5.17事件    おまけ


阿部視点





三橋の誕生日はリサーチ済だった。
浜田先輩から聞いた。


「何?お前三橋のこと好きなの?」

「別に・・・違うっす。」

「隠すな。隠すな。三橋は鈍いからちゃんとハッキリ言わないと駄目だぞ。」

「わかってます。」

「でも、当日はきっと無理だから次の日にさりげなく渡した方がいいよ。」

「どういう事スか?」

「今に分かるって。」


そう言って浜田先輩は笑っていた。
今にわかる。

そう、今俺はその浜田先輩が言ったことを現実に理解した。


俺が今立っている所は、きっと一生関わることのない場所。
高級帝国プリンスホテルのパーティー会場。
三橋は綺麗に着飾れて不機嫌そうにしていた。

途中までは良かったのだ。
中間試験でみんなで勉強する場所を、どうしようと考えていたときに、
三橋が家を提供してくれた。

これは当日に渡すチャンスだと
で、今はこんな場違いなところに・・・・・
当日は忙しい・・・・そうか、”コレ”なのか・・。


「阿部、全然食べてねぇじゃん!」

「うるせぇよ!お前と一緒にするな!」

田島はおおはしゃぎで、全部の食い物からにする勢いだった。
無論、他のメンバーも田島ほどではなかったが・・・



時間があいて、ヒールで走って転びそうになったのを、かんとかキャッチャーの意地で転ばないように受け止めて・・・
お願いだ三橋、駆け寄ってくるのは嬉しいんだけど、今のお前の胸は強烈過ぎるんだよ。
当たってるんだ・・・・。その・・・胸が。


バレ内容にヒールで走るなと、ちょっと冷たかったかな?と思ったが気にしてないらしい。
一段楽したのも束の間、今度はどっかのボンボンが沸いてきている。
音楽からして、”一曲踊りましょう”ってヤツだな。
クソ・・オレはそんなことできねぇし、誘ったところで踊れねぇ!


「阿部助けてやんないの?」

いつもの阿部なら・・・と栄口は助言したが、
栄口もこの状況は難しいよなって、苦笑いをしていた。
関係ないといっても、体が動いちまうんだよ!



ボンボン達をかきわけて、三橋を連れ出したはいいが、
今度は三橋からダンスのお誘い。

嬉しいです。
でも三橋、俺はダンスとかそういったのは・・・

「私、の動きにあわせて、手は腰と。コッチの手は・・」

密着



幸せでした。
周りのヤツら悔しそうにしているのが良く見える。いい眺めだ。









何だかんだ言って、場違いと思っていながら普通にパーティーを楽しんでしまった。
栄口にプレゼントを用意していることをバレて、冷やかされたが気にしないで置こう。
俺の片思いは普通に皆知っている。
知っていて、ひやかすから余計タチ悪いぜ。

それならちょっとでも上手くいくように協力してくれよ。
ただえさえ俺は、顔が怖いと三橋にまだ警戒心持たれてんだからよ。



帰りリムジンに乗って帰ってきた俺を家族は質問攻めにしたが、
そんなの無視して、明日どうやってこのプレゼントを渡そうか考えた。







しかし、どう考えても無理だ。
何度シュミレートして、三橋が怖がって泣く結果にたどり着く。
この顔・・・今まで女の子なんてメンドくせぇって思ってたが、今更この顔つきを恨めしいと思ったことはない。


実際、女に贈るものなんてよくかわらねぇから、別にいいけど・・・



「あ・・阿部君!・・お・・おお、はよう。」

「三橋・・チッス。」


中間試験の間、朝練の時間は皆で早起きして勉強しようと、三橋の家でいっていたのだ。
俺が一番で、三橋が二番のようあった。
今なら誰もいない。これはチャンスか?


「阿部君・・き、昨日は・・ありがとう。」

「何が?別にあんな上手い料理食べられたし?」

「だって・・・勉強・・する、って嘘・・。」


あぁ、嘘ついてたこと気にしてんのか?別に怒っちゃねぇよ。
だって普通あんな豪華なもん見せられたら、逆にこっちが有難うだぜ?

「俺は気にしてない。みんなもそうだ。」

「あ・・ありが・・とう!」


あれ?いつもだったら二人の時はビクビクしてて、泣きそうな顔すんのに今日はそうでもない。
もしかして、昨日の出来事が三橋の俺の印象を少し変えたのか?
そうだった、ありがたい。


「そうだ・・三橋。」

「?」

「これ・・実はお前の誕生日浜田先輩から聞いていて知ってた。」

「え・・?」



手の平に乗る小さな箱。
篠岡から聞いた情報で、何が悲しくて女共しか入らないような店に入って選んできた。
コイツは最近水谷と小さ目の小物とか、ピン、髪飾りやら集めている。


今日だって、両サイドにキラキラと光るものが付いていた。
俺が買ったのは大きめなヤツだった。
この類のものは見たことなかった。

”ダッガール”


まとめ髪に!なんて紹介されている挟むタイプのものだった。
三橋の好みじゃなくて、あえて買わなかったのか分からなかったが、
これをつけている三橋を見てみたいからと思ってつい買ってしまった。


三橋はゆっくりと俺のプレゼントを受け取った。

「開けて・・いい?」


「あぁ・・。」


三橋は丁寧に、ラッピングされた包装をひらいた。


「わぁ・・。」


歓喜の声だった。
どうやら気に入ってくれたらしい。


「ありがとう・・阿部君!!」

「いや・・お礼だよ。昨日の・・。」



で、ちょっといい雰囲気だったのに・・・



「おはよ〜!!ってあれ?まだ阿部と三橋しかいなかったの?」


クソレフトてめ!空気読め!!
しかし、そうじゃなくても、水谷が来たらもうみんな次々にきた。
せっかくのところを・・・・
ここで暴れたら、せっかくのこの三橋の俺の評価が下がる。
俺はクソレにあとで覚えてろよと睨んで、皆で机に向かった。


数日、俺がやったのは付けてくれる日を楽しみしていたが、
やっぱり気にいらなかったのか、俺が嫌いなのか、三橋の髪の毛に俺のやった
ダッガールが付いている日が来ることはなかった。






























「おはよう。」

「おはよう。あれ、三橋さんそのカバンにつけてるの可愛いね。どこで買ったの?」

「これ・・・誕生、日にって・・もらったの!」

「ええ〜いいな?水谷君?」

「違う、よ。」

「え?」

「阿部君!」

「嘘?”あの阿部君”」

「うん!」

「へー。阿部君てこういうのあんまり気が聞くタイプじゃないと思ってたけど、案外いい目しえるね。」

「・・・でも私には、まとめ髪難しい・・な。」

「だからカバンにつけてるんだ。でもこれでも可愛いね。」

「うん・・。気に入ってる・・よ。」

「いいな〜。私もそうやってプレゼントされたいな〜。」

「?」

「ううん?こっちの話し。」







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おまけ書こうと思ってすっかり忘れてました(笑)
阿部にいい思いを・・ってこれじゃ最後全然いい思いしていない。

阿部は三橋がカバンにつけている事はもう少し後になってから知ります。
みんなはとっくに知っているけど、面白がって教えていません。

で、部活の皆で帰る日になって、つけていることを知り、
再び機嫌が良くなる阿部がきっとくるハズ。








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