時空を超えた少年   3




「いつまで膨れているんだ?」
「だって・・・・」



銀髪の男はテーブルにヘタレ込みショックを隠せないでいた。
「全く、子供だな・・・お前は・・・。」
「はいはい・・どうせ俺は子供だよ・・。」

朝食を食べ終えてさっさと後片付けを済ます。

「・・・なぁ・・」
「なんだ?」
「あんたどのくらい知ってるんだよ?」
「・・・言っておくが、お前がこっちへ帰ってきたときのことしかわからん。」
「どういう意味だよ?」
「だから・・・お前が”不思議な体験”を終えて帰ってきた時は知っている。概にあの夫婦にも会った。」

「!!」
「なんだ?その顔は・・・」
「・・・そっか・・・見てくれてたんだ。」
銀髪の男は少し和やかな顔になった。

「あの時・・・少しお前がうらやましいと思った。」
「え・・・・?」
「前は2度暖かい家族を得て・・・2度同じ悲しみを得たが・・・」
「違うよ、兄貴。」
「?」


「1度目は・・・あの親父達とは死に別れだけど、2度目はただ、今度会うときの約束をしたんだよ。」
























ひょんな事から、ククールは異次元と時代を超え、とある夫婦と暮らすことになった。
ここへきて3日目。
まだまだなれなく、そわそわしていたククールだが、次第に慣れていった。

今が年末で忙しい時期だったからかも知れない。


新年の前に大掃除をしていたからだ。





「アリガトウ。ククールいい子ね。」
クルミはククールの頭をそっとなでた。

冬なのにこの中は暖炉がないのに暖かかった。
その理由を尋ねてみたら、

「ここの世界はね、ヒーターやエアコンていうものが暖炉の代わりをしているのよ。」
「ふぅん。」
「ほら、触ってみて。」
「わぁ・・・暖かい。」

「コレで家をあっためてるのよ。」



ククールはカルチャーショックを受けながらも、なじんでいくように日にちがたった。




夜は3人で一緒に寝ている。
ククールを真ん中にして、川の字で眠るのだ。
まるで、父親と母親がいるようでククールは寝つきもよく快適な睡眠がとれていた。






料理というものも手伝ってみた。
キッチンに立ってみるとボタン一つで火がついた。
ちょっと感動しながら、野菜の皮をむく。


「さすが、修道院で育ってきたのね。」
ククールはクルミに頭を撫でてもらえるのが好きだった。
お母さんにもよくそうしてもらって、そんな感じが思い出せるから。


菊丸は自分の父親とは正反対の男だった。
優しくて、強くて、物知りで、わからないことはなんでもわかりやすく教えてくれる。


ククールはすぐにこの前野夫婦になついた。

この夫婦はククールをわが子のように可愛がっていた。














「院長・・・・トラペッタの占い師。ルイネロ殿を連れて参りました。」
「うむ・・・」







ククールがいなくなって5日目。
心配のあまりオディロはやつれていた。
そんな院長をマルチェロは何とかできないものかと考えた。

修道院の巡礼者にいろいろ聞きまわったりもした。

「ええ!!あの子かい?見てないよ。」
巡礼者からも手がかりはなかった。
しかし、こんなことを言うものがいた。


「トラペッタの町になんでも凄腕の占い師がいるんだよ。なんでも当ててしまうらしい。」


トラペッタは船着き場から船をわたっていかなきゃいけない。
しかし、ククールのためだ。と院長は使者をだしルイネロを呼び寄せた。





「これはこれは、ルイネロわざわざすまぬのう。」
「いえ・・・ではそのいなくなった子供というのは・・・」
「ククールといってのう。銀髪で瞳が青い可愛い子供なんじゃが・・・・」

「なるほど・・・」
ルイネロは水晶をとりだした。

「できれば、その少年を最後に見かけたところまで連れて行っていただけますか?そのほうが水晶もその少年のつかみがよくなる。」
「おぉ・・そうか。確か・・・女神像のところだったかのう・・・。」
















「「新年、明けましておめでとうございます」」


「ございます。」



ようやく年末も過ぎ新しい年を迎えた。
3人は大きな料理を前にしてテーブルに座っていた。


「ククール、少しはここになれたかい?」

「うん・・・」

「そうか・・良かった。」


菊丸は安心したようだ。
こんなところへ一人で迷い込んで普通はストレスをためるんじゃないか?
しかし、ククールは強かった。



「さあ、頂きましょう。」

3人はおせち料理を食べ始めた。









そんな中、クルミははしをとめて改まってククールにこういった。

「ね・・・・ククール。」
「ナンですか?」

クルミの態度にククールはそわそわした。

菊丸は黙って見つめる。


「あのね・・・菊丸さんとも話し合ったんだけど・・」
「・・・」

「こうやって・・会ったのも何かも縁だと思うの・・・」





「きっとククールはまた何かの原因で元の世界に返ってしまうのかもしれないでもね・・・・・」
ククールは息を呑んだ。


「私達は、貴方に会えて本当に嬉しいの。」
「え・・・・」


「お願いがあるんだけど・・」








「ここにいるときは・・・私達のこと”パパ””ママ”って呼んでくれないかな?」
「え・・・」
「もちろんククールにはちゃんとお父さんお母さんいると思うけど・・・・」

「いいよ。」


「え・・・」


「僕もここにいると、父さんと母さんのこと思い出すんだ。」





「ありがとう・・・ククール。」







見合わせた菊丸とクルミはとっても嬉しそうな笑みがこぼれていた。


















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