死神を見た。




四季遊




今は身体を休めよう。

目的の物を手に入れ損なった
今回の任務。

力を使い過ぎ
小さなアクシデントが
後で大きなミスを引き起こした。

身体全体を覆い隠す死装束。

それが疲れたこの身に
鉛のような重さを与えていた。




―― 情けない。




お前は悪に堕ちた忍だろう。
これぐらいで死期を感じてどうする。
お前の手には誰の血塊が染みている?
お前の瞳は誰を復讐に狩らせた?

―― ここで死ぬのか?

否。

それは有り得ない。









完全に気配を消して
影に隠れていたつもりだった。

しかし、イタチは一つの気配に気付いて
顔を少し上げて見る。




「・・あ・・の」




少女。
淡桜の少女。

「大丈夫・・・ですか?」

脂汗をかいているイタチへと向けられた声は
少し、不安に震えていた。

―― 里の子供か。

真っ直ぐ視線を上げると
少女の頭上に嘗て同志だった証が存在していた。

―― 俺を知らない下忍か。

嘲笑うかのように
しかし、少女には無理して笑っているように見える
そんな複雑な微笑みを贈った。

「大丈夫だ・・・」
「でも・・・・」
「少し疲れただけだよ。
 このまま休ませてくれればいい」
「・・・・・・・」

サクラは青年に一つ視線を投げて。

「少し待っていて下さい」

だっ、とその場を走り去ってしまった。




―― なんなんだ・・・。




自分でも気づかずに
そっと少女の残り香に身を寄せた。
























サクラは近くの薬局で
痛み止めなる薬を受け取ると
また来た道を戻り始めていた。

―― 私、何をしているの?

自問自答。
何故か酷く気になった。

―― あの人、明らかに忍だと解るのに。

では、放っておけというの?

―― 苦しそうだった。放ってはおけないわ。

あの人は助けを求めていない。

―― いいえ。求めていた。

何故?何故、そう思うの?

―― 似ているの。あの瞳が。

誰と?

―― 【うちはサスケ】。

ピタリと足が止まって
目の前に青年の影が映る。

―― ダメなの。ダメなの私・・・。

サクラは無心に薬を差し出した。

「あの・・これ痛み止めです。
 良かったら使って・・・下さい」

その声にゆっくり顔を上げて
青年の寂しげな瞳と真正面からぶつかった。




「・・・ありがとう・・・」




ああ、ダメなの。
私、この【瞳】に弱いの。

サクラはそこから
無我夢中で逃げ出した。
























気が付いたら
見知った演習場に立っていた。

途中の記憶が無い。

それでも逃げ出して良かったと
今は心から思っている。




タン。




奥の的から
クナイの刺さる音が聞こえて来た。

何十回と聞いたことの有る
静かな音。

足を進めて
その音を出した主の姿を視界に入れて
サクラはその名前を呼んだ。




「サスケ君」




振り向いた少年の顔が
先程の青年の顔と重なり
何故か。

そう何故か。

心が締め付けられて
泣きたくなる程、切なくなった。
























受け取った薬は使わなかった。

今更、人の温もりに触れてどうする?
もしかしたら、敵かもしれない。

そんな考えが脳内を支配していた。
だから薬は使わなかった。

足元に割れて散乱した
薬の黒瓶が鈍く光る。




アリガトウ。




あんな卑下た言葉
よく、言えたものだ。

イタチは瞳を細めて
休まった身体を持ち上げた。

―― もう遅い。

闇を知った身に光は残酷すぎる。

眩しいぐらいに輝いていた淡桜色が
まるで、死刑を言い渡しに来たかのように
目の前に現れたのは
誰の意思だろう?

―― 神は居ない。

そう神は居ない。
しかし、唯一、信じる神が
この世には居るのだ。




―― 桜色の死神に会った。




巡る巡る四季の始まり。

死んでいった季節を追い越し
新たな息吹を芽生えさせる。

―― この命に用が無くなった時。
    彼女は迎えに来てくれるだろうか?

その鎌を持ち上げて
この首を切り落とせ。




貴女のお遊びに付き合おう。




end




『四季遊』=しきあそび。

高柳紗雪様のリクエスト
「イタチ×サクラ」です。

覚悟は出来ております。(涙)

イタサクなのに
何気にイタ→サク、サク→イタ。
そして坊ちゃん美味しいトコ取り。(笑)

すみませんでした。(土下座)

―― キリ番・34000のリクエスト小説です。




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どうもありがとうございました

ぎゃー!!
素敵すぎますイタサクサス小説
サスケの良いと取りがナイスです!!

嬉しすぎて涙でます!!

御巫様の小説大好きです。



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