この恋を君に捧ぐ  17







スーっと布の擦れる音がする。ベッドの軋む音とはまた違う。

「く・・・はぁ・・・。」

「ルルーシュ、力抜いて。」


シュナイゼルが帰ったその晩、スザクはルルーシュを部屋に呼んだ。
久しぶりでスザクは力が入ってしまった。
それがルルーシュの体に負担がかかっている事を省みないで・・。

「かぁ・・ああ・・ぁ・・ん!」

独り善がりなセックスに、ルルーシュは苦痛を伴う。
もっとゆっくりして欲しかったが、却下されてしまった。

「スザ・・やめ・・。」

「まだ全然足りないよ。」



「痛いんだ・・・。」

「じきによくなるよ。」

さっきからこの会話の繰り返し、ちっともよくならない。
もともとスザクとのセックスは、スザクの自己満足が多くルルーシュには痛いのだ。
これがせめて・・・・・


「んん・・・!!」

「ルルーシュ、声だしてよ。」


手で口を塞いで痛々しい声は極力出さないようにしていた。
この部屋は襖だ。
些細な音でも聞こえてしまう。

きっと今このルルーシュとスザクの会話も聞こえてるかもしれない。

「手は駄目。」

「ぁあ!」

スザクはルルーシュの手を押さえつけた。
コレでルルーシュが口を押さえつける事はない。

「そんな・・・。」

「俺ルルーシュの声聞きたい。じゃ、いくよ。」

「・・・!!かはぁあ!!・・や・・・。」



その晩は、明け方まで行為が続いた。
ルルーシュは途中から記憶がない。

目が覚めたときには、隣にスザクはいなかった。



「朝・・・か・・・?」


時間の感覚が分からない。
部屋が明るいから夜が明けているのは辛うじて分かる。

時間を確かめようと、時計のある位置へ体を動かそうとしたが動けなかった。

「え・・・。」

体中痛くて動けない。
まるで、初めてスザクに抱かれたようなあの感じに似ている。

(そうだ・・あの時のスザクに運んでもらったのだったな。)

気付いたら同じ瞳の色の浴衣を着せられていて、綺麗な桜の花を見たのだ。

(スザクはドコへいったんだ?)


「失礼します。ルルーシュ様、お目覚めですか?」

「・・あ、・・ぁぁ。椿さんか?」

「左様でございます。朝食をお持ちしました。」

「わかった・・・。」


失礼しますと、いつもルルーシュの世話を見てくれている椿が朝食を持ってきてくれた。
相変わらず臨機応変に動いてくれて、気が利く人だ。

「おはようございます。起き上がれますか?」

「・・・実は・・・。」

「まったく、スザクさんにも困った人ですね。デリカシーもへったくれもない。」


全て見透かしたように、椿はルルーシュを起き上がらせる。
トレイを横において、お茶を入れた。

「紅茶です。スッキリとしますよ。」

「ありがとうございます。今、何時ですか?」

「九時を過ぎたところです。スザクさんは大学へ行かれましたよ。」

「・・・・体力バカ。」


あんなにも激しくしておいて、自分は普通に学校へ向かうなんて
一体どういう体の構造をしているのだろうか?
ルルーシュは嫌味をこめて、ボソっと呟いた。

「フフ・・スザクさんは昔から、力と体力だけは自身がありましたからね。」

「日本の行く末が心配だな。」

「本当に全く、ゲンブ様も頭が痛いとおっしゃっています。」

「本当だな・・。」


クスクスとルルーシュが笑うと、椿もつられて笑ってしまう。
今日の朝食は、ルルーシュのことを考えて柔らかいパンとフルーツだった。
きっとあまり食べれない事を察知していたのだろう。

ゆっくりとルルーシュは食べ始めた。
これならルルーシュも食べれそうだった。


「しかし、こうなるもの随分と久しぶりですね。」

暫くずっとシュナイゼルがいて、同じ部屋で寝ていたから
普通に出来ていたのだ。
いなくなったとたんにこうだ。

「全くだ。」

「体が辛いようだったら言って下さいね。」

「ああ、分かっている。」

「お昼はリゾットのほうが宜しいですか?」

「そうしてくれると有り難い。」

「畏まりました。じゃ、暫くしてから食器を下げにきますね。」


パタンと襖が閉まった。
ゆっくりとご飯を食べる。
どうやら全く食欲がないわけでもないようだ。

いつもどおり胃に流し込んで、食後に紅茶を一杯。
うん、いつも通りだ。

今日はちょっと量が少なかったが、お昼までソコまで時間が有るわけではないからいいだろう。
後で食器を下げに来る椿に、リゾットの量を大目にしてもらおうと思った。

食物が体の中に入ったのか、大分体が動くようになった。
ゆっくりではあるが、立ち上がる。

「シャワー・・・あ、お風呂か・・・入らないとな。」

自分の部屋に戻ろうと廊下を出たら、丁度椿とすれ違った。

「もう大丈夫ですか?」

「あぁ・・・風呂へ入りたい。」

「ええ。出来てますよ。」

「椿さん・・・。」

「何でしょう?」

「昼はいつもより少しだけ多めにしてくれ。」

「分かりました。」






枢木家の浴場はルルーシュも気に入っていた。
檜が香る湯船はいつもルルーシュの気分を落ち着かせる。

また広さもたっぷり有り、ついつい長湯をしてしまうのだ。
お風呂というのも前は直ぐにのぼせて、ゆっくり出来なかったが、
今では多少温度を下げてもらい、人並みに浸かれる。

気分良くルルーシュは腕を伸ばして、寝ッ転がるように体を浮かす。

心地よくてまた眠ってしまいそうだった。


そろそろのぼせてしまうんではないか?と
体が悲鳴を上げ始める頃、ルルーシュは風呂から出た。


「そうえば、ルルーシュ様。近々、ブリタニアと日本で公式で会談があることを知っていますか?」

「ああ・・ニュースで見た。」


ここのところ、スザクとルルーシュの結婚式や、極秘の会談やら会議やらで
ちゃんとした会談をしていなかった気がした。

最後にやったのは、ルルーシュがまだブリタニアにいた頃かもしれない。


「また、ブリタニアはシュナイゼル殿下が来る予定ですよ?」

「またシュナイゼル兄上なんですか?」


まぁ・・・それが一番妥当なのかもしれないが・・・。
シュナイゼルが来たのだから、次はコーネリア辺りかと思っていたが違うようだ。


「それでですね、ルルーシュ様とスザクさんも人数に入っているんですよ。」

「え・・・?」

「ホラ、ここ。」


椿は新聞をルルーシュに見せた。
写真はなく、文面で今回の会談は、最近ご結婚された枢木首相の一人息子、
枢木スザク様とルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下のお二人の出席の予定だと書いてあった。

「な・・・私、了解していないぞ。」

「それが・・・ルルーシュ殿下、最近お姿を出していないでしょう?」

「最近というか、めったに・・・。」

「ブリタニアの国民の皆さん、ルルーシュ殿下の事心配しているみたいなんですって。」

「え・・・。」


ルルーシュはあまりテレビとかには極力出ないようにしている。
特に、母親のマリアンヌと妹のナナリーを失ってからは特にだ。

政治的にはルルーシュは関わりを持っていたがあくまでも間接的にだ。
わざわざ才能を見せ付けて、暗殺の標的となるのはゴメンだからだ。

そんなあまり出ない皇女に何故・・・?


「ルルーシュ殿下は、マリアンヌ后妃を母にもつ皇女様ではないですか?
 マリアンヌ后妃は皇室の中で最も民衆に慕われていた人でうからね。
 その娘である、ルルーシュ様の事とても心配しているですよ。」


母のマリアンヌは、民衆だけじゃなくて他の皇族からも慕われていた。
コーネリアはアリアンヌに憧れていて、ユフィもクロヴィスもマリアンヌの事が好きだ。
勿論、シュナイゼルとも仲がよかったし、一番皇帝に寵愛を受けていたのもマリアンヌだった。


だから・・・母上は・・・・・。



「そんな顔しないで下さい。ルルーシュ様の元気なお姿を見れば、
 ブリタニアだけじゃなくて、日本の方も安心するんですから・・。」

「そうか・・・・そうだな。」


不思議な感覚だった。
見ず知らずの人たちに、自分の事が知れ渡っているなん・・・
他の、公にしていない皇女たちと同じ扱いだと思っていたというにに・・・


「夜、ゲンブ様から詳しい段取りが聞けると思いますよ。」

「そうですか・・・。」









椿の言う通りだった。

晩御飯を食べながら、今度の会談の話が入った。

結婚式は、公にしなかったため、今回の会談で正式にお披露目となるようだ。


「別に、そう構えなくていい。あくまでも私とシュナイゼル殿下の会談だ。
 殿下たちはそのおまけだ。」

「おまけの為に呼ばれるの?」

「民衆は”ルルーシュ殿下”のお姿を見ることを望んでいる。」

前に一瞬だけで、後は写真だけだったからちゃんと元気な姿を見せて国民を安心させるは
人の上に立つ者として義務だろう。

席の位置、段取りを聞くと、本当に特にやることはなさそうだ。

「お前はいいが、ルルーシュ殿下の意見は聞いておきたい。」

「私でよければ・・・。」

「なんだよ。俺は邪魔者かよ。」

「お前はまだ帝王学が甘い。その点、ルルーシュ殿下はしっかりされている。
 たまには違う人からの意見と、視点も必要だからだ。」

「ゲンブ殿はしっかりしているな。国民から信頼されるわけだ。」

「いやいや、私なんぞまだまだですわ。」


ちょっと会談が楽しみなってきたルルーシュであった。

「あ、そうだ。ルルーシュ、今度の会談用にドレス新調しよう。」

「別に今持っているドレスでもいいと思うが・・・。」

「駄目だよ。ちゃんとしないと、今度の休み行こう。」

「別にかまわないが・・・。」

「・・・・お前のセンスじゃ心配だな。椿、いるか?」

「はい、コチラに・・・。」


「今度、ルルーシュ殿下の新しいドレス、お前が見立てをしろ。」

「畏まりました。」

「え・・!」


スザクは自分がルルーシュのドレスを選べると思っていたから、ショックダ。
ゲンブはスザクのセンスを信用していない。

「残念でしたね。スザクさん。」

「ちぇ・・・行っておくけど、俺もいくからね。」

「ハイハイ。宜しいですか?殿下。」

「え・・あ・・あぁ!よろしくお願いします。」

「ええ、ええ。こちらこそ。」


次の休みの予定が決まった。














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