この恋を君に捧ぐ 12 「只今戻りました。」 「あら、お帰りなさい。ルルーシュ殿下。」 無事にスザクの通う大学から帰ってきたルルーシュを椿は暖かく迎えてくれた。 どっと疲れが出たのか、ルルーシュは玄関から上がるとフラフラだった。 「スザク様にはお会いできましたか?」 「いいや、それが・・・教室いったらいなくて、クラスの人に・・・頼んだ。」 「そうだったんですか?会いにいけばよろしかったのに・・。」 「いいんだ。一人で出歩くのは・・私にはまだ怖すぎる。」 「そうでしたね。物騒ですよね?お疲れのようですね。お茶でも入れますか?」 「お願いしてもいいか?」 「はい。茶葉は何にいたしますか?」 「そうだな・・・ダージリンで。」 「分かりました。」 椿は台所へ向かった。 ルルーシュは思い足取りのまま、部屋に入る。 日本人てのは本当に危機感がなっていないことを、身をもって知った。 ブリタニアでは考えられない事だ。 日本にいると、ブリタニアであったことがまるで嘘のように思える。 暗殺も毒殺も無い。 誰かに気に入られようと、ゴマをする必要もないし、いやそんな事はしていなかったか。 警戒心を全身に張り巡らす事が無いだけマシだろう。 緊張の連続で、いつでもどこでも何でも疑わなくてはいけなかった日々。 そんな所から解放されたというのに、ルルーシュは喜べない。 簡単に言えば、国の王女様と王子様が国同士の外交のためにされた政略結婚だ。 素直に喜べないのは当たり前。 むしろまだ政略結婚の方がよかったのではと思う節はある。 思い返してみれば、皇女が単身で外国に嫁ぎに行くのだ。 普通なら自国の侍女を少なくても3人くらいは付けていくだろう。 いつ手のひらを返されるか分からない。 ハッキリいえば、日本とブリタニアの関係はソコまで良くない。 悪くいえば、外交の道具扱いだ。 スザクはソコまで感づいてるかは分からないが、 ルルーシュは日本政府とブリタニア政府の考えている事が手に取るように分かる。 下手をすれば、ルルーシュを利用してサクラダイトの輸出を優位に持って生きたいのがブリタニア。 ルルーシュを人質にして、何か手を打ってくる日本政府。 「要するに、日本でも道具なんだな。私は・・・。」 「ルルーシュ様、お茶の用意が出来ました。」 「大丈夫だ。入ってくれ。」 ルルーシュのマイナス思考を阻止するように、椿の元気な声がさえぎる。 紅茶と一緒に、茶菓子が何種類か皿に盛られていた。 「紅茶だけでよかったのだが・・。」 「素敵なお茶菓子を頂いてね。ここは洋風のお菓子はあまり食べる機会がないのでつい・・。」 枢木邸は日本古来の家のつくりをしているから、茶菓子ももっぱら和菓子だろう。 確かに純和風のつくりに、紅茶や洋菓子は合わないだろう。 ルルーシュは銀色のトレイを貰うと、場所を移動した。 「どちらにいかれるんですか?」 「縁側だ。」 縁側に腰を落とすと、庭がきれいに見える。 先日スザクと一緒に見た桜はもうキレイに散っていた。 「・・・桜は散るのが早いな。」 「そうですね1〜2週間ぐらいでしょか?」 「そうなのか・・。」 「もしかして、桜見たかったのですか?」 「あぁ・・この前は、ちょっとしか見れなかったからな。残念だ。」 この前とは、初夜を明かした次の日だろう。 確かにその日ルルーシュはスザクの上での中で、桜を空ろな瞳で一生懸命眺めていた。 もうアレから随分と経つ。 「スザクがいったんだ。」 「?」 「散っていく姿は私に似ていると・・。」 「スザク様、そんな事おっしゃったのですか?」 「あぁ・・・全くその通りだ。」 きっと自分は早く朽ちていくだろう。 正解だよスザクと、心の中で冷たい拍手を送る。 奥の方で戸を雑に開ける音がした。 この乱暴な戸の開け方をするのは、枢木の中では一人しかいない。 「あれ?誰もいないの?椿さん〜?」 スザクが帰ってきた。 「はい、只今〜。」 スザクの声が聞こえて、椿はパタパタと玄関へ向かった。 「あぁ・・・只今。」 「おかえりなさいませ。」 「・・・今日ルルーシュ・・・・。」 「えぇ、私がいませました。」 「やっぱり。」 直接会っては無いが、やはりスザクの勘はあたっていた。 クラスメイトがいっていたルルーシュ似の美少女は、ルルーシュ本人だった。 「ルルーシュさまなら、今縁側でお茶を飲んでいられますよ。」 「分かった。俺の分も用意してよ。」 「畏まりました。カップはスザク様のご用意すればいいですか?」 「・・それでいいや。」 スザクは持っていたカバンを乱暴に放り投げると、ルルーシュのいる縁側に向かった。 ルルーシュはスザクに気付かぬまま、ボーと庭の景色を見ていた。 何が面白くて見ているのかは分からないが、目線はどこか変な方向を向いている。 考え事でもしているのだろうか? 「ルルーシュ!」 「ひ!!!」 肩を叩くと、ルルーシュは跳ね上がった。 警戒心の強いネコのように、一回ビクくいて、一瞬のうちに警戒モードにはいる。 これが何時までたってもスザクの前では解除されないのだ。 「ただいま・・。」 「おかえり。」 会話が続かない。 ルルーシュは自分からは話さない人だ。 しゃべり上手な椿とは、会話は進むが、相手がスザクとなると急に黙る。 「ルルーシュ・・今日・・うちの・・・「スザク様、コチラどうぞ。」 椿が話をさえぎり、スザクにカップを渡した。 タイミングの逃したので、スザクは大人しくティーポットに入っているお茶を自分のカップに注いだ。 ルルーシュは何事も無かったかの様に、また庭をながめていた。 そして、さっき座っていた位置よりズレている。 スザクとの距離が遠のいている。 まったくもって前途多難。 もうスザクも黙ってお茶を飲む事にした。 横にはおいしそうなお茶菓子がある。 どうやらルルーシュは全く手をつけていないようだ。 せっかく出してもらったのに、食べられないお菓子。 「ルルーシュ、お菓子貰うよ。」 「うん・・。」 それだけ返事をして、スザクはあっという間にお菓子を平らげた。 イロイロ問い詰めたいのは山々だったが、今言ったらまた怯えられそうだからスザクはいうのをやめた。 どうやら少しは学習能力がついたのだろうか? 大人しくちょっと離れたところに座って、ゆっくりとお茶を飲んだ。 もう桜も散った。 若葉が茂り始める。 そうしたら、今度はアジサイがキレイに咲き始めるだろう。 ブリタニアには梅雨というものがあるのだろうか? 外国にはあまり無い天気のようだから、慣れるまでじ時間がかかるだろうなとスザクは考える。 そういえば、あれ以来こうして一緒に何かを見るのは久しぶりだった事にスザクは気付いた。 大学は思ったより時間がかかり、夜ぐらいしかルルーシュと会っていないことに気付く。 会うというか、泣かせているといったほうが正しい気もするが・・・。 こういった穏やかな時間もたまにはいいなとスザクは思った。 「ルルーシュと会うのは久しぶりだな。」 「シュナイゼル殿下よろしかったのですか?」 「何がだい?」 「アポなし訪問など、聞いたことがありませんよ?」 「大丈夫。枢木首相には言ってあるよ。」 「そうではなくて・・・・・」 シュナイゼルの護衛が物言いたげに口を開く。 「ルルーシュ殿下の耳には・・」 「入っていないね。」 あっさりとシュナイゼルは言った。 シュナイゼルは婚儀に仕事で参加できなかった。 だからこうして、仕事がひと段落したので会いに行こうとしているのだ。 何が悪い?という態度だ。 「それに、事前に言っておくとイロイロ用意されそうだからね。」 「はぁ・・・・。」 「枢木君が、普段どういう風にルルーシュ接しているのか見たいんだ。」 「確かにそれは、そのような事だったら隠れてみたほうがいいですが・・。」 「ルルーシュと普通に会話できるようになったのは、私だって時間がかかったかからね。それに・・。」 シュナイゼルはコーネリアから貰った、枢木スザクの素性報告書を見る。 「気になる事もいくつかある。私はルルーシュの後見人だ。そこはちゃんと見極めたい。」 辛い思いしかさせられなかった義妹はちゃんと、幸せになっているのか?・・・と |
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