この恋を君に捧ぐ 16 (しっかし、本当に二人でいる時間なくなったよな・・・。) あの後、椿からローションを貰ってルルーシュの所にいったはいいが、 シュナイゼルがそばから離れようとしなかった。 肌の露出の多いワンピース一枚で暫く外にいたルルーシュ。 案の定、彼女の肌は大分赤く腫れ上がっていた。 「ルルーシュ、部屋でローション塗るよ?」 「君がやるのかい?」 「そうですが・・・。」 二人の冷戦に空気が重くなる。 尋常ではないオーラに、ルルーシュもどうしたらいいのかわからない。 その雰囲気をいとも簡単に壊したのは椿だった。 「何しえるんですか、二人とも大人気ない。ルルーシュ様のローションパッティングなら私がしますから、 お二人はお部屋に戻られて下さい。」 椿にそういわれては誰にも口出しは出来ない。 「貴女なら安心だ。どっかの馬の骨と違ってね・・。」 「ぐ・・!」 くってかかりたかったが、スザクは心を落ち着かせた。 ここで暴れてはシュナイゼルの思う壺だからだ。 それに友人の言葉を思い出した。 ”お前、それは頑張ってその、ルルーシュ殿下の兄皇子殿下に認めてもらうべきだよ” そんな事スザクだって分かっている。 そうでもしないときっとシュナイゼルは何時までもここにいる気だ。 だからなのであろう、今夜はルルーシュはスザクの部屋に来た。 「ルルーシュ、電気消すよ。」 「ああ・・。」 最近夜顔を合わせていない二人。 やっと夫婦水入らずで夜を共にするのに、スザクはどうもことに運べなかった。 試されている。 そんな考えが脳裏をよぎる。 「ルルーシュ、起きてる?」 「起きてる。」 「今日はシュナイゼル殿下のところに行かないのかい?」 一つの布団で一緒に寝ているが、背中合わせのためルルーシュの顔は見えなかった。 「兄上が、今日はスザクのところにいってこいって・・。」 (やっぱり俺の事試してる。) スザクは背中合わせから反転して、ルルーシュのいる方に体を向けた。 黒くて長い髪がスザクの視界に入った。 肩をよく見ると震えているのがわかる。 まだスザクと一緒にいるのが怖いのだろうか? そうさせているのがスザク自身なのだから、しょうがない。 「ルルーシュ、コッチ向いて?何もしないから・・。」 駄目かと思いきや、ルルーシュは素直にスザクの方を向いてくれた。 スザクはルルーシュを腕の中にすっぽりと包んだ。 一瞬ルルー瞬体がこわばったが、スザクが体を支えるように抱きしめたら震えは収まった。 「スザク・・・?」 「言っただろ?今日は何もしない。」 ルルーシュは恐る恐る顔を見上げると、そのままスザクは瞳を閉じていた。 眠ってしまったのだろうか? 規則正しい息がルルーシュの髪にふれる。 ルルーシュもそのまま抱かれた暖かい腕の中で眠りについてしまった。 「おはようございます。スザクさん、ルルーシュ様。朝食の準備できてますよ。」 二人仲良く部屋から出てきたら、椿はもう朝の仕事に入っていた。 ダイニングへ向かうと、もうシュナイゼルが優雅に紅茶を飲んでいた。 「やあ、おはよう。ルルーシュ、と、・・・スザク君。」 「おはようございます。兄上。」 「おはようございます。シュナイゼル殿下。」 二人も席へ付くと、用意されいた朝ごはんを食べ始める。 「あ、そうだ二人共、突然なんだけど私は今日ブリタニアへ帰る事にしたから。」 「えええ??」 「兄上、急すぎます。」 いきなりのシュナイゼルの帰国宣言。 スザクは紅茶を吹きそうになり、ルルーシュはティーカップを落としそうになった。 「いや、急に仕事が入ってしまってね。本当はもう少しここにいたいのだが、 そうもしていられなくてね・・・。」 「そうですか・・。」 肉親がいなくなるのが寂しいのか、ルルーシュの顔が俯く。 「今日の午後一の便で帰るつもりだ。」 ココから空港までは、約二時間。 余裕を持ってみても、あと三時間くらいしか時間は残されていない。 それでも時間は過ぎるのは早かった。 荷物の整理に、迎えの車の手配に、今後のシュケジュールの確認。 空港へ行く前にゲンブにも挨拶を入れる時間を入れると、殆ど一緒に話す時間はなくなっていた。 ルルーシュは勿論シュナイゼルと一緒に空港へ行き、見送りをするだろう。 スザクも偶然か、今日は大学が休みだった。 スザクも一緒に空港へ向かう事にした。 「いつでも帰ってきていいのだよ?」 兄妹水入らずの時間も、もう残り少ない。 VIP専用の搭乗口とあってか、周りのギャラリーはいなかった。 最後の見送りは、SPも気を使ってか傍にはいなかった。 「ルルーシュ・・?」 さっきから何も話さないルルーシュを、シュナイゼルは呼び止める。 「兄上・・・・私はきっと・・・」 帰れない。 「コーネリア姉上や、ユフィにも宜しく言っておいて下さい。」 もう自分は、ブリタニアの土を踏む事はないだろう。 ここで帰ってくれば、ブリタニアの皇女に対して日本はなにをしたのかと ブリタニアはなにかするかもしれない。それではブリタニアの思惑通りにはしたくない。 「ルルーシュ。」 これが最後のチャンスなのだ。 今この手をルルーシュが拒んでしまったら、シュナイゼルもブリアニアに連れ戻す事は出来ない。 忙しい身でありながら長い間日本に居てしまった、もう暫くは会うことは不可能だろう。 それにシュナイゼルの様にルルーシュの事を思っている皇族の中では、 ルルーシュをなんとかしようと思っているのは、コーネリアとクロヴィスとユフィがいるが、 コーネリアはソレどころではないし、クロヴィスもユーフェミアもそこまでの権限がない。 「ルルーシュ・・・。」 愛しい義妹の名前をもう一度シュナイゼルは呼んだ。 これが最後のキスとなるだろう。 いつもは頬にしているシュナイゼルだったが、今日は唇の方へと重ねた。 兄からの口付けに流石のルルーシュも驚いた。 「兄上・・・。」 「ルルーシュ・・・。」 本当は無理矢理にでも連れて帰りたい。 それじゃ、ルルーシュの意志を捻じ曲げてしまう。 それでけはイヤだった。 無理矢理事を運ぶスザクと同じ事をしたくないからだ。 「愛しているよ。ルルーシュ。」 「私もです。兄上・・。」 「違う・・・!」 シュナイゼルとルルーシュの愛のベクトルは違う。 シュナイゼルは時間ギリギリまで、ルルーシュを抱きしめた。 搭乗時間の最終アナウンスが流れると、シュナイゼルは名残惜しそうにルルーシュを放した。 「ルルーシュが本当に幸せになれるように祈ってるよ。」 「ありがとうございます。兄上・・。」 「もういいの?」 シュナイゼルとの別れを済ませて、ルルーシュはスザクの居るところに戻ってきた。 スザクも気を使って、離れたところでルルーシュを待っていたのだ。 「帰る?それもとまだお店とか見て帰る?」 「・・・スザクはどうしたい?」 「そうだな・・・、せっかくだからどっかご飯食べて帰ろう。何がいい?」 自由に出来る今のうちに好きなことをしておこう。 大人になったらきっと、ゲンブやシュナイゼルのように身動きが出来ないのだから。 「そうだな・・朝は洋風だったし、中華なんかあるのか?」 「ここは国際線のある空港だよ?決まってるじゃないか。」 スザクはルルー瞬腕を引っ張った。 場所を知っているのか、人を掻き分けて歩き出した。 「しっかり捕まっててよ。ここでハグれるとやっかいだから。」 「ああ、わかった。」 (兄上・・・私はブリタニアに戻りたくても戻れません。) 戻ってしまえば思い出してしまう。 母親を、妹を・・・ きっとそれを忘れさせてくれるのが・・・・・ 「ルルーシュ?どうしたの?」 「なんでもない。」 今の日本の暮らしがとてもいいとは、決して言えないが、ここに居る間はブリタニアの悲しい出来事を忘れられる。 ついさっき、シュナイゼルの手をとらないで、この男の手を取ってしまった。 「変だよ。さっきから俺の顔ばっかりチラチラみて・・。」 「秘密だ。」 「どうせ、シュナイゼル殿下に言われたんだろ。ま、別にいいけどね。」 「スザク、私はまだお前の事が怖い。」 「知ってる。」 「でも、お前といるとブリタニアの事を忘れられる。」 「え・・・?」 「別にただそれだけだ。」 「そう・・・。」 何を今更、日本で生涯を過ごすと決めたんだ。 もう後戻りなんて出来ないのだから・・・・・。 |
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