陰に咲く花   4




クリスティナからの誤解はなくなり、変にスメラギとくっ付けさせられる事はなくなった。
クリスティナが筆頭してやっていた事だったので、クリスがやめれば回りもそれにあわせてくれた。

一人、例外がいたが・・・・


「おい、クリスティナ。」

「何?ロックオン?」

「お前、最近アレルヤとつるんでるな。」

「そうね〜スメラギさんとの誤解も解けたし、アレルヤとフェルト手のかかる妹が増えたって感じね?」

「妹?」

「あ、ごめん。ごめん。こっちの話し、アレルヤは弟ね。」

「素直なイイコだろ?」

「うん。そうね。」


(はは〜ん・・これは・・?)


どうやら、アレルヤはまたあらぬ誤解を受けたようだ。










クリスが物を運んでいるとき、積極的にアレルヤは手伝ってくれる。
それは今も昔も変わりない。
女の子には優しいアレルヤ。

その女の子に気を使うときの、周りの目が少し変わった。
初々しいカップルを見守るような、生暖かい目だった。


「ね・・アレルヤ。」

「うん。僕も気付いてる。」


スメラギとアレルヤの次は、クリスティナとアレルヤ。
どうもプトレマイオスのクルーは、アレルヤと女性クルーをくっ付けたがる。


「ゴメンね。アレルヤが女の子だってことが嬉しくて、ついいろいろ連れ出しちゃったのが、
 いけなかったんだわ。私のせいね。」

「気にしないで、クリスティナ。僕嬉しかったよ。」

「ありがとう。アレルヤは優しいね。」

「そんな事ないよ。」




他愛ない話をするだけでも回りの目垣に鳴る現状。
慎重に艦内を歩いた。
途中で、クリスティナと分かれた。

一人になりたくて、宇宙の景色を展望できる部屋にきた。
よくアレルヤが一人で気分転換にする場所だった。

どうも部屋に引きこもると、もっと弱気になりそうでアレルヤは避けていたのだ。



『傑作だな。』

(ハレルヤ!!)

『今度は、協力者となった女にか・・・お前もつくづく運がねぇな。別にいいけどよ・・。』

(・・・・。僕は別に構わないけど・・クリスが・・・・)

『なーに、湿気た弱音はいてんだ?違うだろ?』

(何が・・・?)

『本当は僕だって、あんな風に”女の子”扱いされたいって・・・』

(そんな事・・・!!)

『お前の考えてることなんて、お見通しだ。俺はお前。お前は俺。』

(・・・でも・・僕怖いよ。)

『だったらこのままでいろよ。本当のお前を知っているのはお前だけでいい。
 そう簡単にポンポンとテメェが女だって事を明かすな。危険だ。』


「そんな・・スメラギさんと、クリスティナは・・・







「アレルヤ、さっきから呼んでいるのだが・・・?スメラギ・李・ノリエガとクリスティナ・シエラがどうした?」

「ティエリア?」


今までの会話を聞かれていたのだろうか?
アレルヤはビックリして、一歩下がってしまった。

「あの・・・今の・・」

「今の二人の名前しか聞いていないが・・・・こんな所で何をしている?」


さっきから呼んでいるのに、返事もしないとは失礼だろうと、ティエリアはアレルヤの隣に立った。
どうやらアレルヤとハレルヤの会話は口には出ていなかったらしい。
最後の感情的になったところだけ、思わず出てしまったのだろう。


「ごめん、ティエリア。全然気付かなかったよ。」

「そうかならば仕方ない。貴女は何か悩んでいるように見えるからな。」

「・・・・。」

「その沈黙は肯定していると同じだぞ。」

「・・・そっか・。」


鋭いティエリアに嘘を言ってもすぐにバレる。
アレルヤは観念したのか、横にあったイスに座った。


「ティエリアには悩みなんてある?」

「悩みか?・・そうだな・・」

てっきり、Gマイスターとして精神的不安要素はすぐに解決しておくべきだと、言われるのと思っていたのだが、
見かけによらず、ティエリアにもやっぱり有るんだと、アレルヤはちょっと興味を持った。


「そっか、皆誰しも悩むよね。」

「好きな人がいるんだ。」

「そう・・・ってええええ???!!」


あまりの突発過ぎたティエリアの返答に、アレルヤは叫んでしまった。
あのティエリアに好きな人。
一体誰だというのだろう。

CBのメンバーでの女性といえば、スメラギとクリストフェルト・・・・
いや、もしかしたら、完璧主義のティエリアは意外にもエージェントの留美とかという線もある。
感情という言葉が似合わないティアエリアに、こした人間らしい感情があるのは正直言って驚いた。

しかも、その恋の相談をされることはもっと驚く。



「えっと・・CBのメンバーだよね?」

「当たり前だ。俺は他の女を知らない。」

「そうだ・・よね。」







「君だよ。アレルヤ・・・・。」









「はい・・・?」







一瞬ドキっとした。
何故?一体何故?


「まさか、この俺が気付いてないとでも思ったか?アレルヤ・ハプティズム。」

「えっとなんで、”男の”僕なんかを・・」

「嘘はやめろ。」


ティエリアの真紅の射抜く視線に、アレルヤは震えた。
ティエリアは自分が女だという事を確信を付いて言っている。

どこでバレた?


『アレルヤ・・・お前どこでヘマした?』

(わからない。でも、極力マイスターの皆とは必要以上に・・・・)

『ああ!もう逃げるぞ!』

(今逃げたら、本当に肯定しちゃうよ!)

『ぐ!』





「アレルヤ。俺のマイスターの能力はご存知かな?」

「え・・?」


ティエリアのGマイスターとしての能力。
誰にも出来なかった、CBの頭脳”ヴェーダ”へ直接リンクできる能力。
レベル1から極秘事項の機密レベル7まで閲覧が可能な、ヴェーダの絶対的信頼を受けている少年。



「ヴェーダの資料・・・。」



「そうだ。アレルヤ・ハプティズム。」


アレルヤの行動で気付いたんじゃない。
最初から知っていたのだ、ティエリアは・・・。


「始めは疑ったさ・・・。男として紹介をされた。当時俺はまだヴェーダのデータをそこまで過密に見ていなかったからな。」

「そんな・・じゃ、どうして・・。」

「貴女は他の人と違う。だからヴェーダにリンクして確かめた。」


ヴェーダの意識では、マイスターの素性データは、機密レベル最高の7に値する。
これはCB内でも口外無用のデータだった。
何かあった時だけ一部のメンバーが閲覧できるデータなのだ。

CB参加のとき、スメラギの男として紹介してもらったが、
アレルヤ自身の素性データは、女の子としてのデータを入れていたのだ。
万が一の為、適切な処置が出来るように・・・。


「貴女が何故、こうして男の恰好をしているのか俺には理解不能だが、俺は君の事が一人の女性として好きだ。」

「ティエリア・・・。」

「男のフリをしているがそれでも貴女は綺麗だ。」

「そんな・・・。」

「周りのヤツが気付かないなんて、俺にはそのほうがおかしいと思っている。」

「ティエリア。」


真っ直ぐなティエリアの目には嘘はない。
今のティエリアに全てを持っていかれそうで怖かった。

「返事はすぐじゃなくていい。貴女も戸惑っている。それにこんな状況だ俺も・・・。」

「ごめんね。」

「それは何に対しての”ごめん”だ?」

「ティエリアがいったん引いてくれた事。」

「そうか、俺の気持ちに対しての”ごめん”ではないんだな。安心した。」

「・・・。」


アレルヤは視線を下にむけた。
弱気になっているときにやる、アレルヤの悪いクセだった。


「それではいい返事を待っているぞ。」

「ティエリア!」



ティエリアは言いたい事を言って、すぐに戻ってしまった。


「どうしよう・・。」

『お前・・まさかあんな眼鏡に・・・』

(そんな事・・!)

『だったらなんで、すぐに断らなかった!』

(それは・・・行き成りだったし・・・)

『あまいい。アレルヤ、分かってるよな?』

(うん・・分かってるよ。)



ティエリアの気持ちは嬉しいけど、受け入れる事は出来ない。
ありのままの自分を見せるのが、アレルヤには怖いのだ。

もし、本当の自分を知ったとしても、ティエリアは受け入れてくれるのだろうか?




『アレルヤ・・お前は俺だけを見ていればいいんだ。他の男なんかに気持ちを向けるんじゃねぇ。』
















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