風になりたい   後編





ゼシカは朝になって帰っていった。
昨日あんなことがあったが、朝になり普段と変わらぬ光景がみえた。

あの二人の子供なだけにきっと心のうちを見せていない。
コレはゼシカには関係のない、マルチェロと子供達の問題だ。


昨日変なことを聞かなければ良かったとゼシカは少し後悔した。


マルチェロがふもとの教会へ行った少したってからゼシカは去った。


「ルカ・サラいい子にしてるんだよ。」
ゼシカはそういってリーザスへ帰っていった。









リーザスへ帰ってからはイライラすることが多かった。
後味の悪い気分がますますゼシカをイラつかせている。
でも、今行ってしまっていいのだろうか?


ルカとサラが寝しずまった夜に行こう。
そうだ。
そうしよう。

だって気になって仕方ない。


”私とルカちゃんパパの子供じゃないの・・・?”




間が悪かったのだ。
このむやむやを早く取り除きたかったゼシカは今夜マルチェロの家に行くことにした。


しかし、我慢しきれなくゼシカは夕方にマルチェロの家についてしまった。

きとマルチェロが丁度帰ってくる頃だろう。
ノックをしても誰もいない。
可笑しい・・・いつもだったらルカとサラがいるはずだ。
今日は出かけているのだろうか?
寝てるのかな?ゼシカはそっとドアを開けた。

しんと静まり返った部屋。
気配がない。誰もいないのがわかる。


「ルカ・・・サラいないの?」

全くあの子達は、また道草でもしているのだろうか?



扉を開ける音がした。
「ルカ?サラ?」


「・・・お前・・・!!」

「あ・・・!!」


帰ってきたのはマルチェロだった。
「来てたのか・・。」
なんとも気まずそうな顔で、家の中に入った。
「ねぇ・・・ルカとサラは?」
「そこにいないのか・・・?」

・・・・・・・・・・・・

「え・・・・?」
「・・・・いないのか?」

ゼシカとマルチェロは互いに静まり返った。
「ちょっと待ってよ!!」
ゼシカはいやな予感がした。
ゼシカが来た時はルカとサラはいなかった。

二人で勝手にどこかへ行くことはない。
ちゃんとマルチェロに行ってから行っている。
こんな事は初めてだった。
外を見るともう暗くなっている。

いくら平和な世の中になったとはいえ、世間は物騒だ。
一刻もはやく二人を探さなくては!!

「探しましょう!!」
ゼシカはマルチェロを促した。
無論、マルチェロも同じ気持ちだ。
夜になれば寒くなる、小さい子供にはきつい。

「あぁ・・まだ遠くへ・・あの二人はルーラが使えたか・・」
「でも・・まずは近くから探しましょう!!」
移動手段のもっている子供達・・・・・一体どこへ消えたのか?
まさか・・何かに巻き込まれたのか?
早く見つけて安心したい。

マルチェロとゼシカは必死になって心当たりを探した。
もしかしたらとゼシカに会いにリーザス地方
二人の遊び場所
ククールの故郷ドニ
いったん教会へ戻ったが・・・・

姿は一向に見つからなかった。


「ドコへ行ったのかしら・・・?」
「・・・・」

マルチェロは暗い顔をしている。
こんな顔を見たことない。


「・・・・・」
「・・ね・・大丈夫よ!!きっと見つかるわよ!!」
ゼシカより落胆しているのは当たり前だ。


「・・・あの時もそうだった。」
「え・・・・・」
マルチェロは今にも泣きそうな顔をしていた。

「ククールのときも・・・私はこうして何もすることができなかった。」
「・・・」

「どうすればいいのかわからないのだ。怖かった。兄妹でこんなことになってしまって・・・」
ゼシカは黙ってずっと聞いていた。

「私は・・・臆病者だったのかもしれない。あの時・・ククールに・・・・怖くてはぐらかして・・
 何も言えなかった。私は・・ただじっと・・・・あいつが死にいくのを見ていただけだ。
 今回の事だってそうだ!私はククールを愛していた自信がないことを自分の子供に押し付けていた。
 本当は、初めからわかっていたのだ・・・ルカとサラは私とククールの子だと・・・
 ククールが死んだ今、私はどうやって接したらいいのだ?今までククールをあんなふうに扱ってきた私に・・?
 ・・・・こんなことを望んだのではない。私はどうすればいいのだ? ミス・アルバート!!」

あぁ・・・この人は本当に不器用な人なんだ。
ゼシカは親友がどうしてこの男を愛していたのか、今わかったような気がする。
イヤミとしか見えなかった男
痛くも不器用でまっすぐで・・きっとそこなんだろうな・・・

「諦めちゃ駄目よ!!まだ間に合うわ!!」
ゼシカは意志の強い瞳でマルチェロを見据えた。
「まだないの?心当たり?」
「・・・あ・・・」

「ほら!!ルカとサラの行きそうな場所!!ククールとの思い出の場所とか・・・」
はっとマルチェロは思い出したかのように顔を上げた。

「・・・サザンビークの湖・・」
「え?」
「あそこは良く・・4人で行っていた・・。」
「じゃあ!きっとそこよ!!今すぐ行くわよ!!」

ゼシカはマルチェロを掴んでキメラの翼を使い、すずさまサザン湖へと飛んだ。
そこは大きな街道ではあるが森がある。
夜になると真っ暗で何も見えないほどだ。
ランプをつけてくまなく探す。

 
「いた!!あそこ!!」
見えた。二人ともいる。

マルチェロは駆け寄ろうとしたが、ゼシカはそうはしなかった。
「なぜ・・いかぬのだ。」
ゼシカはマルチェロの手を握る。

「二人が待っているのは・・私じゃないわ。・・貴方よ・・行ってあげて。」
悔しいけどね。と付け足して・・・

「ミス・アルバート・・ありがとう・・。」
マルチェロはゼシカにお礼を言って子供達の方へ駆け寄った。

「・・・・不器用男が・・・!」





「パパとママ仲良かったよね・・。」
「うん・・でもパパはママのこと嫌いだったのかな?」
「あんなに優しいママのことを・・・?」
ルカとサラは湖の手を伸ばし、水を飲む。
二人で彷徨って最後についたのはこの場所。

「ここでよく・・お弁当もってきてピクニックしたよね。」
サラは少し涙ぐむ。
「私達のとこパパ嫌いなのかな?」
「サラ・・・泣くなよ。」
泣きじゃくるサラにルカは優しく頭を撫でてやった。


「ルカ・・・・サラ!!」



「ねぇ・・パパの声だよね。」
「え?」



振り向けばマルチェロがたっていた。
息を切らして・・・


「パパ・・」
サラは今にも泣きそうだった。


「パパ・・・私達・・・パパに嫌われてるの?ママのことも嫌いだったの?」
「・・・・僕達・・・パパの子供だよね?」

不安そうに見上げている。
・・・マルチェロは黙ったまま膝を突きルカとサラを両手で包み込んだ。

「・・・ゴメンな・・ルカ・・サラ・・。」
「「パパ・・・」」

「ルカとサラはパパの子供だから、何も悪くない・・。
 ゴメン・・・パパがちゃんとしていたら・・こんなにならなかったのに・・・・・さあ、帰ろうか・・」

ルカとサラは泣き出し、マルチェロはそんな二人を見て頭を撫でて二人を抱き上げた。

そっと木の影に隠れてみていたゼシかもとても嬉しそうだった。



「ククール・・・・ちゃんと見てる?あんたが愛した男はちゃんと気付いたよ。大切なもの・・。」
もう役目も終わりとゼシカはそっとリーザスへ帰って行った。

ルカとサラに会いたいのはやまやまだったが、今は出るべきでない。
残念だが帰ろう・・・・・・







「ルカ・・・サラ・・・帰ろう・・」

「「う・・・うん・・・・」」
泣きじゃくっていたが、自分の父親にしっかりとしがみつき言葉を返した。





















あれから幾日かたっていた。
ゼシカの元へ3人の客が訪れた。
それは意外にもマルチェロとルカ、サラだった。

ルカとサラは外でポルクとマルクと遊んでいる。



「久しぶりね。ルカとサラがいなくなってからあれっきりだったわね。」
「何故あの時先に黙って帰ったのだ?」
マルチェロとゼシカはのんびりお茶を飲んでいた。

「私はお呼びじゃなかったからよ。あれは貴方と子供達の問題でしょ?」
「・・・・」
そういわれては何もいえない。


「貴方のいうとおりだ。」
「ルカとサラは元気みたいね。」
窓を見ると元気良く遊んでいる姿が見える。


「それとね、今日来ている客は貴方だけじゃないのよ・・。入っていいわよ。」
ドアを開けると見覚えのある男が2人

エイトとヤンガスだ。
「もう大丈夫だろと思って二人にはククールのこと話したわ。」
ヤンガスがおろおろしてるようだが、エイトは心なしが表情が少しきつかった。

エイトはかまわず、マルチェロの胸倉を掴みにらむ。
「エイト!」
「兄貴!!」

「一つだけ・・・聞きたい事があります。」
「・・・・なんだ?」
「・・・昔はもうどうでもいいですが、ククールのこと愛していましたか?」

一番肝心なことを聞いていないといわんばかりの言葉だ。




「・・・・・・私は・・・ククール以外の女を妻として娶る気はない。これからもずっと・・。」
エイトはマルチェロを放した。
「ごめんなさい・・マルチェロさんの本心を確かめたかったんだ。」
「コチラこそ・・今までの無礼を許してくれますか?」
「もちろんさ。」

マルチェロとククールは握手をする。















「もう帰っちゃうの?泊まっていけば?」
夕方になりエイトとヤンガスは泊まることにしたが、マルチェロたちは帰ろうとしていた。
「いつまでも迷惑をかけるつもりはない。」
「そう・・・またいつでも遊びにきてね。」

「あぁ・・・」
3人を光が包み閃光となり一瞬として消えていった。



「はぁ・・・なんだか私も子供が欲しくなって来ちゃったな〜。
「姐さん!!それじゃ相手いるんでげすか?」
「いないに決まってるでしょ〜・・・サーベルト兄さんみたいな人どこかにいないかなぁ・・」
「それじゃ一生無理だね・。」
「エイト!なんかいった?」
「別に・・・」







「まぁ・・・あいつの穏やかな顔を見る限り大丈夫でしょ。」
ククールの忘れ形見となった子供たち。



「ククール・・・アンタって幸せ者ね。」

ゼシカはククールの写真を見ながら投げかけた。

ククールは微笑んでいるように見えた。












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終わりました。いかがでしたでしょうか?
その前に、これを読まれている方が少ないと思います。
子供がいる設定なんて・・探してもないと思いますよ。

内容が痛い!!マルゼシ風になってしまったのもまた事実。
いやあくまでもくれはマルク前提でのマル+ゼシです!!
此処まで読んでくださってありがとうございました。



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