悪の双子  3





暫くずっと勉強三昧で王宮に篭っていたアレルヤだったが、今日は久しぶりに休みを取る事にした。

たまには気分転換もいかがですか?と大臣の一言でハレルヤと一緒に場城内をでた。

「僕、城から出るの久しぶりだよ。」

「そういえば、そうだったな。」

「懐かしいね、お母様がまだ生きていた頃だったね。」

「そうだったな。ガキの頃もこうやって良く外に遊びに行ってたな。」

「うん・・・。」


近くの海だったり、原っぱだったりして
川辺で水の掛け合いや、花を摘んでアレルヤがハレルヤに冠を作ってあげたり・・・。


「いつの間にこうなっちゃんたんだろうね。」

「アレルヤ・・・・?」

「戻りたいな・・・アノ頃に・・・。」


幸せだった頃に・・・・・。









今日は森へ馬を走らせていた。
森の少し奥に、湖があってそこは綺麗な水と植物が数多くある。

ハレルヤが最近見つけた場所だった。


「わぁ!すっごい綺麗!」

「だろ?俺の取って置きの場所だぜ?」

「わ〜。」


馬から下りると、アレルヤは感激のあまり興奮する。
水は透き通ってて、水底まで見えていた。

どやら中心まで行かなければそれほど深い湖ではないようだ。

手で掬って水を飲むと、とても美味しかった。


スカートの裾を少し上げて、脚を水の中に入れる。
バシャバシャと脚をバタ付かせれば、水しぶきが太陽の光を浴びてキラキラと光る。

周りの植物は湖の水分を貰い、青々と綺麗な色を出している。
花もいろんな種類があり、一部花畑になっていた。

「アレルヤ、俺少し奥に行ってなんか食いモン調達してくっから。」

「え?だってお弁当渡されたじゃない。」

「そうじゃなくうて、料理長になんか食えそうなもんあったら取ってこいっていわれてんだよ。」

「そうなんだ。気をつけてね。」

「お前もな。ま、ここら辺は凶暴な動物はいねーから大丈夫だろうけどよ。」


ハレルヤは念のため、サバイバルナイフとロープにカゴをもっていった。
アレルヤはもう少し湖で遊ぶ事にした。


ポカポカと温かい日差しがアレルヤの体を温める。


「そういえばこんな楽しみ最近なかったもんね。」


のんびりと、アレルヤは背中を後ろに傾けさせた。
上を見上げれば澄んだ空が青々と一面に広がる。

太陽の光が少し目に眩しいが、日の光とはなんと暖かな事だろう。
外の恵みを浴びるのはとても気持ちいい。

「ふ〜!このまま寝ちゃったら、きっと落ちちゃうわね。」


アレルヤは足を湖から引き上げた。
さっきから気になっていた花畑へ向かう。

赤に白に黄色。桃色、青色に色とりどりの花が一面に咲く。

「わぁぁあ!!近くで見たほうがすっごく綺麗!」

こんなにたくさんあるから、少しくらい摘んでいっても大丈夫だろう。
沢山の種類の花を少しづつなら大丈夫だろう。

持ってきた紐で茎を縛れば花束の完成だ。

「フフ。部屋に飾るのが楽しみね。」


ふと、横にいた蝶が逃げ出した。
アレルヤは何もしていない。

いや、もともとアレルヤが近づいたから逃げたのだろうか?
でもこの距離なら大丈夫なはずだ。

ザワザワと草木を踏む音が聞こえた。
ハレルヤが戻ってきたのだろうか?


「ハレルヤ・・・?」


「ハレルヤ・・・?神に祈りを捧げているのか?」


「え・・・?」

振り返ると見かけない少年がいた。
年はアレルヤと同じくらいだろう。

黒髪に、真紅の目の色。海のような青い服。
この近くには見ない顔だった。

「あなた・・・この国の人でないわね。」

「あぁ・・・。エクシアの出身だ。」

「まぁ、そうだったの。」

エクシアの国は海の近くにある国だ。
海に隣接しているせいか、貿易も大きく海の新鮮な幸で有名な大きな国だ。

「君はキュリオスの人間か?」

「ええ。」

「そうか・・・。」


それだけ言うと、男の子は何も言わなかった。

「ね、ココには何しに来たの?キュリオスはエクシアの様になにか特産物は無いわ。」

以前は、一番治安が良く済みやすい国だったが、
新しい女王はまだ幼く今は国が不安定だというのが、世間の評価だ。


「別に・・・息抜きだ。」

特に感情を露にすることなく、淡々と男の子は答えた。
どうやら年の割りに大人びているのが伺える。


「じゃ、僕と同じだね。」

「お前もか・・・。」

「うん。僕、アレルヤ、君の名前聞いてもいいかな?」

「俺の名前は・・刹那。」

「刹那か、また会えるといいね。」

「・・・そうだな。」




「・・・お〜い!アレルヤー!!」


「君の連れが戻ってきてしまったな。」


遠くを見ると、大きな獲物を担いでハレルヤが手を振っていた。
ハレルヤも予想以上の収穫に機嫌がいい。



「・・刹那ーーーー!!」


今度は大人の男の人が刹那を呼ぶ声が聞こえた。
刹那もきっと一人でココへ来たのではなかったようだ。

「ヤレヤレ、互いにお目付け役がいてうッとおしいな。」

「僕は、ハレルヤのこと大好きだよ。」

「ロックオンは口うるさい。」

「そうなんだ。」

無表情な顔から一転、少し眉を動かした。
ロックオンという男が苦手なのだろうか?

溜息を一つした後、刹那はアレルヤに別れの挨拶をする。


「じゃ・・またな。」

「うん・・またね。」


刹那は直ぐに走り去り、誰もいなかったように静まりかえる。


「アレルヤ!!」

「ハレルヤ、お帰り。すっごいね!ソレ」

ハレルヤの肩には棒に括りつけられた巨大な獲物。
カゴの中身は美味しそうな果物。

「ああ、これで次の外出も許してくれるだろうな。」

「うん!」

「ハラ減った。弁当食おうぜ。」

「そうだね。」













「まったくドコ行ってたんだよ。刹那。」

「別に、人がいたからキュリオスの事を聞こうと思ったら、女王本人だった。」

「え・・・?女王がこんなところにいるのかよ?!」

「息抜きだと言っていた。多分本当だろう、肌の色をみるともうずっと日の光を浴びていないような色だった。」

「で・・・?」

「女王本人に、聞けないだろう?」

「視察はどうするんだ?」

「別に、女王はどうやら一般評価を知っているようだ。」

「どうする?内部がゴタゴタしてるなら今のうちに・・・。」

「いや、まだいい。アレはまだ争いごとが嫌いな目だ。前女王のように立て直せばそれはそれでいい。」

刹那は頭からローブを被り、馬を走らせた。



「早く帰えらねぇと、アザディスタンのマリナ姫に恥をかかせる事になるぞ。」

午後からマリナ姫がエクシアに訪問する予定となっている。
二人はつい先日婚約したばかり。


「わかっている!帰るぞ、ロックオン!」

「わ!ちょっと・・待てって!!」







「刹那か・・・・。」


アレルヤは部屋について直ぐに、摘んで来た花を花瓶に移した。
花瓶には、黄色とオレンジと青の花だけあった。

他の花はアレルヤの部屋に渡したのだ。


「この花の様に、凛々しい人だったな・・。」


青の花びらを指でつつく。
青色の服を着た冷静な少年。

今までに自分の周りにはいないタイプだった。


「また、会えるといいな・・・・。」


その夜アレルヤはなかなか眠れなかった。











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