度に、フゥ太は戸惑いながらも走り出した。
走り去るフゥ太を見て屍は少し安心した。

あとは自分が骸に変わるのを遅くさせて時間稼ぎを・・・


『無駄ですよ・・・。屍・・・。』

「いやだ・・・。あんな小さな子・・。」

『やっていることが無駄なのです。あの子はもう僕の手の内なんです。』

「でも・・・」

『さぁ、そろそろフィナーレの時間です。大丈夫ですよ屍。もうすぐです。長年の望みにまた一歩前進します。』


「でも・・・。」

『さぁ、僕の可愛い屍。おやすみなさい。』



右目に赤い瞳が顔を出した。
さて、ボンゴレ十代目のお顔でも拝見しに行きましょうか?
幸いにも、まだ向こうはランチアを骸と思っているようだ。

近づくのは今しかない。骸はフゥ太のいった道を歩き出した。
















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