衝動







いつだって守ってきた。

俺のことを好きだと言って憚らないヤツを。

最初はウザかった。だけど・・

感謝の言葉を掛けられるたび、いつも俺を見てるアイツと眼が合った時、

向けられる微笑は、理由はわからないが心地よかったんだ――――。



久しぶりに揃った7班。

ナルトはカカシに千鳥伝授をねだり、サクラはそれを見ながら俺に微笑みかける。

「サスケくん、ありがとう。」

心地いいと思っていたそれは今は重苦しいものでしかなく。

助けたのは俺じゃない・・・ナルトだ・・・!

サクラのために何も出来なかった俺は、真実を口にする。

「お前を助けたのはナルトだよ。

 ――――今までに見せたことのない力を見せてな。」

その言葉に驚き、とまどいがちにナルトを見、やがて微笑んだその顔は、

いつも俺に向けられていたものだった。

「・・・・・・・!」

訳のわからない衝撃を受ける。

湧き上がってくる不快感。サクラを見つめる目が自然と険しくなる。

・・・何だってんだよ。そんな顔でドベを見るなよ。


サクラのナルトに対する態度が変わった、と感じたのは気のせいじゃない。

あの時以来、サクラはナルトに優しく接することが多くなった。

どんなに馬鹿なことをしでかしても、怒って殴ることすらしない。

それを見る自分の中に湧き上がるモヤモヤとした感情。

何でいつもみたいに殴らねえんだよ。

俺がサクラを見るたび、サクラはアイツを・・・ナルトを見てる。

そして微笑んでいる。いつも俺に向けていた微笑で。

その度に胸に何かが突き刺さり、冷たい感覚が俺を包むことをお前は知っているのか。

俺の方を見ろよ、と祈るように心の中で呟いていることも。

今も俺の目の前で、二人は寄り添うように話している。

「あのさ、あのさ、サクラちゃんてば、何だか優しくなったってばよ!」

「そ、そんなことないわよ・・・」

俺の方をチラリと見て、サクラは言い張る。

「絶対そうだってばよ!

 ・・・・俺ってば」

そこで一呼吸置いて、ナルトはサクラの顔を覗き込む。

「すっごくうれしいってばよ!」

「ナルト・・・・」

頬を染めてサクラは俯く。ますますナルトは調子に乗って、サクラの腕を取る。

「一緒に帰ろうってばよ。」

・・お前となんか帰るわけないだろ。すぐに振り払われるのがオチだぜ。

半分嘲笑気味にその光景を見つめる。

「・・・・?」

だが、サクラは手を振り払わなかった。

「・・・今日だけよ?」

「やったーっ!!

 一楽行こうってばよ?」

「アンタ、本当にラーメンばっかよね。」

驚きに眼を見開いてサクラを見る。そのサクラの周りを飛び跳ねるナルトが視界に入る。

そしてサクラは・・・俺を見ることすらなくナルトだけを見ながら微笑んでいた。

「それじゃあサスケくん、またね。」

と少し申し訳なさそうに言うサクラと、勝ち誇ったナルトに

「じゃあな!サスケ。」

俺に別れを告げられ、返す言葉を言う間もなく二人は歩き出す。

「・・・・・チッ」

無性に感じる苛立ちと喪失感。

何で俺の方を見ないんだよ、お前は俺のことが好きだったんじゃないのかよ・・・。



「サクラ。」

薄暗くなり人気のない道で、一楽帰りだと思われるサクラに声を掛けた。

「あ、サスケくん。」

小走りに近寄ってきて、俺を見上げて首を傾げる。

「こんな時間まで・・・修行?」

「・・・あぁ」

肯定の返事をすると、サクラは溜息をつきながら

「はぁ・・・やっぱすごいね、サスケくんは。

 わたしなんて今までナルトと――――。」

「ナルト」の言葉を聞いただけで、また苛立ちに包まれ拳を握り締める。

それに気付かないのか、話し続けるサクラ。

「ラーメン食べた後は、ナルトの食料の買出しに行ったりして。

 ナルトってば、本当にカップラーメンばっかで――――」

尚も楽しそうに話し続けるサクラに、もう耐え切れなかった。

「・・・何で俺を見ないんだよ」

想いが声に出た。それはサクラには聞き取れないほど小さかったが、

サクラは話すのを止めて俺を見た。

「え?何か言った、サスケくん?」

「・・・・・・・」

恥かしくて面と向かって言うことなど出来ずに、思わずサクラを睨みつけた。

「あ・・あの、わたし何かした・・・・・・?」

俺の視線に怯えて、サクラがゆっくりと後ずさる。

その肩を掴んで、樹に押し付ける。

「きゃっ・・」

小さな悲鳴を上げて、上目がちに俺を見る瞳には涙が溜まっていて。

それは・・・とても綺麗だった。

「逃げるなよ。」

「逃げてなん――――」

顔を上げて、否定しようとしたサクラに口付けた。衝動的に。

「・・んっ・・・・・・」

身体を離そうともがく身体を押さえつけた。



すぐに唇は離れた、と思う。

「はっ・・・はぁ・・・・・」

だが息が苦しいのか、サクラは荒い息を繰り返す。

涙はとうに零れて頬を濡らしていた。

「サスケくん・・・・・」

「どうして俺を見ないんだよ。」

抱き締めて、もう一度耳元で囁いた。

「どうして・・・俺を見ないんだよ。」

「えっ?わたし、ちゃんとサスケくんのこと見てるよ?」

心底驚いたような声が俺の耳に触れる。

「嘘だ。お前はいつだって…!」

・・・・ナルトしか見てないじゃないか。

「サスケくんしか見てないよ?」

「嘘をつけ・・・」

そう言いながら引き剥がそうとしたら、今度はサクラが俺を抱き締めていた。

「だってサスケくんが・・・好きなんだもん。

 ・・・・・サスケくん以外見るわけないじゃない。」

胸に直接響いてくる言葉に、苛立ちが解けていく。

それでもこれだけは言わずにはいられなかった。

「・・・ナルトばっか見てたじゃねえか。」

「え・・・・・・」

サクラの身体が離れて、再び俺を見上げる。

「あはははは!

 サスケくん、そんなこと思ってたんだ。」

「悪いかよ・・・。」

今更ながらに恥かしくなって、顔を背けた。

「ナルトには助けてもらったから、ちょっとだけ優しくしようと思っただけよ?」

と俺の顔を覗き込む。

「・・そ、そうか。」

「ナルトなんて眼中にないんだから!」

本当よ?と、腕を引っ張り、歩き出すのは俺の家の方向。

「さ、帰ろ?

 遅くなったから送ってあげる。ね?」

と向けられた微笑は・・・・いつももので。

「何言ってるんだよ、こっちだろ?お前の家は。」

やっといつもの調子を取り戻せた俺は、逆にサクラを引っ張る。

「え、だけど・・・いいの?」

遠慮がちに言うサクラに笑みがこぼれそうになる。

「俺が引きとめたんだろ。・・・・ほら、行くぞ。」

「うん・・・ありがとう。」

顔を赤くして微笑むサクラに、俺も自分がしたことを思い出して顔が熱くなった。



「ありがとう、サスケくん。」

サクラの自宅前。何となく気まずく別れの挨拶を交わす。

「いや、俺も悪かった・・・・。」

「ううん・・・うれしかったよ。」

月明かりに照らされながら微笑むサクラ。

「じゃあな。」

「うん、また明日。」

踵を返す。その背中にサクラの視線を感じる。

俺が見えなくなるまで、見ているつもりだろうか。

「・・・フン」

今度こそ本当に笑いが漏れた。

そして・・・もっと強くなってやると誓った。

あの微笑がずっと俺に向けられるように――――。










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先日のチャットでお話したAKI様と高柳紗雪様に送らせて頂くと約束したブツ。
サスケがサクラを見てるとき、サクラは必ず違うところを見てると言った話から
書いてみようと思いました。
台詞の中には、チャット中にお二人が考えられたものもあったり。
しかし・・どうしようもないものになってしまいました。
かなり有り得ないサスケくんがいます。
どうか受け取ってやってください、お二方。



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私、こんな素敵なものを貰っていいんですか?
ナルトに嫉妬しているサスケが素晴らしく萌えです。
サクラを木に押し付けてキスをするあたりが最高です。
「俺を見ろ!」って言うサスケ君がいいんですよ。
ああ、幸せ・・・・・
ゆり様、素敵小説ありがとうございました。




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