母親の自覚 1






気持ち悪いと思ったときにはもう遅かった。
駆け出してトイレに向かうが、間に合わなく近くに位置する手洗い場で戻してしまった。
そこら辺の床を汚さなかっただけまだ、ましだろう。


(・・・今日はいつもより酷いですね。)


骸の体調が優れなくなって、早二週間。

骸は自分の部屋に塞ぎこんでいた。
毎日、骸の部下と綱吉は様子を身に来てくれるが、一向によくならない骸に
いい加減医者に行くように進めるが、骸本人が医者を拒否している。


(分かっているんです。原因はきっと・・・・)


そう、骸は分かっているのだ。

この体調不良の原因を・・・。


(でも、僕はどうしたらいいのか分からないんです・・。)


「う・・!!!!」


今度はトイレで胃の中のものを全部吐き出してしまった。



(雲雀君・・・僕はどうしたらいいですか?)


骸の問いかけには、誰も答えてくれなかった・・・・・。









「ツー君。ちょっとお母さん買い物に行って来るから、ランボちゃんとイーピンちゃんの事お願いね。」

日曜日の午後。特に用もなく部屋でゆっくりしていた綱吉に、奈々は夕飯の買い物の留守番を頼まれた。

「わかった。母さん、今日の夕飯何?」

「フフ、今日はね、初心に帰って肉じゃがよ。」

「へ〜、楽しみだな。母さんの肉じゃが。」

「じゃぁ行って来るわね。」

「いってらっしゃい。」


さてと、綱吉はベッドから体を起した。
目指すは一階。この時間は畳の部屋でランボとイーピンがまだお昼寝をしている時間だ。
フゥ太はさっき、最近出来た近所の友達と遊びに行っている。

綱吉はそっと部屋の扉を開けると、起さないようにランボとイーピンの横に座り大人しくマンガを読んでいた。


「おい、ツナ。」

「リボーン、静かにして。今お昼ね中なんだから。」

さっきまでどこ行ってたんだよと、言いたかったがチビたちが起きると返って煩くなるから
綱吉はリボーンに大人しくしてくれるように頼んだ。

「特訓するぞ、ツナ!」

「お前は俺の都合も考えろ!!」

「う〜〜ん!」

「テメーもおきやがれ!」

「グピャアア!!」


リボーンは寝ているランボに容赦なく蹴りを入れた。
その痛みでランボの眼はすっかり覚めてしまった。

「あ、リボーン!チネー!!」

お昼寝の邪魔をされて、ランボは機嫌が悪い。
リボーンに食って掛かるが、結果はいつもどおり。
リボーンがランボをコテンパンに叩き潰して終わる。

周りの騒がしさに、イーピンも眼が覚めてしまったようだ。

「あ〜ゴメンネ。イーピン。」

「大丈夫。イーピンそろそろ起きる時間。」

「そっか・・・」


ランボは諦めが悪く、まだリボーンに食って掛かっている。
いつもだったら直ぐに泣き喚くが、寝起きが悪いせいかいつもより乱暴だ。

これじゃ家が壊れると思い、綱吉は皆を外へ出す事にした。

外なら家も壊されなくて済むだろうに、この近所の人たちはこのおかしな光景を”子供が遊んでいる”と
しか見えていないらしく違和感も無い。
心置きなく外へ出せた。

綱吉がボーっとしている間に、ランボとリボンの一騎打ちのようなものが始まらんとしていた。


「今日こそチネ!リボーン!」

「お前みてーな超がつくほどのヒコっこがエラそうなこと言うんじゃねぇ。」

ランッボはお決まりの十年バスーカーをリボーンに向けて発射するが、
簡単にリボーンに避けられてしまう。

そしてリボーンの弾丸がランボに直撃した。


「うわあああぁぁぁあぁぁあ!!!!」


よほど痛かったのか、いつものガマンという言葉も出ることなく
ランボは泣き出してしまった。

「へ、口ほどにもねぇえな。」

リボーンは拳銃の煙を、息で消した。
綱吉はランボを抱き起こすと、洋服の汚れをはいてやった。

「ランボ、お前大丈夫か?」

「うわ〜〜!!」

「駄目だコリャ・・・・って、そうだ、十年バスーカーの弾は?」

「まだ止まってねぇぞツナ。」

「あ・・・。」


ランボの撃った方向を見ると、スピードは緩んだが弾丸はまだ生きていて飛んでいる。
誰かに当たったら・・・!!

「止めないと!」

「仕方ねぇな。ランボを放りなげろ。」

「そんな無茶苦茶な!!!」


丁度、バズーカーの弾丸の進行方向に人がいた。

「あ・・・すみません!そこの人、伏せてください!!」

距離が遠いため、聞こえないのか。見向きもしてくれなかった。


その人影は見覚えがあった・・・。


「フン、マフィアのいう事など誰が・・・。」



「骸ーーーーー?!」



ああ、と思ったときには骸は十年バズーカの餌食になっていた。











「うう〜・・・もう出ません。胃の中全部出し切りました・・・。」

トイレにこもりっきりなんて、何て無様。
体調が悪いのだから仕方ない。

薬を飲めと綱吉がシャマルに頼んだ処方箋があるが・・・

(飲めません・・・。)

飲んだらもっと酷い事になる。


医者がイヤなら、せめてシャマルにでも診てもらってよ!
と必死になる我がボス。

「仕方ありませんね。シャマルに口止めしてもらいますか・・・。」

これ以上、話をややこしくしたら骸の自身が危うい立場になる。
ボンゴレに身をおく以上逆らえない。

(シャマルに口止めして・・それからどうしましょうか?
 クロームの所で寝泊りして・・・雲雀君には・・・。」


雲雀は今、長期任務とボックスの研究で国外にいる。
そろそろ帰ってくる頃だ。

任務終わっていて、報告書はメールで貰ったと綱吉は行っていた。
今回のボックスの研究もまずまずらしい。


(雲雀君は・・・群れるのは好きじゃない。)


どうやって言おうか?この身の異変を?
どうやって言おうか?この心の叫びを?


「雲雀君・・・僕は・・・君との・・・・・・!!・・・え・・・・?」



(何・・・?コレ)


突然、自身が浮いている感覚に陥った。
視界が真っ白だ。

なんか煙に包まれてハッキリしない。




「ゲボ、ゲボ!!骸大丈夫?」

「・・・?!」


声は知っている人の声だったが、今の骸には聞けない懐かしい声な気がする・・・。



「え・・・・ボン・・ゴ・・・レ?」


「じゅ・・・十年後の・・骸?!」


骸の目の前には、まだ声変わりもしていない少年の沢田綱吉が立っていた。











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