彼と僕の事情







オフの日は必ずっていいほど地上へ降りる。
景色の変わらない宇宙よりかは大分、色変わりする地上の色は今日も争いの色に満ちていた。




出かけるのは夕方。
女一人夜に出歩くのは危ないが、昼間は人が多くて気がめいる。
だからって、大きな都会は夜になってもそこまで人が少ない訳ではない。

行きつけのお店に入ると、いつもの席が空いている。
マスターとすっかり仲良しになってしまった。
そのきっかけとなった人が、僕の隣に座った。

「悪い。遅くなった。」

「別に、そんなに待ってないよ。それに時間通りじゃないか。」

「・・・お前に会える時間は一秒でも長くしていたい。」

「それは僕も同じだよ。」


僕は、ミッションのないオフの日は、大抵ハレルヤに会いに行っている。
なかなか一日オフが取れる事なんて少ないけど、こうやって合間を縫ってハレルヤに会える事に僕は喜びを感じている。
ハレルヤも僕と同じ考えだったらいいのに・・・。


僕はハレルヤにソレスタルー・ビーイングに所属している事を話している。
本当は機密事項で、口外無用なのだがハレルヤには今の僕の事を知ってもらいたかった。
だからって、全てを全て話してはいない。
ここは外だし、誰が聞いているか分からない。


ただ、僕が今こうやって現状報告をしているような感じだ。
だからハレルヤも、僕に今のことを話してくれている。
ハレルヤも人には言いにくい、裏の社会で活動している。
話を聞く限り、結構上の幹部辺りにはいるのでは?
イロイロ聞きたかったけど、それはマナー違反だ。


お互い、組織の機密を多く持ちすぎている。
うわべだけで十分だった。
だから、僕も、ハレルヤも深入りはしない。

もしも深入りして、こうして会えなくなるのはいやだ。


「そういえば、お前達のことよく耳にするぜ?モッテモテだな。」

「ちょっと、冗談はよしてよ。」

「本当だぜ、アレルヤ?最近は軍のお偉いさんも、お前達の情報欲しさに俺らと所へ来るんだぜ?」

「・・そう・・なんだ・・。」


僕達の関係は、信頼で出来ている。
互いのことは他人には話さない。
自分の事も必要最低限で、あくまで普通に装う。


これが崩れたらきっと一生離れ離れになってしまうだろう。




















僕とハレルヤは双子の姉弟だった。
親を戦争でなくして、孤児だったところを人革のある組織が僕達を引き取った。
そこでも暮らしは言葉では表せないほど酷く、僕とハレルヤは逃げ出した。
追っ手から必死で逃れる為に、懸命に逃げている途中僕達は離れ離れになってしまったのだ。


僕は運良く、命を落とすことなくCBに入る事が出来て何とか生きてこれた。
じゃぁ、ハレルヤは?
一日たりともハレルヤを忘れることはなかった。
いつもいつもハレルヤのことばかりを気にかけて、当時は食事さえまともに喉を通らなかった。
今だから思うけど、本当にハレルヤと再会できてよかったと思っている。


ミッションのない日、僕はたまたま町へきていたんだ。
買出しもあったし、クルーから買ってきて欲しいといわれていたものがあったんだ。

最後のスメラギさんのお酒で、終わりと思ったとき走っている人とぶつかってしまった。


「すみません。」

「痛ってぇな!どこ見てほつき歩いてんだよ!」


ぶつかった相手が悪かった。因縁をつけられそうだ。いやだな。
と思っていたら、相手は黙ったまま動かない。
あれ?と顔を見上げたら、僕と同じ顔があった。


「ア・・レル・・ヤ・・・?」

「え・・・・もしか・・して・・・・ハレルヤ?」




「いた!!あそこだ!」



ちっと男は舌打ちをする。


「アレルヤ、コイ!!」

「え・・ちょ!!」


それから、ハレルヤと追っ手をまいてあまり人の出入りがない喫茶店に入った。
どうやらここはハレルヤの行き着けらしい。
店を入ると、すぐにいい席が用意された。



「・・・・10年ぶりだな。」

「うん!!・・ハレルヤ・・!!」


僕はあまりに嬉しくて飛びついたのを覚えている。
やっと会えた。
君の事忘れた事なんかなかった。

探したけど見つからなくて、本当に途方にくれていたんだ。
本当に神様っていたんだね。


「ハレルヤ・・会いたかった!!」

「俺もだ・・。アレルヤ。」


今までの空白の時間を埋めるように僕達は抱き合ったんだ。
お店の中だって事も気にしないで・・・。
まぁ、でも客は僕達しかいなかったけど・・・、マスターに見られているのは恥かしかったな。


あれから僕は休みの日の度に地上へ降りて、ハレルヤに会いに行くんだ。
本当はもっと一緒にいたい。
ずっと一緒にいられたらいいのに・・・・。



そうなると、僕かハレルヤが組織から抜けなきゃいけない。
でも、僕達組織から脱退するには遅すぎたんだ。
僕はガンダムマイスターだった。
存在自体が機密であり、後釜もないし、それはハレルヤだって同じ事なんだ。


だから、僕たちは互いに妥協して、なるべく休みの日を重なるようにして
会うことぐらいしか出来ない。
でも今は会える事だけでも幸せと思っておこう。



僕はCBのガンダムマイスターだ。
いつ戦って散ってもおかしくはないのだから・・・。




















「チ、今日はもう終わりかよ。」

「また次もここに来るよ。」

「大忙しのマイスターさんがか?」

「もう、ハレルヤったら!」


ハレルヤと過ごしている時間は、あっという間に時間が過ぎてします。
今日も、もうすぐ起動エレバーターの最終発時刻が迫ろうとしている。
僕は地上待機組になることは少ないから、プトレマイオスに戻らないといけない。

こういう時、刹那が羨ましいと思う。


「あ〜、アレルヤ、お前を帰したくねぇ・・。」

「ハレルヤ・・僕もだ。本当は帰りたくない。」

「・・・・アレルヤ、次は・・・次はお前を・・・・。」

「いいよ。僕も、ハレルヤの温もりを感じたいよ。」


力強い抱擁を交わしてキスをした。

「また連絡する。」

「僕も、また予定を連絡する。」

「あぁ・・俺も・・・・。アレルヤ・・」

「何?」

「・・・愛してる。」

「僕も・・・。」




僕たちがこうやって逢引しているのは秘密。
双子なのに愛し合ってるのも秘密。

この秘密はきっと一生続くんだ。










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沙羅の好きなある歌を聴いていたら、こんな話を思いつきました。
ピンときた方いらっしゃいます?
これはアレルヤ視点ですね。
どちらかといえば、ハレルヤ視点の方がメインかもです。
だって、歌が男からみた視点だから(笑)
ハレルヤ視点の方が、誰のどの曲なのか分かりやすいかも・・・・


初ハレアレ小説がこれですか・・・




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