幼い果実 9 ギリギリセーフで雨が酷くなる前に家に着くことができた。 玄関へ入ってきたと同時に雨が激しくなった。 家の中はしんと静まり返っている。 マルチェロはいないのだろうか? いや、そうだとしたら鍵がかかっているはずだ。 おそるおそるリビングの方へ行くと、マルチェロはただ黙って椅子に座り腕組をしていた。 「兄貴・・・ただいま・・。」 「昨夜はどこへ行っていた。」 「だから・・・メールに送ったろ?エイトの家に泊まるって!!」 「・・・それだけでは・・何故携帯の電源を切っていた?」 「それは・・・兄貴が反対すると思って・・」 「そうか・・」 マルチェロは立ち上がり、ククールの腕を掴んだ。 「何するんだよ?!」 これではいつもと同じだ。 このまま言いなりになってはいけない。 「兄貴待って!!俺は!!」 「黙れ・・この愚弟が!!」 床に叩きつけられて背中が痛かった。 「ぐ・・・あに・・」 制服のボタンが取れていく・・ いつもマルチェロは乱暴だったが、今日はいつになく乱暴だ。 「兄貴!痛い!!」 「煩い・・」 なにも前触れもなしに下を脱がされ、中に入られて。 「い”・・・!!」 最近はいつもこうだ。 独りよがりで、粗暴で、乱雑。 「兄貴・・いた・・・・」 「・・・」 マルチェロは無言で行為を続ける。 「やだよ・・・兄貴やめてよ。」 「・・・」 「俺はもうこんな事したくないんだよ!!」 「!」 突然のククールの叫びにマルチェロは怯んだ。 その隙にククールは、逃げようとするがすぐマルチェロに捕まった。 髪の毛をつかまれ、引っ張られる。 「無駄だ。お前は私から逃れられん。」 窓から綺麗なフラッシュがはしった。 遠くで雷の音が聞こえた。 「ククール・・お前は・・・・・」 雨がやんだ。 気付けば雷も遠くへいっていて、薄暗い。 気絶したククールにマルチェロは何か言いたそうな言葉だけ残して自室へ去った。 暫くしてククールは気がついた。 汚れた床にそっと手をのせた。 冷たい・・・・マルチェロがもういないとなると部屋に戻ったのだろう。 いつもこうしたことが終わると、マルチェロは部屋へこもる。 一体部屋で何をして、何を考えているのだろう? ゆっくり起き上がって、バスルームへ直行した。 暖かいお湯に体をあて、これからどうするか考えていた。 家を出ると決めた。でもこままだったら埒が明かない。 「・・・暫くエイトの家に泊めてもらうか・・・・。」 「え?僕の家に?いいよ大丈夫。トロデ様もミーティアも喜ぶよきっと。」 ククールは、住むところが決まるまでエイトの家にいさせてくれないかと頼んだ。 エイトはあっさりOKしたのだ。 「よかった〜。」 「?」 なにをそんなに安堵しているのだろう? 「ククールもしかして昨日・・・」 「だから余計な心配はいらねぇの。」 「でも・・」 「丁度荷物も昨日のうちに用意してあるんだ。」 ククールの席やロッカーのところは何やら大きなバッグが置いてある。 「・・・・凄いねククール。これ全部?」 「ああ・・・さすがに注目の的を浴びてきたぜ今日は・・」 「そう・・・」 そうだろうねと荷物を横目見た。 「ククール今日から探すの?」 「今日は荷物もあるから、とりあえずモノの全部片してからだ。といっても置くだけだけどな。」 「そうだよね・・・・」 エイトとククールは、エイトの家に行き、トロデの了解を得て暫く一緒にすむこととなった。 「悪いな・・スペース狭くなって。」 「かまわないよ。いい話相手もできたし。」 「ありがとな。」 行動に移してみたら結構あっけないものだった。 トントンと事は進む。 後は無事に見つけられればいい。 「ククール・・このことはお兄さん知ってるの?」 「・・・兄貴には黙って出てきた。」 「大丈夫なの?」 「わからない・・でも兄貴も俺の行動にはうすうす感づいてるかも知れない。」 「でも・・」 エイトの不安はククールにもわかる。 もしかしたら居場所を突き止められて、連れ戻されるかもしれない。 「兄貴は今は俺がエイトの家にいることはきっとわかる。それより早いところ見つけないとな。」 「ククール・・。」 ククールは荷物を自分の取り出しやすい所に置いて、すぐ使うようなものは出しておいた。 「洗濯とかはどうしたいい?飯とか・・・一緒になるのも気がひけるな・・・。」 「全く・・君って奴は・・」 「わ!!」 こうも深刻に考えているエイトに対し、ククールは楽天的だった。 くよくよ考えている自分がまるで馬鹿みたいではないか。 思わず腕をククールの首に回し、軽くしめた。 「ひとかせっかく心配してあげてるのに・・」 「・・・ありがとうなエイト。でもこうやって明るくしてないと俺だって恐い。」 今までずっと苦しんできた。 やっと笑えるようになったんだ。 今笑っておかないときっとこの先も笑えなくなるような気がする。 「ううん。ククールは強いね・・。」 「俺がか?」 「うん。そうやって何でもできちゃうところ。僕はきっとできないよ。」 「馬鹿だな〜。」 ククールは首に巻かれていたエイトの腕はゆっくり振り解く。 エイトと正面に向かい合って両肩をポンと叩いた。 「あのな!元をたどれば俺がこうなれたのもお前のお陰なんだよ!」 「・・・・」 「・・な・・なんだよぽかんとして・・」 「いや・・・君からこんな台詞が出てくるなんで思わなくて・・」 「悪かったな・・」 ククールは少し赤面して目線をそらした。 「ううんごめんごめん。」 「まっ、俺がこうして始めようと思ったきっかけを作ってくれたのは、お前なんだから感謝してるんだぜ?」 「・・・・そういわれると、嬉しいよ。」 「そうか・・・・」 それからククールは、休日や学校の帰りと不動産へと足を運ぶ。 やっぱり高校生だから断られる処もあったけど、なんとか学校から遠くないところのアパートを借りるところができた。 エイトの家に住み始めて10日間経った日だった。 荷物をまとめて新しい新居に向かう。 「ま・・・仕方ないな・・・。」 ククールの借りたところは、今にも崩れそうなボロアパート。 しかし、家賃も安く学校からも近い。 「ここならエイトの家からも近いしな!」 なんにんか住んでる人がいて驚いたが、何とかやっていけそうだ。 「手伝ってくれてサンキュ。エイト。」 「平気、平気。またいつでも遊びにきてよね。」 「あぁ・・・もしかしたら時々飯食いにくるかも知れないな・・・。」 「うん。」 エイトも帰り、狭い部屋に一人。 とりあえず、トイレとお風呂は別々だ。コレが第一条件だったりする。 「ま・・・暫くしたら家に帰ったり、電話したりして兄貴の様子でも伺うか・・・・」 「そういえば・・寝るのどうしよう。ベッドないし布団もない・・買わないとな・・・。」 早くも出てくる問題点 まだ一人の生活は始まったばかり |
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