時空を超えた少年 1 |
それは静かな朝だった。 日差しが眩しい ベッドを見れば一人の男がまだ寝息をたてている。 「おい!兄貴・・・いつまで寝てるんだよ。」 「ん・・・あぁ・・・もう朝か・・」 黒髪の男はもう一人の銀髪の男に起こされてやっと起きた。 「また、遅くまで本でも読んでたんだろ。」 「あぁそうだ。つい、夢中になる。」 二人はいつもどおり朝食を取り始める。 「・・・私の顔になにかついてるか?」 「いいや」 「なら、何だ?人の顔をじろじろ見て・・。」 「思い出すんだ・・。」 「何を?」 銀髪の男は少し微笑んだ。 「クルミさんさんと菊丸さんは・・きっとこれを見てたんだなって・・」 「さっぱり意味がわからん。」 「わかったら怖いよ。これは三人の秘密だ。」 「ふん、どうでもいい。」 「ヤキモチか?」 「何を言っている。」 黒髪の男は誤魔化すように紅茶を飲む。 「・・・なぁ・・兄貴・・」 「なんださっきからお前は?」 「俺は生まれ変わっても、兄貴の傍に居たいよ。」 あまりの発言に紅茶を吹きこぼした。 「お前は!!」 「本気だ。俺達来世で、結ばれるんだぜ?」 「馬鹿も休み休み言え!!」 「・・・本当だぜ?そしてアンタは来世俺に・・・・」 「お前に・・・?」 「秘密。」 |
「あ・・・・」 女はゆっくりと瞼を開けた。 よく夢を見る。 それはいつも同じ夢。最近頻繁に見るようになった。 「おはよう・・クルミ。」 「ぁぁ・・菊丸さんおはよう。私ね、又見たのよ。あの夢」 「本当かい?俺も見たんだ。全く不思議だな・・二人そろって出会う前から同じ夢を見てるなんて・・」 「あれはきっと私達よ。あの人菊丸さんそっくり。」 「そういう銀髪は君にそっくりだな。クルミ。」 今日は12月25日クリスマス。 丁度土曜日なため菊丸も仕事がお休みだった。 休日とクリスマスが重なるのも久しぶりで二人は今日のご飯は外でとることにした。 「ねぇ・・あなた・・」 「なんだい?」 「私ね・・・他にも夢を見たの。とっても素敵な夢。」 「素敵な夢?」 「うん。私達に子供が出来る夢。とっても可愛い男の子で私と同じ青い瞳をした子が夢の中でいたの。」 「それは、素敵な夢だな。」 「えぇ・・」 菊丸は今にも泣きそうなクルミを抱き締めた。 この夫婦には子供はいない |
今日は12月25日のクリスマスだった。 マイエラ修道院にはたくさんの人々がお祈りに来ていた。 神父を初め騎士団もお祈りをしに、それぞれ呼ばれている家へと赴く。 ククールはこの修道院に来て初めてのクリスマスだった。 子供は子供で集まり聖歌を合唱する。 夜も更け、雪が降ってきた。 今年は、ホワイトクリスマスだった。 全てのお祈りも終えて、院長も 「せっかくだから、皆で今日くらいパーッとしようではないか」 という言葉に、ささやかなお祝いをした。 子供はシャンパンで、大人はワインで乾杯をした。 ククールは、料理を取って同じ歌を歌った同じ年ぐらいの子供と楽しく話していた。 この日は大人と子供が離れていたので、義兄弟のマルチェロを初め他の騎士団員からなにもされることはなかった。 いつもはマルチェロに冷たくされ、他の団員達はマルチェロと同じようにククールに対しての態度は厳しかった。 肩身の狭い思いを癒してくれたのは院長のオディロだった。 彼はいつもククールに優しく、頭をなでてくれた。 ククールはそんな院長が大好きだった。 長く続いた宴会も終わりに近づき、後片付けは子供と女の役だった。 後始末も終わり、ククールももう自分の部屋に戻ろうとした。 でも、自分はまだお祈りをしていないことに気づき、女神の像があるお祈り場所へ急いだ。 「あ・・・・・」 だが、しかしそこには先客が居た。 兄のマルチェロだった。 「子供分際で、こんな時間まで何をしている?」 瞳はやはり冷たい。 「僕・・まだ・・お祈りしてなかったから・・・・・・。」 「ふん、宴楽しさにわが身を滅ぼすとは、あの領主そっくりだな。」 「・・・・・・・」 「まさか、一日の終わりにお前に会うとは今日は厄日だな。」 マルチェロは嫌味を返し去っていった。 ククールはお祈りを終え帰ろうと思ったが暫くここにいた。 憎まれていることは知っている。 でも、やっぱりつらい。 ククールは少し泣いた。 オイデ・・・・・ 「!?!?」 一瞬声が聞こえた。 オイデ・・・・・ コッチヘ・・・・・・・ 声がする。 振り向くと、光が光の物体が浮いている。 「なに・・・・」 コッチニキテ、キミハココヘイカナクテハイケナイ ククールは魅入られるように、その光へついていった。 外へ出る。 外は雪が降り積もり、まだ雪が降っている。 寒いのを我慢してひたすらついていく。 つれてこられた場所は 「ここは・・・?」 旧修道院 サアボクノヒカリヘ、キミハリカイシナクテハイケナイ 「理解?」 ココヲクグレバスベテガワカル 光は大きくなっていき扉みたいに変化した。 ククールは恐る恐る光に手を触れる。 アリガトウ、サアイコウ。 「わわぁぁぁ!!!」 ククールは光に吸い込まれ、その光は一瞬のうちに消えた。 |
食事をすませた二人は家へと帰る。 今年初めの雪はクリスマスだった。 とても綺麗でイルミネーションを綺麗に飾った。 「寒いね。」 クルミは手を息で暖めた。 家の丁度前に来たとき、変な光景が見えた。 「ねぇ・・貴方。」 「なに?」 「今年庭にイルミネーションしてないわよね。」 「ああ・・・」 「うちが光ってる。」 「え?」 クルミの指先を見ると確かに家が光っていた。 「?!」 「とにかく行って見ましょ?!」 二人は急いで家の前へ向かうと大きな光が今にもはちきれそうだった。 そして、暫くして光は消えた。 「なんだったのかしら?」 「おい・・・クルミ」 「え・・?」 菊丸はしゃがんでその反応を確かめた。 「あ!!!」 そこには銀髪の男の子が倒れていた。 |
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