隣人は密かに笑う  6







「ルルーシュ?どうしたの・・・顔色悪いけど・・。」

「あ、いやスザク・・。」

「大丈夫?どこかぶつけた?」

「やめろ!」


パシンと何かを弾いた音がした。
ルルーシュがスザクの手を拒んだのだ。


「え・・・ルルーシュ・・?」


スザクはまさかルルーシュに手を叩かれるとは思ってもいなくて、困惑している。
ルルーシュもとっさにとってしまった行動だったためすぐに後悔した。
こんな事間違っている。
スザクを疑うなんて事、第一スザクはこんな事しない。


「ゴメン、スザク・・その・・。」

「僕の方こそゴメン。ルルーシュはあんまり触れられるの嫌いだって事、忘れてた。」


気にしないでと、スザクは言うが気まずい空気を作ってしまったのはルルーシュだ。

「いいや、今のは俺が悪い。」

「ルルーシュ、資料は僕が運んでおくから、君はもう戻った方がいい。会長さんには言っておくから。」

「・・・悪いがそうさせてもらう。実は眠気が凄くてね。だから足を踏み外したのかも・・。」

「だったら、ホラ。」

ルルーシュは散らばっていた荷物を荷物をスザクに渡した。
スザクは荷物を受け取ると、軽々と持ち上げる。

「じゃ、ルルーシュ。ちゃんと休むんだよ。」

「ありがとう。スザク。」








ルルーシュはあの後、まっすぐクラブハウスに戻った。
相当疲れていたのか、夕食もとらずに部屋に入ったらそのまま寝てしまった。
眼が覚めたときにはもう、朝方だった。


「・・・しまった。制服のまま寝てしまった。」


シワシワになった制服を見てルルーシュはうんざりした。
いつもなら帰ってきたら、すぐに着替えるというのに。
昨日はそんな事も考える余裕も無かった。

登校の時間の前に、制服にアイロンをかけた。


睡眠時間をちゃんととったせいか、今日の調子はよかった。
夜中に訪れる不審者にも、全然気にしなく眠れた。
こんなの久しぶりだった。

ルルーシュは上機嫌のまま、いつものように教室にむかう。






「おはよう。ルルーシュ。気分はどう?」

「あぁ、スザク。スザクのおかげで良くなった。」


今日も非番だったのか、スザクは教室に入ってきたルルーシュを気にかけた。

「心配したんだよ。真っ青だったからね。」

「もう大丈夫だよ。言っただろただの寝不足だって。」

ルルーシュはスザクの心配を軽く受け流す。


「よ!!ルルーシュ昨日はどうしたんだよ!」

リヴァルが、後ろからルルーシュの肩をまわした。
勢いがついたため、ルルーシュが前のめりになった。

「リヴァル。」

「お、今日はよさそうジャン。ルルーシュ最近、なんか辛そうだったもんな。」


はやり気付かれていたのか。
ここ最近の鏡に映った自分自身は、ルルーシュから見てもあまり血色は良くなかった。
もともと肌の色が白いだけに、青白くなって余計に病人のように見える。

顔に出やすいのは考え物だな。
ルルーシュは席に着いた。






















「ルルーシュ!」

「何だ?リヴァル。」


「久しぶりにさ、行かない?」

リヴァルが、チェスのジェスチャーをする。
そういえば、ここ最近は賭けチェスはしていなかった。
せっかくの気晴らしだから、一日ぐらいいいだろう。

ルルーシュは、リヴァルのサイドカーに乗った。


「そういえばさ、こうしてルルーシュ乗せるの買い物付き合った時だな。」

「そういえば。」

「あの時も、ルルーシュ寝不足だって言って顔色悪かったな。」

「そうか?」


確か、あの時は小型カメラを買いに付き合ってくれた時だった。
あの時は体調は最悪で、でもやっとストーカーを突き止められると思っていたのだ。
犯人は、ルルーシュよりも何枚も上手だったが。
結局あの小型のカメラは、クラブハウス内の防犯カメラと化している。

でも無いより、あったほうがいいだろう。
黒の騎士団としても行動しているから、万が一ナナリーが危険に晒されるか分からない。
そんな証拠は残らないように細心の注意を払っているが、もしもの時もある。

「買って正解だったな結果的には。」


「え?何が?」

「あのカメラ。」

「へ〜確か防犯用に使うって言ってたよね。」

「あぁ・・。」



ルルーシュが必要以上に話さないときは、検索をされて欲しくない時だ。
周りの人間より、ルルーシュと一緒にいるリヴァルはそれを感じ取って、
それ以上話すのをやめた。

そして、ルルーシュも話題を変えてきた。



「リヴァル、今日のチェスの相手って誰だい?」

「お、ルルーシュが相手を気にするなんて珍しい。」

「たまにはな。」

「いつもなら、そんな事聞いてこないのに・・。いつもと同じ道楽貴族。」

「そうか・・。」

「でも、ちょっと変わった趣味があるって聞いたよ。」



貴族の趣味は大抵いいものではない。
金にモノを言わせて、好き勝手ヤリ悪趣味なことを強いられている人間は多くいる。
屋敷に住む使用人は、彼らのいい被害者だ。

普通の貴族でもこうなのだから、噂で悪趣味とまで流れているのだから、
きっと今までの中で一番酷いのだろ。

今まででも、ルルーシュの美貌にくらんで、体を要求されたことはあったからだ。
モチロン、賭けの相手と二人っきりになったときだけだ。
リヴァルは知らない。

悪趣味というのが、”そっち”のしゅみでなければいいと思った。
こういったことを要求してくる相手に限って、しつこい。
過去に何度もチェスの相手の申し込みが来たり、学校にプレゼントまでしてくる相手も少なからずいたのだ。


「ま、相手が貴族という時点で、性格はもう壊滅的に終わっているな。」

「ん?なんか言った?」

「別に、独り言だよ。」

「ふ〜ん、あ、ホラついたぜ。」


リヴァルがバイクを止めた。
とても奇抜な建物のデザインに絶句する。
これじゃ変わり者と広まっても仕方ないだろう。


インターホンを押すと、人のよさそうなスーツを着込んだ人が出てきた。
こういった性格の悪い屋敷主の豪邸に限って、執事は人のいい老人が多い。



「さぁ、コチラです。」


案内された部屋には、集めた骨董品が数多く並べられたおた。
真ん中にテーブルと椅子があり、質のよさそうなチェス台が置いてあった。


リヴァルは見た事もない、貴重な品に凄いと周りをキョロキョロして落ち着いていない。
ルルーシュは興味がなく、すぐに用意されて椅子に座った。

まだ相手はこの部屋には来ていなかった。


「ルルーシュ、凄いな〜この部屋。」

「あぁ、年代ものの品がズラリと置いてある。気をつけろよ?殆ど一品億単位のものばかりだ。」






「ほう、その年で随分といい眼を持っていすな。」

ルルーシュの言葉に感心したのか、今日のチェスの相手が入ってきた。
一応礼儀なので、椅子から立ち会釈する。

「そう、かしこまらんでいい。君は結構噂に聞いていてね。どれほどの強さなのか興味があって。」

「それは光栄です。」

「まさかこんな綺麗な学生さんとは思いもよらなかったよ。」


貴族の男は、ルルーシュの手の甲にキスをした。
案の定”そっち”の趣味がある変態野郎だった。
てっとり早く方を付けて、帰ろう。

不幸中の幸いにも、今の所はリヴァルには見られていない。
この男のところに長居は無用。


「・・・まさか、俺ぐらいの学生なんてそこら辺にたくさんいます。」

「またまた冗談を・・。」

「俺が黒でいいですか?」

「いいだろう。君は、よく黒の駒を好むと聞いているからね。」


まったくイロイロと調べられているんだな。
ルルーシュは呆れていた。












チェスの結果は言うまでもなくルルーシュの圧勝だった。

しかし、この男勝敗などどうでもよかったようだ。
目的はルルーシュの姿見たさだったらしい。
一目見て気に入ったらしく、また相手をお願いしたいと頼んだが、ルルーシュは丁重に断った。

貴族相手だと、お金がはいるからそれはそれでメリットもあるのだが、
素性がバレてしまうデメリットも同じように伴う。
石橋は叩いて渡る。

それがルルーシュの座右の銘だ。
危険なことは一切しない。


ルルーシュはチェスの相手を選ぶのに、もう一つ条件を出していたのだ。

『勝負は一度きり、今後そちらからのコンタクトは一切応じない』

中にはしつこく連絡をとりたがる者のいたが、今日の相手は駄目もとで切り出してきた。
どうやら、変な趣味は持っているがそこまで性格はひん曲がっていないのだろう。



約束の金を指定の口座に振り込むと約束をしてくれると、すまなかったねと謝って部屋を出て行った。
入れ違いで、執事が出てくると出口まで案内してくれた。


「なんか、今日の貴族ってちょっと変わってたな。」

「そうだな・・・。趣味はわるいが人は悪くない。」

「でもそうとうな変わり者だな〜。」


廊下の天井の模様が異様なデザインで、眩暈がするとリヴァルがいった。
入ったところからとは、方向が違うようだ。


「こちらに、バイクを移動させております。」


専用の駐車場だった。
出るところと、入るとこの出口を分けているらしい。



「今日はどうもありがとうございました。」

ペコリとお辞儀をされてた。


「じゃ、行きますか。」

「あぁ。」


ヘルメットを被った瞬間、突き刺さるような視線を感じた。
敵意のような鋭い視線。

「ん?どったのルルーシュ?」


ルルーシュの様子に、リヴァルが声をだした。


「あ・・いや、今変な視線を感じなかったか?」

「いや〜別に俺は・・・」

気のせいじゃないの〜?と言われたが、確かに感じた。
全身の毛穴から汗が吹き出るような恐怖を感じるほどに・・。


「リヴァル、早く出してくれないか?」

「あ・・あぁ。」


リヴァルは、ルルーシュに促されてバイクのエンジンをかけた。
屋敷から離れてもルルーシュの悪寒は消えなかった。




















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