DOLL 5 「残念ですが・・・・ 次の日、なんとか気持ちの落ち着いたククールはオディロと医師の診断を受けた。 診断結果はククールのみ聞いた。 「・・・・・・。」 「・・・君の体は悲鳴を上げている。普通に生活する分には大丈夫だと思うが・・・」 「それで・・なにかあるんですか?」 医師は言いにくそうに告げる。 「君はたしかマイエラ修道院聖堂騎士団に入っていたね?」 「はい。」 「酷かもしれないが、さっきも言った様に普通に生活する分には平気だ。 しかし騎士団のように、毎日訓練を受けたりするような動きにはきっと体はついていけないだろう。」 「・・・そうですか・・・。」 きっとそんなことだろうと思っていた。 ククール自身も体の限界は感じていたのだから。 部屋を出るとオディロが待っていた。 「どうするかい?君自身が決めていいよ。私から言ってもかまわないなら・・・。」 「いいです。・・・俺、自分で言えますから・・・。」 修道院まではククールは一言もしゃべらなかった。 オディロの駄洒落がむなしく響く。 「のぉククールや?」 「・・・・・・。」 「なにかわしに言うことはあるのか?」 「・・・・・帰ってからでいいですか?」 「仕方ないのう・・。」 ちゃんと帰ってから話そう。 今は気持ちの整理がついていないのだ。 オディロはきっとここにいてもいいと言うだろう。 でも、マルチェロはどうだろうか? ただでさえ自分を厄介者と考えているのに・・・・ こんなことがわかったらきっとすぐに追い出されるだろう。 それがククールの中で一番恐れている事だ。 どうする?どうすればここにいることができる? 「・・・・そうか、ククールや辛かったのう。」 「院長、俺・・・どうしたらいいかな?」 「何を言っておるのじゃ。ここはお前さんの家なんじゃから。」 「・・・ありがとう。院長、でもきっとここを出て行くことになるよ。」 「おぬしは心配性じゃの。」 オディロとの話を済ませたククールは自分の部屋に戻っていった。 途中マルチェロとすれ違った。 マルチェロとは時に何も無く通り過ぎた。 まるで自分の存在など無いかのように・・・。 オディロはきっと今の自分のことを話すだろう。 今日の夜、部屋に呼ばれてここを出る用意をしろと言われるのが予想つく。 今のうちに少し用意をしておいたほうがいいのかもしれない。 寄宿所では自分を見る目が変わった気がする。 無理も無いアンナに問題を起こしたのだから。 どうやらククールを絡んでいた者達は、ここを出て行ったしまったみたいだ。 無理も無いだろう、現行犯で捕まってしまっては逃れられない。 部屋に着くと何かと自分を心配してくれた同僚がいた。 「ククール!お前心配したんだぞ?」 「え・・まぁそっか、ありがとな。」 その夜ククールは案の定、マルチェロから呼び出された。 「お話とはなんでしょうか?」 「いや・・・お前のことは院長から聞いた。」 「・・・それで・・?」 マルチェロの言うことは予想がつく。 「・・・お前は何か勘違いをしていないか?これからはお前は貴族の祈祷をのみをしろ。」 「な・・・。」 「お前は騎士団の所属で訓練も受けていたがもういい。お前が多くお祈りに来てくれたほうが客人も喜ぶだろう。」 ククールは見目美しいため貴族からの指名は多かった。 普段は騎士団員と変わらぬ生活をしているが、以来があれば屋敷へ赴きお祈りをする。 莫大なゴールドと引き換えに・・・・ マルチェロがククールを手放さないのは、ククールがいなくなれば寄付金が減るからだろう。 「そうですね。団長。」 「部屋は従来のところで結構だ。さっそく明日から1件ある。せいぜいここにいられるように頑張るんだな。」 「はい・・・。」 「やぁ・・・君があの紅の騎士か・・・。」 「ククールと申します。」 「いや、長年団長殿に依頼した甲斐があたよ。」 気味の悪い笑いを浮かべた貴族がククールの髪をなでた。 振りほどきたかった衝動を抑えてククールはおとなしくしていた。 これから自分が何をされるのかわかっている。 なんだいつもと変わりない。 いつものように貴族がらみの屋敷へお祈りへ行き、寄付金をもらってくる。 そもそも祈祷というものが建前なのだ。 莫大な金をつぎ込むのはククールの体の料金だ。 値を上げればあげるほど、自分の好きなようにしていいような契約になっている。 それをククールは知らない。 わかっているのは自分が体を売らなければいけないという事。 「どうしたのだね?さっきからボーっとして・・。」 「失礼しました。何でもありません。」 「祈り場へ案内させていただけませんか?」 「おお!そうであった。ではこちらへ・・・」 「・・・・・・君はあんあり声を上げるタイプではないのだね。」 「・・ん・・・・、っ・・・・・」 何が礼拝堂へつれていくだ。 案内されたのは男の寝室。 はなっからこれが目的な貴族も多いため、ククールは抵抗をすることもなくなった。 したらしたで貴族の反感を買い、もっと酷い目にあうのだから・・・ 「まぁいい。十分だよククール。君は美しい。」 「あぁ・・・」 普通でいたかったのに・・・ 騎士団として凛々しく幼心の憧れが崩れ落ちる。 『ククール、アンタは私のようになっては駄目よ。』 「・・アさん・・も・・て・・・くれ・・・。」 「何?どうした?もう限界か?」 『ククール強く生きなさい。』 「ククール・・・・?」 もうすぐだよ。マリアさん 俺も、もう少しでマリアさんの所にいける。 完全ではないけど、心は貴方のところにいけるよ。 「アリアさん・・・」 ククールはそういい残して一言もしゃべらなくなった。 |
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