時空を超えた少年  9





「その頃から結構休日一緒に出かけるようになったんだ。二人ともショックでさ・・・」
「だろうな。」

「兄貴の所はどんな感じだったの?」
「・・・なかなか見つからなくてな、諦めていたのだ。」
「ふ〜ん。でも俺が旧修道院に着いた時みんな居たよな?」


「ああ、あの占い師いたろ?」
「ルイネロのオッサン?」
「そうだ。いきなりわかったと連絡があってな。あわてて飛んできた・。」
「さすがだな。あのオッサン。」



「院長も喜んだものだ。」
「そっか・・・。」


「そういえばルイネロのオッサンまだ元気かな?」
「娘が結婚したと聞いたが・・。」
「そうだったのか残念。結構可愛い娘だったのに〜。」
「その節操なしなんとかならんのか?」

「何いってんの?俺は兄貴一筋なのに・・」
「馬鹿も休み休み言え!」


「いって〜!!」











ルイネロは不思議な感覚に包まれていた。
水晶で透視をするような透明な感覚。
まるでこれから全てを見透かすような・・・・・。



一筋の光が見えてきた。
これは先日見た”光”と同じだった。
もしやコレは夢ではなく、今これと接触をしているのでは・・・?

「フム・・・どうやら当たりのようじゃな。」


ヤァコンニチハ
アナタガココニクルナンテスゴネ

「一応は占い師なのでな。潜在能力なのであろう。」

ソッカイイコトオシエテアゲル
アッチノボウヤハモウトイタヨ。ハルトタイヨウ

「!!」

モウバレッチャッタカラシカナイケドオシエテアゲル
イッカゲツゴダヨソノヒノヨルカエッテクルヨ

「一ヵ月後?3月23日か?」

ソウソノヒノマンゲツノヨルアノコハカエッテクルヨ。
ウウンエラブンダ。

「選ぶ?」

ソウエラブ。アノセカイニノコルカ、ソレトモコッチヘカエッテクルカ
ソレハアノコシダイ





ルイネロの体が白く光った。

「?!?!」


モウサヨナラダ。ボクガオシエラレルノハココマデ
アトハソノヒマデマテレバイイダケ・・・。









気がつくといつもの家の天井だった。
下から愛娘のユリマの声が聞こえる。

「お父さん、起きた?ご飯冷めちゃうよ?」
「・・・分かったユリマ。今行く。」


今日は2月23日。
どうやあ夢のようだが、深層心理に働きがかかったらしい。

「真実のようだな。どれ、マイエラに行く準備に取り掛からなくてはな。」


ルイネロは朝食を食べながら、またマイエラに行くとユリマに伝えた。
ユリマは”お父さんも大変ね”といい笑顔で見送ってくれた。
「じゃぁ、またおばさんの所にいってくるね。」
「すまないなユリマ。」
「ううん、大丈夫、いってらっしゃいお父さん。」









「ククール今の話本当かい?」

菊丸は一瞬眼鏡がずれそうになってのを慌ててなおした。
実際、ククールがここに来たのさえ不思議なのだ。
こんなことがあってもおかしくねいだろう。

「うん・・・最初僕をここへ連れてきた人が言ってた。」

「あながち嘘でもなさそうだね。」
「菊丸さん。」



「思い出してくれ、クルミ。ククールがこっちへ来たときの事。」


クリスマスの夜だった。
二人で食事を済ませて家に着いたとき玄関は異常に光っていたのだ。

「”光”っていったよね。ソノ光、ククールがこっちに来るとき僕たちも見た。」
「あぁ・・・ククール。」


クルミは泣きそうな顔でククールを包んだ。

「せっかく・・せっかくククールが・・・」

クルミはククールを返したくないようだ。
菊丸もそれは無論同じ。
ククールもせっかく仲良くなったのに、家族になれたのに悲しかった。


「僕・・・ここに居たいけど、帰りたい気持ちもある。」
「そうか・・・ククール素直だね。」


「今からでも遅くない。時間は十分にある。」
「でも・・・。」

「そうと決まればどこか出かけよう。旅行はまだしたことなかったしね。」

3人で出かけることはあったけど、泊りがけで行った事はなかった。

「思い出作りだよ。いいだろう。」
「・・・そうね。まだまだたくさん楽しいい思い出作ればいいものね。」


いつか来る別れは予想はしていたのだ。
それがちょっと思っていたより早かったのだ。

「さぁ、出かけよう。」










思っていたより、マイエラに早く着いた。
出迎えてくれたのは騎士団員のマルチェロだった。

そういえば行方不明になった少年の義兄だったことを思い出した。
顔色は穏やかではなかった。
下手にククールの話題を出すのはやめておこう。


「院長は奥の部屋にいます。貴方が来たということはなにかあったんですか?」
「・・・そうだ。」
「謎がとけたどでも・・・。」
「そうだが?」
「・・・そうですか・・。院長もさぞお喜びになるでしょう。」

「君はどうなのだ?」

マルチェロの脚が止まった。
しまったと思ったにはもう遅かった。


「こんな人様にお騒がせな義弟をもって恥ずかしく思います。」

その表情は氷のようだった。」

「さて、院長がお待ちかねです。いきましょう。」





奥の池のほとり
院長の部屋は別館のように豪華だ。
ルイネロは昨日の晩の夢を院長に話すと、
「そうか、そうか・・・アリガトウ。ルイネロどの。」

「いいえ・・・。」


とりあえず今日は教会に泊まることにして、次の日トラペッタへ帰っていった。











「保育園に連絡をするのは3月になってからでいいだろう。」


思いっきり家族団らんを楽しんできた菊丸達だったが、ククールの身辺整理も必要になる。
もともと、クルミの姉の子と称してきたのだから、イキナリいなくなっても大丈夫なような設定にしてある。
いなくなったら、姉が迎えに着たので帰っていった。にしておけばいい。

保育園もそのようにしておこう。

「ククールにもせっかくこっちでお友達ができたのにね・・・。」

クルミは不安だったククールのいなくなった元の生活に耐えられるのかどうか?

「そうだね。でも、ククールとの別れの時僕たちはククールを困らせちゃいけない。」
「それは分かってるわ。あの子のためにも。」

「うん。本当は僕も辛い。せっかく念願の息子が出来たと思ったからね。しかも、君にそっくりな・・・。」
「もう・・。」
「見目本当の親子みたいだったよ。」
「ありがとう。菊丸さん。で、お休みどこにしたの?」

「えっとここらへん。」

菊丸はカレンダーにチェックを入れた。

「そっか・・・楽しみね。」
「最初で最後の旅行だね。」


二人はククールの寝顔を見て、寂しくなった。











3月にはいってすぐ、ククールがロシアへ帰ることになったと保育へ伝えた。
先生も”ククール君がいなくなると寂しくなるわね”と残念そうだった。

エイトもヤスカズも組のみんなもせっかく友達になれたのにと淋しそうだ。
保育園ははククールのお別れ会をしてくれるようだ。
そうだみんなで折り鶴をつくろうとみんなで賑わっている。
友情の印だと・・・。

歪な形だけど、ククールは嬉しかった。
帰ったら部屋に飾ろう。大切にしよう。宝物だ。


カレンダーのチェックのバツ印がだんだんと増えていく。
気づいたら最初で最後の旅行の日付まで来ていた。
これで最後なのだ。
3人で出かけることも、ご飯を食べることも、寝ることも、笑うことも・・・。
旅行から帰ってきたその日の夜。
ククールは還ることになる。



「さ、行こうか早く車乗って。」

菊丸が運転席で、クルミとククールを待った。





「ククールこれもって車先乗って。」
「うん。」

お弁当を受け取ると、ククールは車に乗った。
そしてクルミもあとに続く。

「じゃ、行こうか・・・」



涙は見せない
楽しく行こう
良い思い出をククールに残せるように

菊丸とクルミはそう誓っていた。





















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