ノスタルジア    18






サクラが目を覚まさなくなって、あれから三ヶ月が経過しようとしていた。

サスケの隊は、一人追加という形で復活した。
あれからクロメと夜の仲は、復活した。


サスケは自分達の二の舞にならなくてよかったと思った。
この二人は大丈夫だろう。



任務を終えたサスケは、病院へ向かう。


こうこれがサスケの日常となっていた。
任務を終えて、病室へいって、どんな任務だったとか、
またナルトがどうした、カカシがこんな事を言っていた。

いのやヒタナは今こうだとか、話し掛けるのが、サスケのいつもの生活パターン。
毎日は出来ないけど、時間のあるときはちゃんとサクラの顔を見に行っていた。


そして時々、様子を見に来るいのや、クロメたちと会う。




そして今日もサクラは、いつものように目を閉じていた。


今日はいのが見舞いに来ていたのである。


気分転換にいのとサスケは中庭で、飲み物でも飲んでいた。



「しっかし相変わらず、ずっとああね。サクラ・・。」
「あぁ・・・そうだな。」
「・・意識・・戻るといいね。サスケ君。」

「そうだな・・。」



いのは近状報告をして、サクラの様子を少しだけ見て帰っていった。
お互い忍びとして忙しい。
いのは他にも家業がある。ずっとここに居ることも出来ないだろう。
だからこそ、自分が出来る限りここに居ようと決めたのだ。



今更遅いけど、やっと傍に居ることが出来るのだ。


今はもう近くに居ても、触れることも出来ない。

見ることしか出来ないのに・・・


何が傍にいるだろう?
サスケはサクラの望んでいたことを、何一つ出来ないままだった。



一体、サクラの声を聞けなくなってどのくらいたつのだろう?
長い時間が永遠に続きそうで、もうサクラの声を聞くことは出来ないのか?
ずっとこのままだろうか?


サクラの様子見見に来るたび、そんなことを思ってしまう。
植物人間になってしまったサクラ。
大事なことを何一つ、伝えられないままこのまま終わってしまうのか?



昔は・・・
昔は、傍に居るのが嬉しくて当たり前で、ずっと笑ってくれてると思った。


一緒に居るだけで・・幸せだったのに・・・


サスケの目から、涙がこぼれ落ちた。
不覚にもこう思い始めると、涙腺が弱くなる。
弱くなる一方だ。


彼女のSOSにも気付かないでいた、自分への罰なのだろうか?

今にも泣きそうな顔をしていた時も、

衰弱してもなお、サスケを求めていたのに

必死になって血を流してまで、助けを叫んでいたのに



平気で傷つけたサスケへの罰だ。




「サクラ・・・。」




サクラだけでははい。
クロメの不安も見ぬフリをして、平然と夜と二人で笑いあっていたのだ。






















その日、サスケは綱手の許可を貰って、サクラを中庭へ連れ出した。
今中庭には、春のせいか沢山の花が咲いて綺麗だった。


サクラを毛布でつつみ、抱きしめる。
サクラの息が、サスケの首にかかった。


「サクラ・・・見えるか・・お前こういったの好きだろう?」


ポカポカの陽気で、蝶もヒラヒラ舞っていた。



「サクラ・・・。」



サスケはもっとサクラの奥深くの心情が変わったような気がした。
この長い時間、きっとサクラはずっとこんな気持ちだったのだろう。
それが今度はサスケに回ってきたのだ。



行き場の無い苦しみ

誰に向けたらいいのか分からない怒り

狂おしい嫉妬

気が狂いそうなほどの憎しみ




同じ目にあって始めて人は気付くのだ。
それは遅いか、早いか。


サスケは運悪くも、前者だっただけの話だ。






「もう・・今更・・・遅すぎだ。」



サスケはサクラの体を抱きしめた。
























”ねぇそろそろ帰らない?”

(帰る?どこへ)

”貴女のこと待ってる人がいる”

”帰ろうか・・・”


誰かがサクラの頬に触れた。
その手はとても暖かくて、優しさに満ち溢れていた。





”貴女の居るべきところへ返してあげる”














サクラは強い圧迫感を感じた。


一度、硬く瞼を閉じ、そしてゆっくりあける。


「・・・・・・ぁ・・・・・・」


「!!」



サスケはほんの一瞬声が聞こえた。
今ここに居るのはサスケと、サクラしか居ない。

サスケはしゃべっていない・・じゃぁ・・・
ゆっくりサクラを放す。



「サクラ・・・。」




サスケの腕の中には、目を開けたサクラの姿が映った。
紛れも無い。
大きな翡翠の瞳を大きく開けている。





「サスケ君・・・泣いてるの?」



サクラが状況を理解できていなく、ただサスケの涙を指でぬぐった。


「あぁ・・そうだよ。」


サスケは一層サクラを強くだきしめた。
力の強さに、サクラはまた小さく、声を上げた。


そしてお互いの顔が近くなる。




「サスケ君・・なんで・・・泣いてるの・・?」


「あぁ?・・・嬉しいんだよ。」



サスケはそっとサクラに優しいキスを落とした。
サクラも満足そうに、サスケのキスの雨を受け取った。









このもどかしさも

切ない思いも

愛しさも


全部この口づけで伝えられたらいいのにと思った。



そうしたら、幸せを感じられるのに・・・。



誤まるのは後でだ、今はサクラとの甘い時間を優先させて欲しい。
サスケは、綱手やみんなに連絡するのもさすれて、サクラとのふれあいを優先させた。




「・・サクラ・・・俺は・・ちゃんとお前のことを愛している。」




「サスケ君・・ありがとう。・・私も愛してるよ。」

















-------------------END-------------------

お・・お・・・終わった!!!!!
やっと終わった!完全消化完了です!!

2年かかりました(爆)
いや・・・この話し高校の時に考えていたものだったのですよ〜
だから最初から、最後まで事細かく、ストーリーの構成は決まっていたので
あとででいいやと、ほっぽってました。

意外にもこの暗い話しスキとか
続き気になります。といってくれた方ありがとうございました。

この話の一番の貧乏くじはサスケだと思っています。
一番の蚊帳の外?
あれ・・違う。

でも、サスケの鋭い性格上、こんなことにはきっとならないと思いますが
思い切って鈍いサスケをかけて楽しかったです。
次の作品にもまた付き合っていただけたらと思います。



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