性癖    前編





阿部と三橋が付き合いを始めてから大分たった時のことだった。
ある日の学校の休み時間、阿部は三橋のいる9組教室に遊びに来た。




「三橋。」

「何・・?阿部君、ど・・どうしたの?」


「今度の休みさ、時間あるか?」

「あるよ・・。」


「俺の家に遊びにこねぇ?」


阿部の家には行った事は無かった。
いつも広い三橋の部屋で、開放感を味わっている中、阿部は一度も自分の家へと招き入れることはなかった。
無論、三橋も無理は言わず”行ってみたい”という事は無かった。



「いいの?!」

「あぁ。」

「でも、め、迷惑・・じゃ・・?」


「大丈夫、その日家族いないから・・。」

「え・・・。」



思いのよらない言葉が返ってきた。
親の居ない日のお誘い。

それは思春期の期待半分怖さ半分。



「わ・・わかった。」


用件だけ言って阿部は、すぐに7組の教室に戻っていった。



「と・・・ど、どうしよう・・。」



親の居ない家への誘い。
それは誰もが、ある一つの可能性へと結論をだす。


付き合いはじめて半年。

そうった場面は何度かあった。
しかし、阿部は三橋にはまだ深くまでは、触れてはいない。

キスはした。

唇以外のところにもキスはされた事はある。

阿部の手が、三橋の服を脱がそうとすると三橋は拒んだ。
阿部が嫌いというわけではない。
次の階段へと上るのが、人一倍怖いだけなのだ。
阿部もそのことをちゃんと分かっていたから、無理にはしてこない。


キス以上の事だって、興味はある。
少しだって知識はある。
クラスの友達とだって、恋バナとかでもそういった関係の突っ込んだ話は良く出てくる。


”この前ね、彼氏と初めてキスしちゃったんだ〜”

”え〜うっそ!!”

”私ね、先週デートした時ね・・体触られたよ”

”フフ、甘いわね。皆、私は・・・・”

”ええ?どういうこと”

”それってつまり・・”

”きゃ〜!!!!”

”で、三橋さんは?”

”え・・・!!!!”

”だって、7組の阿部君と付き合ってるんでしょ?”

”阿部君てさ、怖くない?”

”カ・・カッコイイヨ!!”

”ま、確かに野球してる時の姿はカッコイイね”

”どこまで行ったの?”

”き・・キスはした、よ”

”まだキスまでか〜”

”今度進展あったら教えてよね!”






この阿部の誘いをクラスの友達に話したら、案の定それはアレのお誘いだと三橋は断定された。
そうと決まればと、周りの女の子達は三橋に当日のシュミレーションを説明する。

下着はちゃんと見られてもいいものとか、
やっぱり服だって脱がせやすい方がいいんじゃない?など、
三橋を意思を無視して話が進んでいく。

(・・・俺・・どうしたら・・・)


別に、そんな事しなくてもと三橋は言えぬまま勝手に、友達は三橋にこうしきゃと話を進めた。




(それに・・だって、そうと決まったわけじゃ・・!!)






























約束の当日、ソワソワした足取りで阿部の家へと向かう三橋の姿があった。


表札を確認すると、どうも足がガクガクと震えてきた。
インターホンがなかなか押せなく、ドアの前で立ち尽くしていた。
緊張しててボタンが押せない。


「何やってんだよ!」

「ひぃ!!」

「・・・そんな驚く事ないだろ。傷つくな・・。」

「あ、ごめんなさ、い。でで・・もなんで・・。」

「2階の窓から見えた。」

「・・・そうです・・か。」



「まぁ、入れよ。」

「お・・お邪魔します。」





阿部の部屋は綺麗に片付いていた。

本棚には、たくさんの種類の野球雑誌が並んでいる。
他にはノートや、ファイル、他校の情報収集データだろうか?
見出しをつけられていて、規則正しく揃っていた。


「ホレ、飲み物。」

「あ、ありが・・と。」


オレンジジュースを受け取ると、三橋はすぐに飲み始めた。
男の子の部屋に入るのは、昔叶の部屋に遊びに行って以来だ。
でも、遊びに行ったのは子供の頃だったので、今の叶の部屋はよく分からない。

もの珍しそうに、三橋は部屋の中をキョロキョロ見回した。


「何だ?俺の部屋、そんなに変か?」

「・・ちが・・・その、男の子の部屋、はいるの・・はじ、めてで・・」

「別に普通だろ?お前の部屋よりかは狭いけど。」

「そ・・そんな事、ない。俺、阿部君の・・家にあ・・遊びにこられて・・う、嬉しい・・です。」



恥かしかったのか、三橋の言葉は段々と小さくなっていく。
貰ったジュースはトレイの上に戻して、うつむいた。


「そうだったな、三橋をここに呼ぶの初めてだったしな。」

「うん・・。」

「いつもお前の部屋ばっかりじゃな。といっても、俺の家は弟もいるし、母親は専業主婦だからなかなか、呼べなくてよ。悪かったな。」

「ううん!」


なんだ、ただ阿部君はゆっくりしたかっただけだったんだ。
ほっと三橋は緊張の糸が解けた。
クラスメイトからそそのかされた言葉を真に受けて、一人でグルグルしていただけだったのかも知れない。
三橋は独特の笑いをすると、阿部に近寄って阿部の服を掴む。

それはいつも三橋が阿部に甘える時にする行動だ。
こうすると阿部はいつも三橋の頭を撫でて、髪を掬ってくれる。

ちょっと阿部が笑って、唇が近づいた。


キスをする前、阿部は微笑する。
そんなクセを見抜いたのは、つい最近だった。

好きな人のクセや、ちょっとしたしぐさが分かるのは、恋人としてとても嬉しい。

今日もまた暖かく包んで、抱き合って、他愛のない話して、阿部の野球の話を聞いて・・・







「三橋・・・。」



阿部の三橋を抱きしめる力が強くなった。
あぁ、気持ちがいい。
こうやって力強い抱擁は、三橋は大好きだった。とても安心するから。


阿部はまた三橋にキスの雨を送る。
三橋もそれに答えるように、手を首に回した。

いろんな角度から降りてくる唇。
甘い雰囲気に三橋はうっとりしていた。

今度は首にへと顔が降りていく。
一回だけキスマークを付けられた事があった。
今はもう消えてしまっているけど、また付けるのだろうか?
今度はあんまり目立たない所がいいな。と三橋はボーと阿部のすることを見ていた。


モゾモゾと三橋は違和感を感じていた。

そういえばさっきから、何かが触れられている気がする。
キスのせいで気がつかなかったが、三橋の服は胸の辺りまで捲れ上がっていた。

「あ・・!」

「三橋・・。」


阿部の熱っぽい声に、胸がときめいた。


クラスの友達の忠告は見事に当たったのである。



「阿部く・・ん。」

「大丈夫・・怖くねぇって・・。」


首元までまくれ上がった服。
上半身は下着だけが、堂々と存在をアピールさせるかのように目立っていた。

なんとなく付けてきたお気に入りの可愛い下着。
とりあえず、友達の忠告どおりにしておいてよかったと三橋はちょっと友達に感謝した。


「・・ん!」

「可愛いな・・。」


阿部は笑うと、三橋の膝を割ってスカートも捲る。


「あ!!」


恥かしい。
半脱ぎ状態で、下着が丸見えで、それを上から阿部に見下ろされている。
羞恥だけけで人が死ねるから、三橋は今死んでしまうかも知れない。


「へぇ、ブラとおそろなんだ。」

「ひゃ!!」


ショーツを指でなぞった。
阿部は嬉しそうに、下着越しに三橋の秘部を撫でた。


「ん・・!!」

「気持ちいいの?」

「ちが・・・!!」


完全に流されている。
主導権はもともと阿部が持っていたが、それとこれとは話が別だ。

阿部の顔は下半身の方まで降りた。
三橋の白い太ももを撫でて、舐めて柔肌の味を味わう。

「はぁ・・きゃ!!」

くすぐったくて、それ以外の感覚もでてきて、混乱状態の三橋は何も考えられなくなっていた。
ちょっと震え始めて、それに気付いた阿部は、また体制を元に戻して三橋に覆いかぶさる。
抱きしめて、キスして、三橋が落ち着くまで頭を撫でた。



「大丈夫だよ。三橋怖くない。」

「う・・うぅ・・。」

「最後までしねぇよ。」

「ほ・・本当?」

「あぁ・・・今日は・・・


 今日は多少は触るけど、殆ど見てるだけにするから・・・・」



阿部は楽しそうに笑った。





















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