時空を超えた少年 2 |
「ナンなのだ?その秘密とは・・・?」 「話したって信じてもらえないから・・・。」 テーブルで二人の男は沈黙を続ける。 「どういう意味だ?」 「そのままの意味だよ。俺・・・ガキの頃不思議な体験したんだよ。」 「!!!」 黒髪の男は何か知っているようだった。 「ナンだよ。その反応・・・」 「や・・・別に・・・」 「ならいいけどさ・・・」 銀髪の男は子供のようにプクっと膨れた。 「ぁぁ・・・悪かったよ。実はな・・それ私と院長と一部の人間は知っているんだ・・。」 「ナンだよそれ!あの3人の秘密だったのに・・」 銀紙の男はガバっと目を見開いた。 「私と院長とその当時の占い師がな・・・・・居所を突き止めてな・・」 「・・・・・」 「最後のほうだったがな・・。お前は寝ていたからわからなかったのだ。」 「・・・・・な・・」 「ナンだよそれ!どういう意味だよ。」 「秘密だ・・・。」 「ちぇ!」 |
目が覚めたら、身に覚えのない天上だった。 ああ良かった。自分は無事だったのだ。 ククールはゆっくりベッドから起き上がった。 しかし、こんなふかふかのベットは初めてだった。 きっと名のある金持ちが自分を見つけてくれたのだろう・・・とククールは解釈した。 クリスマスの夜も開け。26日の年末 現代の日本はあっという間に、年末年始の準備にと色を染める。 「あれ・・・?ここ・・・どこ?」 金持ちの家らしいが、見たことのないものがいっぱいだ。 なんか箱みたいな黒いもの 綺麗な色の壁・カーテン 上はへんてこなものが光って部屋を明るくしている。 「院長・・・兄さん・・・」 か細い声を出して、誰かの存在を訴えかけた、そのときだった。 「ああ、目が覚めたのね。良かったわ。」 黒髪でククールと同じ青い色の瞳をしたじょせいが部屋の中へ入ってきた。 「怪我もなくてよかったわ。君うちの前で倒れていたのよ。」 「え・・・?」 そういえば記憶がない 旧修道院で不思議な光に包まれて、それからの記憶がない もしかしたら、光に導かれてやってきたのがここの家なのだろうか・・・? 「見かけ外国人だったから言葉が通じるか不安だったの。君ロシア人でしょ?名前は?」 「ロシア人?・・・名前はククール・・・。マイエラ修道院の見習い修道士・・」 |
翌朝、マイエラ修道院にとんでもない出来事が起こっていた。 ククールがいなくなった。 それは院長の耳にもすぐに伝わり、修道院中が大パニックになった。 「なんてことじゃ・・・!皆のもの・・ククールを最後に見たのはいつじゃ!」 「えっとパーティーの時が殆んど見たいですが・・」 「こんな寒い中・・可哀相に・・」 オディロ院長は涙を浮かべ、嘆いた。 「おぉ・・神よ・・願わくばククールの御身を・・お守り給え・・」 「院長・・」 「ナンじゃマルチェロ?」 マルチェロはバツの悪そうにつぶやいた。 「ククールの奴・・夜遅く女神像にお祈りをしているのを見かけました。」 「それはまことか・・・!!」 「はい・・一言二言会話をしましたから・・。私はそのまま部屋に戻ったのでその後のことは・・・」 「そうか・・・」 オディロ院長は、ガクっと方を落とした。 「皆のものククールを探すのじゃ・・もしかしたら何かに巻き込まれたかもしれん・・ドニの方にも手がかりはないか聞いておくれ・・」 修道士を初め、騎士団たちは細かい配慮の中ククールの捜索を続けたが、ククールを見つけることは出来なかった。 無論、ドニの方にも手がかりはなかった・・・・・。 |
「修道士?」 「僕マイエラ修道院で暮らしているんだよ。」 ククールは一生懸命訴える。 「クルミ、子供の具合どうだい?」 話をしている中、今度は男が部屋の中に入ってきた。 その男はどことなくマルチェロに似ていた。 「貴方・・・このこ・・」 女は困ったように、男に助けを求めた。 「言葉が違うのか?」 「うんん。私にはわからない。世界地理に詳しいあなたなら、わかると思って・・。」 「ゴメンね。怖がることはないから、ゆっくりもう一度君のこと教えてくれるかな?僕の名前は前野菊丸。こっちは妻のクルミ」 「・・!・・」 その微笑みもマルチェロと似ていた。 なんだか懐かしい気持ちになってククールは、名前や自分の住んでいるところ、生活風景など語り始めた。 「なるほどマイエラ修道院か・・・」 「貴方知ってるの?」 考え込む菊丸に、クルミはたずねた。 「あぁ・・でもここの修道院は・・・」 ククールはなんだか不安そうに菊丸を見上げた。 「大丈夫だよ。」 くしゃっとククールの頭を優しくなでた。 菊丸は、自室のパソコンに向かった。 クルミとククールは追うように一緒に入る。 ククールは見たこともないもので、戸惑いを覚える。 「菊丸さん・・・何をしているの?」 「検索で引っかかると思うんだ。マイエラ修道院は結構有名だから・・・」 マイエラ修道院は有名だ。 その言葉が出てきてククールは少し安心した。 なんだか自分が知らない世界に着たかのような感覚に陥ってたからだ。 ここはきっと今まで見たこともない裕福な金持ちの家なんだ。 ククールは思った。 「あった・・!」 「えっほんと・・ほんとだわ。」 「ククール君。君が暮らしていた修道院てこんなところ。」 菊丸がパソコンのディスクトップをククールに見せた。 それは確かに当時の修道院の絵があった。 「うん・・・そんな感じだよ。」 菊丸の表情は少し歪んだ。 何か・・・おかしなことを言ったか・・・? 「ククール君。君の主食は確かパンだよね。」 「うん。」 「火は・・・マッチかい?」 「うん。」 「暖炉があったかい?」 「うん。」 「電気という言葉を知っているかい?」 「・・・知らない。」 「これがなんだかわかるかい?」 菊丸はテレビを指差した。 知らない。 「じゃあこれは?」 誰でもわかる携帯電話・・・ 「しらない・・」 「・・・信じられない・・。」 菊丸は顔を驚かせた。 「ねぇ・・・一体ナンなの?」 くるみはわけがわからない。 ククールもなんだか不安そうだ。 「ククール君がドコから着たのか・・信じられないけど・・」 「・・・・800年から1500年の中世の時代。タイムスリップなんて考えられないけど・・」 この時代にそんなことが考えられるのか? 「ククール君。ここは君の知っている世界じゃないんだ・・」 「・・・え・・・」 やっぱり・・ここは違うんだ。 帰れないのかな? あまりの現実にククールは涙を浮かべる。 「・・・ぅ・・・」 我慢しようとも止まらない。 「泣かないで・・ククール君。」 クルミはそっとククールを抱き締めた。 「貴方、こんな子供にそんな酷なことはやめたほうがいいわ・・可哀相よ。」 「・・・あぁ・・つい悪かったよ。」 ククールはクルミ腕の中で泣きじゃくった。 どうしたらいいのかわからない。 誰も自分を知るものもいない 今時分は本当に一人ぼっちだ。 院長にも、兄もマルチェロにも会うことが出来ない・・・ 「・・・可愛い子・・・。」 クルミはククールを抱き上げ、にっこり微笑んだ。 「ねぇ泣かないで・・・私達がいるから・・。」 クルミも、菊丸もククーうに向かって優しい微笑を向けている。 「・・・」 ククールは一生懸命泣き止もうとしている。 「ククール君・・・・。君でよければナンだけど・・・私達と一緒に暮らしましょ?君が此処へ来たのはなにかの運命だと思うの・・」 「・・・え・・・ 出した言葉は涙交じりで声が可笑しかった。 「だから・・・ククール君が元のところへ、返れる日まで・・・ね?」 慈悲深い微笑みにククールも一緒に微笑を浮かべた。 「・・・うん・・・。」 「じゃあ、決まりね。」 「ぁあ・・さっきはすまなかったね。」 ばつの悪そうに菊丸はククールの頬をなでた。 マルチェロと同じ黒髪・・・兄の面影と重なった。 「ううん・・」 この暖かい腕の中で、ククールはとても懐かしい気持ちになれた。 |
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