陰に咲く花 12 深夜なんてとっくに過ぎた時間。 アレルヤは分かった事が一つだけあった。 (アレは夢なんかじゃなくて、僕の記憶なんだ) その記憶というものはあまりにも悲惨なものであった。 アレルヤ自身思い出したくもなかったであろう記憶。 (そっか・・・だからハレルヤは思い出さなくていいっていってたんだ。) まだ思い出したのはほんの一部。 自分の幼少期のみ。 (ハレルヤがいつも守ってくれてたんだね。ありがとう。) 『へ・・思い出しちまったのか。』 (ハレルヤ。) 『せっかく忘れてたのによぉ・・・。』 (いいんだ。ハレルヤ有難う、僕もう寝るよ) 『へぇへぇそうですか。』 少しハレルヤと会話をしたせいか、アレルヤは気持ちよく眠る事が出来た。 それから毎日アレルヤは夢を見た。 自分を取り戻す夢だった。 日に日にアレルヤの顔つきが変化していった。 幼少期の悲惨な出来事 生き延びるために犯してしまった数々の罪 戦争根絶を掲げる組織への渇望 ガンダムマイスター キュリオス 全てのパズルのピースが揃った。 そして、アレルヤの顔つきは十日もしないで、 修道院の修道女アレルヤからガンダムマイスターのアレルヤへと代わってしまったのだ。 アレルヤはいつも夢の中でハレルヤと会話している。 アレルヤが記憶を取り戻してから、ハレルヤと会話する事が減ってしまったが、 今日はちゃんと会うことが出来た。 「久しぶりだね。」 『その顔は、すっかり思い出してしまったようだな。』 「うん・・・。」 『戻るのか・・・・。』 ハレルヤはアレルヤがCBの組織に戻るのは快く思っていない。 もともと荒れる←は人を殺めることには向いていないのは知っているからだ。 「ハレルヤ・・・僕行くよ。待ってる人がいるし・・・。」 『ヘェヘェ、そうですか、お前はロックオンとかいう野郎にホの字だったな。』 「ちょ・・・!人が真剣に言ってるのに!」 『俺は別に構わないぜ?お前の人生なんだからな。』 「ありがとう・・・ハレルヤ・・・。」 夜が明けてから、アレルヤは修道長の部屋に向かった。 「どなたですか?」 「アレルヤです。」 「どうぞ。」 修道長は机の上にある書類に目を通していた。 「すみません・・・。仕事の邪魔をしてしまって・・・。」 「いいえ、とんでもない。アレルヤ、話があるのでしょう?」 「はい・・・。」 「記憶が戻ったのですね?」 「え・・・?」 修道長はアレルヤのいう事をピタリと当てた。 図星を指されてアレルヤは戸惑う。 「貴女の顔を見れば分かります。顔つきが変わりました。 アレルヤはもともと、凛々しい感じの雰囲気を持った女性だったのね。」 「いえ・・・そんな・・。」 中性的な少年のような感じを、凛々しいと綺麗にまとめてくれた修道長に アレルヤはめそうもないと、否定した。 「貴女がいなくなるとまた寂しくなるわね。」 「すみません・・・ここにはずっと居たかったんですが・・・。」 「帰りを待っている人も居るし、どうやら貴女にはやらなければいけない事があるようだわ。」 「え・・・。」 「少なくとも、私はそう感じます。」 急なことでアレルヤは、申し訳なかったが明日には出て行くといった。 事情を知った修道女達は直ぐにアレルヤの元へとやってきた。 「アレルヤ!」 アレルヤと一番仲のよかったアリサは、思わずアレルヤに抱きついた。 「わ!アリサ!!」 「淋しいわ、アレルヤも居なくなってしまうなんて・・。」 「アリサ・・・僕、きっと会いに来るよ。何時になるか分からないけど・・・。」 「本当?」 「うん、きっと暫くは僕が居なかったせいで、アタフタしてるから落ち着いたら・・・。」 「約束よ。」 二人は小指で指切りをした。 次の朝、皆に見送られてアレルヤは修道院を去って行った。 『よかったのか、アレルヤ。あんな約束して・・・。』 また会いに来るから・・・・ 「また会う約束の事?いいんだ、また僕の生きる目標が出来たからね。」 『け!おめでたいこった!』 修道長が王留美に連絡を取ろうかといってくれたが丁重に断った。 アレルヤのせいでこの修道院が、CBに深くかかわりがあると知られたら問題だ。 彼女達は本当に無関係だ。 彼女達の事を守るためにも、自分から向かったほうがいい。 『お前、前に貰った連絡先つかうのか?』 「いいや、今は使えないかも・・・。さっきニュース見たけどみんな今忙しそうだ。」 『どうするんだ?』 「音声コントロールはまだ使えそうなんだ。自分でキュリオスを呼ぶよ。」 『そうか・・・どのあたりがいいだろうか・・・。』 「もうちょっと修道院から離れたところがいいね。あと、広い敷地。」 ユニオンの基地から離れていて、修道院にも離れた場所。 暫く暮らしていたせいか、土地勘は少し分かる。 ここらへん一体は森。 森林を壊すのは申し訳ないから、すこし木がハベているところがいい。 『アレルヤ、このあたりはどうだ?』 「いいかも・・・。」 広さも、距離も十分だ。 『ま、あっちの機体が通信切られていなきゃいいがな。』 「大丈夫だよ・・・きっと・・・。」 アレルヤはちょっと緊張していた。 大丈夫だと思っていても、もしかしたら次のキュリオスのパイロットを用意されているかも知れない。 しかし、最近のCBの動きを見るあたりキュリオスは動いて否から欠番なのだろう。 「待っててね皆・・・僕が今行くから・・・・・。」 「キュリオス、リモートコントロール開始。」 宇宙にプトレマイオスは漂っていた。 戦果をかげて、一時休憩中づあった。 メンテナンスも終わり、各自一旦一息を付いたところだった。 「ガンダムパイロットの座標確認開始。」 ガンダムの収納庫には誰もいなかった。 いつもギリギリまでいる刹那さえ・・・・ キュリオスの画面に、アレルヤの位置確認完了と教示が出ていた。 「キュリオス、発進準備。目標、パイロットの現在地座標。」 そして、了解とパネルに表示が出た。 |
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