気まぐれな母性愛    2




あの一件以来、ランボの骸への懐き方が異常になっていた。


「骸に会いたいーーー!!!!」

ジタバタと手足を動かして家で暴れるランボ。


「おい、ツナ。ランボを黙らせろ。」

流石に毎晩されては近所迷惑である。
始めの頃は、奈々も落ち着かせようとあやしていたが今では

『ランボ君は骸ちゃんて子がよっぽど好きなのね〜』と
この騒音に慣れてしまっていた。


「おい!ランボ静かにしろよ。近所迷惑だろ!!」

「ランボさん、骸に会いたいーー!!!」

「だーー!!もう埒があかねー!!」





「ああ・・・もう。」

「どうしたんですか?十代目、元気が無いように・・。」

「よぉ、ツナ。シケた顔してどうしたんだよ。」

「獄寺君。山本・・。」


夜中まで騒いでいたランボのせいで綱吉は寝不足だった。
普段行動を共にする獄寺と山本は、すぐに綱吉の異変に気がついたのだ。

「実はさ・・・ランボの奴、骸にすっごい懐いちゃってさ・・毎日骸、骸うるさいんだよ。」

「「えええ??」」


何でよりよって骸なんかに?
と二人は顔をあわせた。
綱吉は前にランボが骸と会って、家に泊まった事を話したのだ。

「あのアホ牛、骸にからかわれているの気付いてないっすよ。」

「アイツ一応面倒見はいいのなー。」

ただでさえ、千種と犬、クロームの面倒を見ている骸なら、
一人や二人人が増えても変わらないだろう。

「でもね・・・問題はソコじゃないんだよ。ランボ、骸の事女と思ってるらしくてさ・・・。」

「はぁぁ?!!」

「何だソレ!」

骸の幻術にでもからかわれたんだろうと思うけど・・・。
綱吉は溜息を大きく吐いた。

「なぁ、ツナいっその事、暫くあのアホ牛を骸のところに預けるのはどうすか?!」

「ええ?!」

「成る程、そうすればホームシックになって大人しくなるのか。」

獄寺の提案に少々不安になるが、一晩泊まっても大丈夫だったから
さほど差し支えは無いだろう。
骸の家は綱吉の家と違い、家族的な暖かさが少々欠けているから子供にはすぐ寂しくなるだろう。

「ありがとう。獄寺君、リボーンにその案言ってみるよ。山本も話し聞いてくれてありがとう。」

「そんな!光栄ッス!十代目。」

「どういたしましてなのな!」



学校から帰ると綱吉は獄寺の案をリボーンに話した。
リボーンはそれは面白いと、骸の了承をすぐに得てこいと綱吉に言った。
コッチが賛成でも、骸がランボを預かってくれなきゃ意味が無い。

頼むから賛成してくれと、綱吉は骸に恐る恐る尋ねたが、
骸はあっさり「いいですよ」と答えてくれた。


こうしえ、ランボの一週間骸の家にお泊りする事になった。


「ランボちゃん、忘れ物無い?」

「えーとね、ハンカチでしょ?タオルでしょ?着替えでしょ?お菓子でしょ?
 ガハハー!!ランボさん完璧だもんね!!」


「ボンゴレ、一週間だけですからね。」

「本当にありがとう骸。」

骸がランボを迎えに行く形となり、骸は綱吉の家にいた。
奈々はランボに忘れ物は無いか確かめているが、問題はなさそうだ。

「貴方が骸ちゃん?ランボちゃんの事お願いね。」

「はい・・。」

「ちょ・・母さん・・。(っていうかちゃん?)」

ニッコリ笑顔で、ランボを頼みますと奈々は骸に挨拶をした。
ランボはもう骸の膝のところにいる。

「じゃ、行きましょうか?ランボ君。」

「うん!ねぇ、骸手繋いで〜。」

「おやおや・・。」

甘えてくるランボに苦笑しながらも、骸は手を差し出す。
が、手を繋いだがよかったが、ランボが小さすぎて手が届かない。

「グピャ!!」

「・・・・僕とランボ君の身長差じゃ無理みたいですね。」

「ヤダー!!!お手手繋ぎたい〜。」

子供特有のワガママが始まる。
家を出る前からランボのワガママ前回。
綱吉は骸が怒るのでは?はハラハラして見ていたが、取越し苦労のようだった。

「クフフ。ランボ君、僕ワガママな男の子は嫌いですよ?」

鶴の一声というのはこういう事なのだろう。
その言葉を聞いたとたん、ランボは見違えるように大人しくなった。

「じゃ、ボンゴレ。一週間後に。」

「あ・・・あぁ・・。」


何事もなかったのか用に骸は自分の家に帰った。






「あのね!あのね!骸!!!」

「何ですか?ランボ君?」

黒曜までも帰り道、ヒョコヒョコとランボは骸の隣を懸命に歩く。

「ランボさん大きくなったら、骸の事お嫁さんにしてあげる!」

「おやおや、一体どこでそんな言葉を覚えたんですか?」

無邪気に笑うランボに、つられて骸も笑ってしまった。
ランボの目線にあわせるように、骸は膝を折った。


「10年後も同じ台詞が言えるのなら、貴方のお嫁さんになる事を考えても良いですよ?」

「本当に?!」

「ええ、僕に釣り合うようになったら、またおいで。」

「よし!ランボさん頑張っちゃうもんね〜!!!」

骸の返答に気を良くしたのか、ランボは楽しそうに走り出す。

「そんな荷物を抱えて走っては、ころび・・・

「グプア!!!」

「ホラ、いわんこっちゃない・・。」

「うああぁ〜!」

「全く世話の焼ける子ですね。」

骸はランボが持っている荷物を持ってあげると、ランボの汚れいている部分を叩いた。
どうやら服が保護をしてくれたようで怪我はしていなかった。

「もう少しですよ。男の子なんですから泣くんじゃありません。」

「ううう〜ガ・マ・ン。」

「そうそう、強い人は好きですよ。」





その日、いつものメンバーにランボが加わって、
食卓はいつもより賑わった。
正確には、犬とランボがオカズの取り合いが酷かったのだが・・・




「ねぇ、何で骸はこんなに優しいのに、皆骸の事悪く言うの?」

「え・・・?」


骸の家で居候生活も残り少なくなった日の夜。
この前のように、一緒にお風呂に入っている時だった。
湯船の中、骸の膝の上にランボを座らせてゆっくりしていた時だ。

「皆、骸が優しいの知らないんだよ。」

「ランボ・・・僕は悪人なんですよ。」

「そんな事ないもんね!」

「聞きなさい。本当の話です。僕は多くの人を殺めて来ました。それにボンゴレを始めアルコバレーノや 
 君の仲間だって傷つけたことがある。」

「でも、今はしないんでしょ?だって皆とこうして話してるし!」

「・・?・・え、ええ。」


仮にもボンゴレの霧の守護者となってしまった今では、
簡単に迂闊な行動は取れない。
骸一人ならまだしも、千種や犬、クロームに被害がいくのは避けたいため
骸は現在大人しくボンゴレの支配下にいる。

「なら皆許してくれたんだね。」

「違いますよ。皆許しては無いのですよ。」

「骸、皆に謝った?」

「謝って済めばどんなに楽か・・・。」

「え〜!じゃ、骸は一体誰に許してもらえばいいの?」

「え・・・?」

ランボは短い手を一生懸命伸ばして、骸の肩を掴んだ。
しかし体が小さくて一瞬しか乗せることが出来なかった。

「じゃ骸、ランボさんに謝ればいいよ。」

「え?」

「いいから!」

「は、はぁ・・。ゴメンナサイ。ランボ君。」

「うん!ランボさんは骸のした事許してあげる!」

だからもう大丈夫とランボは笑った。
ガハハとバスルームは声が良く響く。
骸は俯いてランボを強く抱きしめた。

「グピァ!!骸!!苦しい!」

胸が当たって柔らかくて気持ちいいのだが、このままでは窒息しそうになりそうな
ランボは胸の中で暴れる。

「・・・ありがとうございます。ランボ君。」

その時骸の声が震えていたのはランボは気付かなかった。






ランボの骸の家での居候生活は無事に幕を閉じた。


「ランボ君を連れてきましたよ。」

「ママ〜ン!!!」

綱吉の家に戻ったとたん、今度は奈々に甘えるランボ。
やっぱり少しは寂しかったのか、暫くランボは奈々に離れなかった。


「有難うな骸。これで暫くランボも大人しくなるかな・・。」

「そうだといいんですけどね。」

骸の顔がいつもより柔らかい感じになっているのを綱吉は気付いた。

「骸・・・おま・・・

「骸!!!約束必ずだぞ!!」

「ハイハイ。ランボ君も僕からの約束破っちゃ駄目ですよ。」

「わかってるもんね〜!」


「じゃ、僕はコレで。お邪魔しました。」

その日の綱吉の家の食卓はランボの土産話で花が咲いた。
ご飯は千種が作ってくれて、お風呂は骸とクロームが順番に一緒に入ってくれた。
犬とはオカズの取り合いと、テレビのチャンネルを取り合って、
夜は骸のベッドで一緒に寝たという。

「骸は必ず、ランボさんに寝る前お話をしてくれます。」

「へ〜、いいわね。ランボちゃん、どんな話だったの。」

「昔昔、あるところに悪逆非道の王国・・

「ああ!!また変な話を聞かされてる!!!」


ランボは骸のしてくれた話をしようとしたが、綱吉がいつものツッコミを入れた。

「全く、骸のヤツ・・。」

しょうがないなと綱吉は呆れたがランボはこの話を気に入っていた。
悪逆非道の悲しい双子の物語。
初めて聞いたとき、ランボは泣き出してしまった。

「違うもん!いいお話だもん!」

「お前は何でも間でも骸に感化されすぎ!」

”いいですか?ランボ君、必要以上に僕が優しいとか言っては駄目ですよ?”

”えーどうして!!!”

”君まで立場が悪くなる。あぁ、今の君には分からないでしょうけど・・”

”そんな!骸は優しいから優しいって言って何が悪いの?”

”僕の約束を守れないなら、君の事嫌いになりますよ”

”う・・ランボさん約束する。”

”イイコですね。ランボ。あとあまりボンゴレを困らせては駄目ですよ?約束です・・・。”



「・・・どうした?ランボ?」

「な・・なんでもない!」


ご馳走様とランボは部屋に戻ってしまった。

「変なランボ。」

「ま、いいじゃねぇか。ランボも少しは煩くなくなったみてーだからな。」

「リボーン。」










----------10年後----------


「骸さん。」

「おや、ランボではありませんか?」


ランボは今でも骸のことを思い続けていた。
骸の約束を今でも必死に守っている。

本当は女性なのに未だに男のフリをしている骸。
本当は誰よりも優しいのに悪人役をかっている骸。


骸の立場はやっぱり今でもよくなくて、
ボンゴレ内でも快く思っていない人もおおい。
それもランボはこうやって、骸に定期的に会いにいっていた。

勿論、守護者達にはもうランボが骸に懐いているのは知っている。
あくまでもそういう事をしている程度だけだが、
ランボが実際骸に本気で好きというのは誰も知らない。



「今日が何の日だか覚えていますか?」

「今日・・ですか?」


今日は特に祝日でも、誰かの誕生日でもない。
骸は頭を張り巡らせて一つの考えにたどり着いた。

昔、ランボと交わした一つの約束。


”ランボさん大きくなったら、骸の事お嫁さんにしてあげる!”


「たしか君が僕にプロポーズした日でしたね。」

「まさか覚えているなんて思ってませんでした。」

顔を赤くして、ランボは言った。
あれから10年、ランボは美少年に育った。
物腰も柔らかく、少々泣き虫なところはまだ治っていないが、
誰から見てもイイ男になっていた。


「僕、まだ骸さんの事思っています。」

「おやおや・・。」

「本気です!」

ランボをまだ子供扱いする骸に、ランボはされてたまるかと骸に近づいた。
今では背丈はもうランボの方が高い。

「ランボ・・!!」

昔手を伸ばしても掴めなかった方をがっちりと掴んで、ランボは骸の唇に吸い付いた。


「ランボ・・・。」

「僕は本気です。まだまだ僕は貴女とは釣り合うレベルじゃないけど、いつか必ず貴女を・・・」


「・・・クフフ。ありがとうランボ。お前だけですよ、僕の事をそう思ってくれるのは・・・。」

今度は骸からランボに頬にキスを落とした。
突然の事に、ランボは照れたのはさっきより顔を赤くした。

「クフフ。楽しみにしていますよ、ランボ。早く僕を迎えに来てください。」

「・・・!!はい!。」



些細な出来事だった。
雨に濡れて、家族と離れて一人淋しくしていたところを手を差し伸べてくれたのは貴女だった。
とても綺麗な姿をした貴女。
本当は優しいのに、悪になることでしか生きる事が出来なかった貴女。

誰にも本当の貴女をわかってもらえないなら、僕が・・・・


「僕、必ず骸さんを幸せな花嫁にして見せます!」










---END---

別名、ランボの初恋とも言う。
この茨過ぎるカップリングが結構好評で嬉しかったです。

きっとランボが18〜20位で、いい男になって骸にプロポーズして、
周囲を驚かすと思う。





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