時空をこえた少年 4 |
「あの二人は、短い間だったけど俺の父さんと母さんだったんだ。」 「そうか・・・そう思えるのならいいだろう。」 「俺さ、良くわかんないんだけどあの人達にまた会える気がするんだ。」 「何を根拠にそんなことを言う?」 黒髪の男は弟が突拍子の無い発言に少々呆れ顔だった。 ”この世界に存在しない人達”にまた会えるなんて言っているのだ。 「根拠は無いけど、予感がするんだ。」 「奇跡はそう簡単に何度も起きてたまるか!」 「いいじゃねぇか!起きたって。素敵なことさ!」 「・・・お前ってヤツは・・」 「何だよ?」 「能天気なヤツだ。」 「兄貴・・・ひでぇ・・。」 「本当のことだ。で、その後お前は一体どうしたんだ?」 「いけねぇ、話がずれた。それからやっと向こうの生活に慣れてきたんだ。驚くことが多すぎてさ、・・。」 「何百年もの未来の世界だ、文化がとても発達しているのだろう。」 「すっげぇの!神の世界みたいだったぜ!船もすげぇし!でっかい空飛ぶ乗り物があるしよ!!馬車より早いんだぜ!」 |
クルミと菊丸の提案を受け入れてくれたククールだったが、最初はなかなか”お父さん・お母さん”と言うのは照れくさいらしい。 「おはよう、ククール。」 「おはようございます。・・お・・お・・お母さん。」 「ふふ・・まだ言うのは緊張する?」 「ごめんなさい。」 「いいのよ。私たちのワガママ なんだから、じゃ朝食にしましょう。」 菊丸もクルミも外人の血の方が強いため、お米よりパンや麺の方が多かった。 日本の風習の日や週に何回ぐらいしか食べない。 ククールもそれはそれでかえって都合がよかった。 ちょっと前に食べたこともない”オセチ”と言うものを食べてみたが、やっぱり味わったことのないものだったので驚きだった。 朝はパンに目玉焼き。 やわらかいパンをククールはおいしそうにほおばる。 菊丸はまだ寝ている。 「ククール、起こしに来てくれる?明日から仕事始めなのに起きられなくなるわ。」 「わかった。」 「あ、ちょっとククール!起こす時にね・・・・」 クルミは何か思いついた考えをククールに吹き込んだ。 「わかった。」 「菊丸さんきっとビックリするわ〜。」 菊丸はベッドに仰向けになり、規則正しい寝息をたてていた。 その風貌はやはり、兄のマルチェロに似ていた。 マルチェロも大きくなればきっとこんな風になるのだろうとククールは思った。 ククールはベッドによじ登り、菊丸の上に馬乗りになった。 そして 「ぱぱぁ!!!!おきろぉーーー!!」 大声で叫び、上で暴れた。 「う〜ん・・・・・・・!!え?ククー・・・」 「おはようパパ!!おきて〜。」 「あぁ!おはようククール!嬉しいな!!」 ククールのパパ発言に感動した菊丸はすぐに目を覚まし、ククールに抱き上げた。」 目線が高くなりククールも笑い出す。 「ちょっといつまでやってるの?」 クルミはなかなかダイニングに来ない二人を、早くとせかした。 |
「で、ここがククールのいう少年が最後にいた女神の像ですか・・。」 ルイネロ、オディロとマルチェロとその他騎士団員は修道院の中で一番大きな女神像の前にたった。 「マルチェロや、お主ここでククールが何をしていたかわかるかの?」 「いや・・・ただ、宴に夢中でお祈りをしておくのを忘れたので、お祈りに来たといっていました。」 「そうか・・・問題はその後ってことになるのぉ・・・。」 ルイネロは神経を深く集中させて、水晶玉を取り出し深く目を閉じなにやらブツブツと念じ始めた。 水晶玉はだんだん大きな光を発して、もはや目を開いてられないくらいになった。 「わ!!」 「な・・・なんじゃ?!このあふれるばかりの光・・・。」 「おおおぉぉ・・!!」 ルイネロは自分の目を疑った。 今水晶玉にはきっとオディロの言っていたククールという少年が映っている。 その少年は変な光を追いかけていっている姿が見えた。 途中で知らぬ場所で光が扉となり・・・・ ダメダヨ 見知らぬ声が聞こえた。 気づいたら、大きな光は収まっていた。 「誰だ!!」 あたりには誰もいない。 不気味な光を全員を覆う。 ボク?ボクハタダノアンナイニン ココカラサキハミセラレナイ コレハアノショウネンノウンメイニヨッテキメラレテコト ダイジョウブマタモドッテクル タイヨウガハルトカナサルヨルアノコハカエッテクルヨ そういい残して、光は消えて何事も無かったかのように時間は動き出した。 「これは・・・一体?」 オディロはまるで夢を見ているような気分になった。 オディロだけではない、この場にいた全員がそうだ。 「では・・・・ククールはどこに行ってしまったのじゃ・・・」 「あぁ・・院長。」 嘆くオディロをよそに、ルイネロは何かつかんだようだった。 「院長殿・・・さっきの言霊のことですが・・・わかったことがひとつあります。」 「なんじゃと?!」 |
大体のククール用に揃えたものが増えてきた。 洋服に、食器に、カップに、椅子に・・・・ 家族が一人増えるだけで菊丸もクルミもこんなにも騒がしくなるのだろうと思った。 子供が出来たらこんな感じなのだろうと穏やかな気分になれた。 菊丸は仕事に出ている。 クルミは専業主婦だった。 ククールはクルミの手伝いをよくしてくれている。 時々出かける買い物がとても好きだった。 帰りにおやつを食べて帰るのがククールには嬉しかった。 ククールはどうやら、最上階のレストラン街にあるプリンアラモードが気に入ったらしい。 家の帰り道近所の人に会った。 「あら?前野さんこんにちは。」 「あ・・こんにちはどうも。」 「まぁ、可愛い子ね。どうされたの?養子?でも・・・奥様そっくりねぇでもお子さんいらっしゃらなかったわよね。」 クルミは返答に少し困った。 確かに養子みたいなものだが、ずっとというわけではない。 「えっと、姉の子供なんです。日本語通じますから大丈夫ですよ。」 「まぁ、そうなの。ボクお名前はなんていうの?」 クルミに促されてククールも挨拶をした。 「・・ククールです。」 「おりこうさんね。日本語もわかるのね〜。はい飴あげようね。」 「すみません・・・。」 「いいのよ。こんな綺麗な子私も始めてだわ。ご主人様にも宜しくね。」 ククールは飴をもらってご機嫌になめていた。 帰り道、ククールと同じくらいの子供達が遊んでいるのが見えた。 そういえばククールはいくつなのだろう。 年はまだ聞いてなかった。 「ククール。」 「何?」 「ククールの年はまだ聞いていなかったわね。」 「5歳だよ。」 「5歳か・・。」 その頃のだと友達も出来はじめて、外で遊んだりしているだろう。 幼稚園は無理だろうけど、保育園なんか通わせたほうがいいのでは?と考え始めた。 家のなかばっかりじゃきっと息が詰まってしまうのでは? 「ママ・・・どうしたの?」 「え・・ククール、こっちでも友達とか欲しいのかなって・・・。」 「ママ、ボク向こうではずっと中で育って、外に出ること無かったんだ。だから今のままでも大丈夫だよ。」 笑顔で答えるククールだったが、さっき同じ年ぐらいの子供達が楽しそうに遊んでいるところをククールが見ていたのは クルミも気づいていたのだ。 |
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