*無条件*





「なぁ・・・お前はこれからもずっとそうなのか?」

「少しは答えろよ・・」

「お前は一度も私を恨んだとこはないのか?」

「ここまで不当な扱いをした私を許すというのか・・・?」




「答えてくれ・・・ククール・・。私は・・・私は・・・・」












暗黒神を倒した後ククールは兄を探し、少ない確立の中見つけ出すことができた。
人里はなれた小屋の中に二人はいる。

全てが終わったにもかかわらず、兄のマルチェロはまだ憎しみが薄れることなく戸惑いを感じていた。
ククールはそんなマルチェロに臆することなく、いつも傍についていた。
時々、そんなククールをマルチェロは鬱陶しく感じていた。

すぐに性格が変わるわけでもない
感情も変えられない。


そのキッカケというものがなかなかつかめないでいた。


だから、一緒に暮らしていてもマルチェロのククールへの態度はあまり変わっていなかった。
まあ少しはよくはなったかもしれなかったが・・・・
マルチェロの根本的な感情が消えてくれないのだ。


「お前はなんで私の傍にいるのだ?」

ある日マルチェロはククールにこんなことを聞いてみた。
今まで散々酷い事をして、傷つけてきた弟は当たり前のように傍にいる。

「アンタのことが好きだからだよ。」
「何を気色悪い・・。」

「本当だって・・」

「・・・・」


「俺は兄貴が好きなんだ。だから、兄貴が幸せだって思えるようなことをしてあげたい。」

そういったククールの顔はとても綺麗だった。そして、穏やかだ。
正直イラついた。

ククールは見目麗しき男だった。
その器量は男女問わず、それはマルチェロとて例外ではない。
修道院でもそうだったが、今でもマルチェロはククールを強引に抱くことがある。
いや、陵辱していると言ったほうが正しいのかもしれない。

でも、何度犯しても、どんなに嬲っても、ククールは綺麗なままだった。

次の日はいつも笑顔でマルチェロへ微笑を投げていた。
苛立ちを感じたと同時になにか、わからないものがこみ上げてきた。
その感情に気づこうとすると、本来の憎しみがストップをかけてしまう。
マルチェロはまだ、闇の中でもがいていた。
むしろ汚れているのは自分なんじゃないかって・・・・・










夜中、マルチェロは目が覚めた。
隣のベッドではククールはすやすやと寝息をたてていた。
大人気ない寝相をしながら無邪気に・・・
危機感を感じたことはないのだろうか?


”兄貴が幸せだって思えるようなことをしてあげたい。”



ククールの口からこんな言葉が放たれたときなんと返したらいいのかわからなかった。
傍によって寝顔を眺めた。
気配に気づかないのか規則正しい息が聞こえるだけだった。
自分の中で激しい心臓の音が聞こえた。
気がついたら自分の両手をククールの首へもっていっていた。
今なら簡単に永久の眠りに送ってやるとことさえできる。
もっと心臓が大きくなった。


「ん・・・兄貴・・・。」
「!!」


緊張の一瞬、われに返ったマルチェロは手を元に戻して自分のベッド内に入り眠った。
・・・・その時マルチェロは気づかなかった。


ククールが静かに涙を流して寝ていることを・・・・




















その事があってから、マルチェロはククールを頻繁に陵辱するようになっていた。
少し前ならそこまでしていなかったのに


「や・・・」

涙を流し力いっぱい抵抗するククール
躊躇いもなくマルチェロは攻め続ける。

「やめ・・」

何も言ってあげない。
ククールがいつも紙を束ねているのに使っているリボンで手を繋いでいる。

「いいか・・俺はいつまでもお前が憎くてしょうがない。良く覚えておけ。」

「兄・・・貴・・・?」

マルチェロは言葉とは反対の行動をした。
ククールの手を縛っているリボンを解いた。


「・・・え・・・?」


マルチェロはその大きな手でククールの体を撫でた。
だんだん上にいき、鎖骨で止まる。

「兄貴・・・?」


マルチェロは黙ったまま、手をククールの首へ持ってきた。
「・・・・」

力を入れた・・・


「つ・・・・あ・・」

なのに、ククールは抵抗しなかった。
だまってその痛みに耐えていた。

「貴様何故抵抗しない・・」

それでもその間動かないククールに苛立ちを感じる。

力を強めた。
案の定ククールは手をマルチェロの方へもっていこうとする。
でもそれは抗いの行動ではなかった。


ククールは悲しそうな瞳いっぱいで両手をマルチェロの頬へ触れた。

「なんのつもりだ?」


苦しそうにククールは笑った。


「兄貴が・・・幸せだ・・・て思・・・るようなこ・・・・してあげたい・・・はほんき・・」
「煩い!黙れ!」
マルチェロはもっと力を入れた。


「・・おれ・・しってた・・あの・・・夜の・・こと・・・」
「!!」

「兄貴が・・・これで・・幸せ・・・・なれる・・・・なら・・・・は受けい・・・」

「黙れ!黙れ!黙れ!!!!」






「!!!」





ククールの体は全身の力が抜けたようにグっと重くなった。
呼吸をしていないことを確認した。

頬をたたいても気がつかない。

左の胸の動きを確かめようとして触れた。

動いていない・・・・



殺してしまった・・・。


マルチェロは暫く呆然としていた。



いなくなればいいと思っていた。
邪魔だった。

でも、実際にこうなってしまえば割とあっさりしている。
たやすいことだった。

残ったものは、ククールの温もりと、死に際の言葉と、喪失感だった。





















それから暫くは喪失感を感じる中、普通の生活に戻った。
死体は近くに埋葬した。
情けで墓も一応つけてやった。
後で、呪われては困るからだ。









自由になれると思っていた。

一人でいたいと思っていたのに・・・


望んでいたことが今実現したのに・・・

達成感も、喜びも何もない


気持ちが悪いだけだ。















ある日、外の中が騒がしかった。
なんか胸騒ぎがした。
そっと窓を開けると、大聖堂の国旗を下げた騎士がここへ来るのがわかる。



マルチェロは臆することもなく外へ出た。

きっと前法皇殺人容疑で捕まえようとしているのだろう。

「いたぞ!!」
「捕まえろ!!」

これほどのレベルの騎士ならマルチェロには関係ない。
剣は持っていなかったが、身体能力と魔法で逃れることができた。

しかし、数が多すぎた。



ここは山の麓だ。
一歩間違えれば、囲まれたところの後ろは崖というパターン陥りやすい。


でも遅かった。
今、マルチェロの状況は背水の陣だ。


これまでか・・・

死を覚悟した時だった。


銀色の光があたりを包み込んだ。
光は閃光となり、マルチェロを追い詰めていた騎士達を攻撃した。
体を貫通させられたものたちが次々と倒れていった。







「・・・」
マルチェロは言葉を失った。
こんな不思議なこともあるんだと。
マルチェロが無事となり、光は瞬くに光った。

でも何故?

その光に幻影が見えた。
髪の毛の長い銀色の・・・

覚えのあるシルエット・・

その顔は笑っていた。


「・・・お前・・・!!」


マルチェロは手をのばそうとしたが、光は・・・・その中に見えた銀色はだんだん薄くなっていく・・


「待ってくれ・・ククール!!お前は・・」

ククールは笑ってるだけだ何も言わなかった。

もうここにいるのが限界なようにうっすらと消えていった。





「・・・・・・お前は俺を・・・・守ってくれたのか?・・」








”兄貴が幸せだって思えるようなことをしてあげたい。”



「!!!」
今になってそんな言葉を思い出した。


「・・・・お前は・・全く・・」


死んでなお・・・その想いが溢れていた。
自分はこんなに愛されている。
いや、愛されていたんだ。

目が熱くなってきた。

こんなことは初めてだ。



無視し続けて、否定ばかりしていた弟はこんなにも自分のことを思ってくれていた。


「馬鹿者が・・・」


気づいたら、地面が濡れていた。
何か頬を伝うものを感じた。
今理解したんだ。



自分が泣いてるって・・・





今更、取り返しのつかない事をしたなんてわかってるさ。





「ククール・・・・・。」

















その事があってから誰もマルチェロのいるところには近づくことはなかった。

行こうとしても近寄れない。
まるでククールが守っているようだった。













「なぁ・・・お前はこれからもずっとそうなのか?」
あれからマルチェロはククールの墓の前で毎日座ってこんなことを繰り返していた。

「少しは答えろよ・・」
答えられるはずがない。


「お前は一度も私を恨んだとこはないのか?」

「ここまで不当な扱いをした私を許すというのか・・・?」
返事はない。



「答えてくれ・・・ククール・・・・。」







「答えてくれ・・・ククール・・。私は・・・私は・・・・」



後悔しているんだ・・・



風だけがザワザワとマルチェロに語りかけた。



十字架の墓には、マルチェロが身に着けていたペンダントと二人の指輪が飾られていた。


せめてもの罪滅ぼしのように・・・

















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せっかくのマルクク祭りに死にネタを送って反感を買ってしまうこと間違いなしです。

描きたかったのは、死んでもなおマルチェロを守るククールと
泣くマルチェロ
これだけのためにこんな駄文を・・・

すみませんでした。





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