まだら模様のカーネーション  14






「三橋さんの親御さんとの連絡はまだ取れないの?」

「はい・・・母親の携帯はなりはするるんですが、全く出る気配がなくて・・・。」


県警に小さい本部を置いたが、肝心の両親にまだ連絡を伝えられずにいた。

「父親の方は・・・・。」


「なんでも会社に連絡を入れましたが、なんでも会議中らしくてあと30分しないと連絡が付かないそうです。」


父親は時間次第でなんとかなりそうだが、問題は母親だ。
念のため家に向かい様子を見に行く事になった。



三橋の家は電気はついている。
車も止まっているので、尚江は帰っている確立は高い。

「あれ?なんで携帯に出ないんでしょうね・・・。」

「出れないのか?」

「まさか・・・!」

「急ぐぞ!!」

「はい!」


様子を見に行った二人の警察は尚江に何かあったに違いない。
犯人は警察の読みより一歩先に動いていた。

ドアは開いていた。

「三橋さん?」

「奥さん・・・。大丈夫ですか?」

念の為、拳銃を取り出した。
構えながらリビングに進むと、そこで倒れている尚江を見つけた。

「奥さん?!」

「気を失っていたのか・・・。」


尚江の周りを見ると、何か落ちている。
糸というより人の髪の毛だろうか?


「これ奥さんの髪の毛じゃないですよね?」

「この箱にまだ残っているな。差出人不明の荷物・・。」

「もしかして、これお嬢さんの髪の毛を犯人が送りつけてきたんですよ!
 なんてヤツだ!こんな惨い事・・・しかも女の子の髪の毛を・・。」

状況を把握した一人の警察が怒りをあらわにした。
きっとそれを母親が見て気が動転したのだろう。

「兎に角、奥さんを病院へ運ぼう。」

「わかりました。救急車を要請します。」


その後、事はスムーズに運ぶ。
三橋の家からやれパトカーだ救急車だと来るものだから、
近所は何事かと大騒ぎだったが・・・。





一方、やっと連絡の取れた父親は一回尚江の様子を見に病院へ行ってから
警察のほうに向かう事になった。
百枝も志賀も病院へ行っているらしい。








父親は病院へ付くと先に、学校の先生と百枝に事情を聞いた。


「申し訳ありませんでした。事情をお聞きしていたのにこんなことになってしまって・・。」

百枝は深々と頭を下げた。


どうやら、昼間に一人で学校を出て買出しに行ったところ、
さらわれてしまったらしい。

幸い発見も早く、犯人の絞込みは出来ているため、
今捜索中らしいのだが・・・・。


「いえ、頭を上げてください。コチラも本当はこうならないためにも
 マネージャーなんて辞めさせるべきだったのに、廉の事を考えたら・・・。」

だから、おあいこです。
三橋の父親はいつかこうなるだろうと思っていたようだ。


「今は警察を信じるしかないです。それに事件が起きてしまって正直これで事がすんだら
 廉はもう狙われなくて済むと正直ホっとしています。
 ま、廉が無事という事を前提で考えているんですけどね。」


あの時は警察に言ってもなかなか取り計らってくれなくて、
今はちゃんとストーカー法もしっかりしているから、犯人を裁けるとと思うとホっとします。

三橋の父親はさらにこう続けた。



「三橋さんのご家族の方はいらっしゃいますか?」

はやから看護士が出てきた。
どうやら尚江の意識が戻ったらしい。


「尚江・・・大丈夫かい?」

「あ・・・貴方・・廉が・・・廉が・・・。」

「うん。事情は聞いたよ。」

「届いた荷物の中に・・・廉の髪の毛が・・・。」

「大丈夫だよ。今警察が廉の事探してくれてるから。お前はゆっくり休め。
 警察には俺が行って来るから・・・。」


尚江はまだ錯乱状態だ。
無理も無い、あんなもの見せ付けられてしまっては親心は気が気じゃない。

三橋の父親は尚江を落ち着かせて、もう一度寝るように諭す。
尚江はゆっくり瞼を閉じると、またすぐに眠りに付いた。

看護士に精神安定剤を使用しますか?と聞かれ、お願いしますと頼んでおいた。
このままじゃ暴れかねない。


「じゃ、私達はこれで・・・。」


「そうですね。廉だけじゃなくて他の野球部の生徒さんのことだって心配だ。
 廉だけじゃないんですよね。マネージャーやっている子は・・・。」

「はい、今は他の生徒の親御さんが付いててくれています。」



「分かりました。じゃ、私はこれから警察に行ってきますので
 あんまり気を落とさないで下さい。」

「申し訳ございません。本当はこっちがそれを言う台詞なのに・・・。」



















「あ、監督!、先生!!」

「すみません。花井さん阿部さん突然呼び出してしまって・・。」

百枝と志賀は学校の合宿所に戻ってきた。

「いいんですよ。それより三橋さんの方が心配だわ。」

「そうよ。大切な一人娘だもの。」


尚江は一度意識を取り戻してもう大丈夫らしい。
今父親が警察に事情を聞きに行っている。


「心配ね・・・。」

「そうね早く見つかるといいわね。」



「ソレより、今日は有難うございました。」

「いいのよ。皆ちょっと気にしていたけど、さっき全員寝付いたところだわ。」

「千代ちゃんはまだ起きてて監督の事待ってるみたいよ。」

「本当に、じゃ、もしかしたらまたお願いするかもしれないです。」


女子の部屋に百枝は向かうと、花井の母親の行っていた通り千代は起きていた。

「千代ちゃん。先寝ててよかったのに!」

「すみません・・・どうしても眠れないくて・・・。
 三橋さんが無事に早く見つかるように月にお願いしてたところなんです。」

「そっか・・・明日も早いし、寝ようか。」

「はい・・・。」





















捜査本部は深夜まで会議が開かれていた。
既に三橋の父親は帰っていた。


「被疑者は相原一樹 25歳。三星学園の出身。
 被害者が中一の冬からスカートカー行為を繰り返して、今回、拉致監禁。」


「犯行現場には当時誰もいなく、素早く車に連れ込み逃走。
 北の方角へ向かったと、目撃者は証言。」


「それは車の目撃者ですか?」

「そうだ。数分前まで被害者と一緒にいた者がいる。
 方向が違い、曲がり角で別れた後、尋常じゃないスピードで走る車を目撃。
 何か叫び声を聞いたような気配がしたため、心配になり被害者の後を追い方が、
 荷物が道に落ちていたという事だ。」

「その車も、色も種類、ナンバーも目撃者と被疑者もものと一致している。」



被疑者はつい最近埼玉に引っ越してきたらしいのが、暮らしているアパートの大家さんの証言。
ある雑誌で被害者の写真が掲載されているのを見つけて、後を追ってきた可能性が高い。

「すると、犯人の活動拠点は・・・。」

「埼玉ではなく、群馬の可能性もある。」

「もともと被疑者は群馬住民。北の方角に車を走らせているのも・・・。」

「群馬に行くためかもしれない。」


高速道路や、有料道路の監視カメラになにか移っているかもしれない。
埼玉から群馬の道路で監視カメラが付いているカメラを全て調べ上げる可能性がある。
時間的に見て、時間帯を調べ上げる。



「他にも熊谷、深谷、行田、羽生、本庄あたり聞き込みにいってくれ。
 あと、群馬県警との連携も必要だ。被疑者が群馬へ逃げたとなると
 群馬の警察にたよるしか無いからな。」





資料をまとめたところで一度解散。


本格的な捜査が始まった。















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