言いだせない本音
それは、『水の国へ向かう商人の護衛』と言うCランク任務の帰り道に起こった。
何事もなく依頼人を水の国まで送って。
報酬を貰っての帰り道、一体何処から現れたのか、その辺り一帯に巣くっている盗賊団に襲われた。
「―――ナルト、サスケ、サクラ、分かってるな?」
「もちろんだってばよ!」
「ああ…!」
「はい!」
相手は盗賊が十数人―――とはいえ、忍者では無い。その辺のゴロツキ共と言ったところだろうか。
相手の力量を瞬時に判断したカカシはあえて自ら動かず、3人に任せることにした。
「行っくぜーーっ!!」
ナルトの叫び声と共に戦いが始まった。
3人とも幼いながらも忍者としての技を身につけただけあって、次々へと盗賊達を倒していく。
こんな子供ごときに…!と焦る盗賊団とナルト達では、明らかに勝負は見えていた。
戦況はナルト達が有利。
このまま終わるかに思えたその時、盗賊の1人である大男が一死でも報おうと巨大な丸太を振り上げて投げつけた。
もちろん、3人とも忍。すぐさま、身をかわした――――はずだった。
「………!!」
「サクラ!?」
「サクラちゃん!?」
サスケとナルトがすぐに異変に気付く。
他の盗賊を相手していたサクラは僅かに判断が遅れてしまって、サクラはその場から動けないでいたのだ。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ…!)
頭で分かってはいても、焦れば焦るほど身体が動かない。
「チッ!」
それを見たサスケが急いでサクラの元へと向かう。
―――が、僅かにカカシの方が早かった。
(――――!?)
カカシがサクラを抱きかかえてその場を飛ぶ瞬間が、まるでスローモーションのように映って。
サスケはそれをただ、見ていることしか出来なかった。
「どりゃあーーっ!!」
多重影分身で何人ものナルトが大男に殴りかかって、勝負は終わった。
「あ、ありがと…、カカシ先生」
カカシに抱きかかえられた状態のまま、サクラが礼を言う。
「あー、カカシ先生、ずるい!
早く、サクラちゃんから離れてってばよ!」
「ん〜、この抱き心地がなんとも…v」
ナルトが突っかかるもカカシはサクラを放そうとしない。むしろより一層、強く抱きしめている。
(………っ!)
それを少し離れた場所から見ていたサスケの目が変わった。
けれども誰もそんなサスケの様子に気付くこともなく、サクラは笑ってカカシをかわしている。
「もー、カカシ先生、その台詞、エロオヤジくさいよ」
「そうかぁ〜?」
アッハッハッと笑うカカシの笑い声に、サスケの苛立ちが益々募る。
どうしてか?―――なんてサスケ本人にも分からない。
ただ、無性に苛立つのだ。
サクラを抱きかかえるカカシも。
そのままの状態でいるサクラにも。
だから、その言葉はサスケの口から自然と出てきた。
「フン、忍者としての素質、ゼロだな。あれくらいの攻撃を1人で避けられないなんてな」
「サスケくん…」
さっきまで笑いに溢れていた雰囲気が、サスケの一言で途端に冷たいものへと変わる。
サクラが慌ててカカシから離れたけれど、もう遅い。
口が勝手に。
止まらない――――
「あれくらい、1人で避けられなかったのかよ」
「あ…、うん…。咄嗟のことで……」
「チッ、足手まといもいいところだ」
「……っ」
「オイ、サスケ!
サクラちゃんになんてことを言うんだよ。サクラちゃんに謝れ!」
ナルトに言われなくても、そんなことはサスケ自身が一番よく分かっていた。
なんて酷いことを言ってしまったのか。
こんな言い方をすればきっとサクラは傷つくに違いない。
そしてサクラの次の行動も分かっている。
涙を堪えて。
そして、儚げに笑うのだ。
「いいのよ、ナルト。…本当のことだから。サスケくん……ごめんね?」
ほら、予想通りだ。
そんな顔をさせたかった訳じゃない。
ただ。
無性に腹が立ったのだ。
いつまでもサクラがカカシに抱えられていたことも。
本当だったら自分が助けていたはずだったのに、その役目をカカシに奪われてしまったことも―――…
解散後の帰り道、サスケは別れ際のサクラの様子がずっと頭から離れないでいた。
あの後。
解散の挨拶と共にカカシは早々と姿を消していて。
いつもだったらサクラがサスケに「一緒に帰ろう」と誘うのだが、任務での失敗を気にしているのかサクラの方から誘える訳がなく。
そんなサクラにナルトがここぞとばかりに誘ったのだが、少しだけ修行をして帰るから、と断っていた。
任務帰りで疲れているだろうに、サクラが修行をするなんて―――改めて考えるまでもなく、サスケの一言が原因なのは明らかで。
忘れようと思っても、儚げに笑うあの表情が脳裏から消えない。
あんな顔をさせてしまったのは自分かと思うと。
「……クソっ!」
いつしかサスケの足は家ではなく、演習場へと向かっていた。
「…えいっ!
はっ!
…せやっ!」
もう陽が傾き始めた時間でもあるのに、案の定、サクラはそこにいた。
薄暗い中でも明るさを放つ温かい桜色の髪が煌びやかに流れる。
周りに飛び散る汗も輝いていて。
白い肌には無数の傷跡が残っていた。
いかにサクラが懸命に修行をしていたのかが窺える。そのひたむきな姿は、きっと誰が見ても魅了されるに違いなかった。
それでも。
(なんだよ、あれで強くなれる訳がねェーだろうが…)
素直にサクラの努力を認められないのがサスケであり。
本当はサクラにきつい言い方をしてしまったことを謝ろうと思っていたはずだったのに、心と裏腹の言葉を口にしてしまう。
「……いつまでやってるんだよ」
「サスケくん…」
現れたサスケにより、サクラの手が止まる。
「そんなんで、すぐ強くなれるんだったら修行の必要なんてねェーんだよ」
「……ん、サスケくんの言う通りなんだけど……でも、あともう少しだけ…」
「……っ」
どんなに辛い言葉を投げつけても。
どんなに辛く当たっても。
決してサクラはサスケを責めようとはしない。
それが今のサスケには辛かった。
"悪かった"
"言い過ぎた"
たった一言謝るだけなのに、どうしてこんなにも難しいのだろう。
そんなサスケの考えなどサクラが分かるわけもなく。
黙ったままのサスケを見て、余計にいたたまれなくなったサクラはわざと笑顔を作って言う。
「あ、あのね? サスケくんの言ったこと、当たってると思う…。
私って本当に足手まといだから……、だからせめて…みんなの足を引っ張らないように頑張るから…その…」
「…………」
「……だから、私のこと…、いつかは認めてくれる?」
「――――っ」
今度こそ、本当にサスケは言葉を失った。
(……だからサクラは苦手なんだよ)
どうして彼女は、こうも真っ直ぐなのだろう。
ただ純粋に。
汚れがなくて。
真っ直ぐに見つめてくる翡翠の瞳。
それは一点の曇りもなく。
きっとサスケが言い出せない一言も、サクラにとってはいとも簡単なことに違いない。
こんなことに悩んでいる自分が愚かと思える程に。
そして恐らく、サクラが望んでいる言葉も謝罪なんてものではなく。
「今度…」
「えっ?」
「もし、今回みたいなことがあっても、カカシにだけは助けられるなよ」
「"カカシ先生にだけ"はって…、どうして…?」
「……っ///
いいから!
そうしたら認めてやる!」
「う、うん…?」
それでもし、お前に危険が及んだなら、その時は……
その時は……お前はオレが護ってやるから――――…
言葉に出せなかった本音。
今はまだサスケ自身の中に閉まっておいた。
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チャットでの物々交換、その2。南方ゆり様&高柳紗雪様へ捧げます。
元ネタは言うまでもなく、初代OPより。
あのカカサクシーンでのサスケくんの心理…と言うモノでした。 本当はお二方がもっと素敵な台詞を考えて下さってたんですが、スミマセン; ワタシの力量不足により、うまく入れることが出来ませんでした(反省)
うう。こんなのでも貰って頂けますか?(ドキドキ)
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AKIさまからの頂き物です。
わー!!サスケが嫉妬してますよ。
「今度は俺が守ってやるっ」て私はあはあしちゃいました。
サスケが可愛いです。
そんなサスサク大好きですよ。
こんな素敵なものありがとうございました。
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