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      最高の贈り物 
       
       
       
      「明日! 
サスケくん、何の日か覚えてる?」 
       
       
      唐突にサクラが言ってきた。 
      それもかなり可愛い笑顔付きで。 
       
      …コイツ、無意識に男を誘うような顔で笑うんだよな。 
       
      無邪気と言うか。 
      無垢と言うか。 
       
      オレは思わず抱きしめたくなる衝動を抑えきれなくて、手ェ出そうとしたら寸での所でサクラに止められた。 
       
      「今日はダメ」 
      「なんでだよ」 
      「明日が何の日か思い出したらね」 
       
      にっこり笑って、スルリとオレの腕から抜け出しやがった。 
       
      ったく、何だよ。 
      明日が何だってんだよ。 
       
      明日……何かあったか? 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      「オレとサクラが付き合い始めてから今日で一年目!?」 
      「ああ。サクラの奴、嬉しそうに話していたな。なんだ、お前、覚えてなかったのか?」 
       
      たまたま会った五代目から、昨日のサクラの問いの答えを思わぬカタチでオレは知った。 
       
      覚えてなかったことについて五代目はオレの顔を見て呆れたように言うが、一々そんなことまで覚えているかよ。 
      ったく、女ってよくもまぁ、そんな面倒なことを覚えているもんだよな。 
      大体、一年とか二年とか、そんな記録に何の意味があるんだか。こうして"今"があるんだから別にいーじゃねェか。 
       
      そんなオレの考えを見透かしたのか、五代目がニヤニヤしながら言ってきた。 
       
      「お前の気持ちも分からんでもないが、あからさまにそんな顔をするな。 
       お前と付き合うようになった日をご丁寧に覚えているなんてサクラも健気で可愛いじゃないか。 
       それにある意味、そこまでもったことにも奇跡だな」 
      「…余計なお世話だ」 
      「おや? この私にそんな口をきくのかい? せっかく教えてやろうと思ってたのにな。いーんだよ。 
       別にカカシに先を越されたってな、私は」 
      「―――!!」 
       
      おい、待て。 
      なんでそこでカカシの名前が出てくるんだよ。 
       
      そもそもカカシは前々からサクラに目を付けていたのか、ことごとくオレとサクラの仲を邪魔してくる。 
      サクラはオレのモンだって言っても未だに諦めず、とにかくしつこかった。 
      よりにもよってそんな奴の名前が出てくるなんて、嫌な予感がしてならない。 
       
      そしてその予感は的中した。 
       
      「サクラが嬉しそうに話していたのをカカシが聞いていたんだよ。 
       で、めでたいってコトで丁度サクラの欲しがっていた本をプレゼントしたんだ」 
      「―――――…;」 
       
      カカシの野郎…。 
      サクラの欲しがっていた物をプレゼントしている辺り、気を引こうとしている魂胆が見え見えなんだよ。 
       
      でも昨日の様子から、嬉しそうに語っていたであろうサクラの姿が思い浮かぶ。 
      それを聞かされたカカシのことを考えると…フン。イイ気味だ。 
       
      「あのカカシでさえ、プレゼントしたんだ。こりゃ、お前も手ぶらって訳にはいかないねぇ」 
       
       
      あーあー。分かってるよ。 
      カカシの奴に先を越されて黙っているのも癪だしな。 
      ここは1つ、サクラがビックリして抱きつきたくなるぐらいの物をプレゼントしてやろーじゃねェーか! 
       
       
       
       
       
       
       
       
      ――――と、五代目の前で啖呵をきったのはいいが、何、プレゼントすればいいんだ? 
       
       
       
       
      本好きのサクラにそれに勝る物となると……駄目だ。思い浮かばない。 
      女が喜びそうな物と言ったら…貴金属とかか? 
       
      こうして改まって考えてみるとサクラの欲しい物…サクラの考えていることを何一つオレは理解してなかったと知る。 
       
      オレ自身は欲しい物を既にもらっているのに、少し悪ィ気がするな。 
       
      でもな。いざ考えると分かんねェーから仕方がない。 
       
      (どうするか…) 
       
      1人、街中を考えながら歩いていると、見知った顔と出会った。 
      山中だ。 
       
      「あれー? 
サスケくんじゃない。久しぶり〜。こんなトコロで何してんの?」 
       
      …そういやコイツ、サクラと親友だったよな。親友ならサクラの好きそうな物、知っているかもしれない。 
       
      誰かにサクラの欲しい物―――そんなことを訊くのはオレのプライドとしては絶対に避けたい所だが、 
      この際四の五のなんか言ってられっか。 
      カカシに先を越された以上、サクラにアイツのことを考える隙も与えないくらいの物をやらないとな。 
       
      「……なぁ」 
      「んー?」 
      「……サクラの欲しい物…お前、何か知ってるか?」 
      「どうしたの? 
いきなり」 
      「…っ/// いいから! 
知ってたら教えろ!」 
      「まぁー、サスケくんの頼みじゃ断れないしねー。いいわ。アタシの知ってる範囲で教えてあげる」 
       
       
       
      そう言う山中に連れてこられたのは、大名や金持ちぐらいしかまともに入れないような、 
      木ノ葉の里の中でも値段が高いと有名な宝石店だった。 
       
      「……ここに、本当にサクラの欲しい物があるのか?」 
      「んー。モチロン♪ 
アタシの言うことを信じてよ」 
       
      ショーウィンドウに飾られている沢山の貴金属。 
      ……ヤバイ。オレにはどれも同じに見える。 
      こういうのは興味がない人間から見たら、どれも同じに見えるから不思議だ。 
       
      面倒ながらも並べられているディスプレイの宝石類に目をやると、ふと1つの指輪が目に入った。 
       
      (――――――…) 
       
      形とかじゃない。 
      大きさでもない。 
       
      それでもそれに惹かれたのはその宝石が放つ色だった。 
       
      吸い込まれるような碧。 
      サクラの瞳と同じ色。 
      コレをサクラが着けたら…―――結構いいんじゃないか? 
       
      どうせならサクラに似合う物の方が良いよな。 
       
      「あ、待ってよ。サスケくん!」 
       
      山中の止める声にも耳を傾けず、店内に入ると店員が営業スマイルで近寄ってきた。 
       
      …チッ。こういう店に入ると、必ず店員が寄ってくるから面倒だ。好き勝手に見させろよ、と思う。 
      そんなオレの気も知らず、店員はオレが見ていた指輪についてうんちくをたれだした。 
       
      「お客様、さすがお目が高いですわ。それはアレキサンドライトと言う物でして、大変貴重価値が高いんですよ。 
       "神様のいたずら"と称されるほどに宝石の神秘性を代表する物なんです」 
       
      「―――――…」 
      「昼と夜とで全く違う表情を演じてくれるんですよ。日光や蛍光灯では強い色でやや黄色がかった緑色、 
       ろうそくの灯火や裸電球の光をあてると濃赤の紫がかった赤色へと変わるんです。 
       中でも最良の物は青がかった碧、褐色がかった紅を持つんです。ほら」 
       
      別の光を当てることで碧から紅へと変わったそれは、店員の言う通り最高級であることを表していた。 
       
      へぇー…、面白れー。 
      碧と紅、2つの色を持つ宝石か。 
       
      指輪とかの貴金属類は任務時では身に着ける訳にはいかねェーだろうけど。 
      こういうのもタマにはイイかもしれない。何より、サクラに絶対似合う。 
       
      「……ですが、これは他の物とは相場が違いまして、お値段が多少張るんです。お客様は…その…」 
       
      オレの格好をジロジロと品定めしている態度の店員にカチンとくる。  
      確かに他に並べられている宝石類とは少しばかり桁が違っているな。 
      だからって、なんだよ。オレじゃ払えねェー金額だと言いたいのかよ。 
       
      思わず文句を言ってやろうかとしたところで、山中が割って入ってきた。 
       
      「あ、サスケくん。それよ、それ! 
サクラが欲しがってた指輪」 
       
       
      ――――決まりだった。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      「サスケくん、今日が何の日か覚えてる?」 
       
      予想通り、オレが家に帰ってくるのを待ちかまえていたサクラは、家に着くなり問いつめてきた。 
       
      「……オレ達が付き合い始めてから一年目、だろ?」 
      「覚えててくれたの!? 
嬉しいっっ!!」 
       
      …そんなモン、オレが一々覚えてるワケがねェーだろうが; 
       
      文句を言うのは簡単だが、けれどここでサクラを怒らせたら今日の苦労が水の泡だ。 
      オレはグッと堪えて、代わりにポケットから買ったばかりの指輪が入ったケースをポンと投げて渡した。 
       
      「だから…記念にやるよ」 
      「うわ〜v 
ありがとう! 
開けてもいい?」 
      「ああ」 
      「なにかなぁ〜v」 
       
      子供がワクワクと心を弾ませながらプレゼントを開けるのと同じように、サクラもまた、瞳を輝かせながら包みを開けていた。 
      そして開けた瞬間、驚きの顔を見せた後、――――サクラの表情が、変わった。 
       
       
       
      喜んでくれると思っていた。 
       
      "ありがとう、サスケくん! 
私、大切にするね!" 
       
      とか何とか言って。 
      コイツのいつもの笑顔が見られると思っていた。 
       
      ―――なのに。 
       
      閉口一番、サクラの口から出た言葉はオレの予想からはかけ離れたモノだった。 
       
       
      「こんな高い物、もらえないよ…」 
       
       
      何だよ、それ…。 
      何だってんだよ! 
それは!! 
       
      カカシからはもらったくせにオレからの物は受け取れないって言うのかよ! 
       
      「…オレの選んだ物がもらえないっていうのかよ」 
      「そ、そういう意味じゃ…」 
       
      途端に身体をビクつかせるサクラ。 
       
      違う。怖がらせる為に言ったんじゃない。ただ、オレはお前に―――… 
       
      ああ。 
      なんでオレ達はこうなんだろうな。 
      肝心な所で会話が噛み合わない。 
       
      「お前は…コレを欲しがっていたんじゃないのかよ」 
      「そりゃあ、素敵だな〜とは思っていたけど、私にはとても手が届かない金額だったし、見ているだけで充分と言うか…」 
      「ならいいじゃねェーか。やるって言ってんだから、素直に受け取ればいーだろ」 
      「でも! 
コレ、すっごく高かったでしょ?」 
       
      …高いと言うほど、オレにとっては高くはないんだが。 
      少なくとも、一族の遺産だけでも一生食っていけるだけの額はある。 
      それにオレの収入もプラスされればこんな指輪1つ、大したモンじゃない。 
       
      なのに、サクラは頑として受け取ろうとはしない。 
      こういう所は強情なんだよな、コイツ。 
       
      「サスケくんの気持ちはすっごく嬉しいよ。今日のことを覚えていてくれただけで嬉しいもん…」 
       
      うっ。 
      それを言われると少しだけ罪悪感を感じる。 
      五代目に教えてもらっただけで、実際、覚えていた訳じゃねェーからな。 
       
      「だけど…こんな高い物、もらえないよ。私にとっての最高のプレゼントはサスケくんが傍にいてくれることだから…」 
      「サクラ…」 
      「それが…誰にも出来ない、お金なんかじゃなく、サスケくんしか出来ない最高のプレゼントなんだよ?」 
       
      ね?―――なんて、上目遣いで訴えてくるなよ。 
      お前のそういう仕草にオレが弱いこと、知っててやってるんじゃねェーだろうな。 
       
      サクラの言うことも分かる。 
      分かる―――が、ここで引くわけにもいかなかった。 
       
      「でも…お前、カカシのヤツから本をもらっただろ?」 
      「えっ? 
ああ、丁度欲しかった本で…その…」 
       
      段々としどろもどろとなるサクラ。 
      普段からオレとカカシの仲があんまり良くないことを知っているのか、サクラとしては痛いところをつかれた気分なんだろう。 
       
      「だから、受けとっとけ。そんなモン、オレが持っていてもしようがないだろうが」 
      「でも…」 
       
      未だ渋るサクラに追い打ちをかける。 
      あともう一押しだな。 
       
      「お前以外にやるヤツなんていねェーんだよ」 
      「本当に…いいの?」 
      「いいって言ってるだろ」 
      「だけど…」 
      「あぁ?」 
      「私、何もお返しが出来ないよ…」 
       
      こういうトコロが可愛いんだよな。 
      律儀にお返しのことまで考えてるなんて。 
       
      まぁ、もらえるモンはもらっておくべきだよな。 
      せっかく返してくれるって言ってるんだし。 
       
      だからオレはニヤリと笑って言ってやった。 
       
      「お前自身で返してもらうからいーんだよ」 
      「―――ちょっ…、サスケくん…っ!!」 
       
       
      ああ。本当だな。 
      今ならお前の言った気持ちが分かる。 
       
      金なんかじゃ買えない。 
      お前が傍にいてくれるだけで、最高の贈り物。 
       
      お前にとってのオレがそれで。 
      オレにとってのお前がそれで。 
       
      お互いがいることで最良となるなんてな。 
       
       
      だけど。 
       
       
      こんな風に来年も再来年も、やっていけたらイイかもしれないと思っている自分に一番参ってるよ。 
       
       
       
       
       
       
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      先日のチャットで物々交換をすることになりまして、南方ゆり様&高柳紗雪様へ捧げさせて頂きましたv 
      お互いの金銭感覚の違いからサスケくんがサクラにプレゼントすることになったら、 
      きっとサクラは後込みするに違いない――― 
      と言うことから出来たお話。 所々の台詞は了解を頂きまして、ゆりさんが考えたモノを使わせて頂いてます。 
       あー、本当にチャット楽しかったですv 
      また、チャットをすることになったらお二方、よろしくお願いしますね〜m(_ 
_)m 
       
       
       
       
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      素晴らしきチャットデの頂き物その2 
      AKI様ありがとうございます!! 
      私も、サスケは金持ちだと思います。 
      財産ありそうですよね?よかったねサクラ!(何のこっちゃ?) 
      指輪とは・・・・・サスケ、エンゲージリングはもっと高い宝石にするのか? 
      って突込みを・・・いれてえ←すみませんAKI様 
      むしろこれがプロポーズで!! 
      どうもありがとうございました。 
      次のチャットもぜひ参加したいです。 
       
       
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