『姫君のバカンス』




「毎日毎日同じ事の繰り返し!!コレではちっとも人生に楽しみがありませんっ。
 何か楽しい事は無いのでしょうか‥‥」


僕は孤独だった。




お父様はバチカン市国の権力者、つまりローマ教皇だ。幼い頃から英才教育を施され、
人生に選択肢など一つも存在しないまま僕は常にお父様の言い成りになっていた。


其れが嫌で嫌で堪らなくてしょうがない。なのに、教皇の娘と言う立場が反抗を許してはくれなかった。


「でも、お父様に逆らって外界の楽しい事に勤しむなんて僕にはきっと‥許されないのでしょうね」



バチカン市国(バチカンしこく、
ラテン語: Status Civitatis Vaticana, イタリア語: Stato della Citta del Vaticano)は、
イタリアのローマ市内にある世界最小の主権国家。

ちなみにバチカンという名称は、この地のもともとの名前であった
『ヴァティカヌスの丘』 (Mons Vaticanus) からとられている。
ここに教会が建てられ、やがてカトリック教会の中心地となったもともとの理由は、
この場所で聖ペトロが殉教したという伝承があったためだそうです。
ま、どうでもいいですけどね、そんな謂(いわ)れは。


ただ、バチカンはローマ教皇庁によって統治されるカトリック教会と
東方典礼カトリック教会の中心地、いわば『総本山』。


其の地を治める偉大なる父に恥をかかせてまで僕は自由を選び取る気には到底なれなかったのだ。



今までは。




「一日だけでもいい、本当の‥恋がしたいのです」


ふとデスクの上に無造作に置かれた見合い写真に目を配った。


相手は様々。次期教皇候補と呼ばれる殿方ばかりだ。
例えばドイツ出身のハインリヒ18世、国務長官であるイギリス人のエドワード枢機卿、
行政庁長官兼市国委員長のイタリア出身カルロ大司教も見合いの候補に挙がっている。


でも。


僕は…‥。


「やっぱり、諦めきれません。ゴメンなさい‥お父様……」







たった一度きりの恋でもいい。

願いは 其れだけ。


一度も外界を知らずに育った箱入り娘の僕はついに其の好奇心と理想に逆らえず城を抜け出すのだった。


其れが、悲しい結末を迎える事になるとも知らずに。
出逢いは突然、恋は必然。僕と彼女の恋愛は、まさに其れだった―――




「白蘭さん、もっと真面目に働いて下さいよ」

「分かってないなぁ、正チャンは」

「は??」

「いーかい??スクープって奴はさぁ、自分からある日突然現れるんだヨ。今ジタバタしたってしょーがないの」

「呆れましたよ、アンタには。もうどうなっても知りませんからね!!」

「…‥チェッ。あんなに怒る事無いのになぁ」




ばたんと大きな音を立てて正チャンは飛び出して行った。
どうせまたチンケな取材を始めに行ったに違いない。
僕はいつも通り新聞とニュースを交互に見てはため息をついた。


「誰だろうネェ、売れないジャーナリスト事務所を開いたのは」


僕の名前は白蘭。イタリアの記者だ。
本当はこんな職業性に合ってないと思うし実際情熱所か働く気なんてちっとも湧かない。
せいぜいやる気になるのは美人コンテストに出る女性やハリウッドモデルの取材くらいだろう。


そんな僕がどうしてこんな事をやってるかって??其れはネ‥‥…



「お前だろ、お前!!こんなちっとも儲からない仕事を持ちかけて事務所開いたのは!!」

「あ、γチャーン。おはよう」

「おはようどころかもうこんばんわの時間だ馬鹿野郎。まぁた仕事サボりやがって。
 今度仕事取れなかったら俺達シャレにならんぞ!!給料無しどころか、家賃滞納で追い出されちまう!!」

「マジで…??」

「冗談言うか、こんなつまんねぇ現実味帯びた冗談をよ‥‥」

「‥‥アハハ」

「笑って誤魔化すな」


そう、僕がγチャンと正チャン誘って始めたんだ。一攫千金も夢じゃないと思ってね。でも、甘かった。


情報源も少ないし資産もそんなに無かった僕は其れでも若気の至りと言うか勢いというか。
計画性も無いくせに事務所を開いたんだ。
幸い正チャンの実家が裕福だから困ったときは泣きついてなんとかしてもらってるけど、
そろそろそういう訳にもいかないよね。



ココに来て初めて危機感を覚えた僕はスクープって奴を人生一度くらいはモノにしてから
転職しようと思って事務所を出る事にした。


「おい、ドコに行くんだ。もう夜中だぞ??」

「ちょっとね〜」

「‥‥相変わらず掴みどころの無い奴だ」



がちゃりと扉を開けて一歩外に出ると生暖かい空気が辺りを覆った。


今は真夏。とにかく熱い。僕は当ても無くぶらぶらとしていた。ココはバチカンよりの地域。
イタリアから独立した其処は元は一緒の国だったはずなのに聖域みたいに思えるから不思議だ。



そして、国境近くに住む僕は其処で不思議なモノを発見した。



其れは。



「‥‥女の子??」


道路の真ん中で眠る、女の子だった。

「うぅ‥ん」

「君、大丈夫??」

「もう‥食べれません」

「……ダメだ、完全に寝てるよ」



初めて見た時は心底驚いたよ。

だって深夜で車が少ないとはいえ道路で堂々と熟睡してるんだから。
僕はとりあえず担いで介抱しようと彼女を抱き起こした。


すると。


「ッ///」


ぱらっと長い前髪が落ちて彼女の端麗な顔が急に目に飛び込んできて。

僕は、一瞬で恋に堕ちたんだ。


見知らぬ不思議な女の子に一目惚れするなんて、自分でもビックリだけど。


「なんて、綺麗なんだろう」

「ん…‥」


仄かにピンクの唇が動くとそれだけで心臓が飛び出しそうになる。
艶やかな蒼い髪も真っ白で血色の良い顔も好みだ。
何より表現しようが無いくらい姿かたちが完成されていた。

ふっくら張る胸も、きゅっと締まったコルクボトルのようなウエストも。そして小さくて柔らかなお尻も最高だと思った。


「故意に触ったんじゃないよ。介抱するためだからネ。‥でも」


そして思った。

こんな可愛くて綺麗な女の子にこの先もう二度と巡り会う事も無いだろうと。
そう思った僕は起こすのも可哀想だと言い訳をしながら彼女を自宅に連れて行ったのだ。


「‥‥家出したのかな??まぁ理由なんてどうでもいいや。今夜は泊めてあげるよ、天使みたいに綺麗で可愛い子」


突然僕の目の前に現れた美しい少女。

其の子がローマ教皇の娘だと知るのは、次の日の事だった。

「‥ココは??」

「あ、起きた??」


コーヒーを片手に僕は彼女の顔を覗きこんだ。すると、うっすら開いた瞳がよく見える。


綺麗な綺麗な、宝石みたいな輝きをした瞳。オッドアイの其れは僕を更に魅了した。
でも、事情が分からない彼女はきょとんとして僕をマジマジ見詰めていた。

そんな顔も可愛いなぁ。そう思って見ていると。


「‥貴方は??」

「僕は白蘭。昨日寝てる君を拾ったんだよ」

「そう、ですか‥僕は寝ていたのですか」

「ウン」

「ココは何処ですか??お城の外ですか??」

「へ??」


いきなり訳わかんないコトを言い出されて僕は絶句した。


お城??何を言ってるんだろう。お屋敷にでも住んでるのかな??
まさかローマのお姫様とも知らずに僕は笑って答えてあげた。
モチロン、テキトーに。


「ま、そーいうことになるかな」


すると顔を輝かせて目をキラキラさせながら彼女はそうですか、
と嬉しげに言った。でも直ぐに困った顔をしてこう言ったんだ。


「どうしましょう」

「‥何が??」

「僕、これからどうしたらいいのでしょう」

「はぁ??」

「よく考えたらココが何処で何があるのか良く分かりません。
 あぁ、迂闊でした!!もっと下調べして入念に準備すれば良かった…‥でも、婚約はもう直ぐだし」

「‥‥ふぅ、ん」


其れで僕はなるほどね、と思って首を縦にうんうん頷いた。
事情は彼女の勝手な独り言でなんとなく察しがついたからだ。


「君、もしかして結婚させられるのが嫌で家出したんでしょう??」


そう鎌をかけて言ってやれば酷く驚いた顔で彼女が僕を見詰めた。


「どうして、其れが分かったのです??」

「なんとなくね〜」

「貴方は…一体」

「しがないジャーナリストだよ。其れより良かったら僕がこの街を案内してあげる」


余程世間知らずなんだろう。そう直感した僕は彼女に惚れてしまった事も相まって案内を申し出た。
でも特に他意は無くて、ただ好きな子と一緒に一秒でも長く居たいと思っただけの事だったのに。


彼女は、僕にお礼のつもりかなんとキスをしてきたのだ。


しかも、唇に。

チュッvV

「ッ///んなぁっ!?」

「クフフ、白蘭でしたっけ。よろしくお願いしますね///」


ボロくて安いアパート。其れでも日当たりは良かった。
もう裾が切れて汚いレースのカーテンから日差しが照る。其の日の光に晒された彼女は異様なほど美しくて、
僕は思わず彼女を押し倒してしまったのだ。

どさり

「な、にを‥??」

「君が…悪いんだよ」

キスされた。

たった其れだけなのに身体が嫌に熱くて気が狂った様に彼女が欲しいという欲望が内から湧き出ていた。

抑えなきゃ。

暴走した自分の欲望を必死に抑えようとした僕は唇を噛み締めて耐える事にした。
でも、初対面なのに何故か愛しげに、でも不安そうに僕を見上げるから。


もう、無理だと思って首筋に顔を埋めた。


「あっ?!」

ちぅ、と白い其れをキツク吸ってやれば赤い華が鮮やかに其処に咲く。

今までいろんな女を抱いてきたけど、後腐れるのが面倒で決して痕何か残して来なかったのにどうしてだろう。


でも、所有の証をどうしても刻みたかったんだ。まるでこの恋が一夜限りのモノだと予感していたかのように。

「なに、して…??」

「まだ分かんないの??」

「……‥は、い。すみません///」

「そっか。なら分かんなくていいよ」

「ひぁあっ///」


そんな余裕も無くて必死な僕と違って彼女はまるで呑気だった。男に襲われてるって自覚、無いのかな。

其れが酷く可愛くて、でもちょっと残念だと思った僕は意地悪したくなって胸にするりと手を差し入れた。


「あ、や‥なんで??こんなところ‥触るのです、か??恥ずか、しいっ///」

「もしかして、こういう事したことないの??」

「んぁ、な…ない、ですぅ///」

「じゃあ教えてあげる。僕が君にいろいろ教えてあげるよ。コレはね、えっちって‥いうんだよ」

「は、ぅ…これが、えっち‥‥ですか///きゃぅうっ!!」


ぴんと張ってる乳首が厭らしくて可愛い。布越しでも分かる。
純白の、まるでお姫様みたいなシルクのドレスに身を包んだ彼女の胸は夢のような手触りだった。


柔らかくて気持ちイイ。


感じてる顔が見たい、でも同時に泣いてる顔も見たいと思うから。
嫌われてしまう事を恐れている気持ちがある反面、どうしても欲望には逆らえそうに無い。
レイプじみた事をしてるのは良く分かるし罪悪感が無い訳じゃない。悲しませたくてこんなことしてるんじゃない。


でも、好きになっちゃったからかな。彼女の全てが欲しいんだ。

そう思って言った。


「嫌なら、嫌って言っていいよ」

「!!」

「‥好きでも無い男とえっちするなんて嫌デショ??いいよ、無理しなくて」

「あ‥その、あの///」

「ハッキリ言わないと、止めないから」

「あぁっ///」

「ねぇ、君の名前は??」

「‥ぼく、は」

「頼むよ、教えて欲しいんだ。君を、知りたいから」

すると一瞬戸惑った様に口籠る彼女。
僕は胸の谷間に顔を埋めて乳房にキスを落とした。早く彼女の中に入りたい。

でも、無理させたくないし傷つけたくも無かった。

こんな一夜の恩で身体を許して欲しいとは思わないけど、せめて名前を呼びたかったから。
自分勝手でズルイなんて分かってる。止められる訳も無いのに彼女に縋る想いで懇願した。



「好きなんだ」


って。

たった一言。



でも其れを聞いた彼女は眉を顰(しか)めつつも頬を染めぼそりと呟いたんだ。



「‥名前は、骸です。嫌じゃ、ありません白蘭///えっち、して??」

その一言で、僕の理性も道徳も一気に吹き飛んだ。

好きな人の、たった一言で。

「好きだよvV」

「あっ、や‥///」

「見せてよ、君の‥骸チャンの全部を」

「‥…恥ずかしい、です///」

「でも、綺麗だ…」

「やだ…‥///」


ぱさりと


彼女が身に纏っていたシルクのドレスが音を立てて剥がされていく。
剥がしているのは、他でもない僕自身の手だけれど。



「日焼け、全然しないの??真っ白で綺麗なマシマロおっぱいだね」

「まし、まろ‥??」

「知らないの??お菓子だよ」

「知りません‥っ、んあぁっ///」

「なら後で食べさせてあげるよ‥…」



そうして現れたおっぱいは想像以上に柔らかくて肌触りも良かった。
何より形が綺麗だ。見事な曲線は歪み一つなく美しい。

そのアーチをまるで辿る様に撫でてやればピクンと腰を浮かせ跳ねる彼女。
シーツに散らばる藍色の髪が波打ってより一層彼女の色香を増してくれる。
絹のような髪に触れたくて、僕はそっと髪を掬ってキスをした。



「可愛いおっぱいに乳首ちゃん。こんなに尖って厭らしいねぇ。僕に触って欲しかったのかな??」

「あ、ぁ…っ///だめ、そんなに…引っ張らないでくだ、さ…い。ちぎれ、ちゃ…///」

「フフ、赤く腫れてきたネ。コリコリしてるよ、触ってみなよ。自分で自分の乳首をさぁ」

「やっ、やめてっ!!いやぁ‥‥」

「おっぱいはこんなに柔らかいのに敏感なのかな??えっちだねぇ」

「んはぁっ!!」


其の間にも絶えず乳首を弄ってやる。

つんと尖る其れは指で摘んだだけでも喜ぶのかもっと硬度を増していく。



そんな厭らしい胸の反応とは裏腹に、初々しく涙目になって嫌々する彼女が何とも可愛いから
僕もついつい意地悪になってしまう。

首を振って嫌がる彼女の手を掴み胸の突起を弄るように操る。
それだけで彼女は顔を真っ赤にし羞恥に悶えている様だ。


ちらっと下肢に目を配ればシミを作ったパンティーが目に映る。


其れが嬉しくて、僕は好奇心と期待を抑える事が出来ず其処に手を差し入れた。



くちゅ‥…


「あうぅっ///や、何…し、て‥??」

「何って、気持ちイイ事だよ。ほら、こうされると我慢出来ないデショ??」

「はあぁーっ!?あぐっ、や‥あひいいぃっ///」



股の中心で乳首と同じ様に尖って硬くなる其れ。
所謂(いわゆる)クリトリス=女性性器を弄ってやった僕はわざと愛撫を強めてあげた。

多分彼女は処女だ。


パンティーを脱がしてマジマジと其処を見詰めた僕は瞬時にそう思った。
ピンク色の綺麗な其処はまだ男を知らない様に見えたから。
でも、何より彼女の戸惑いながらも悶える其の姿が如何にも生娘らしく見えて。


僕は嬉しくて我慢出来なくなって、思わず挿入してしまった。


ズブリ



「ふああぁっ?!や、い‥痛いいぃ///」

「ッ!!き、っつ‥…///」

「やぁっ、抜い…て、‥んはぁっ///」

「凄い‥締め付け。千切れ‥そうだよ、ちんぽ」

「はぁあんっ!!やっ、動か、ない‥でぇっ///」



ぬちゃりと卑猥な音を立てる結合部。


本能のままに雄根を突き入れた僕は余りにも大きい快感の余韻に狂いそうになっていた。

ねっとりとした膣内はコレまでセックスしたどの相手よりも濃厚で絡み付いてくる。
其の心地良さ、気持ち良さは過去最高と言っても過言じゃない。


そうして想像以上の快感を得た僕がふと彼女に目をやったのだけど。


「あっ///んん‥やぁっ」

「‥骸チャン、凄く……綺麗だよ///」

「ひぅ…も、やぁん!!おなか、くるし…抜い‥て、えぇ」

「‥‥ヤダ」

「あ、ああぁっ///」

「だって、君がエロイのが悪いんだよ??そんな顔で、誘うから」

「んぁ‥あ??さそ、う??ぼく、そんなつもりじゃ‥‥ふ、ぁああーっ///」



ヤバイ。


どうしようもなくヤバイ。

潤んだオッドアイにほんのり朱色に染まった頬と、それからしっとり濡れて額にひっつく前髪。

はぁはぁと微かに漏れる息がリアルで、時折きゅっと膣口が僕を締め付ける。
そんな表情と可愛い泣き声、そしてトドメにピンク色に染まった身体が僕を魅了して止まない。


ますます欲情した僕はもう自分を止める気なんて全く無くなっていた。


ずちゅっ、ぐちゅううぅっ!!

「んあああぁあぁーっ///」

「‥むく、ろ。いいよ、もっと‥鳴いてみせ、て??僕が、愛してあげるよ‥‥」

「ひっ、ん‥は、あぁっ///んお。あ、あぁあ‥はぅん!!」

「ほら、僕で‥感じて??まんこ。犯してあげるから‥…」


「や、も‥ダメ、いやぁっ!!きもち、いっ///あぁん!!」



子宮ごと最奥を刺激するように突いた。

それだけで彼女の身体が過敏に震えて反応を示す。
まだ逢ったばかりでよく知りもしないクセに何をやっているんだろう。


其れでも、欲しかった。


綺麗で‥まるで天使の様な君を抱いてしまいたくて。
もしかしたら君は本当の天使で僕の前から直ぐ消えてしまうんじゃないかと一瞬不安になった。

だからどうしても止められそうに無い。

泣いて感じる君を僕だけのモノにしたかった。


そんな、叶いもしない想いを抱いて僕はただひたすら腰を振って犯した。


「やああぁっ!!も、だめ‥おねが、い…ゆる、してええぇ」

「ダメだよ‥僕がイクまで離さない…」

「あひ、も‥イク、いくのおおおぉっ///」

「くっ、まんこ…締め付け過ぎ、だよ!!」



すると、彼女の入り口が突然ぎゅっと締まって僕の雄根を引き千切る勢いで刺激した。
其のせいで出すつもりは無かったけれど彼女のお腹に僕は射精してしまったのだ。

どぴゅっ、びゅるるるっ!!

あ、あぁん///」

「……はぁ。気持ち良かったよ、骸チャン♪」

「……‥ん、っ」

「‥‥アレ??」

「‥………すぅ…‥」

「‥なんだ、寝ちゃったのかぁ」


やがて、泣き付かれて眠るように気絶した彼女はそのままお昼まで目を覚まさなかった。

激しくし過ぎたかな??


少しだけ反省した僕は事の重大さなんて気付きもしないままソファに座って呑気に眠る彼女の髪を梳いてあげた。

起きたら後で街を一緒に観光しよう。なんて思いながら。



「ゆっくり寝てていいよ。起きたら、一緒に行こうね」
そうして彼女が寝ている間。


僕は眠る彼女の身体をタオルで拭いて綺麗にしながらテキトーに軽い昼食の支度に取り掛かったんだけど。


「‥ところで外が騒がしいなぁ。どうしたんだろう」


やけにざわついて落ち着きを無くした街。外では『号外〜号外〜!!』という声がひっきりなしに響き渡る。
一体どんな事件があったんだろうか。余程の事が無い限り街中で新聞なんか配られない。
僕は気にしつつもわざわざ受け取りに行くのが面倒でニュースを見て情報を得ようと試みた。



「何があったんだか。せっかくの事件もジャーナリストの僕のお手柄にならずに
 他の人が手に入れちゃったらあんまり意味無いんだけどねぇ」


パチッ


そう呟きながら僕はテレビをつけてハムエッグを作るため卵を冷蔵庫から取り出した。

家賃が払えないくらい貧しいけど腹が減っては何も出来ないって言うじゃない??アレ、ちょっと違うって??
まぁ細かい事は気にしない。かつんとフライパンの縁で卵を割ってそのままハムと一緒に卵を焼いた。


凄くイイ匂いがする。


その匂いにつられたのかピクリと彼女がベッドの上で動いた気がした。


「‥んん、ん‥‥」

「可愛いなぁ。お腹空いた夢でも見ちゃったのかな??」


じゅう、と音を立てるフライパン。


狭い家のせいで寝室はほとんどリビングから丸見えだ。
ちょっと悲しい気分にいつもさせられるけど、でも今だけはちょっと得した気分だ。



だって、妙に色っぽく裸のままシーツに包まる彼女がキッチンから丸見えなんだもん♪


そんな骸チャンの色気に目を奪われていると。

「本日未明、ローマ教皇の一人娘である骸皇女が行方不明である事が発覚しました」

「‥‥…え??」


『骸』皇女―――


聞き覚えたばかりの名前がやけに耳に残って離れようとしなかった。

僕はモチロン自分の耳を疑った。でも、次の瞬間テレビ画面には寝室で眠る少女と同じ顔が映し出され、
唖然とするしか無くなってしまったんだ。


「そん、な‥‥」


見事な藍色の美しい髪。

真っ白な肌と柔らかそうなピンクの唇。そして、珍しくてこの上ない緋色と蒼色のオッドアイ。


僕は確信した。

間違いない、彼女は『骸』皇女なのだと。

その時だった。

「ん〜、お腹‥空きましたぉ‥…」

「ッ!!!!!」

「コックは、どうしたのです??もう…食事の用意は、出来て‥ます、か??」


むくっと起き上がって眠そうな目を擦る彼女が僕の目に映った。
起きた、そう思ってとっさにテレビを何故か消してしまった。

そして、さっさと妬きあがったハムエッグをお皿に移し変えて昼食の支度を完了させた。



だが一向に僕に気付かない彼女はキョロキョロ半分眠ったままの眼を配って周囲を観察してる。

ココが見慣れない場所で驚いているのかな。


そんな彼女を横目で見ながら僕は出来上がった食事をテーブルに運ぶためリビングへと向かった。
言うまでも無く骸チャンもリビングへ足取りを向かわせる。
だけど、僕とばったり鉢合わせした彼女はまるで初めて僕を見るようにきょとんとしながら指を差して言ってきた。


「‥あ、あなたは」

「おはよう、お姫様」

「ッ!?‥ゆ、ゆめじゃ‥なかった??」


初めは僕の事をすっかり忘れているようだったけど、直ぐに思い出した様だ。

途端に真っ赤になって視線を逸らす。その初々しい仕草が堪らなく可愛くて、
収まったはずの性欲がまた沸きあがってしまいそうになった。必死に抑えたけど。


「‥も、もしかして僕///あなたと、えっち…‥したのです、か??」

「ウン、そーだよ」

「あ///やだ、どうしよう‥恥ずかしい、ですっ!!」


でもセックスした事実に恥ずかしがって両手で顔を覆う彼女の余りにも可愛い事。
おかげで僕は性欲を抑えきれず第二ラウンドまで初めてしまいそうになった。一瞬、ネ。




でも、相手が天下無敵のローマ法王の一人娘だと知った以上下手なことはもう出来ない。

僕だって死刑はゴメンだ。もし強姦罪にでも問われてみろ。
簡単に死なせてくれないかもしれないくらい恐ろしい目に遭う事は目に見えている。

いっそ殺人罪で死刑になったほーがマシだと思えるだろう。それくらい法王は娘ラブで大事にしているらしいから。
昔、彼女のストーカーがメディアで話題になったけどその男はすぐさま法王の鉄槌を喰らったんだ。


どうなったかは、恐ろしくて言えないけれど。


そんな恐怖に怯えながらも欲情している僕に彼女はおずおずと
恥ずかしげに僕のシャツを引っ張ってぽつりと漏らした。


「ねぇ、白蘭‥でしたっけ??」

「ン??なーに骸チャン」

「お願いが‥あるのですが」

「どうしたの??」

「‥‥お願い、今日一日‥僕とお付き合いして下さい!!」

「‥……え、ええぇえぇ?!お付き合いって、まさか…恋人みたいにデートするって事ぉ!!???」


すると彼女は羞恥で涙目になりつつもコクンと小さく頷いた。
そして、潤んだ瞳で上目遣いしながら耳元で囁いたのだ。


「お願い白蘭…今日だけでいいから、僕の事愛してくれますか??」



ごとん


ハムエッグのお皿が床に落ちた。でも、どうでもいい。僕は二つ返事をする代わりにキスをした。


しっとり濡れて、でも可愛くて麗しい愛しい人の唇に。

そうしてデートする事になったのだけれど。

「コレでよし、ですね!!」

「可愛いよ、骸チャン」

「そうですか…??ありがとう、ございます///」


ちょきんと切られた後ろ髪。やけに短くなった項(うなじ)は何とも涼しげで艶やかだ。
僕は隣人のアイリスに無理を言って服を貸してもらった。

さすがにあのドレスじゃあ一発でお姫様って事がバレちゃうだろうからネ。


でも、アイリスに借りたのは少し間違いだったのかもしれない。
「…じゃ、行きましょう♪」

「う、うん///」





積極的なのか天然なのか分からないけど、骸チャンは僕の腕に絡みつくように組んできた。

でも其れと同時に大きなおっぱいがぐにゅんと腕に当たって。




「うわぁ…ヤバイなぁ///」

「白蘭??」

「しかも谷間丸見え…///」

「‥…どうかしました??真っ赤ですよ??」

「い、いやっ!!何でもないよ〜あははは」

「なら、いいんですけど」




其れに全くと言っていいほど気付かない彼女はぐいぐい胸を押し付けるようにくっついてくる。


コレじゃ拷問だよ〜。僕は危うく弱音を吐きそうになりながらも必死に下半身と闘っていた。
街中で勃起してはさすがに恥ずかしい。
仕方なく萎えさせようと不細工な女の太腿に目をやったりパンツ姿を想像したりと空しい努力が暫く続いた。



男って悲しい生き物だよな。



こういう時、一番実感するんだけどネ。ホント‥悲しい事だけど。


そんな僕の気も知らないで骸チャンはニコニコしながら指差した。




「ねぇねぇ見てくださいよ。アレ、とっても面白い建物ですね。
 人が沢山入って行きますよ??あそこには何があるのですか??」




そう言われて其の方向に目をやれば其処にはスーパーマーケットが。
確かにお城にこんなモノは無いんだろう。興味心身で目を輝かせる彼女を見て僕は感心した。

そして、普通の観光も良いけれどちょっと寄り道してもいいだろうと思って
其処に足を運び、お菓子を買ってあげたんだ。












ビリビリ、べり。






「何ですか、コレ」

「言ったデショ??食べさせてあげるって。コレはマシマロ。こっちはチョコレートだよ」

「ふぅん、チョコはよくお城で食べますけど‥コレは食べた事ありません」

「そっかぁ。じゃあこうして食べてみなよ。美味しいから」



僕は袋から取り出したマシマロとチョコレートの液体にべっちょりたっぷり浸して付けた。

確かにチョコ味のマシマロも悪くない。むしろ凄く美味しいと思う。
でも、何も知らない彼女に少し変わった事を教えてあげたかったから。



チョコ塗れになったマシマロを僕はそのままぺろりと平らげた。





「‥ん〜、美味しいよVv骸チャンも食べてみればぁ??」

「‥……じゃあ、ちょっとだけ///」





そして彼女も僕の真似をしてぱくんと口に其れを放り込んだ。


もぐもぐ動く唇が可愛い。思わずキスしたい、
そう思って見とれていると彼女はやがてにっこり満面の笑みを浮かべて僕を覗き込んできた。





「どうだった??」

「とっても、美味しいです!!」

「そう。なら良かったよ〜」







そうして僕達は公園のベンチでゆっくりしながら景色をちょっと眺めたり、
ハトの餌をやったりして何気ない時間を過ごした。



いつもならセックスして終わる恋人の時間。
でも、無邪気に微笑む彼女を見ていると身体を繋げたいのと同じくらいこうして居たいと思わせられる。





特別何かをしなくてもいい。

ただ、傍に居るだけで充実感と幸福感が得られる。こんな事は初めてだよ。





そう思って、僕は彼女の手を取った。





「あ…どこ、へ??」

「もっといろんな所に行こうよ。街が暗くなるまで、案内してあげるよ」

「…‥っ、はい///」
そうして、僕達は暗くなるまで一緒に時間を共にした。



イタリア、ローマの地で。








でも、もうお別れの時間らしい。


とうとう僕達は見つかってしまった。血眼になって探していたSPが彼女に気付いたのだろう。
最も、何時までもこうして一緒に居る訳にはいかないと分かっていたから仕方のない事なんだろうけど。





「どうしても、ダメなの??」

「‥えぇ、そろそろ家に帰らないと。お父様も心配しているかもしれません」

「‥‥‥……」




二人でいろいろなものを見て、いろいろな事を体験した。


スペイン広場でジェラートを食べ、ジョーとベスパに二人乗りしてローマ市内を廻り、真実の口を訪れ、
サンタンジェロ城前のテヴェレ川でのダンスパーティーに参加して。

夢みたいだ。



なのに、その夢は非情にももう終わりなんだね。







「そっか…‥」

「ゴメンなさい」

「仕方ないよ。君と僕の住む世界は、違うんだから‥‥」

「え‥‥??びゃく、らん??」

「さようなら、お姫様。君の故郷に帰っても、僕の事を忘れないで欲しいよ」

「勿論、ですよ」





自然と彼女の目に涙が零れ落ちていく。其れを拭ってあげるように僕は舌で涙を辿ってキスを落とした。


お別れのキス。だけど、きっと永遠に忘れないし忘れたくない。



だって、愛してる。


どんなに離れても、どんなに時が経っても。君だけを、想うから。だから君も僕を同じくらい愛してくれと願って。




「Io l'amo(愛してる)‥‥」






そして僕達は月下の元で愛を誓い合った。もうすぐ迎えのリムジンが来るだろう。

本当はもっと一緒に居たかった。




でも、結局彼女は皇女で僕はしがないジャーナリストだ。こうなるのは運命だったと諦めるしか無かった。
バチカン行きの空港近く。ウロウロしていたお姫様付きの護衛に発見されたのは幸か不幸か分からない。
もうお互い二度と逢う事は無いだろう。




それでも、出逢ったことを後悔なんてするつもりは無かった。








「‥早く来い!!」

「全く、人騒がせな皇女だ。こっちの身にもなってみろ」

「ほら、行くぞ。さっさと歩け!!」

「Ciao(さようなら)…‥白蘭」






名残惜しそうに見詰め合う僕らを鬱陶しく想うのか、乱暴に骸チャンが連れて行かれる。


引き止める力も権利も無い僕にはどうしようもない。だけど、今日の出来事は絶対に忘れないよ。
二度とこんな恋はしないだろう。こんなにも誰かを愛する事も無いだろう。
そうして、こんなにも彼女に心を奪われた僕が彼女を忘れる事なんてきっと無いだろう。
そう想わされるほど僕は彼女に狂っていた。



出来る事ならもう一度、叶わないと知っていても会いたいと願って。





「‥さようなら‥骸チャン」









そうして、後日無事保護され本国に帰った彼女がテレビに映るのを見届けた僕は心に誓った。
いつかきっと一流のジャーナリストになって、彼女に逢いに行くのだと。
其れが、例え無謀で叶いもしない夢だと分かっていても。



END



白骸は大好きなのですが、どうも書くのは苦手意識があります。
白骸は私には難しいのです。
この難しいカプのパラレルを書ける朧月夜様が羨ましい。

文才に乾杯です。
ステキ小説有難うございました。





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