花が咲き散る頃    後編









「おぉ・・・そうか、ついにククールも心に決めたか・・・。」


次の朝、ククールは修道院を出て行きリュウと結婚するという意志をオディロに伝えた。
オディロもククールが結婚を決めてくれたことに喜んだ。


「ククール、おぬしには幸せになってほしい。」
「院長・・ひとつお願いがあります。」
「なんじゃ?いってみろ。」


「兄貴には・・俺が女だって事一生伝えないでください。」


そのほうがいい。
かえってマルチェロを混乱させるだけだから。

「ククールや、お前はそれでいいのか?」
「いいです。かえって兄貴を困らせくない。」

「わかった。約束しよう。」


少し残念そうな顔をしたが、オディロは約束してくれた。
本当は女だというjことを伝えたい。
しかしソレはあまりにも無謀だ。


「俺はこれで・・・リュウにも話してきます。」




ククールが修道院を出て行く話はすぐに広まった。


リュウは断られると思っていたのでとても幸せな顔をしていた。
表面はリュウの屋敷の執事として出るということだが、ソレは違う。
リュウの花嫁とし出て行くのだ。














今日は修道院にいるのが最後の日になった。
ククールもリュウも部屋は綺麗に片付いている。
最後だからってなにか特別な事があるわけではないけどやっぱり少し寂しい。

二人はオディロに呼ばれてた。






「さて、リュウ・ククールの婚儀だが、出席はわしだけにするぞ。」
「そうですね。身内だけでひっそりやります。」
「ごめんな・・リュウ俺のせいで・・・。」

「ククールのせいじゃない。俺はククールと一緒になれて嬉しいよ。」
「リュウ・・・。」

明日には朝早くここを出る。
リュウとククールは早めに休むことにした。

しかし、ククールはなかなか寝付かず夜風にあたることにした。
ドニにはこの前報告にいった。
ここの町並みにもおわかれなのか。
生まれ育った家、町を離れるのは少し寂しいきもするが、これでよかったのだろうと一人で納得した。


風に当たりすぎると冷えるので、ククールはほどほどにして部屋に戻ることにした。
マルチェロの部屋をふと見るとまだ明かりがついていた。
ククールは見つからないようにそっと部屋へと戻ったがあまり意味は無かった。

「そこで何をしている。」

マルチェロは見回りをしていたのだ。


「・・・少し夜風に当たっていただけです。」
「フッ・・最後の最後まで規律を乱すとはさすがだな。」
「・・・」

「やっとお前をここから追い出せると思うとせいせいるよ。
 リュウの片腕になるそうだがあまり品位を下げるような行為はここの修道院にも汚名がつく。くれぐれも注意するんだな。」

マルチェロは言いたいことだけ言うと去っていく。

「ちょ・・待てよ。」

マルチェロは顔は合わせくれなかったがとまってくれた。

「あんた・・俺が・・・」
「私はお前がいなくなって今心から喜びを感じているのだ。あまり今の気分を壊さないでくれたまえ。」
「!!」

「・・・そうかよ・・。」

駄目だ・・・泣きそうになる。
しかし、思った時にはもう遅かった。
頬から一粒の涙が流れ出していた。

ククールの様子がおかしいと悟ったマルチェロは振り向くと、ククールが泣いてることに驚いた。
その様子があまりにもいつもと違うのでマルチェロは戸惑った。

ククールは最後の最後で見せてしまったのだ。
女の顔を・・・・
ククールはこの場にいるのが怖くなってあわてて走り出した。

















そして、早朝ククールはリュウと修道院を出て行った。
見送りはオディロだけだった。

「ククールや、気をつけていくのだぞ。わしはおぬしの幸せを願っておる。」
「ありがとう院長。」
「では院長今までお世話になりました。」
「うむ、少しすればわしもそちらに行くぞ。お前達の式にな。」
「「ない。」」




馬車が揺れる中ククールは一言もしゃべらず景色を眺めているだけだった。
リュウはククールをそっとしておくように黙ったままだった。



リュウの家に着くとククールはリュウの家族に歓迎された。
ククールはこれはこれでよかったのだと自分に言い聞かせた。






「ククール、後悔しているかい?」
「え?」
「なんか浮かない顔してるよ。」

「ごめん、ちょっと戸惑っているんだ。だって式とかもすぐだろ?」
「そうだね。なんか両親がすごいまいあがっちゃって・・・。」

ククールはもらった殺風景な部屋から外を眺めた。
もう何時間こうしてるだろう。
リュウにも心配させている。


「ククール心配するな。形だけだ。俺はちゃんと待つから・・お前の気持ちの決心がつくまで何もしないよ。」
「リュウ・・・。」

この男はいつもそうだ。
修道院にいるときもいつも自分の心配をしてくれていた。
自分はこんなに愛されている。
もうこれ以上心配させちゃいけない。
もう、決めたのだから・・・・・


「ありがとう。大丈夫。」




















「マルチェロや。」
「なんでしょうか?院長。」
「わしは明日から、出張で出かけるぞ。」
「そうですか、ではお供を・・・」

「いいのじゃ、わし一人でいいのじゃ」

リュウとククールの結婚式にマルチェロや他の団員を連れて行くわけにはいかない。
混乱を招くだけだ。

「知人の結婚式でな。あまり騒ぎ立てをしたくないのだ。おぬし達がいったらかえって驚いてしまうぞ。」
「そうですか・・・」
「なにおぬしは心配性じゃなの。すぐに戻るわ。」
「はい・・。」

「さて、わしはそろそろ準備をするかの。」



オディロはドア開けたがしばらくたったままだった。

「院長・・・どうなされました?」

「いや・・・わしは迷っておるのじゃ。」
「何をです?」
「ククールのことじゃ・・。」
「ヤツが・・・なにか・・・・?」

オディロは振り返り、微笑んでこうつげた。
「ククールには黙ってくれと言われてんじゃが、おぬしには言っておいたほうがいいだろう。」

「・・・・・・」

「マルチェロや・・・ククールは・・・女の子なんじゃ。」
「!!」
「明日は、リュウとククールの結婚式に出席するのじゃ。」
「まさか・・・そんな・・・」
「思い当たるふしが無いのがないのか?それでもいい。」
「・・・」

マルチェロはオディロの言葉が今にも信じられない。
思い当たることは決してないわけではない。
あの日、ククールが出て行く前夜見せた表情は、女の顔をしていたのだ。
あの時の違和感はソレだったのだ。


「言ったから何かがかわるわけではない。ただ伝えたかっただけじゃ。」
「・・・・」
「それではわしはもう休むことにする。マルチェロやお前もひっそりと見に来ていいんだぞ?」
「いえ・・・私は・・・。」




































「ククール入るよ。」


ククールは白いドレスに身を包み、そわそわしながら時が来るのを静かに待っていた。
もうあと時間が過ぎれば自分とリュウは婚儀を挙げる。
用意も出来た。
心もきめた。
大丈夫。

「リュウ。」
「あぁ!!綺麗だよククール!」

「あ、ありがとう」

「行こう。オディロ院長が待ってるよ。」


下ではオディロがいた。
「しばらくぶりじゃのククール。やはりそういう方が似合う。」
「院長・・。」

「俺は先に行ってるよ。」

「もしかして、バージンロード一緒に歩いてくれるのは・・・・」
「そう、わしじゃ。」


「さて、いこうかの。」
「うん・・・」



オディロに引かれて、ククールは聖堂の扉を開けた。

ゆっくりバージンロードを歩く。

扉が開いた瞬間視線はククールに集中した。
みんなククールの美しさに見とれていた。
ククールはそんなこともわからなく、いたたまれない気持ちになった。

壇上に着くとリュウと二人、目の前には神父の姿。
ありきたりな聖書の言葉に、婚儀の台詞。
そして誓い・・・



汝・・・死が二人を別つまでともに愛しぬくことを誓いますか?

「誓います・・・」


そしてククール


「ちかい・・・・・・」



突然扉が乱暴に開いた。
後ろを無理向くとマルチェロがいた。
一同騒然とする。

「あ・・・兄貴・・・なんで・・。」
「団長・・。」

マルチェロはゆっくりバージンロードを歩き、ククールの前に止まった。

マルチェロはククールの姿を確認すると、一気に力が抜けたようだった。

「兄貴・・・なんで・。」
「院長から聞いた。」
「な!!」

ククールは院長を見ると、オディロはお茶目な顔して笑っていた。

「お前・・・本当に・・。」




しばらく沈黙が流れた。
何も知らないほかの客は何が何だがわからずざわついていたが、この中で一人冷静だったのはリュウだった。
まるでこのことを知っていたかのように・・。


「そうだよ。兄貴・・おれは女だったんだよ。もういいだろ?邪魔すんな。」

目をそらし後ろを向いた。




「あ!!!!」




教会の中がざわめいた。

マルチェロはククールを肩に担いだからだ。

「え・・な・・・ちょ!!マルチェロ!!」

「団長・・。」


「失礼・・うちの妹は女としてのたしなみが何一つなっていない。」

リュウは静かに笑った。

「でしょうね。うちもそこそこの名家なのであるとないとでは、あるほうがいいですよ。」

「リュウ!!お前助けろよ!!」

「ククール。自分の気持ちには正直でいたほうがいいよ。」

「では、失敬。」



マルチェロはククールを担いだままバージンロードの真ん中を歩き、扉をあけて去っていった。





「リュウ・・。」


院内が混乱の中、オディロはリュウに話しかけた。

「院長よかったんですよこれで・・・・ククールはずっと浮かない顔ばかりして・・・」
「・・・・そうか・・・。」

「それに・・まだまだ機会はある。」



























「兄貴の馬鹿野郎・・・。」


ククールはまだ担がれたままだった。


「うるさい・・。貴様自分が女だと何故言わなかった。」
「だって修道院にいられないじゃないか!」
「馬鹿か・・別に騎士団じゃなくてもいい・・。」
「え・・・」
「お前は・・・・そうだな・・・。シスターか・・・まぁその言葉遣いじゃ無理だろうがな。」


「なんだよそれ!ってかおろせよ!」
「駄目だ。逃げられては困るからな。」
「・・・・・逃げないからおろせよ。」


「気が変わった。マイエラまでこのままだ。」

「ええ!!マジかよ!!おろせよ!!」
「・・・ははは・・・もう俺・・馬鹿みたいジャン・・・ふ・・・ふ・・。」
「な・・お前・・」

「うるせぇよ!・・っく・・こんなことになって・・・泣きたくもなる・・・」
「わるかったな・・・それならマイエラに帰ったら普通に女性らしく生きろ。」
「え・・・」
「こうなってしまった以上、無理だからな。」




「兄貴・・・ありがと・。で、ひとつ頼みがあるんだけど・・」


「なんだ?」



「・・・頼むからおろしてよ・・。恥ずかしい・・・。」

















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終わった。・・・長かった。
かきたがったのは花嫁泥棒のマルチェロ(笑)

だかたいろいろ変なところがありすぎて展開が速かったと思います。
妹ククール大好きなあまりにすごいもの書いた気がする。

リュウをいい男にしすぎたかもしれませんね。
まぁそんな誠実な男性というイメージで書きましたのでこれはこれでよかったのかも。








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