好敵手は美しい女だった  3





あの日を境に骸は、自宅から随分と引きこもってしまった。
買い物も安い並盛のスーパーを利用していたのにも関わらず、
近所のところで買い物を終わらせる事になっていた。

どうしても並盛でしか売っていないものは、千種や犬に頼み自分はお留守番。
そんな毎日が続いていた。


すっかり塞ぎ込んでしまった骸を見て、千種と犬、クロームは胸を痛めたが、
何も出来ずに落ち込むばかりだった。
クロームは女の子だけあって、少しは骸の気持ちは変わるが、
生い立ちが違うのだ。
根本的な男の怖さは代わるが、自分が女と自覚している自分と
女であることを否定してる骸では、考え方が違う。


慰めようとしても、言葉に詰まるクロームを見て、


「クロームありがとうございます。大丈夫ですよ。」

と無理な笑顔を浮かべるだけだった。


そんな中、ボンゴレ10代目継承者達が並盛に多く住む中、
守護者達の交流を深めようなどと、時々集会が開かれている。

行きたくない。

そもそもこのメンドクサイ交流会のせいで、骸は雲雀に毎回戦いを申し込まれていたのだ。
集会に参加しないと後が怖いし、現在骸は逆らえない立場にある。
だから嫌でも並盛に来ていて、やりたくも無い戦闘をしている。
雲雀との決着がつかないまま、集会が終わっている事もザラではない。


この前の集会で、雲雀に女とバレてしまった。
交戦を申し込まれる事はもうない。
骸は雲雀に敗れたのだから、問題は他のところにある。


『僕のものになってよ。』


雲雀の前で女になれと彼は言う。


「無理です・・。僕はもう・・。」

女に戻りたくない。


「骸様・・・。」

「おや、クローム。」

骸の部屋をノックして入っていたのはムロームだ。
今日はその、行きたくなくて仕方の無い交流会の日。
クロームだけの参加とリボーンに伝えたが、
霧の守護者は、あくまでも六道骸だから、骸が来ないと駄目だと断られた。

骸を迎えに来たのだろう。
骸が行きたくないのはクロームも知っているから、返答を待っているのだ。

「・・・行きましょうか・・・・クローム。」

「でも・・骸様・・顔色が・・。」

「大丈夫ですよ。」


雲雀に近づかなければいいだろう。
それにもともと群れるのが嫌いな雲雀の事だ、今まで参加していたのは骸を倒す為で、
念願の打倒骸が叶った今、群れる必要がないから来ないかもしれない。

出来ればそう思いたい。


綱吉の家の前で立ち止まる。
今日の場所が綱吉の家なら、ますます雲雀が来る確立は低いだろう。
少し安心した骸だったが、その予想は裏切られた。


「遅かったね、骸。君、時間にはしっかりしているのに。」


骸はここが綱吉の家にも関わらず、開けたドアをすぐに閉めてしまった。

「ちょっと骸?」

骸のおかしな行動に、綱吉も突っ込みを入れる。

「ホラ、入れよ骸。今日はヒバリも大人しいんだから、戦わなくていいんだぜ?」

山本が、大丈夫だよと笑って部屋に入れと促すが、骸は緊張してそれどころではない。
能天気な山本は、いつもと違う雲雀と骸の態度にただ珍しいなと思っていた。

そう思っているのは、山本だけではない。

綱吉と、獄寺は目を大きく開いて何があったんだ?!と叫びたそうだ。
それは骸も同じ事。

(群れるのが嫌いなくせに、何故貴方がここにいるんです!)

「さっさと座りなよ。」

ポンと手を置いて雲雀が態度で隣に来いといっている。
しかも座る場所は雲雀の隣しか空いていない。

「骸様・・・。」

「髑髏はランボさん所〜!!」

「わ!!!」

毎回ランボは髑髏の膝の上に座るのが気に入っている。
今日も髑髏の腕を引っ張って、座るように強請る。

「ホラ、早くしなよ。」

骸はシブシブ雲雀の隣に座る。

「ホラ、早く飲み物なににするか言いなよ。」

「あの・・・雲雀さん、ここ俺の・・」

「うるさいよ。」

「ひ・・!!スミマセン!!」



「紅茶・・。」


「だって、沢田。」

ボソっと紅茶というと、雲雀は綱吉に持ってこさせる。
この行動だけで、明日は嵐かもしれない。

(雲雀さん一体どうしちゃったの!?!?骸も骸だよ!何でそんなに大人しいの?!?!)

混乱する周りをお構いなしに、雲雀は骸を構う。
骸も観念したのか、適当に相槌を始める始末。
しかし、骸の顔色は少し優れない。

「おい、骸テメェ顔色悪くねぇか?」

「クフフ・・・そうですか?」

「ちょっと額かしてみろ。」

獄寺が骸の熱を測ろうとすると、獄寺の手を雲雀が払いのけた。

「おい・・・。」

「僕が見る。」

(((えぇぇぇえぇええええ!!)))


「・・・・。」

これは流石の骸も驚いて、一歩引く。

「どうしたの骸、さっきより顔色青いよ。」

「貴方がおかしいから、ビックリしてるんです。」

「ワォ、僕はいたって普通だよ。」

(((いやいやいや、そもそもここに普通にいる時点でおかしいですから!!!)))

心の中で、綱吉と獄寺、山本は突っ込みを入れる。
今流石にそれを言葉で言うのは勇気が無かった。

「体調悪いなら無理して来なくて良かったのに・・。」

「ハハハ・・・。」

「骸様、今日朝から顔色悪かったの。」

フォローを入れるように、クロームが告げた。
それなら悪化しいように今日はもう帰っていいよと綱吉が言った。

「有難うございます。クローム帰りましょう。」

「待て、クロームお前は最後までいろ。」

リボーンは、クロームを引き止めたが、
顔色の悪い骸が心配で、クロームは一緒に帰りたいようだ。

「じゃ僕が送るよ。」


本日三回目の絶叫が響いた。





「一体何のつもりですか?」

「別に、僕は僕のしたいようにしてるだけだよ?」

綱吉達が石化してる中、綱吉の家を出た骸と雲雀。

「送っていくって言ったでしょ?」

「大丈夫です。」

「好きな娘が顔色悪くしてるのに、そのまま見過ごせる訳ないでしょ。」

「な・・!!」

ハッキリと言う雲雀の言葉に骸は開いた口が塞がらない。

「僕の前では女でいろと言ったでしょ?」

骸は首を振った一歩下がる。
雲雀は骸が一歩下がる度に、一歩近づく。

腕を捕まえると、手を腰に回す。

「ちょ・・・何するんです?」

「支えてあげる。」

「結構です。大体男同士で・・・。」

「君は女でしょ?」

「今の格好では100人中が100人男だと言われます。」

「僕は気にしない。」


結局、そのまま骸の自宅まで腰を回されたままだった。」

「次、僕と会う時はそのさらしどうにかしてね。」

「・・・貴方の言う事は聞きません。」

「ワォ、ここで犯すよ?」

「お断りします。」

「じゃ、今日はこれで許してあげる。」


え?と思った時は、唇に感触が降りた。
キスをされている。
そう自覚した時にはもう、唇は離れていた。

「ご馳走様。」

「な・・!!」

骸は唇を袖で拭いた。

「何ソレ、傷つくんだけど・・・。」

「貴方が勝手にしたんでしょ?」

「そっちがその気なら・・。」

「ん・・・!!!」

今度は深い口付けが降りてきた。
外だというのに気にしないそぶりで、舌が入ってくる。

息が苦しい。
激しい舌使いに、呼吸が上手く出来ない。
雲雀を跳ね除けようとするが、上手く力が入らない。
プルプルと体が震えた。酸欠状態だ。

雲雀が口から離れると、骸はガクンと膝が折れた。
腰が抜けてしまったのだ。

「何?腰が砕けるほど感じた?」

「・・・ッ!!・・・貴方は・・・!!」

「早く僕のものになってね。」

屈まれてもう一度、唇に触れるだけのキス。
雲雀は満足したのか、帰ってしまった。
後ろは現在骸が住んでいる家だった。


「骸様・・!!」

千種は骸の気配を感じ取ったのか、すぐに玄関のドアをあけて駆け寄った。
座り込んでしまっている骸を見て驚く。

「骸様・・・一体・・・」

「千種・・・僕、どうしたらいいんでしょうか?」

怖い。怖い。恐ろしい。
でも、怖いと思いつつ鼓動が高鳴る。


この高鳴る鼓動を落ち着かせる事が出来ない骸だった。











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次で終わるはず。
ダラダラ長くてスミマセン。



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