陰に咲く花 2 自室に戻ってから、素早くシャワーを浴びて着替えを済ませた。 サッパリしたなか、素早くいつもの身支度をする。 面倒くさい邪魔な胸。 MSに乗るのには必要ない。 『おい、アレルヤ。なにモタついてんだ?アイツ来ちまうぞ?』 「え・・・ハレルヤ・・・。」 ブザーの鳴る音が聞こえた。 ロックオンが迎えに来たのだ。 パネルを見ると、モニターにはロックオンとハロの姿が合った。 「アレルヤ〜、用意できてるか?」 「すみませんロックオン、もう少しなんで・・・。」 「気にしなさんな。ゆっくりでいいからな。」 そんな事出来るわけないだろ!と心の中で叫んで慌てて着替える。 多少胸が気になるが、そんなのもブカブカのパーカーを着るから大丈夫かと気にせず部屋のドアを開けた。 「遅くなりました。」 「いいや、気にしてない。いくか。」 「はい。」 席につくと、二人共好きなメニューを頼み食べ始めた。 ロックオンはお腹がすいていたらしく、いつもより量が多かった。 「アレルヤ・・。」 「何ですか?」 「お前、もうちょっと食べたら・・。」 「え?」 これ以上食べれないとばかりの視線をロックオンに送る。 アレルヤの席に並んでいるご飯の量は、ごく一般的な量だと思う・・・成人女性の・・・。 これは男性から見たら少ない方なのだろうか? しかし、体をきつく巻きつけているためか、なかなか食べ物が喉を通らないのも事実。 どちらかというと、部屋に戻って食べる事が多かった。 後で、部屋に戻って食べれるものを貰おう。 「あ、二人ともお疲れ様。」 「スメラギさん。」 「あぁ、ミス・スメラギお疲れ様。」 スメラギも食事を取りにきたのか、ロックオンの隣に座って二人の会話に入った。 「ミス・スメラギからも言って下さいよ。コイツ、小食過ぎますって。」 「え・・僕は、小食じゃ・・。」 「アレルヤは部屋で間食が多いものね〜。」 「ス・・スメラギさん!」 「へ?そうなのか?」 アレルヤのクセをスメラギはしゃべる。 彼女なりに、小食ではないとフェローをしているつもりだ。 「間食って、それじゃ僕がご飯食べないで、お菓子ばっかり食べてるような人に見えるじゃないですか。」 「それもそうね。ごめんなさい。アレルヤはここで食べるのが落ち着かないのよね。」 「はい・・。」 なるほどな、そういえばアレルヤがここで食事をしているの見たことはあまりなかった気がする。 アレルヤは何時食べているのか?と疑問に思うほどここで姿を見かけたことはない。 「悪かったな・・アレルヤ。」 「いいえ。心配させてしまってすみません。」 「そうだわ、アレルヤ。」 「はい。」 「帰りに私の部屋によって頂戴。」 「分かりました。」 スメラギはもう食べ終わったのか、トレイをもって片付け始めた。 「そういえば、アレルヤはミス・スメラギと仲がいいよな。」 「え?普通ですよ。」 「照れるなって!」 からかうように笑う。 イイコトだよと、ロックオンは言った。 スメラギがアレルヤを部屋に呼ぶのは時々ある。 大抵スメラギが、アレルヤの為になにかしてくれるときだ。 このCBの中でスメラギは、アレルヤが女の子だという事は知っている。 スメラギは、アレルヤが女の子としてたまにはには過ごしてみたい気持ちも知っていて、 だから、服とかプレゼントしてくる事がおおい。 時々、アレルヤだけにオフを与えて、地上で女の子気分を楽しんで来いと言ってきた時もあった。 アレルヤはスメラギには感謝している。 しかし、それによって二人の仲を勘くぐる者もいる。 さっきの事で、ロックオンも入ったのかも知れない。 堪らなく憂鬱だ。 食事を終えたアレルヤは、スメラギの部屋のインターホンを押した。 自分の名前を言うと、ドアのロックが解除された。 「失礼します。」 「いらっしゃい。アレルヤ。」 スメラギは笑顔で、紙袋を持っている。 今度は何が入っているのか・・・・。 「はい。」 もう中身が何なのか分かってるでしょ?といわんばかりに渡した。 アレルヤもお礼を言って、紙袋に包まれたものを貰う。 「ね、開けてみてよ。」 「え?!!」 「アレルヤっていつも貰ってすぐ帰っちゃうじゃない?たまには着て見せてよ。」 ちゃんと他人に見せるのも悪くないわよ。 とウインクを出して、今来ている服を無理矢理脱がされた。 とっさのことで、アレルヤは抵抗する事も出来なく上半身裸にされて、別室へ入らされた。 プレゼントされた洋服と共に・・。 「ちょ・・スメラギさん。」 「アレルヤ、一度くらい見せてよ。あなた可愛いのにもったいないわ。」 「そんな!!」 「ね、一度だけでいいからね?でないと、このタートルと、パーカー返さないわよ。」 そういわれてしまえば、従わざるを得ない。 観念して、紙袋に入ってる服を取り出した。 中に入っていたのは、今地上で流行っているらしい服だった。 膝より少し丈の短いワンピーススカート。 胸の下に巻きリボンがついている。 裾にはレースがついて、着るにはハズかしいノースリーブタイプだ。 上に着るものはないのかと探してみたけど見当たらなかった。 変わりに、ノースリーブ用に着れる下着と服に似合う靴しか入っていなかった。 下着は付けてみると、ぴったりすぎていつ胸のサイズを測られていたのかと思うと驚いた。 こうなりゃハラを括って着るしかない、恥かしいけど・・・・・。 「あ・・あの・・。」 「アレルヤ、出来たのね。可愛いじゃない!!」 恥かしがって、なかなかな出てこないアレルヤを、スメラギは引っ張ってくる。 「ホラ、鏡で見なさいよ!すっごく可愛いじゃない・・。」 「え・・あの・・その・・」 見せられた鏡で自分の姿を見た。 これが本当に自分なのだろうか? 普通に女の子に見える。不思議だ。 「はぁ〜、その分じゃ、今まで私が上げた服、ちゃんと着てないわね。」 「あ・・すみません・・。」 「いいのよ。私が好きで勝手に上げてるんだからね。これで分かったでしょ?貴方は可愛いって。」 「そんな・・。」 スカートの裾を握った。 スメラギもなかなかかたくななアレルヤに、少し苦笑する。 まぁ、気長に行きましょうとアレルヤに取り上げた、黒のタートルとパーカーを返した。 「でも、アレルヤ今度休暇を上げるから、一人で羽伸ばしてきなさい。ソレ着て。」 「え?!」 「いい?絶対よ?」 スメラギは言い出したら絶対だ。 今度は逃げられないだろう。 怖い・・。 前に何度か地上に降りた事はある。 その時は別に女の子らしい恰好はしていなかったが、何かと人にジロジロ見られているのを覚えている。 そして一日ずっとハレルヤの機嫌が悪かった。 いつもハレルヤの機嫌が悪い原因はわかるハズなのに、あの日ばかりは一体ハレルヤは何に腹を立てていたのか今でも分からない。 「スメラギさん、ありがとうございました。」 「いいのよ。私も好きでやってる事だし。」 スメラギの部屋を出ると、クリスティアにあった。 「あ、アレルヤ。」 「やぁ。クリスティア。」 クリスティアナはとても明るく、可愛い人だ。 同姓として、憧れている存在だ。 せめてこのくらい可愛くなれたらと、何度か思った事がる。 「また、スメラギさんに呼ばれてたんだね。」 「え、あ・・・うん。」 どうやらスメラギの部屋から出てくるのを見られていた。 「スメラギさんは、アレルヤのこと可愛がってるモンね〜。じゃぁね。」 「うん・・またね。」 ロックオンに続いて、クリスティナまでも危うそうだ。 いや、クリスティナには完全に怪しまれている。 いらぬ誤解を作ってしまった。 あぁどうしよう。 部屋に戻ると、せっかく貰った服を投げてしまった。 こうやって服を貰うのは嬉しい。 可愛い服を着て、似合うといってもらえるのも嬉い。 でも、こうするたびに、スメラギとの関係を誤解されるのはイヤだ。 アレルヤは貰った服を取り出して、クローゼットの奥へしまった。 奥には、今まで貰った服がたくさんある。 女性ものの靴も、インナーも下着もみんな揃っている。 さっき着てしまって先程から、着る事に抵抗がなくなった。 自分の部屋だし、少しくらいいいなか・・・なんて思って、前から気になっている服を取り出した。 『随分とめかしこんじゃって何してるんだ?』 「ハレルヤ。」 『別に、いいんじゃねぇの?』 「・・・。」 『何だよ!』 「いや、いつもなら僕がそんな事すると怒るのに・・。」 『お前がそれ着て外に出なきゃ、俺はいいんだよ。』 「そういうものなの?」 『そういうこった。』 いつもなら、こういう事するとハレルヤが怒るのだが、今日はそんな様子はなかった。 気を良くしたアレルヤは、次から次へと服を取り出した。 本当は着てみたかったのだ。 ハレルヤも分かっていたから、今回は余計な口出しをしなかった。 目に入るのは、ハレルヤだけだからだ。 誰かに狙われる心配もない。 『お前、こういった恰好するの俺の前だけにしろ。』 「どうして?」 『どうしてもだ。』 「じゃ・・今度の休日・・。」 『・・・チ、仕方ねぇな今回だけだぞ。』 「ありがとう、ハレルヤ。大好き。」 『ふん。』 舌打ちを最後にハレルヤは、完全に引っ込んでしまった。 |
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