時空を超えた少年   6






「お前、友達とかは向こうで出来ていたのか?」

「まぁまぁじぇねぇの?ほら、向こうは殆ど、黒髪・黒目の民族だったから、俺が珍しかったみたい。」

「珍しい。全て同じ色をしている国もあるんだな。」
「俺が飛ばされたところは島国でさ、他の国とかによって髪の色や、目の色が違うみたいだぜ。」
「なるほど、この世界でもお前の色はなかなか見たことないからな。」
「そんで、俺みたいな髪は西の大陸に多かったみたい。でも、それでも金がおおくて銀髪が珍しいんだって。」


「それはそうだろうな。」

「初めは、なかな上手くいかなかったけど、腹を割ってみるとさ結構イイ奴らでさ、楽しかったよ。」

「そうか・・。」






真冬も越して、あと一ヶ月もすれば春の季節となる頃。




「今日はみんなに新しいお友達を紹介するわね。前野ククール君よ。」


ククールは保育園に入ることになった。
とりあえずは大丈夫。
子供たちは、ククールの日本人離れした顔つきや、髪の色に戸惑いを感じる。
ソレは無理もないだろう。


「今日はククール君がいた、ロシアの国についてお勉強しましょうね。」

「「「はーーーい」」」














「お前、日本語しゃべれんのかよ!」
「・・・うん。しゃべれるよ。」


保育園の休み時間、隣にいた男の子が話しかけてきた。
一人の子が話かけて、普通にしゃべっている様子を見てると次第に人が集まってくる。

「なんだ、しゃべれるんだ。」
「ククール君の髪すごいね〜。」
「ロシアってみんな髪の毛こんな色なの?」

みんなどうやら、外国人だから会話が出来ないと思っていたらしい。
幸い、ククールはここに飛ばされたとき、日本の言葉が通じるようになっていたのだ。
その幸運にククールは感謝した。



しかし、中には一人、二人はいるものだ。
異質なモノを持つものに快く思わないものが・・・・・


「お前って、髪も目も変な色しえるよな?」

「外人っていうんだぜ?」

「や〜い!仲間はずれ!!」



予めククールも、こうなることは予感していた。
クルミと買い物に出かけたとき、道行く人の視線が痛いほどにそれは分かる。
それに、前の修道院でも領主の息子ということで、同じ人種同士でも偏見はあった。


”いざとなったら、お前達には一生かかってもこの綺麗な髪は生えてこないわよ!”っていってやりなさい。

ククールを心配してか、コルミはこんな事を言っていた。
”正面から向き合ったら分かり合えるかもしれないな”菊丸の言うことは、幼いククールにはまだ良く意味が分からなかった。


「仲間はずれじゃないもん!」
「行こう、ククール君。あいつはみんなのことをイジめるやつなんだ。」


ククールは回りにいた子達に引っ張られ、違うグループといたが、妙にさっきの自分をやっかんでいた子達が気になった。













「・・・・・なんだこれ?」


マルチェロは不思議な物語をみつけた。
それはある世界では、一年に2回太陽が沈みもせず、昇りもしない日があるという不思議な文章だった。


「くだらない、そんな事あるわけ・・・・・」


閉じようとしたときに、気になる文章をみつけた。
それは、太陽が沈みせず、昇りもしない日は春と秋のある日にち。
毎年同じ日にそれは起こり、春と太陽が重なる日、秋が太陽と重なる日それは起こると書いてあった。



「これだ!!あの光はコレのことを言っていたんだ!!」



こうはしてられない。
マルチェロはこの本を抱えて、一目散とオディロの本へ向かった。
正確にはわかっていないが、手がかりはつかめた。
古い記録の本だけど、なにかつかめるはずだ。







滞りなく、ククールの保育園生活は進んでいた。
ある一部を除いては・・・・・


あれから、やっかんでくる子達とククールのグループの溝が激しくなっていたのだ。
ククールは本当はその子達と話してみたいと思っているのだが、一緒にいる子達がそれを許してくれなかった。
自分を気遣ってくれているのは、ありがたいがなんか気分がすっきりしなくククールは嫌だった。





「ねぇ、今日終わったらみんなで遊ぼうよ!」
「「「賛成」」」」
「何する?」
「サッカーしようよ!」

「サッカー?」


聞いたことない言葉に、ククールは疑問系で口に出してしまった。

「え?ククール君知ってるでしょ?」
「ゴメン・・知らないや。」
「じゃぁ、教ええ上げるよ。」
「ありがとう!」



お昼過ぎ、クルミのお迎えでククールは帰るとき、

「今日みんなでサッカーするんだ!」
「そうなの?よかったわね。気をつけていくのよ?」
「うん!」


クルミもククールが、仲間はずれにされることなく、友達と上手くやっている事が嬉しかった。
自分も、日本人離れした容姿のため、初めは他の保護者や、子供に戸惑われたが今はもうそんなんでもなかった。
普通に会話もするし、ちょっとした世間話もする。
普通に子供がいたら、こんな事話したり、育児の情報交換、買い物の賢い買い方なんて話すんだろうなと考えていた。


家についてククールは着替えていた。
集まる場所が分からないので、友達の一人が迎えに来ることになっている。
丁度着替えが終わって、インターホンが鳴った。
案の定、ベルを鳴らした人物は、ククールを迎えに来た子だった。
近所のため、ここら辺のことは分かるやんちゃな男の子だ。


「じゃぁ、行って来ます。」
「は〜い。二人とも気をつけてね。」






「ククール君のお母さんてあの人なの?ククールの事最近になって聞いたから・・・」
「ボク、暫くあそこに住むことになったんだ。」
「え?じゃあお母さんは別にいるの?」

「・・・そうだよ。お母さんとお父さんいま忙しくて、暫く落ち着くまでここにいるんだ。」
「どのくらい?」
「わからない。でもそんなに短くないと思うし、長くもないと思う。」
「そうか・・・せっかく新しい友達が出来たのに、すぐいなくなるのも嫌だもんな。」

「・・・ありがとう。」

「わ!!お前なんで泣いてるんだよ?!」
「・・・泣いてないもん!!」


”友達”という言葉に少し涙腺が緩んだ。
向こうにこんなことを言ってくれる子なんて、いただろうか?
ましてこうやって笑えてたのだろうか?
ここに来てから、いろんな感情を知ったともう。
嬉しい事、悲しい事、こうやって友達ができて、家に誰かがいる暖かさ。

当然ちゃんと親はいたけど、またあの時とはまた違う暖かさ。

「変なヤツ。まぁいいぜ!あ、ほら着いた。あそこだよ。広いだろ?」
「うん・・。」
「お前あんまり外に出なかったんだな・・。別にいっか。」







仲間が集まり、みんなで楽しく遊んでいる時間が暫く続いた。

「あ!!」


一人の子が突然指をさした。
その指の先には、ククールを目の敵にしている子たちがいた。

「なんだよ!ここは俺達のところだぞ?よせでやれ!」
「なんだと?先に使っていたのは僕達だよ!!」

「やるか〜?」
「・・・わー!!」

みんなが逃げ出した。
ククールはそこで逃げては駄目だと思い、けんか腰になっている子のところへいった。

「なんだよお前?”ガイジン”がでしゃばるなよ!」
「ボクは確かにここでは外人だ。でもお前がボクの国にくれば、お前の方が外人だ!それに威張ればいいってモノじゃない!」
「こいつ生意気だぞ!」

ククールの姿勢に、みんな心配で物腰から隠れてみていた。
でも、ククールを迎えに来てくれた子が、近くまでやってきた。


「お前いい加減にしろよ。」
「なんだと!お前はいつもリーダー気取りでムカつくんだよ!!」
「お前だって、ジャイアン気取りだけど、ただみんなを脅してるだけだろ!」

こうなってしまえば、もうだめだ。
小さい子供どうしならではの、激しい喧嘩が始まってしまった。
体格的に見れば、ククールたちの方が分が悪いが、決して逃げるようなまねはしなかった。


ぶつかり合いは長く続いた。





「・・・なんだよ・・お前!!なんで泣かないんだよ!!」
「君こそ・・・さすがに強いね。」

ククールは時々内緒で可愛がられている騎士団の人から、体の鍛えてもらっていた。
将来騎士団に入りたかったからだ。
小柄だが、なかなか侮れない。


「くそ!!いつもなら・・・!!」
「お前いい加減に諦めろよ。」
助太刀していた、イジメっこの子とククールの友達も両者ダウンである。


「それに、ボクのどこがいけないのさ?世の中には緑の瞳だっているし、金髪だっているよ。黒い肌の人もいる。」
「うるさい!!」

「この勝負、ボクの勝ちだね。」


ククールは自信満々に言い切った。


「ははは・・。お前みたいなヤツ初めてだよ」

ククールとその子は互いに手を取り合って起き上がった。

「そういえば、君の名前聞いてなかったね。」
「オレ?おれの名前はヤスカズっていうんだ。」
「そうなんだ。ボクはククール。宜しくね。」

「・・・・・あぁ・・・」

ヤスカズはククールの対応に惑ったが、とりあえず握手をした。


「なんだ、向こう意気投合してるぞ。」
「そうだな。じゃ、こっちもする?」






それから夕方までみんなで楽しく遊んでいた。
ククールと、ヤスカズ、そして、ククールを友達といった男の子エイト、はあまりにも服が汚れていて帰ってから親に怒られたのはいうまでもない。


クルミは泥だらけになった、ククールの服をどう洗濯しようかとしかめっ面をしたいたが、なんだか嬉しくなった。


「ふふふ・・・。でも、ククールはそんな元気に遊んできたなんて、ちょっと嬉しいわ。」
「うん、今日ねまた新しい友達ができたんだ!」

「そう、よかったわね。」
クルミはお風呂上りのククールの頭を、なでた。
ククールも新しい友達とクルミの心地良い手の感触に、少しくすぐったい気持ちになった。




それから、次の日からはみんなで仲良く遊ぶ姿が、よく見られるようになっていた。















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