act.2 そういえば、いつからなの?! 退屈な古典の授業は、ラッキーな事に自習になった。 知らない先生が、自習用のプリントを持ってきて終わりごろまたきて集めるという。 かったるいが、提出物も点数に入るからやっておかなければならない。 阿部は面倒ながらも、課題をやり始めた。 適当にやったせいか、開始15分で終わってしまった。 あぁ、とりあえず自力でやったからいいだろう。 終わるまで居眠りでもしよう。今日も練習も9時までみっちりあるのだから・・・。 ふと窓を眺めると、体育をしているクラスを見つけた。 9組だった。 窓を開けると、騒いでいる声が聞こえる。 一番大きいのは田島だった。すぐに分かる。 サッカーをしているようで、先頭に出ていた。 (おい!怪我すんなよ。) 泉は後方ポジションだったため、あまり動いていない。 (泉も止めろよ!まったく!あ、そうだ。) 阿部は田島と泉を見終えると、またキョロキョロと校庭をみわたす。 目的の人物を見つけると、そこに集中する。 男子はサッカー 女子は陸上競技をしていた。 阿部の目的の人物、三橋はどうやら高飛びをしていようだった。 いつもおろされたフワフワロングも、体育の時だけはキッチリと結ばれていた。 斜め後ろからの角度からで、うなじがちょうど良く見える。 うん、いい眺めだ。 あの首筋に自分の印をつけられるのは、一体いつになるのか・・ 三橋は肌が白いから、よく映えそうだうん! 「あ〜べ!何見てんの?お、9組は体育なんだ?!」 せっかく人が気持ちよく、三橋を見ていたら、水谷がしゃしゃりでる。 水谷は何故か三橋になつかれている。 このしまりのない笑顔のせいか?クラスの女子とも仲がいい。 オシャレさんてこともあり、よく女子からも相談を受けるようだ。 三橋もそれに部類する。 水谷はこの持ち前のセンスのよさと、柔らかい笑顔で三橋の友達ポジションにいるのだ。 「阿部・・・怖い。」 「うるせぇ・・。」 ヤキモチなんてみっともないと思うが、焼かずにはいられない。 だって、阿部を見る三橋の目は、恐怖の二文字でいっぱいなのだから。 だから、尚の事水谷が許せないのだ。 「三橋さん見てたんだ。お!ちゃんとポニーテール出来るようになったんだ。」 「はぁ?」 「だから、髪の毛が長すぎるとかえって難しいんだ。髪の量で手が重くなるから。」 「へ〜・・・。」 女の髪事情なんて、男の阿部には分からないが、何故男の水谷はそんな事を知っている。 あぁ・・・よく女としゃべるから、そんな情報は耳にはいるのだろう。 「あ、あの飾りゴム似合ってる!やっぱり俺ってセンスいい!」 コイツらいつのまにそんな事を・・・・ しかも今のセリフは、俺が三橋さんの為に選びましたというような彼氏ともいえるような・・・ 阿部は水谷を睨んだ。 水谷は阿部が睨んだ理由が分かると、否定する。 「阿部が心配するような事はないよ。俺には・・・」 「当たり前だクソレフト!もし、あったら今すぐ窓からつき落としてやる!」 「ひどいな〜相変わらず。」 「チ・・!」 最近は阿部の脅し文句も、水谷には対抗性がでてきたのかすっかりきかなくなった。 「おい!阿部、水谷お前ら終わったのかよ。」 窓際で雑談をしていていたら、面倒見のいい花井が心配してかプリントの状況を見てくる。 「俺は終わってるぞ。」 「俺も!」 水谷は花井に、すごいでしょといわんばかりにプリントを見せる。 「それならいい。あ〜あ田島のやつあんなに・・・怪我でもしたら・・」 キャプテンらしい言葉だ。 阿部もさっき同じ事を思っていたが、花井はもっと心配してるだろう。 伊達に野球部のお母さんとまで呼ばれているのだから。 「あ、ホントだ。すごいな〜田島。」 「・・・お前ら今までどこ見てたんだよ。」 「「三橋(さん)」」」 阿部と水谷の即答ぶりに、花井は肩をおとした。 チームメイトの心配は無視かよとちょっと聞こえたのは、聞かなかった事にしておく。 「三橋さんって即答かよ。・・・でもまぁ確かにアノ子は可愛いよ。」 「はぁ!!」 「落ち着けよ!俺は別に彼女にしたいとか!そういった事じゃなくて純粋に可愛いって言っただけだ。」 阿部は三橋のこととなると我を忘れる男のようだ。 少し前も、水谷と三橋が付き合っているという噂が流れたときは、水谷に対する仕打ちは半端なかった。 それが誤解だとわかると、ピタリとやんだが、友達として仲がいいため時々はささやかな八つ当たりがくる。 阿部の前では、三橋関連のことは禁句だ。 「でさ、俺思ったんだけど、阿部って三橋のことイツから好きなの?」 思っているそぼあから、水谷が地雷をふんだ。 水谷それだからお前は、阿部にどつかれんさよと花井は心の中で合掌した。 「あぁ・・・あれはたしか・・」 怒らない。 どやら、阿部が三橋について語るような質問はセーフらしい。 水谷は興味津々に阿部の話を聞いている。 「花井、お前もきくだろ?!」 ニヤっと黒い笑みに花井も渋々付き合うことになった。 (三橋・・・その天然と鈍さで阿部を避けてくれ!!) 花井は心底そう思った。 「あれは・・・えっと部に入部して間もない頃の、ミーティングの帰りだったな・・・・・ 帰り教室に忘れ物を取りに行ったときだ。 吹奏楽部の練習音が聞こえる。 この部は音の響がどのくらいか図るために、外だったり廊下だったり教室だったりと、 各パートに分かれて練習するのが基本だ。 一年七組の教室は、使われていなかったが、九組は使われていた。 高い音から奏でられた音は、野球球児ならだれもが知っている曲だった ”栄冠は君に輝く” そう今年からやっと人数がそろい、野球部が出来て、浜田が同級生に頼んで応援団を作ってもらい 吹奏楽部も大会には演奏をしてくれると言われ、野球部は喜んだ。 その練習をしているのだ。 予選は7月から始める。 ソレまでには、野球の試合用の曲を覚えなければならない。 それはもう始まっているのだ。 でも何故この曲? これはあまり応援には使われない。 いや、使えない。 それは甲子園にいけた各代表校だけが、本場の球場で聞くことの出来る音だ。 阿部は誰が吹いているのか気になって、九組の教室をあけた。 その瞬間音は、ピタリとやんだ。 「おんな・・・。」 色素の薄いフワフワな髪の毛。 清楚と思わせるような、上質な布を使っと思われるセーラー服。 西日でキラキラ光る、フルート。 少々つり気味な、パッチリした目のわりに、イツイ印象などなくむしろ儚いイメージ 「あ・・・あ・・・。」 今の演奏を聞かれて恥ずかしかったのか、楽譜もフルートをしまうケースもそのまま、 その女の子は、逃げ出した。 「・・・・可愛い・・・つーか、惚れた。」 俗に言う一目ぼれであった。 「阿部・・また睨んでたんじゃないの?」 「俺のこれは生まれつき。」 「損してるね〜。」 「るせ・・」 「そうか、だから浜田先輩が三橋さん連れてきたとき、阿部は知ってたんだな。」 「あれは流石に、俺もショックだったよ。」 そう、浜田が、応援団の梶山と梅原と連れて来た際、吹奏楽部の部長も連れて来た。 本当に人脈のある人だ。梶山と梅原は浜田と同じ2年だが、吹奏楽の部長は3年なのにつれてきてくれたのだ。 阿部を初め、みんなが感動した。 で、幼馴染で、吹奏楽部所属とということで三橋もつれてこられたのだ。 同じクラスの田島と泉は知っていたが、阿部が顔見知りとは思わなかったのである。 浜田が三橋を紹介して、阿部が「お前!この前の・・”と言った瞬間。三橋は瞬時に浜田の後ろに隠れた。 睨んだ覚えはないが、耀さまに怯えている。 何故?! 「阿部・・三橋になんかした?」 「してないっす。この前教室でフルート吹いてたのを見たら、目があっただけです。」 事情を説明すると、その生まれついての目つきの悪さのせいだろうと浜田はいった。 どうやら三橋は、人一倍怖がりらしい。 阿部だけではなく、他のみんなにも目を合わせようとしない。 それが少し、阿部には救われた。 「あれは俺もビックリ、三橋さんの人知りはハンパじゃなかったもんね。 で、夕焼けの教室に、一人フルートを奏でる美少女・・そりゃ誰だってときめくよな〜」 「ば・・!!」 「大丈夫。それじゃ胸キュンしちゃうよね。俺だって同じ状況にいたらそうだったかもしれないよ!」 「うるせ〜!!」 話すんじゃナカッターとと阿部は、水谷につかかる。 「阿部!!すこしは温厚という言葉を知らんのか!」 「水谷も阿部をからかうのやめろよ!」 「うるせぇ!!コイツはいっぺん死ね〜!」 「やだよ〜イテテ!阿部ほどからかい甲斐のあるやついないもん!」 「だ〜!静かにしろ!先生きちゃうだろ!!」 それから、水谷が阿部から解放されたのは、プリントの回収に来た先生が教室に入ったときであった。 ------------------------END------------------------ 阿部は純情少年でいいと思うよ。 水谷は結構恋愛経験は豊富でいいとおもうよ。 そんな二人を見てて花井は、ため息ついてたらいいと思う。 みんな邪魔する気はないけど、阿部を見ててからかいたくなります。 特に水谷あたりは・・・ 栄口君もちょっとからかう。 泉君はさっさち言えよと、男前にせかし、田島は俺だって三橋の事好きだぞ〜ってけん制 でも田島は相手にされてないから、そこら辺は大丈夫だと思っている阿部。 他のメンバーはとりあえずガンバって感じ。 花井は、問題児たちが、阿部につっかかりハラハラしてたらいい。 もう野球部公認の片思いさん(笑)。 |
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