幼い果実   5





エイトは全力疾走をして家へと向かった。
まさか!!そんな!!

違うあんな事になってるなんて知らなかった。


だからククールは家族の話になったときいやな顔をしていたんだ。
かかわるなといったのはこのことだったんだ。

そう思ったら、急に涙が出てきた。
急いで走ってお土産のプリンを置いてきた。
落としてしまったからきっとぐちゃぐちゃになっているだろう。


ゴメン・・・ごめんなさい・・
エイトは涙が出てきそうなのをギュっと堪えた。









家に着くなりそのまま自分の部屋に閉じこもる。
居候なのにちゃんと部屋を分け与えてくれて、よくしてもらっている自分が今は憎かった。
同じ親なしなのにこんなに差があるなんて・・

寂しくない。父親のように慕ってくれたトロデがいる。
寂しくない。ずっと仲良しのミーティアがいる。

「ちくしょう・・・」

じゃぁ・・・じゃあククールは?
ククールは・・・・・?


「くそ・・・・!!」


人の心に土足で入り込んだ。
知らなくていい事を知った。傷つけてしまった。
あんなところ誰だって見たくないよね。
もし、自分が同じ立場だったらイヤだもん。



「エイト・・・ご飯ですよ・・・」

ドア越しからミーティアの声が聞こえた。
「いいですよ。入って・・」
「まぁエイト!どうしたの?」
あぁ・・さっき自分が泣いていたことを思い出した。

「あぁ・・・ちょっと。」
「ミーティアでよければ相談に乗りますのよ?」
「・・・・」
言おうとしたが迷った。
これ以上ククールに迷惑をかけたくない。
「なんでもないです・・・。」

「嘘ばっかり。」
「・・ミーティア・・・。」
「エイト・・迷ったら・・・己の心に正直になった方がいいですわ。」
ミーティアはベッドに座り諭すように言った。
「素直に・・」
「こうしないと・・ああしない。こうしないと。それじゃいつまでたってもよくなりませんわ。」
確かにミーティアの言っていることは正かもしれない。
だって黙っていてはなんの解決にもならないではないか!

「そうか・・・そうだよ。」
「・・・ふふ・・・エイトらしいですわ。エイトご飯が冷めてしまいますわ。行きましょう。」
「・・・ありがとうミーティア。」
エイトはミーティアにお礼を言った。

「いいえ、私は何もしてませんわ。」


そうだよ。ちゃんと聞かないと。黙ってちゃ何の解決にもなれない。
向き合わないと・・・
ククールを救ってあげたい!!


「いつものエイトに戻りましたわね。」
ミーティアはにっこりと微笑んだ。




明日ちゃんとククールに事情を聞こう。
断られるかもしれないけど、誤解を解きたいし何とかしてあげたい。
そうエイトは思った。













次の日ククールは登校してきた。
いつもと同じ綺麗な顔をして・・・・・

ククールはもうエイトが此処へ来ることはないと思っていたがエイトの行動を見て驚いた。
「お前・・・」
「ククール話しがあるんだ。」

昼休み。誰もいない屋上に二人はいる。
「話しってナンだよ。」
ククールは機嫌が悪そうだった。無理もないかもしれない。

「昨日ずっと君の事考えていたんだ。」
「・・・・そうか・・・」


静かな時が続く・・・

「お前が初めてだよ。」
「え?」
「めげずに俺に話しかけてくる奴。」
少し笑った。どうやらそこまでは嫌われてはないらしい。

「でも・・・まだ・・お前のこと信用できない。」
「・・・え・・・」
「興味本位で俺に近づいてくる奴も多い。」
「そんなことない!!僕はただ・・ククールが・・・・・ククールが・・・」
証明できるものは何もないのに何を言えばいいのだろう?

「ゴメン僕は証明できるものは持っていないよ。でもククールこのままじゃいけないと思うんだ!」
エイトはククールの方を掴む。
「・・・」
ククールは戸惑ったように視線をそらす。
しかし、エイトのますっぐな瞳に吸い込まれるかのようにそらせない。
「エイト・・・俺は・・・」


「ククール・・・・?」
あの時の顔をしてる。とても傷ついたような・・
「ゴメン・・・」
とっさに手を放した。


「いいんだ。別に・・・そうやって一生懸命にやってくれる奴は初めてでさ・・・その」
「ククール・・慌てないでいいよ。話したくないなら・・・僕こそゴメン。」


「待ってくれ!」
ククールはエイトの腕を掴み引き止めた。
「?」
「お・・・俺・・根拠とかねぇけど・・・お前には話してもいい・・・」
「え?」


昼休み終了のチャイムが鳴った。

「話は長いんだ。放課後俺の家じゃまずい・・・お前は大丈夫か?」

「大丈夫だけど・・・」
あまりの速さにあっけらかんだ。

「でも・・本当にいいのか?」
「かまわないよ。僕君の力になりたい。」


屋上からでて放課後を待つ。
こうやってククールと帰るのは2度目になるだろう。
あの時は友達になりたくて必死だった。
普通に寄り道して・・・少し前の話しだ。






「ただいま。友達上がるからね。」

「え・・・」
「そのほうがいいでしょ?」


「お前の家でかいな」
「違うよ・・僕の家じゃなくてトロデ理事長の家だよ。」
「え・・じゃあお前の育て親って・・」
「そういうことになるかな.]


「あら、エイトお帰りなさない。」
「こんにちはお邪魔してます。」
「まぁ・・ククールさんね。」
ミーティアは嬉しそうだった。
「エイトがお友達を連れてくるなんて初めてですわ。」
ミーティアは嬉しそうに自分の部屋へ行った。
「エイト後で何か持ってきますわね!」
「ありがとう・・・」



「しっかし驚いたな。」
「何が?」
ククールはボフっとベッドに座り込む。
「エイトの事情も複雑だな・・。」
「まあね・・・」


どこから本題に入っていこうか迷う。
自分から切り出したほうがいいのか?ククールから言い出してくるのを待っていたほうがいいのか?

「エイト別に気にするなよ?俺のこと。」
「しっかしドコから話し始めればいいかわかんねえな・・」
ククールはそんなに動揺はしていない。


ドアをたたく音が聞こえた。
叩いたのはミーティアだった。


「エイト、ククールさんもご飯どう?もできてるの。」

「わかった。」
「ククールせっかくだし、食べていこう。」
「悪いな・・」
「気にしないよ。」


エイトとククールは階段を降りてダイニングへ向かう。
ククールもハジメは戸惑っていたが、次第にトロデたちと打ち解けていった。
その様子を見てエイトは連れてきて良かったと思った。
ふとミーティアを見ると静かにウインクをしている。
悩んでいたことが見抜かれていた。

エイトは少し恥ずかしくなった。

「ねぇ・・ククールさん今夜は泊まっていくの?」
「え・・・」
ククールもそこまで考えていなかった。
「うちはかまわんぞ。ククールお前しだいじゃ・・」
トロデも反対はしていない。

「ククールどうする?」
「じゃぁ・・お言葉に甘えて・・」
決定した。
「家の連絡は・・どうします?」
「大丈夫、俺自分で連絡しますから。」
「おお・・そうか」


「ごめんね、ククールこんなことになちゃって」
「いいって別に・・楽しいし・・」
「お兄さんへは・・・?」


「携帯のメールに入れておいた。」
「そう・・」
「あとは電源きってるから知らない。それに次の日も学校あるからな。」
「そうだね・・。」
「本当は・・・時々帰りたくないんだ・・。家に・・今日は此処に来てよかったよ。」
「ククール・・・。」







寝る準備をしているときだった。
もう夜だ。時間はそんなに遅くない。
風呂にも入ってエイトのベッドの下に布団を敷く。

「ベッド占領して悪いな。」
「別に・・・」


「・・・そろそろ潮時な・・」
ククールが力のない声でつぶやいた。
「全部話すよ。」

「ククール・・・。」

「長くなるけどいいか・・・?」
「かまわないよ」


ククールはベッドに横になりながら話はじめた。

同じくエイトも横になって聞いている。















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